分析機器の導入、実施事例を紹介

金津豊氏(以下、金津):では、THKの松本様にバトンタッチさせていただきたいと思います。では、よろしくお願いいたします。

松本訓己世氏(以下、松本):こんにちは。THKの松本と申します。本日は分析機器を用いた社内での取り組みについてお話しさせていただきます。

まず会社について簡単に紹介をいたします。今私がおりますTHKですが、直動ガイドなどの機械部品の製造・販売をしております。私は本社と、羽田空港近くにあるテクノセンターというところで業務を行っております。

弊社の主な製品になりますが、直動ベアリングでありますLMガイド、あとはボールねじ、ボールスプライン、アクチュエータなどがありまして、こちらは工作機械や半導体製造装置などに使用されております。またほかにも、こちらのような自動車部品や免震装置なども手がけております。

ここからは私が行っている業務について紹介いたします。所属部署での主な業務になりますが、開発に関連する製品材料の分析・調査になります。

主要製品でいいますと、部品の材質は主に金属部品と樹脂・グリースに分かれますので、金属のような無機物は、元素を検出するような分析装置を用い、樹脂やグリースのような有機物は、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)などを用いて材質の特定を行っております。また観察業務は、EPMA(電子線マイクロアナライザ)やSEM(走査型電子顕微鏡)などで行っておりまして、樹脂などの場合はとくにこちら低真空機能がついたSEMで観察業務を行っております。

私は転職してこちらに入りました。入社するまでの経緯ですが、転職活動をしておりまして、その際にちょうど分析機器に詳しい人を募集していると聞いて応募したのがTHKでした。

先ほど少し紹介しましたEPMAを導入するという話でしたので、今までの職歴と使用した分析機器について説明し、またSEMの使用履歴もけっこう長かったこともあって、採用していただきました。

実際入社してみますと、まだEPMAは導入されておりませんでしたので、装置の最終仕様の決定と稟議、決済、導入というのがまず入って最初に仕事となりました。

分析についてですが、化学的な分析装置というのは社内にあまりなかったので、化学的な分析が必要になりますと分析メーカーにそれぞれで依頼するという環境でした。私から見るとそこはせっかく採ったデータがみんなそれぞれ点在していてもったいないという感じがありました。

今回こちらの装置を導入していただきましたので、当面の目標としましては、社内に有用なデータの蓄積と、装置の稼働率を上げることとし、業務に取り組んでまいりました。

ここからは実際にどのようなことを行ったかの事例紹介になります。こちら金属の加工方法でワイヤーカットという方法があるのですが、このデータはその加工面について分析したものです。

ワイヤーのパス数で違いがあるかどうかという調査だったんですけれども、実際に分析してみますと、パス数が多いほうがワイヤー由来の元素である銅と亜鉛が少なくなっているということがこの分析からわかりましたので、これをわかりやすく示すように、元素ごとの面分析というもので表示しております。

またパス数が多いほうが、こちらのように表面粗さが改善しているというのがSEM像からもわかりますので、これらを合わせて表示することによりパス数が多いほうが改善できるということが視覚的にアピールできるようになりました。

次に分析データを蓄積して活用している事例になります。実際は依頼の分析が多いんですけれども、合間にちょっと時間がありますのでその際に取り組むことを考えておりましたところ、部内では各部署で他社品を定期的に購入して調査しているという話を聞きました。これをもらって材質を調べてみようということで調査を開始しました。

金属部品はEPMA、樹脂部品はFTIRで分析し、部品の材質を特定してそのデータを蓄積しております。データが蓄積されますと、経年で材質を変えているかどうかということもわかりますし、試験データをその他にも採っておりますので、それらと組み合わせることによって、耐久試験と材質の関係や地域による材質の特性など、いろいろな組み合わせが分析データからできますので、これで蓄積データによる活用ができる仕組みの1つとなりました。

以上、THKに入社してからの分析機器の導入、実施事例について簡単に紹介させていただきましたが、その際に気をつけてることはこちら4点です。

分析装置で必要とされるデータを採る。採ったデータは蓄積し、その後も活用。また、裏付けのある正しいデータの採取を心がけて嘘はつかない。あとは分析装置でできることを社内の方にアピールするという分析の布教活動を行いまして、これらによって分析に対する信頼という実績を積み重ねてきたと思います。

以上、いろいろ自分が行ってきたことように紹介してまいりましたが、実際のところは、困りごとを分析で解決できないかと相談してくださるのは社内の方々でありますし、また有用な情報を教えてくださるのは分析装置メーカーの方々だったりして、周りにいる方々のちょっとした情報や助けによってここまでの積み重ねができたのだと思います。

