中国はグローバリズムと資本主義の権化

中川コージ氏(以下、中川):(中国の共産党政権は)こんなガチガチのピラミッド構造にも関わらず、この「社会主義革新価値観」の上ずった感じが僕は大好きでね。「富強・民主・文明・和諧・自由・平等・公正」とか、もうまさに民主主義国家が目指すようなことを上ずって言う感じが(笑)。中国っぽくておもしろい。さすが総書記ですね、みたいな。

平将明氏(以下、平):今回の全人代だって、中国が自由貿易の推進と言ってるわけよ(笑)。今度アメリカが関税かけるって言ってる中で。

中川:はっきり言うとグローバリズムと資本主義の権化ですよ。要はそれを消し去るために、これ(民主主義国家が目指すようなこと)を言ってるとも言える。この上ずった感がおもしろい。でも、ここにも書きましたけど、中国黄色(GDP推移グラフ内折れ線の色)ですが、このへんでもうアメリカを抜くんじゃないかという予測もあるくらいで。日本はぜんぜん超えてますけど。

:中国は今まさに国家資本主義vs西側諸国みたいな感じで。我々も民主主義の中で、例えば政策やりたくても、野党とマスコミがわーっと盛り上がってすごい理性的じゃないところで政権がつぶされたり政策がつぶされたりするでしょ。中国はやっぱり権力は強いんですよ。政策立案のところも、みんな欧米の大学院でも勉強してるんで、能力も高いわけ。

生田よしかつ氏(以下、生田):頭いいもんなあ。

:政策立案のところにあんまり異物も入らないし、それをやりきる力も強いし、しかもマーケットももともと自国(民)だけで14億? 十何億もいるんで大きいわけ。そこにITテクノロジーが入ってきたから、本当に強いんですよ。

生田:すごい強いんだ。

:そう。あと中国共産党は、まさに習近平さんが独裁の方向に行くために何をやったかというと、「不愛を排除しよう」と言って逮捕しまくったわけですよ。それで習近平さんっていうのは、いわゆるお父さんおじいちゃんが偉い人だった人の息子、なんていうの、太子党?

中川:世襲。

:だから、自民党でいうと福田さんとか小泉さんとかね。麻生さんとか河野さんとか。

生田:世襲なんだ。

習近平氏は狂犬

:それで、僕が青年会議所時代に付き合っていた、共青団という共産党があって。その中の若手の共青団で、ここは胡錦濤さんとか出ていた。共青団は力があったんだけど、その力をものすごく排除しようというか弱めよう、みたいな動きの中で。自民党でいうと、地方議員出身者、松本文明さんとか大西英男さんとか萩生田光一さんとか。こういう人たちが自民党でいえば共青団みたいな感じですよ。

生田:なんか偏った言い方したね(笑)。

:だから太子党と共青団みたいな戦いって世界中どこの組織でもあるわけ。

生田:はあ〜やっぱ人間なんだね。

:それで、僕は太子党でも共青団でもない、攻防というか、もうこっちは華僑の世界だから勉強できればいけるのかもしれないけど。そういう戦いが今あって、かなり長老の側近なんかがもう軒並み逮捕されちゃって。今ほぼ習近平さんが勝ちを収めたって感じですかね。

中川:そうですね。今の話は共産主義青年団ですよね。胡錦濤派と言われてた者だとか、江沢民派は上海幇だとか、あとは先ほどの世襲。これが太子党、今はもうどっちかっていうとホンワーダイ、紅二代って書くんですけど。紅二代派のほうが今は的確な言い方なんですが。この3つが三つ巴と言われてて、習近平さんが最初に出た第一期目は、漁夫の利だろうと言われてたんですよ。

