IFRS移行による差異

稲田晴久氏:稲田でございます。私からは、2017年度実績ならびに2018年度業績予想について、補足させていただきます。

まず冒頭に、会計方針を日本基準からIFRSに変更したことによる差異をご説明します。売上収益は日本基準に対し、2,175億円減少します。これは国内事業における販売促進費のうち、リベート分が、IFRSでは売上から控除されるためです。

営業利益は日本基準に対し、199億円増加します。のれんの償却が停止した影響で、265億円のプラスになる一方、特別損益を営業利益段階に計上するなどの影響が発生します。

さらに、親会社の所有者に帰属する当期利益では、日本基準に対して307億円増加します。のれんの償却が停止したことに加えて、会計基準差等の影響があったためです。

2017年度実績(IFRS)

それでは、2017年度実績をご説明します。ご覧の通り増収です。また、営業利益・親会社の所有者に帰属する当期利益ともに、為替中立でも増益となりました。なお、当社は営業利益を経営指標として採用しております。

日本会計基準の営業利益では980億円となり、日本会計基準ベースで上場以来5期連続、増収増益を達成することができました。

2017年度実績(セグメント別)(IFRS)

次に、セグメント別の売上収益とセグメント利益です。日本は、「クラフトボス」等の新商品が牽引して売上が伸長し、それに伴い利益も増加しました。欧州では、フランスで主力ブランドが好調に推移し、為替中立ベースでは増収となりました。

一方で、期中に発生したフランスのサプライチェーンコストの増加や、米国で発売した低糖の「Lucozade Energy」が想定を下回るなど、セグメント利益は為替中立ベースで減益となりました。

アジアでは、健康食品事業のディストリビューターの変更に加え、ベトナムが復調し増収増益となりました。オセアニアは、主に競合の激化により、為替中立ベースで売上が減少。それに伴い、利益も減少しました。

米州は、主力の炭酸カテゴリーが苦戦し、減収減益となりました。

2017年を通して、いくつかの課題やリスクが顕在化しました。これらの課題やリスクに対しては、すでに対応を進めておりますが、2018年度以降はさらに活動を強化し、売上・利益ともに、成長を目指していきたいと考えております。

2018年度 業績予想(IFRS)

続きまして、2018年度の業績予想についてご説明いたします。2018年度は、将来に向けた経営基盤の強化を進めつつ、引き続き増収増益を達成する計画です。

2018年度 業績予想(セグメント別)(IFRS)

次に、セグメント別の業績予想です。長期経営戦略に基づき、各セグメントにおいて、中長期的な成長を目指して、確実に戦略を実行してまいります。欧州においては、積極的なポートフォリオ改革を進めるための戦略的な投資を行うことから、当期については減益を見込んでおります。

また、アジアにおいては、売上・利益ともに高い成長を見込んでいますが、これには事業の売買に伴う一時的な収益が含まれております。アジアリージョンのところで、詳細をご説明いたします。

なお、この利益を将来の成長につなげるべく、各リージョンでポートフォリオ変革を進めるため、中長期的に必要な投資を行ってまいります。オセアニア・米州に関しても、増収増益を予定しております。

〔日本〕 2018年度業績予想

ここからはエリア別に、2018年のポイントについて補足いたします。

まずは日本です。2018年度も引き続き、増収増益を目指して活動してまいります。詳しくは次のページでご説明しますが、各ブランドを一斉強化するとともに、昨年(2017年)発売した「クラフトボス」のような、新規需要創造の取り組みを継続してまいります。

また、利益面では引き続き、売上成長以上の利益成長に向けて取り組みます。総市場の大きな伸長が見込めないなか、原材料調達市況の悪化、さらには人件費増加の影響もあり、当社を取り巻く環境は厳しくなっておりますが、販促費・広告費の効率化やサプライチェーンマネジメントによるコスト削減活動を強化し、売上成長以上の利益成長にこだわり活動してまいります。

