スーパー銭湯や温泉と競い合っても仕方がない

質問者4:今、小杉湯で、1日300〜400人ぐらい来られている。

平松佑介氏(以下、平松):はい。

質問者4:そうすると、単純にキャパシティ的な問題は出ちゃうと思うので、そこの入湯料以外でどうやって収益を上げていくのかみたいなプランとか。

あと、そもそも今ってスーパー銭湯みたいなものがあったり、銭湯と銭湯以外の線引きってどこにあるのか、ちょっと僕はよく知らないんですけれども、銭湯って結局、組合で料金が決められたりとか、公衆浴場法ですか、そういう法律とかでいろんな制約とかあるじゃないですか。

そういう中で、小杉湯みたいにいろんなことをやっている銭湯も、たぶん昔からの同じような料金で提供されていて、そのなかで銭湯というなかでやっていくメリット、デメリットみたいなものってなにか……。

平松:公衆浴場として、銭湯でやっていくメリットとデメリット。

質問者4:例えば、単純にもっと料金を上げるとか、そういういろいろなことが枠組みを外せばできると思うんですけれども、いわゆる銭湯という枠組みの中でやっていくそのメリットを。

平松:いろいろ考えたんですけど、ないかなという気がしてます(笑)。

というのは、けっこう銭湯経営者の方達から「バブルの後にスーパー銭湯が増えてスーパー銭湯の認知度が広がって、1,000円とかそれぐらいの料金でサウナに入れたり露天風呂に入れたりみたいなのができちゃったから、銭湯はつぶれちゃったんだ」と言う声を聞いたりします。だから、銭湯経営者はスーパー銭湯を目の敵にしてる人はいるんですけど。

でも、実際に今、先ほど話した小杉湯はレジャーの感覚で若い人が入りに来てくれているというのは、スーパー銭湯が開拓してくれた領域だと思うんですよね。

僕らがこれから銭湯側としてやっていかなきゃいけないのは、銭湯とスーパー銭湯とか温泉とかと競い合っててもしょうがないので、そうではなくて、要は銭湯のある暮らし、家にお風呂はあるけれども外の温浴施設に行くという人を増やす必要があると思うんですね。

銭湯入り放題モデルは確実にOKはもらえない

平松:それは銭湯もスーパー銭湯も温泉も同じだと思うので、あんまりそこは関係ないかなという気が今はしています。外でお風呂に入る人を増やすとう考え方であれば、銭湯もスーパー銭湯も温泉も同じ仲間だと思うんです。あとは、銭湯単体のビジネスモデルとして収益をあげていくみたいなところは、観点としてはすごく大事なので。そこは直樹が。

伊藤直樹氏(以下、伊藤):おっしゃるとおりで、箱物なので人数のキャパはあるので、僕がプレゼンで言ったとおり、やっていない時間の活用とか。あと銭湯って、平松さんもそうですけど、不動産のリソースがあったりするので、そこを使って。

すでに商圏が決まっていて、そのキャパも決まっていて、入浴料というところだともしかしたら上限が来ちゃうのかもしれないですけど、そこ以外をどう増やしていくかというのが重要なんじゃないかと思っています。

質問者4:さっき加藤さんが言っていた入り放題みたいなものは、法律的な問題は?

伊藤:いや、もうめちゃくちゃありますね、それ(笑)。

平松:はい、あの、めちゃくちゃあります、それ。

質問者4:これからクリアしていく?

平松:そうですね。厚生労働省が出している最新の浴場業の振興指針を見ると、サービスの見直しとして「割引制度の実施」と記載されているんです。銭湯は厚生労働省管轄なので、本来であれば厚生労働省が発しているメッセージがいいわけじゃ……いいというか、もうそれは大事じゃないですか。だけどやっぱりその中で長年培ってきた、みんなでやってきたという文化や風習は強いので……うん。

(会場笑)

地域とどう関わり、どういう関係性を築いていくか

加藤:ちなみに、銭湯付きアパートというのは入りたい放題じゃなくてもいいかなと思いますけども。

平松:ああ、確かに。

加藤:銭湯券を配って、その分毎月の家賃の中に入ってるというブランディングはありえるかなと思います。

質問者4:Airbnbもそうですね?