所詮あの人たちは世襲だし、そんなでもないだろうと言われていたのが、実際にはもう(習近平は)狂犬で。全部、江沢民派・胡錦濤派をバンバンとつぶした。

生田:習近平なんて出てきたときはなんかぼーっとしたおっちゃんだなあと思ってたけどね。

:なんてこと言うんだ、お前は。

生田:だけどそう見えない。

中川:だから上手いですよね。そういう感じの。

大澤:ブランディングが。

:キレッキレな感じはしないけどね。

生田:キレッキレじゃないよね。なんかぼわーんとして大丈夫かな、みたいな。

中川:中国でもそんな感じだったんですよ。一応漁夫の利だろう的な感じで、まあつなぎで10年間やって次はどっちだ、みたいな感じだったんだけど、実際にはもう叩いて大変な狂犬で。

中国は基本的に三権分立がない

:ちなみに習近平さんのところで首相をやってる李克強さんは共青団出身なわけ。そこは一応バランスとってるの。

生田:うまいこと派閥政治みたいな感じだね。

:そうそう。でもこのあとに一番大きく変わったのは、習近平さんは次世代のリーダーを入れなかったんだよね。必ず次世代のリーダーを何人か競わせて、「次はこの人」ってわかるんだけど、今回は入れてないので。だから、ずっとやるつもりなんだなということになってる。

中川:2期目の先ほどお話した政権のスタートのときに、普通はそのパワーセブンの中に入れておくわけですよ。

大澤咲希氏(以下、大澤):若い人を。

中川:若いのを。当然ね、習近平さん自体もそうだったわけだから、それが慣例なのに入れなかったんですよ。

大澤:もうみんな長老ばっかりみたいな。

中川:長老というか自分の子飼いだったんですよ。

:その子飼いとか年齢の高い人。5年後だから、やっぱり今で言う僕くらいの年齢の人かもっと若めが何人か入ってなきゃいけないんだけど、あんまり入ってないよね。

中川:それで噂をされてたんだけど、そこで本気だというのがわかったのが、さっき言った改憲案。まあ正式には今日から始まった全人代で可決されなければ改憲案通ってないんですけど。

生田:まあでも可決されんだろう。

中川:まあ通過する。あれは追認機関。ちなみに、中国は三権分立ないですから。三権は分立してるんだけど、三権の上に全人代があって、その上に共産党があるから、基本的にないってことですね。

日本の『しんかい6500』を超えた、中国の深海探査

中川:まあここもつまみ食い的にいきましょう。ビッグブラザーが領導するというのは、中国語的なんですね。日本語にも一応あるんですけど。重点新領域ということで、基本的にやっているのはこの3つなんです。だから、逆に言うと、日本で言われているようにここ(重点新領域)以外のところはボロボロです。

例えば、地方債どうなんですかとか、財政状態どうなんですか、腐敗状態どうなんですか、格差どうなんですかと。もう酷いです。だけど、そこ(中国のダメなところ)を見たところで、それは日本のメディアをいっぱい見てもらえれば。

だけど、そこ(日本のメディア)を見たところで中国のヤバさはわからない。むしろ向こうの強みを見ないとわからないということで、この強みが経済においても軍事においてもきてますよ、という3つの領域なんですね。

ここはもう逆に言うとブーストかけてる。これがサイバー空間と宇宙空間と深海ということで。日本もけっこう深海強かったんですけど、もう何年前か、けっこう前に『しんかい6500』とか超えちゃって、中国のほうがより深く探査できるようになって。

生田:そうなの? しんかいより行ってんの?