また、2019年に稼働予定の京都府の宇治川工場のライン増強をはじめとした、自社生産能力の向上など、将来の利益成長に向けた取り組みも計画的に推進します。

〔日本〕 ブランド強化と新規需要の創造

次のページで、ブランド戦略につきまして、少し詳しくご説明いたします。

日本の飲料市場は、もともと、ナチュラルでヘルシーな飲料の構成が大きい市場ですが、今後も一層、お客さまの健康志向は高まってくるものと考えております。また、共働き世帯の増加に伴う時間の節約ニーズ等によって、RTD化(蓋を開けてすぐにそのまま飲める飲料化)が進んでおります。

さらには、熱中症対策への意識の高まりや、水分摂取を多く必要とする高齢者の増加が、飲料消費量の増加につながっております。

こうしたトレンドをふまえ、当社は水・コーヒー・無糖茶を今後の成長カテゴリーと位置付け、取り組みを強化してまいります。

まず天然水は、水源に焦点を当てた活動を継続し、ブランド価値のさらなる向上を図るとともに、炭酸水やフレーバーウォーターの育成にも、継続して取り組みます。

次に、「BOSS」はヘビーユーザーが多く、パイが大きいSOT缶を継続強化するとともに、クラフトボス等で新たなお客さまを取り込み、ブランド全体で1億ケース以上の販売を目指します。さらには、「伊右衛門」「特茶」や、伸長の著しい「やさしい麦茶」をこの春に刷新するとともに、好調な「烏龍茶」にも引き続き注力し、無糖茶カテゴリーで確固たるポジションを獲得してまいります。

〔日本〕 売上成長以上の利益成長に向けた取組み

2018年のセグメント利益の組み立てについて、ご説明します。なお、これまで(の資料では)売上数量・商品構成・生産コスト削減としていた部分を、今後はご覧の通り、売上収益の増減と原価の増減とすることにしました。

IFRS導入で、売上高が、リベートを控除したネット売上に変わることを受け、ネット売上の増減と原価の増減を示すことが、当社の利益の状況をわかりやすくお伝えできると考えたためです。

新たな表示において、販売価格の違いによる商品構成や、リベートの増減額は売上収益に含め、またスペックの違いによる商品構成が原価に与える影響は、原価に含めるということになります。

それでは、2018年の各項目についてご説明いたします。

まず売上収益ですが、これはネット売上、つまり売上収益の対前年からの増減です。2018年はトクホやSOT缶の鈍化の影響を受けますが、注力カテゴリーを中心に売上成長を実現させ、38億円の増収を見込みます。

次に原価ですが、利益に対し4億円のマイナス影響を見込んでいます。売上成長による利益増分により、商品構成の悪化を吸収したうえで、サプライチェーンマネジメントによるコスト削減活動にも取り組みます。

販促費・広告宣伝費は、引き続き効率を意識した費用投入を進め、5億円の効率化を目指します。

最後にその他ですが、人件費の増加を見込んでいることに加え、新たな商品創造のための積極的な研究開発費の投入などにより、27億円の費用増になるとみております。

結果、2018年のセグメント利益は対前年で12億円の増益となります。厳しい環境ですが、売上成長以上の利益成長にこだわり、活動をしてまいります。

〔欧州〕 2018年度業績予想

続いて、欧州です。欧州では長期的な成長に向け、既存ブランドの強化に加えまして、全社の長期戦略に沿ったポートフォリオ変革を進めてまいります。なかでも、伸長するRTD Teaカテゴリーにおいて、大きなチャレンジを行います。

その結果、売上収益は対前年で4.5パーセント増加する一方、戦略投資のためのコストが発生し、セグメント利益は3.5パーセントの減少を見込んでおります。

各国の事業戦略も、この欧州全域の戦略に沿ったものとなります。フランスにおいては、「Orangina」など好調な主力ブランドの強化に加え、プレミアムティーの「MayTea」を徹底強化してまいります。

また、昨年(2017年)発生したサプライチェーンコストの増加をふまえ、組織・プロセスも徹底的に見直し、再発防止に向けて対応してまいります。

英国では、(2018年)4月の砂糖税導入に向けて、「Lucozade Energy」とレシピ変更を予定している「Ribena」のマーケティング活動をさらに強化し、ターンアラウンドを図ります。具体的には、サンプリングによる消費者接点の拡大、店頭活動の強化、またコミュニケーションを最大化してまいります。

