副業解禁元年による変化

村上臣氏(以下、村上):ここから最後ラップアップになりますが、今後重要なトレンドは何か。これもビジネスの具体的な事例はあえて載せていません。シェアリング・エコノミーだとか、Airbnbとかいろいろあると思うんですが、本質的にそれはどういうふうに社会にインパクトを与えるかをお話していきます。

3つありまして、ハコ(会社)からヒトへという流れと、ストック(資産)からフローへの流れ。あとは、本位制の揺らぎから多様化へ。これはちょっと難しい話なので、あとでさっと触れます。

1番大きいのはここ(「ハコ(会社)からヒトへという流れ」のスライドを指しながら)かなと思いまして、今年は政府いわく「副業解禁元年」ということで、2018年4月からモデル就業規則とかも変わって。つまり、雇用の体系がちょっと変わってきます。

今までの会社は新卒採用しかしていなかったんですね。大学を卒業すると一括でバサッと採って、企業が育てますと。僕はいわゆるメンバーシップ型の雇用と言っていますが、一生懸命育てて一生面倒を見るかわり、定年まで勤めあげてねという形。要は会社にすべてコミットすると定年までいて、年金もらえてハッピーというような形でした。

かたや欧米を見てみるとロール型でして、ある職能スキルの中で、こういろんな会社を飛びながら、スキルを上げていく。育つも育たないも自分の方がオーナーシップとしてやっている。日本の場合は、会社で教育も含めてやっていたのが、分業体制で自分でどうしたいかというところで、必要があれば社会人でMBAだとか、必要な教育を受けながらキャリアを積み重ねていくということです。

それで今、世の中ではFacebookとかソーシャルネットワークサービス(SNS)が流行ってますよね。要するに、どの会社に勤めているかよりはどういう人かという方に大きな流れがきているのが今だと思います。自己紹介でいうと、まだ会社名が先に出る人が多いと思うんですが、どっちかというと先に名前が出てくる、前は何をやってきたのかという話に変わってくる。

副業解禁になると、やはり転職というとなかなか腰がひける話なんですけど、まあいろんな人って多様なスキルを持っているわけですね。ただ、人が転職を考える理由は、だいたいが上司と折が合わない。これは6割ぐらいなんですよね。残りは自分が成長できていないとか、与えられている役割とのミスマッチが起きているとかが3割ぐらいだと思います。

人は多様な技能を持っている

それで、なんでミスマッチが起こるかというと、メンバーシップ型の雇用には組織の論理というものがあるじゃないですか。「営業部なら営業をやってください」みたいなところが。そこにコミットすれば営業マンとしていくんですけれども、別のところにいったら分からない、通用しないスキルです。

ただ、営業のスキルといえば対人・コミュニケーションスキルができるとか、お金の計算ができるとか。例えばそういうのってパートナーシップとか、いわゆるビジネス開発に必要なスキルだったりすると。なのでスキルベースで考えてみると、あまり部署って関係ない、複数の部署をまたがれるような共通のスキルってあるわけですよ。

こういったものは与えられた役割と自分の持っているスキルが100パーセント合致していると、その職業に満足するんですよね。それがずれはじめてくると、会社に求められていることを自分の持っているスキルでこなせなくなってきて、けっこう上司からもっとやれって言われて、だんだん辛くなってくるという話です。

もしくは、営業マンで「むちゃくちゃ歌がうまいです」、「カラオケもむっちゃうまいです」というのは、会社の飲み会でちょっと発揮できるかもしれないですが、プロレベルに歌がうまい人でも、それで会社でお金はもらえないですね。ただ副業として、夜どこかで歌ってお金がもらえることは当然あるわけです。ピアノが上手い人が、バーのラウンジとかで弾いてお小遣いを稼ぐのはOKです。

やはり人って多様な技能を持っていますので、100パーセントなんらかの形で社会に活かせた方が、世の中のハッピーが増えると思う。僕はそういう方針で、副業解禁には大賛成なんですが。

僕自身もいろんな職業をやっています。ですので、ぜひみんながそうやって、自分がどういったスキルで社会に貢献できるか考えていただけると、世の中が楽しくなるなというのでワクワクします。

これは寿命が延びたこともありますよね。人生100年時代と言ってますので。60歳、70歳になった時に、どう生きたいかというところです。これは、今までと同じ働き方よりは、違う面で社会に貢献していくことが必要じゃないのかなと思います。