自分で調べてきちんと根拠を持つということも大切ですが、周りからの情報には自分にない発想や視点が含まれており、なにかのきっかけになったりします。いろいろの方や情報に触れる機会があればぜひ大切にしてもらえればと思います。以上、ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

“布教活動”の重要性

金津:どうもありがとうございました。布教活動というのはすごく印象的ですよね。はい、みなさんからどうぞご質問あれば。手が挙がりました。真ん中の方お願いします。

質問者8:発表ありがとうございました。社内でデータ蓄積が部内に点在しているというお話があったんですけれども、自分のところでもけっこう分析をしたデータが各部署に点在していてそれを集約するというのがどうしたらできるのかなと思っていたところだったので、なにか取り組んでいる事例を教えていただきたいなと思います。

松本:取り組んでいることといえばまさにこの布教活動です。たぶん分析がここでできるということを知らないとみんなそれぞれで頼んでしまうので、やはり「ここでこういう分析ができるよ」ということをしっかりと周りの方々に広く認識してもらうのを大切にしております。なので自分だけじゃなく上司とか周りの人も巻き込んでやっていけばいいのかなと思っております。

質問者8:周りにいる方々というところで、やはり大切だなと思いました。ありがとうございました。

金津:ありがとうございました。ほかにはいかがでしょう。はい。右手、奥の方。

質問者9:ご講演ありがとうございました。布教活動というところ、僕も印象に残ったんですけど。社内に新しくこういうことを起こそうとしたときに、「今までうちはこういうやり方をやっていた」というのが部署ごとにバラバラで、反対勢力みたいな人たちが出てこないかなって。実際、僕のところはちょっと起こってるんですけど、その人たちはどのように交渉していくのかという、なにか術があれば教えてください。

松本:ありがとうございます。なかなかちょっと大変そうな話だと思いますが(笑)。確かに分析装置を布教活動しているときに、さすがに反対勢力に会うことはなかったので、なんとも言えないんですけれども。

でも、やはり実際に会ってみて話をしてみたりすると実は話が合ったりということもあるかもしれないので、敵対しているからといって話をしないとかではなく、なにかうまくコミュニケーションを取れる術みたいのを探してみたらいいのではないかと思います。すいません、なんかこんな話で。

質問者9:いえ、ありがとうございました。

金津:ありがとうございました。中央の方ですね。お願いいたします。

質問者10:本日は貴重なお話ありがとうございました。正しいデータを採取し裏付けをとることとしまして、どうようなかたちでその裏付けをとっているのかについて知りたいと思って質問しました。お願いします。

松本:分析する内容にもよるんですけれども、やはり標準品でのデータをもう確実に合っているというふうにとれるように、常日頃から環境を整えておくということと。

あとは測っているうちにどんどん変わってきてしまうという可能性もありますので、それを定期的に確認して、確実に正しいデータが採れているということを確実に定期的に確認していくというのを今やっております。

質問者10:ありがとうございました。

金津:よろしいでしょうか。松本さん、どうもありがとうございました。この布教活動を僕もメモっておきたいなと思いますけど。逃げないで話してみるってそんな感じですよね。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

世界最高精密技術のその先へ

金津:さあ、どんどんまいりましょう。では、ニコンの田中様、前のほうへよろしくお願いいたします。

田中さゆり氏(以下、田中):みなさん、こんにちは。株式会社ニコンの田中さゆりと申します。本日は私が入社してから今までで感じてきたことをみなさんにお伝えできればいいなと思っております。

ここにいらっしゃるみなさんはすでにご存知かと思いますが、半導体露光装置とは、集積回路、いわゆるICチップをたくさん作る機械です。初めての方は「なんでニコンが作るの?」「ニコンってカメラの会社じゃなかったっけ?」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、実はカメラの原理や技術を利用して作っています。

実際の装置は、3.3メートルととても大きい装置になっています。この中にたくさんのレンズが入っていて、そこに光を通して、レンズを通ってウェハに細かい線を描いています。私はこのなかで、ステージを素早く正確に動かす必要があるんですけど、ここのいかに正確に計測するかとか正しく動かすかというところのシステム開発をやっています。

私が入社した2006年ぐらいは、位置の計測といえば干渉計という時代でした。対象物に移動鏡と呼ばれる鏡を取り付けて、そこに光を当てて計測光と参照光の位相差から距離を測るものです。とにかくシンプルで使いやすくて長年使われてきたんですが、測長距離が長いと揺らぎなどの環境変化に弱くて、補正をがんばっても2ナノ程度の計測しかできませんでした。