スペインでは、主力ブランド「Schweppes」で業務用チャネルのさらなる拡販を図るほか、新たに家庭用チャネルにMayTeaを発売し、商品ポートフォリオの変革を行います。

〔欧州〕 商品ポートフォリオの変革

この大きなチャレンジの背景をご説明いたします。昨今の健康志向の高まりや、そうしたニーズに対する飲料メーカーとしての社会的役割をふまえて、英国子会社のLucozade Ribena Suntory社が、2016年11月に健康関連ステートメントを発表いたしました。

このなかで、英国で展開している商品ポートフォリオの糖の含有量を、50パーセント削減することを掲げています。また、欧州においても紅茶飲料やフレーバーウォーターなど、炭酸飲料よりも糖分が少なく、よりナチュラルでヘルシーな飲料へのシフトが、顕著になってきています。

さらに、欧州各国において導入が相次ぐ砂糖税も、ナチュラル&ヘルシーの消費トレンドを加速させると考えられます。当社は企業戦略に加えて、こうした消費者ニーズの変化に対応するため、ポートフォリオの変革に取組んでまいります。

まず主力ブランドの低糖、低カロリー商品の強化を図ります。イギリスにおいて、昨年のLucozade Energyに続き、今年はRibenaもレシピを変更します。また、MayTeaをフランスに続き、スペインなどで新たに発売するほか、水やコーヒーのカテゴリーにおいても、新たなイノベーションを起こしたいと考えております。

〔欧州〕 MayTea

次に、ポートフォリオ変革のキーになる、MayTeaについて補足説明をいたします。

MayTeaは、2016年にフランスで発売した、低糖のプレミアムアイスティーです。日本のお茶開発技術を活かしながら、フランスと日本のチームが共同で開発した商品です。

発売2年目の昨年で、販売数量をほぼ倍増し、フランスのRTD Tea市場で約10パーセントのシェア・第2位のポジションを獲得いたしました。お客さまからも「従来のRTD Teaよりも自然な味わいだ」と評判がよく、リピート率が高いのが特長です。

今年は、新たにパッケージを変更し、さらにビジビリティを高め、販売数量の50パーセント以上の増加を狙う予定です。フランスに続き、今年はスペインで新発売し、今後もさらに展開国を広げ、欧州での存在感を高めていきたいと考えています。

一般的に、欧州においては新製品を根付かせることは容易なことではありませんが、積極的なマーケティング活動を行い、今後の欧州変革ポートフォリオをリードする商品に育成してまいります。

〔アジア〕 2018年度業績予想

続いて、アジアです。アジアは為替中立で、売上・利益の成長を見込んでおります。なお、この数字には、昨年発表いたしました加工食品事業の売却影響に加え、3月から新たに開始する、タイにおけるペプシコ社との合弁事業の予想を含んでおります。

これらの影響により、250億円から300億円の増収影響及び、60億円から70億円の増益影響を見込んでおります。

〔アジア〕 健康食品事業

次のページから、それぞれの活動について詳しくご紹介します。

まずは、健康食品事業です。今年も主力商品である「BRAND’S Essence of Chicken」のさらなるブランド強化により、コア市場のタイを中心に、売上成長を図ってまいります。また若年層など、これまでメインユーザーではなかった消費者にも飲んでいただくよう、さまざまなマーケティング活動を展開いたします。

小売チャネルについては、昨年、配荷力に優れたディストリビュータを活用したことで、モダントレードやトラディショナルトレードにおける配荷を拡大しました。また、小売チャネルに加え、台湾やタイにおいて行っている通販ビジネスも、さらに強化してまいります。

さらに、主力のタイに加えまして、ミャンマーなどの新マーケットの拡大も加速してまいります。

〔アジア〕 飲料事業

次に、飲料事業です。事業規模の大きいベトナムとタイについて、ご紹介します。

まずは、ベトナムです。昨年の後半から、ようやく市場が上向いたことも追い風となり、着実に成長を続けております。今年も引き続き、主力で好調なエナジードリンクの「Sting」に加え、健康志向の高まりを受け、好評な「TEA+」の強化にも、取り組んでまいります。

