春までの冬眠中には何が起こっている?

ステファン・チン氏:動物たちは冬から春まで冬眠に入ります。この季節は知られざる動物の生態を垣間見れる、うってつけのチャンスです。

人間は寒ければ、余計に1枚着こんだり、暖房の温度を上げたりします。かたや動物たちは、極寒の季節を冬眠によって生き抜いています。冬眠は全身活動を一時的に弱くして、また新陳代謝を低下させます。動物の体温は氷点下まで時々下がり、快適とは感じられないまでの状況になります。

冬眠をする動物はこの過酷な状況にどう対応しているのか。動物たちが寒さに耐えることができる能力の秘密を、イェール大学の生物学者が研究しました。ゴールデンハムスターや縞模様が入っているジュウサンジリスなどの冬眠するげっ歯類と、ハムスターなどの冬眠しないげっ歯類の間に何が起こっているのかを実験しました。

まず研究者たちは、実験対象を皿のある温度管理された2つの部屋に入れ、それぞれの皿で過ごす時間を測定して、動物たちが好む温度を試しました。1番目の部屋は30℃になるように設定し、2番目の部屋は氷点下付近の温度です。

冬眠する種も冬眠しない種も、ほとんどのネズミが暖かい部屋で動かなくなりました。かたや、冬眠する種類のネズミは、2番目の部屋が5~10℃と非常に寒くなるまで気にしません。これはプロテインを体内から除去する遺伝子「TRMP8」を取り除いたネズミと非常に似た結果でした。

つまり、プロテインが冬眠する動物になんらかの関係があることが予想できます。TRMP8 は、冷気に反応する遺伝子です。イオンを細胞に流入させることで、信号を脳や脊髄に伝達する役割のイオンチャネル(注:受動的にイオンを透過させるタンパク質の総称)です。

また、このイオンチャネルは人間と同じく冷たさを感じる、ミントオイルの分子であるメントールや過冷却の化学合成物質であるイシリンに反応します。

人間が寒さを感じるのはレセプター(注:細胞の機能に影響を与える物質の一種)を利用しているからです。研究者は、冬眠する動物は寒さに反応しないため、レセプターが少ないと考えました。

ネズミと同じく、リスやハムスターのレセプターはそれほど寒さに敏感ではありません。同じイシリンに反応したため、それぞれのニューロンは機能していることになりますが、冬眠する動物のニューロンに関しては、寒さにさほど反応しないのです。

追加の実験によって、気温差を検知する感覚がプロテインの中にある6つのアミノ酸に由来することが明らかになりました。

一方、リスやハムスターは10℃以下でなぜ凍え始めるのかがわかってはいません。今のところ、研究者は冬眠のための分子が作用していると結論づけています。