加藤:うん、Airbnbもそうですね。宿泊料に含んでいます。

質問者4:なるほど、わかりました。

平松:ありがとうございます。あと、ぜひじゃあ。

質問者5:けっこう外から人を呼び込むみたいな取り組みが多いかなと。ちょっと途中から来たので、もしかしたら合っていないかもしれないですけど、もっと高円寺周辺でこう、つながりを強くしていくみたいなことをやられているかということと。

あと、私個人としてはエネルギーという切り口を持っていて。

平松:エネルギー?

質問者5:高円寺は無理でしょうけど、山で捨てられている間伐材みたいなものを使ってお湯を沸かすという、バイオマスエネルギーみたいなことに関わっていて。

平松:ああ、いいですね。

質問者5:目の前の山からお湯を沸かせるというのをやってるんですけど、まぁそれは高円寺では難しいと思いますけれど、熱源はなにを使っているかを教えてください。

平松:あ、熱源はガスです。

質問者5:都市ガス?

平松:都市ガスです。

伊藤:わりと普通(笑)。

質問者5:ありがとうございます。

平松:でも、その前段の質問がすごくいい質問だなと感じていて。地域とどう関わる、どういう関係性を築いていくかというところですね。

銭湯はやっぱりその町の縮図だと思うので、小杉湯がやっていることというのは高円寺の銭湯だからうまくいくやり方だと思うんです。小杉湯でやっていることは、ほかのエリアではまた違うやり方になると思うんですね。それぐらい町との相関関係とか、町の人との相関関係ってあって。

そのあたり、高円寺でこれから僕が銭湯をやっていくという上でいくと、あんちゃんの活動とかすごく僕はいい影響を受けているので、ちょっとあんちゃんお願いします。

町全体で外から人を呼び込もうとすると、結束力が高まる

大黒健嗣氏(以下、大黒):コミュニティの外に発信していて、内側のことがないがしろになっているというか、どういうやり方をしているかという質問に対してなんですけど。町という単位でみんなで協力して外の人を呼び込もうという動きをすると、内側は勝手に結束力が上がって盛り上がっていくので、それでいいと思っているんです。

やっぱりそういうかたちで外側を意識することで、内側に平和がもたらさせるという感覚というのは、たぶんこれからもっともっと広がっていく感覚だと思いますし。内側の人と直接やろうとするといろいろ難しかったりするんですけど、外というものを設定すると目的意識が一緒になるので、そこで銭湯に入るとか、なんでしょうね、結果的にそうなるみたいなところはけっこう信憑性のある話だし。

ホテルをやっているので、ホテルもクリエイターたちと一緒に外の人たちを呼び込むことで、そこでのコミュニティの結束が高まったという感覚が実感としてもあって、それは1つの解かなと思います。

平松:ちょっと壮大な夢を持ってる子がいるので、聞いてもらってもいいですか(笑)。エネルギーで。

質問者5:エネルギーのほうで。

宮早希枝氏(以下、宮):私の夢じゃなくて、私の夫の夢なんですけれど。私の夫もバイオマスエネルギーに関わっていて、飛騨高山の「鷹の湯」さんという銭湯があるんですけど、超絶にイケメンのおじいちゃんがやっている銭湯で。

飛騨高山は林業が盛んだったんですが、林業が廃れてきていて、なんで廃れてきているかというと、木を切ったあとの廃材を使う道がないからで。それをパルプっていうすごく小さい木のチップにして、それを燃やしてお湯を沸かして銭湯を経営して、かつ、自分でゲストハウスをやって、泊まる銭湯と銭湯経営とパルプ会社を一緒にやっているみたいな、すごくすてきなおじいちゃんなんですけど。

平松:すごいね、それ(笑)。

:すごくイケメンなんですよ、鷹の湯さんといって。そのモデルは、私はすごく銭湯的には新しい未来のモデルだと思うし。

飛騨高山の「鷹の湯」は新しい銭湯のモデル

:日本ってエネルギー自給率というか、国内におけるエネルギーの消費量が、たしか世界で5番目ぐらいなんですよ。アメリカとか中国とか人口がぜんぜん違う国と比べても、ものすごくエネルギーを使っている国で。

そんな国が、どれぐらい自分たちでエネルギーを作っているかというと、たしか100パーセント中9パーセントぐらいなんです。だから、ほとんどエネルギーを海外から買っていて自活できていないという問題があって。ちょっと銭湯と関係ないんですけど。