シェアリング・エコノミーが生まれた背景

あとは、いわゆるAirbnbやUberみたいに、ストックからフローへと。今もそうかもしれないですが、昔は家とか車とかは資産でしたよね。また、終身雇用の前提で考えられた金融商品、いわゆる住宅ローンですね。これは当然緩やかなインフレがずっと続くとか、そういった社会の前提でカスタマイズされているんですよ。これは、高度経済成長期に作られた社会の前提のフレームがあって、その前提でしかワークしないものだと思います。

なので、要は地価が下がったらローンを払い終わっても、家の資産は当初払っていたよりも安くなっちゃうわけじゃないですか。それはもはや資産ではないのじゃないかという話です。社会が変わる上で、こういった遊休の資産をどんどんサービス化していこうね、シェアリングしていこうね、という中で生まれたのが、いわゆるシェアリング・エコノミーです。

車なんかも、日本でいうと自動車の稼働率は10パーセントを切ってるんですね。5パーセントや6パーセントと言われている。週末しか乗らないとかありますよね。ほとんど駐車場に停めるコストを払っている。これって、ものすごい社会の損失ですよね。

ちなみに自家用車は日本に7,000万台ぐらいあるんですが、その95パーセントぐらいが稼働していないというと、なんだろうと思いますよね。こういったものを、使っていない時に誰か使ってくれれば貸すよということで、例えばディー・エヌ・エーさんがやっているAnycaというサービスのようなものですね。

信用が揺らぎはじめている時代

あともう1つが、ブロックチェーン、ビットコイン的な話をします。ブロックチェーンやビットコインがなぜこんなに騒がれているのかをちょっと説明したいんですが、これも社会の信用の話なんですね。国家という制度、もしくは昔でいえば金本位制ですよね。金の価値は落ちないから、金と連動した何かだったら通貨として適用できるよねということで始まったのが、いわゆる管理通貨制です。こういう希少金属から国というものに信用を移したんですよ。

つまり、アメリカという国は信用できるからドルは信用できるだろうということです。そういうことで始まったのが、管理通貨制度です。今はやはり先進国、安定している国、信用が高い国が買われているようなところです。つまり、通貨はそもそも信用で成り立っていること。信用というのは、何を信用するのかという話ですよね。これが新しい時代で多少揺らぎはじめているのが今です。

そこに出てきたのが、ビットコインやブロックチェーンです。分権型に変えて、いわゆる国家という中央集権的なものからみんなで信用を担保すればいいんじゃないっていう。極論を言うとそういうことです。

ブロックチェーンは、何か中央のサーバーみたいなものがあって、そこで管理しているわけじゃないんですよね。Rippleだけはそれをやっていますが。基本的にはみんなで台帳を持ち合うことで、誰かが嘘をついても、周りの人が「お前、嘘をついただろ」と言える。ざっくり言うとこれがブロックチェーンです。

みんなのコミュニティーでその信頼を担保しましょうねというもの。なので、国家みたいなものなんていらないよね、中央集権いらないよね、というシステムです。これは、やっぱり国家の信用がなくなってきている国がけっこうあったり、そういうトレンドの中でテッキーな人が考案した1つの仕組みです。

これは通貨に応用しようとすると、やっぱり今のシステムを根本的に変える話になるので、非常に社会的インパクトがあるだろうと言われている。今はそういう通貨的なアプリケーションしかないですが、投機的な話で、上がった、下がった、売り買いして儲かった、というのはわりとどうでもいい話であって。

これはやはり契約に導入したり、信用がベースになっているもの。企業間の契約や個人での契約でもあると思うんです。要は、そういったものに関しては基本的に全部応用できるものだと思いますので、これも非常にインパクトの大きな話です。

最後に、ソフトウェアというのは避けては通れない、今も進んでいるものです。いろんなものを利用して世界をプログラミングし直すというのが、巷で言われている「新基準」とか「イノベーション」だと思います。音声入力ができたり、僕はマシン側が人に寄り添ってきていると思うんですが、人もマシン側に寄り添ってあげる。「お前、どう考えているんだ」という話ですよね。

人間関係と同じですが、(マシンが)どういうロジックで考えているかを多少なりと理解すると。それを理解する一番いい方法がプログラミングなので、ぜひ第2部(プログラミング体験)をやられる方は、機械がこういうことで動いているとちょっとでも体験してもらえればいいかなと思います。ということで、ありがとうございました。

司会者:村上さま、本日は貴重なお話ありがとうございました。みなさま、今一度、盛大な拍手をお願いいたします。

(会場拍手)