中川:ぜんぜん。もう何年も経ちますよ。しんかいよりも行っちゃってますよと。宇宙領域は、さっきも言ったように独自の宇宙ステーションですよね。それから月面行ってます。

:国際宇宙ステーションは、国際合意が2022年までかな。最近になってトランプがやらないと言い始めてるので、もしかしたら中国の宇宙ステーションしかなくなるかもしれない。オレは残すべきだって言ってるんだけど。日本は中国の衛星が何を目的に上がっているのかという監視を今までしてなかったんですよ。だから、これからするようにしますという法改正を今してます。

2018年に中国版GPS「北斗3号」が稼働

中川:軍事なんかでも宇宙が関わってきてて、量子通信衛星なんかもあるんですが。今年『北斗3号』というのが稼働するんですけど、これって中国版のGPSなんですよ。今までGPSを持っていたのは、アメリカとロシアと欧州だけだったんですよ。ただのGPSかというと、中国が持つってことは、それって全部ドローン技術に入るわけですね。

要はアタックにも使えるんですよ。逆にいうと、今までは中国はそれができなかった、というか実際にはできるけどやらないですよね。GPSが自前じゃないから。だけど、今年『北斗3号』を稼働するということで、全方位が観測できる衛星が上がってしまう。

それで宇宙領域もやばいですねということです。サイバーは、さっき言ったようにビッグブラザーのところでまた、詳しくね。

:これからは本当に国と国が戦いになったときは、サイバー空間と宇宙空間でほぼ決着しちゃうわけよ。

生田:決着しちゃうの。そうなんだ。

:例えば、ドローンなんかもGPSでやってるでしょ。中国の衛星が、日本の衛星も含めて、衛星から衛星を攻撃してそれを落としてしまえば、もうGPSが利かなくなるんだよね。コンピューターはみんな繋がってるから、サイバー攻撃で指揮命令系統をぶっ壊してGPSをぶっ壊したら、いくら戦車持ってようがいくら戦闘機持ってようが、かなわないんですよ。

だから、今は陸海空ってあるけど、実は自衛隊はサイバーと宇宙空間を別途作ってやらないと。今の予算は、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊から、それぞれ「こういう装備が欲しい」というのがくるから、宇宙とかサイバーは後回しになっちゃう。

それで、財務省なんかは、宇宙の予算は便宜的に航空自衛隊からあげてください、空だし、みたいになるわけよ。それはさすがにダメなんで、組み直しましょうということになってます。

ガラパゴス化したことで力を蓄えた中国

中川:さっき言ったように、Alibabaは民間ですら2兆円ですからね。国の安全保証予算だったら、どれだけかけてるのかっていうね。

:国(日本)は、防衛予算がトータルで5兆ですから。

生田:ちなみに日本はおいくらぐらいなの?

:だから、国防予算全部で5兆ですよ。

生田:ああ……ね。

中川:AIだけで民間で2兆ですから、というおそろしさですよね。だから、価値観的には絶対向こう(中国)には住みたくないというのはあるけど、対峙する外から見た場合の強さは知っておかなきゃいけないですよ。

:こういう状況下で、限定的な集団的自衛権も戦争に巻き込まれる可能性があるから絶対だめだっていう感覚がもうわかんない。

生田:まったくだよ。

中川:かたや憲法変えちゃうわけですからね。

:なんでもできちゃう。

中川:言論統制が情報統制へ、サイバー空間主権。これはさっき言ったような言論統制のための話なんですけど、これは細かいんで言いません。時間もないんで。政治主導で巨大なガラパゴス化というのがガーっと書いてあります。

生田:日本のガラパゴス化と桁が違うからな。

:人も多いしね。

中川:結局、(中国の)ガラパゴスのいい部分は、日本だと、ガラパゴスにしたあとにフタを開けて外に出てみたら小さい鳥でした、っていう状況なんですけど。中国の場合でっかいガラパゴスだから、中開けたらでっかい恐竜が出てきました、という状況で、世界に勝っちゃってるんですよ。だから、閉鎖してたことが逆に良かったケースになってしまった。

:だから頭がいいんですよ。国家資本主義の人たちはこれをFacebookとかLINEとかを入れないで、守ってパクって入れたから本家よりも巨大になってきて、しかもお金が集まるから研究開発何回ももっと進めるっていう。

生田:よし、俺wechatやめよう。俺がやめたからって何にも起きないけど。

(一同笑)