ただ、日本って海外からみるとすごく災害大国で。地震もあるし、地震があったら今度は津波がきて、津波があったら山火事が起きてみたいな、「そんなところになんで住んでいるの?」という人もいるような環境でもあって。。

その人たちが自分でエネルギーを作れないというのは、すごく私は今問題だと思っていて。じゃあ、自分でどうやってエネルギーを作っていくかって考えると、けっこうバイオマスというのは、これからすごく可能性があるものなんじゃないかなと思っています。

日本は面積を占める森林の割合というのがすごく多いので、それを使って自分たちでエネルギーを作れる未来が来たら、地震が起きても、ちょっと、ログに残るのはあれなんですけど、1社から一括に提供されるんじゃなくて、自分たちで自分たちが使うエネルギーが作れたら、それは素敵だなと思っていて。

それと、日常で必要であるお風呂というのはすごく密接な関係にあると思うので、銭湯のバイオマスの関係というのは、鷹の湯さんのモデルを起点にこれから増えていくんじゃないかなと思って期待をしています。

質問者5:私もやっぱりいろんなところで、全国、日本全国の田舎みたいなところでバイオマスをやりたいと言うと、だいたい「うちの村にはこの温泉があるからそこで使おう」というふうに。

:そうなんですよね。お湯を沸かすという。

質問者5:でも、やっぱり地域のつながりって温泉……そこで「年末年始だと人がすごく来るんだよ」みたいな話をしていて。

:熊本の銭湯も、震災があった時に真っ先にお風呂を開いて被災者を受け入れたとか、けっこう災害とお風呂というのもすごく密接だし、そこにエネルギーもきっと関わってくるだろうし、たぶん東京のモデルでやるというのはまだまだ時間がかかるとは思うんですけど、逆に地方の銭湯とそういうバイオマスというのは、すごく可能性があるんじゃないかなとは思います。

質問者5:ありがとうございます。

:ぜんぜんロジックがないのであれなんですけど。

銭湯のほうからやってくる「旅する銭湯」

平松:いい質問をありがとうございます。はい、ぜひじゃあほかにもどなたか。あ、ありがとうございます。

質問者6:あ、よろしいですか?

平松:はい。

質問者6:今回は楽しい話を聞かせていただきありがとうございます。ちょっと銭湯ぐらしの、今回出ていない方の話で恐縮なんですけれども、移動する銭湯の話をお聞きしたくてですね。

やっぱり今までの銭湯のモデルとしては、来てもらわないことにはどうにもならなかった。

平松:そうですよね。はい。

質問者6:それをこっちから行けるということが、すごくおもしろいなと思ってまして。それに対して、今サウナ文化のほうが盛んになってきて。例えばモバイルサウナというものを湖のところに持っていって、そのサウナを浴びて湖に飛び込むみたいなことを望んでいる方たちもいらっしゃるんですね。それはフィンランドの方たちで。そういうものに対して、移動する銭湯というのはどういう夢を描いているかというのをちょっと。

平松:おお、それ、そのまま彼に伝えておきます。それを(笑)。

(会場笑)

「旅する銭湯」は現在も旅を続けている

平松:移動する銭湯というか「旅する銭湯」というのをやってるんですけど、卒業が決まった学生で「旅が大好きで銭湯が大好きなので、旅する銭湯をしたい」って僕らにプレゼンをしてきて。どうやってやるかと聞いたら、「軽トラに銭湯機能を設けて、いろんなところを旅していろんな人にお風呂に入ってもらうんだ」って言って、旅立っていきました(笑)。

(会場笑)

質問者6:衛生面とか、お湯が循環できないじゃないですか。あれってどうなんですか?(笑)。

平松:それは、ぜんぜん考えていないと思います。

(会場笑)

質問者6:なるほど。じゃあ、これからの課題……。

平松:ただ、本当におもしろくて。本当にいろんなところへ行っていて。

伊藤:飛騨高山に行ってましたよね。

平松:飛騨高山も行ったし。

質問者6:Twitterを見させていただくと、けっこうあちこち(笑)。

平松:今のところまだどこかを旅しているので(笑)。でも、記事を1本書いているんですけど、彼の「旅する銭湯」というかたちで、銭湯と、自分がいろんなところに行くという切り口でやった時のその彼の感覚というのは、すごく大事なものになると思うので、それはまたWebを通して発信しますので。

質問者6:あ、お願いします(笑)。

平松:はい。ありがとうございます。