微細化が進むなかで干渉計の限界がちょうど迫っている時期でして変革期となっていました。そこで新しく導入を検討されたのがエンコーダと言われる計測センサーです。メリットは物体までの距離がすごく短いこと。回折格子を、光を当てて距離を測るんですが、距離が短いのでとても揺らぎに強いです。その分容易にサブナノが測れるようになりました。

ただ、たくさんのセンサーが必要で大所帯となるので、補正ががんばらなきゃいけないとか、システムもいろいろ新しいものを考えなくてはなりませんでした。ただ重ね合わせ精度2ナノ以下を達成するのに必須の技術となるので、導入される検討を進められました。

新しく装置に導入することになったので、新しいものの新規開発の基礎評価というのから関わることができて、新規開発のいろいろな苦悩がありました。どんな特性があるのかとか誤差要因がなんなのか、センサーをたくさん切り替えて使わなくてはいけないので、その分の新しいシステムが必要になったりと、新しいものを導入するための苦悩はたくさんありました。

例えばいわゆる回折格子の歪みというのがあるんですけど、センサーごとに違って見えたり、気化熱の影響を受けたり、動き始めたら変わってしまったり、さまざまな困難がありました。

それに対して、データ処理を工夫したり、再現性を確保するために計測方法を工夫したりいろいろ試したんですが、なかなか理論どおりに進まないところ、できることを全部やっても残った誤差には、アプローチを変えてみるということをやってみました。

例えば動くと変わる誤差がある場合、今までは計測して補正していたんですけど、どうしても補正している間に遅れが生じてしまって補正誤差が残っていました。では常に動いていたら? ある程度変化が常態化するので動いている状態を基準にして補正することができました。

地道な基礎評価と発想の転換でこうしたエンコーダが世に出ました。それによって新しい機種で精度が改善されて重ね精度も安定性も大幅に改善することができました。

ざっとエンコーダ導入の歴史を見ると、私が入社したと同時に運良く検討から参加することができて、試作機でいろいろな実験をして、初号機導入から現在まで続いています。

みなさんに一番なにが伝えたいかというと、やらない理由はたくさんあります。理屈が不明だったり、「失敗するかも」「今まで誰もやったことがない」などたくさんあるんですが、「やれることをやってみよう」というのが、私の経験上、一番大切だなと思ったことです。

今は露光装置の原理を利用して新しいことをたくさん始めています。ステージをすばやく正確に動かしたものだったり、光技術を応用したものだったり、子育てにも応用できる部分があるかなと思います。世界最高精密技術のその先へ挑戦していってるところです。

以上です。ありがとうございました。

(会場拍手)

数え切れないほどの失敗が違う場所で活きる

金津:どうもありがとうございました。子育てにも応用しているというのがまたいいお話でしたね。ご質問いかがでしょうか。どうぞご遠慮なく。どうぞどうぞ。

質問者11:ご講演ありがとうございます。とりあえずやれることをやってみようということなんですけれども、実際どれぐらいやれることというのをあげて、実際やってみるのはそのなかのどれぐらいになるのでしょうか?

田中:やってみた数ですかね。数え切れないぐらいたくさん失敗をしてきました。なのでちょっと数えることはできないんですけど、たとえそこで失敗しても、その失敗がそこで終わらずに違う場所で活きたりということもたくさんあったので、やってみてよかったというふうに感じた次第です。

質問者11:ありがとうございます。

金津:ありがとうございました。ほかにはいかがでしょう。

質問者12:講演ありがとうございます。地道な基礎評価ということが1つあがっていたと思うんですけれども、失敗もたくさんあるということで、なかなか開発のスケジュールが読めないような業務になってくるかなという印象を受けました。

製品化等も踏まえてそういったスケジュールは一番最初の計画の段階でどのぐらい綿密にされていて、その後の失敗等によるバックアップ、スケジュールの更新等はどのような感じで対応されているのかをお聞きしたいです。

田中:最初の試作機などを使った開発期間はけっこう長く取られていたので、工作するようなことも含めいろいろなことができました。ただなかなか新規なものなので思いどおりにいかない部分もあって、スケジュールどおりに運ばない部分もあったんですが、周りの方の協力を得られて納期には間に合うように周りの方にも協力していただけたと思っております。

質問者12:ありがとうございます。

金津:ありがとうございました。では最前列の方。

質問者13:お話ありがとうございました。先ほど誤差を補正するのに動いているものを基準にして補正するというお話があったんですけれども、具体的にどんなふうに動いているものを基準にして補正しているのかというお話をもう少し詳しくお聞きしたいなと思います。