また、当社のプレゼンスが高い都市向けに加え、北部や中部において配荷を拡大し、市場成長を上回る売上成長を目指します。

次に、3月からタイにおいて開始する、飲料事業についてご説明いたします。

ペプシコ社のタイ飲料事業において、当社が51パーセントの株式を取得し、合弁事業を開始します。(ペプシコ社は)大きな消費マーケットであるバンコクを中心に、強力なビジネスを展開しており、近年継続的にシェアを伸ばしております。

ペプシコ社が保有する強いブランドと、流通基盤。これに、当社の強みである非炭酸商品のポートフォリオや、コスト改善のノウハウ。さらに、ベトナムで培ったペプシコ社との合弁事業の成功モデルをベースに、事業の成長を図ります。

また、タイにおいて飲料事業が加わり、健康食品事業と合わせまして、売上1,000億円規模の事業となり、中長期的にはタイ市場におけるシナジーの創出にも取り組んでまいります。

〔オセアニア〕 2018年度業績予想

続づいて、オセアニアです。今年から、従来よりフルコアグループが展開している飲料事業に加え、新たに独立したフレッシュコーヒー事業を、オセアニアセグメントの業績予想に含めております。

まずは、フルコアサントリーです。フルコアサントリーでは、エナジードリンクの「V」をはじめとする主力ブランドの強化に加え、ポートフォリオの拡充にも取り組みます。Vは、新フレーバーの発売等、引き続き積極的に活動してまいります。

また、昨年低迷した果汁飲料は、カテゴリーの縮小も底を打ちつつあり、再活性化に向けて、活動を強化してまいります。また、ポートフォリオ変革に向けた取り組みとして、機能性飲料である「Mizone」、天然素材を主成分としたエナジードリンク「V Pure」といった、既存ブランドを強化します。加えて、健康カテゴリーの商品を新たに投入し、ポートフォリオを拡充してまいります。

次に、フレッシュコーヒー事業です。加工食品事業の売却に伴い、1月から独立した事業として、経営しております。これまでは、加工食品事業の一部としてアジアに含めておりましたが、オーストラリアとニュージーランドをビジネスの起点とすることから、オセアニアリージョンでマネジメントすることといたしました。

〔オセアニア〕 フレッシュコーヒー事業

このフレッシュコーヒー事業について、もう少し詳しくご説明します。フレッシュコーヒー事業の売上規模は、オセアニアリージョンの約25パーセントです。事業全体としては、コーヒー豆の選定・焙煎、そして卸販売と小売販売を行っています。

なかでも、利益の源泉である焙煎において高い技術力をもっており、この技術力をベースに、人気があるコーヒー豆ブランドを複数展開しております。

ご覧いただいている「トビーズエステート」「ラファーレ」「モコパン」が、代表的なブランドになります。とくにトビーズエステートは、ブランドとビジネスモデルという点で、さらなるグローバル拡大が可能だと考えており、今後チャンスを探っていきたいと考えております。

〔米州〕 2018年度業績予想

最後に、米州です。昨年(2017年)は主力の炭酸ブランドの販売が苦戦したことから、2018年は主力の「Pepsi」「Mountain Dew」といった主力ブランドの活動を強化し、ブランドの再強化を図ります。Mountain Dewからは、1月に大型新商品の「Dew Ice」を発売しました。

同時に、伸長する水・お茶・コーヒーをはじめとする非炭酸カテゴリーにおいても、新フレーバーを展開するなど、マーケティング活動を強化し、販売増を図ります。

また、最大市場であるアメリカにおいて、流通構造やカテゴリーの変化が起きていることから、この度、現地に当社単独で新チームを立ち上げ、現地で事業探索を行える体制を整えました。将来に向けて、ボトラービジネスとは異なる、新たな事業の開発・獲得を目指してまいります。

私からの説明は、以上になります。