仮想通貨業界を底上げする

記者12:今日はありがとうございます。朝日新聞のオオクマと申します。松本さんと和田さんに1問ずつうかがえればと思います。

まず松本さんになのですが、今回のディールに関してコインチェックさんの問題があった点も含めて理解した上での買収かと思いますが、どういう点が具体的に問題で、先ほど内部管理体制とおっしゃっていましたけれども、一緒になることで具体的にどういう点を底上げできるか、もう少し詳しく教えてください。

あと和田さんについてはもう1点ございまして。執行役員として残られるということですが、例えば執行役員からも外れるという選択肢があったのかというのが1つ。あと、執行役員としてとくにどの分野に注力されて今後お仕事されるのか。そちらについても教えてください。以上です。

松本:1つ目に関しましては、私もこの30年間ずっとマーケット系の金融の仕事をしてまいりました。1980年代の終わりからなんですけれども、そのなかではデリバティブというものが出てきて、理論的にもいろんな人がわからないとか、デポ、貸し借りをする市場がないとか、いろいろとても未成熟な時期があり。

そこから、実際にその中に入ってデリバティブの取引等を進めてきた会社・人たちが、ルールの整備であるとか理論の啓蒙活動のようなことであるとか、デポ市場を作るとかも含めて、成熟をさせてきました。

あるいは、国債の世界でも、ここにいらっしゃる方の中にはご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、25年ぐらい前までは、いわゆるDVP(Delivery Versus Payment)というものは行われていなくて。

済証という、100億円200億円単位の規模で国債を売買しても、売り方・買い方がそれぞれ「売りました」「買いました」という済証をサインして、それをアタッシュケースに入れて、会社を引退した高齢の方がバイトで、そういう数百億円の有価証券をアタッシュケースに入れて、日銀の5番窓口へ持っていくと。

これは、万が一盗まれて善意の第三者に取得されると、そのまま有価証券になってしまう。数百億。ということがあったけれども、もちろんそれでは危険だということで、日銀ネットであるとか、RTGS(Real-Time Gross Settlement)であるとか、そういったものが作られていきました。

なので、そういうふうに実は金融の世界でも案外最近までたいへん大きなリスクを内包しながら動いてきて、それを我々はいろいろなかたちで直すというか、改善してまいりました。

そういった知識とか経験といったものが、きっとコインチェックさん、ひいては仮想通貨業界により良いかたちでの、しかも強いかたちで、社会に認識されるかたちでの発展に、なにか我々が貢献できるところはあると信じておる次第です。

執行役として残った理由

和田:2つ目の質問の答えといたしましては、私としては、当然、このような今回のNEMの流出という事案、事故を起こしてしまっただけに、ある程度一定の責任があると感じております。

その詳細については以前説明したところではございますが、その責任としては私にあり、その理由も私にあるとは考えておりまして、この経営の体制のままではしっかりと顧客に安全なサービスを提供することが難しいと考えたため、取締役は降りることとなった次第でございます。

またその一方、私としましては、これまでコインチェックの代表取締役として、業界の発展を目指して仮想通貨交換業というものを営んでおりました。そのなかで口座、顧客の数であると100万口座を超えたりと、一定程度の業界に対する貢献であったり成果は残してきたつもりではございます。

そのなかで、今後のコインチェックというサービスを運営していくにあたって、私としては、私が執行役員というかたちで残り、さらにそのなかで、私が下した決断を取締役会にかけることによって、そこで管掌することによって、安全に顧客にサービスが提供できるものと考えておりまして、そういった意味で執行役員として残ることになりました。

また、その中でなにをやるのかという話なんですけれども、それぞれ執行役員に関しては管掌範囲が定められております。私の管掌範囲に関しましては、開発に関するものでございます。

というのも、私は創業当初からエンジニアとしてサービスの開発に携わっておりまして、そこに関しては当然社内の誰よりも一番理解があり、そのなかで、今後どうすればより安全にサービスを提供できるのか、より安定したサービスを提供できるのかというところに関して知見を持っていると自負しております。

なので、私としましては、そういったところ、開発であったりプロダクトというところに関して執行役員として責務を果たしてしていく次第でございます。

新社長就任の抱負

記者13:読売新聞のハタニと申します。まず1点、コインチェックの現在の社員数と、今後社員を増やす予定があるのかというのが1つ。

もう1点なんですけれども、勝屋新社長にうかがいたいと思います。なぜこのタイミングで社長を受けられたかという理由と、抱負と言いますか、そういうのがありましたらお願いします。

大塚雄介氏(以下、大塚):私のほうからご説明させていただきます。現在コインチェックの社員数は104名になっております。

今後社員を増やすかということに関しましては、これからみなさんに安全にサービスをご提供させていただきたいということもありますので積極的に採用を進めさせていただきまして、よりお客様に良いサービスを提供させていただこうと思っている次第でございます。以上でございます。

勝屋敏彦氏(以下、勝屋):マネックスグループの勝屋でございます。このタイミングで社長になるということは非常に責任が重いと感じておりまして、身の引き締まる思いでございます。

グループとして第二の創業ということで約半年前に仮想通貨交換業などに取り組むということを打ち出していましたので、今回のお話はそういった意味でど真ん中というか、まさに担っていかなければいけないという思いでやっております。

抱負としましては、やはりユーザーの方……お客様の信用を取り戻すということ。それから第二に信用してもらったうえで信頼を受けるという企業にしていきたいなというふうに思っています。

三、四はないんですけれども、五に冒頭で和田さんがお話されていましたけれども、業界をリードするようなそういった企業に、業界に貢献できるようなかたちにしていきたいというふうに思っております。

またこの業界は日進月歩ですので、常に外にアンテナを張って技術の動向、それからインテリジェンス、ネットワーク、こういったものに傾注してやっていきたいと思っております。

「一定の事業上のリスク」とは何か

記者14:ブルームバーグニュースのナカムラです。本日はありがとうございます。買収金額なんですけれども、これから3年間利益をシェアしていくと書いてあるんですが、「一定の事業上のリスクを排除して」と書いてあるんですけれども、もう少しこちらを具体的に。

おそらくマネックスさんの株主さんもこのあたりは非常に気になっていると思いますので、これは一体どういうリスクなのかもう少し教えていただけますでしょうか?

松本:マネックスの株主の観点から考えると、当初3事業年度の当期利益の半分がマネックスグループに広義の意味で属するということであり、そのあとは100パーセントになります。

もともとの株主の方に関しましては、今回の最初の株の値段のほかに「今後3年間、当期利益を半分引くことの事業リスク等」というふうに書いてあったと思うんですけど、それが引かれると。

これは訴訟であるとかそういったものが含まれますがそう考えますとご質問であるマネックスグループの株主の観点からすると、いわゆるファーストロスが既存株主によってカバーされていることになるので、少なくとも期待値計算で考えると大きなブレはないというか、追加のロスというものはほぼ発生しないと考えております。

まだまだ大変ご質問はあるのですけれども、時間がございまして。今後も当社マネックスグループにおきましてもコインチェックにおきましても、しっかりと情報公開というか、みなさまのご質問等を受けながらご回答をしてまいりたいと考えております。今日は時間になりましたので、このあたりで終了とさせていただきたいと存じます。