田中:この部分は機密情報が入るのであまり詳しくは言えないのですが、焼付を防止するためにスクリーンセーバーが動いているようなイメージです。

質問者12:ありがとうございます。

金津:ありがとうございました。もうひと方。

質問者13:ご講演ありがとうございました。先ほど新しいアイデアを生み出すにあたって、新しいアイデアを生み出すにはどうしてもコストがかかってしまうものだと思うんですけれども、コスト面に関してなにか苦労したお話とかあればお聞きしたいと思います。

田中:コストに関してはなかなか携わるところにいなかったのですが、上司の方々がメーカーさんとやりとりしていただいて、一緒に開発していくという姿勢でメーカーさんにもがんばっていただいたと思っております。

質問者13:ありがとうございます。

金津:ありがとうございました。まだまだお聞きになりたいこともあるかと思いますが、またのちほどパネルディスカッションのときにご質問をいただければと思います。田中さん、どうもありがとうございました。

(会場拍手)

今後活躍するエンジニア像

金津:では5人目、最後の方でございます。日立ハイテクノロジーズ様の釜地さんですね。男性1人で心細かったでしょ。大丈夫ですか。では、よろしくお願いします。

釜地義人氏(以下、釜地):ご紹介ありがとうございます。日立ハイテクノロジーズの釜地と申します。よろしくお願いいたします。本日はこのような場にお招きいただきまして、誠にありがとうございます。

私は「~Industrial Internet of Things(IIoT)~ 次世代ものづくりに向けたアプローチ」と題しましてお話しさせていただきます。とくに世の中のトレンドの変化やお客様のニーズの変化に対応した技術開発という視点でお話しさせていただき、今後に活躍するエンジニアについて一緒に考えさせていただければと思っています。

それでは、まず世の中のトレンドについてお話しさせていただきます。現在では、クラウドプラットフォームの市場導入やデバイスの高性能化、またビッグデータ解析技術の高度化に伴いまして、Industrial Internet of Things(IIoT)の実現が迫っております。

このIIoTではスマートファクトリーが実現されると言われておりまして、スマートファクトリーではリアルタイムにフレキシブルに生産ラインの構築が可能であると言われております。それに伴いまして、多品種な製品の生産やマーケットに対してのサイクルタイムの短縮化が可能であると言われております。

このようなスマートファクトリーを実現するためには、プロセス装置の稼働率を向上させ、またプロセス装置を監視するためのツールモニタリングシステムの高度化が重要であると考えられています。

このような背景のなかで、現在の半導体量産工場におけるツールモニタリングシステムはと申しますと、例えばプロセス装置のセンサーデータから得られた生データを統計値に置き換え、それらをしきい値管理するといった手法でプロセス装置の状態を把握したり、プロセス装置によって加工された製品を検査装置によって検査することでプロセス装置の状態を把握するといった手法が運用されています。

しかしながらこれらの手法では、現在のプロセス装置の状態を把握することは可能ですが、将来的なプロセス装置の状態を予測することが難しく、突発的な装置故障に対応することが困難です。

また検査装置を介することによって、現在のプロセス装置の状態を把握するまでに時間を要したりといった課題がありました。それに伴いましてメンテナンスにかける時間が増大してしまい、プロセス装置の稼働率が低下してしまうという問題がありました。

そこで我々は、次世代のツールモニタリングシステムといたしまして、データサイエンスを適用した技術の開発を進めています。

このシステムでは、プロセス装置あるいは検査装置から得られた生データから特徴量を抽出し、この特徴量に対して機械学習や深層学習と呼ばれるようなデータサイエンスに関わる技術を適用することで、現在のプロセス装置の状態はもとより、将来的なプロセス装置の状態を予測できると考えています。またプロセス装置が故障した場合には、そのプロセス装置の故障要因を同定することができると考えています。

これらの情報は半導体量産工場のERPシステムで一元管理することによって、最適な時期に最適な手法でメンテナンスを行うことができ、装置の稼働率を飛躍的に向上させることができると考えています。

このようなシステムを実現するためには、これまで我々が蓄積してまいりましたプロセス装置に対してのドメインのナレッジに加えまして、新たにデータサイエンスに関わる技術の獲得が必要でした。すなわち次世代に対してのものづくりにおいては新たな技術の獲得が重要であると考えています。

以上をまとめます。来たるIIoTでは高度なツールモニタリングシステムが要求され、我々はデータサイエンスに関わるような技術を適用した新たなツールモニタリングシステムの開発を進めています。このような背景から今後ますますデータサイエンスに関わる技術が重要になってくると予想しております。

今後、エンジニアにおいては、このようなデータサイエンスに関わるような解析スキルですとか、それらを支えるためのプログラミング技術等の獲得が非常に有用になってくるんじゃないかなと考えています。以上です。

金津:どうもありがとうございました。

(会場拍手)

データサイエンスに関する質問

金津:データサイエンスというジャンルに取り組まれているということですね。では、ご質問あれば。

質問者14:講演ありがとうございます。先ほどのデータを採るところで、すべてのデータを採ることではないと出てましたけど、だとしたらどういうデータを採るのか、その基準を少し詳しく教えてもらえますでしょうか?

釜地:ご質問ありがとうございます。プロセス装置から得られるデータとしましては、例えば任意点の電気的な信号であったりとかですね。

そのなかで、もちろんデータサイエンスを適用して、このプロセス装置の状態を把握するために最も有用なものですとか、あるいはモニターしなくてもいようなものもあると思うので、そのあたりはデータを見ながら相関係数などをいろいろ計算して、実際に捉えたい現象に対して相関が高いようなものを選択していくといったことが必要なんじゃないかなと思っています。

質問者14:ありがとうございます。

金津:ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

質問者15:ご講演ありがとうございます。プロセス装置の状態を把握するということで、もう売られて工場に入っているような既存の装置にも対応できるのか、それとも追加の費用が必要なのか、新しくまるっと変えなきゃいけないのか、どういった想定なのか教えてほしいです。

釜地:ありがとうございます。今考えているのは、我々はプロセス装置ベンダーですので、こういったプロセス装置をお客様の量産工場で使っていただいているというところなんですけれども。

我々はそういった装置にデータサイエンスを適用して装置の健全性評価と呼ばれる装置診断を実施するシステムをプロセス装置側、つまりエッジでできるように開発を進めています。すなわち、お客様の量産工場には今ある装置に対してそのエッジシステムをご提供させていただくことで、運用できると考えています。

質問者15:もし他社のプロセス装置にもこのシステムを入れたいというときでも、インタフェース対応していったりということはあまり考えられていないですか? 日立ハイテクノロジーズさんで作られたものしか入れられない?

釜地:そのあたりに関してはいろいろな考え方があるとは思うのですが。ただ、1つ言えるのはこういったデータサイエンスの難しいところは、プロセス装置に対してのドメインのナレッジが非常に重要で、必ずしもエッジシステムを作ったからといってどんな装置に対しても適用できるかというと、必ずしもそうではない。

システム自体は動いても、エッジシステムが持っているアルゴリズムが必ずしも捉えたい現象をモニターすることができるかというと、必ずしもそうではなく、開発期間が必要ですので、入れたからすぐできるかと申しますと、必ずしもそうではないというところだけご承知おきいただきたいと思います。

質問者15:ありがとうございます。ぜひ工場に入れてほしいなと思ったので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

釜地:ありがとうございます。

質問者16:講演ありがとうございました。今この画面に出ている予測、寿命を予測するというお話だったんですけれども、どれぐらいの精度で出しているのか? 精度についてお聞きしたいと思いました。

釜地:まだデモツールでの評価での結果でしかないんですけれども、例えばプロセス装置、とくにここではドライエッチング装置を対象にしているんですけれども、ドライエッチング装置ってチャンバーの中にバイプロダクトが堆積してしまって、そこから膜剥がれが起こって異物が生じるという問題がありまして。それはCVDとかプラズマ装置にはよくある現象だと思うんですけど。

そういった異物って突発的に発生して、膜が剥がれたタイミングで異物が発生してしまうということでなかなか捉えることが難しい。検査装置でウェハを検査することによって異物の増加はわかりますけど、直前まで異物が増加しないのでなかなかそういうのを捉えることが難しいんです。

そういった場合に、データサイエンスを適用することによって、異物の発生時期をおおよそ予測することができることがわかってきました。日数とかそういったタームで計算してはいないんですけれども、徐々に変化していって、いつぐらいにしきい値に対して交点を持つかということはフィッティングのモデルを与えてやることで計算できるので、そのへんはある程度精度が出ているんじゃないかなとは思っています。

質問者16:そうですね。だいたいの傾向がわかれば今後のコスト管理とかにも役立つと思うのですごく便利だと思いました。ありがとうございました。

釜地:ありがとうございます。

金津:ありがとうございました。まだまだお聞きになりたいこともあろうかと思いますが、時間がきてしまいましたのでいったんここまでとさせていただきたいと思います。釜地さん、どうもありがとうございました。

(会場拍手)