アメリカで流行った「タイドポッドチャレンジ」

ステファン・チン氏:この数ヶ月間、タイドの洗濯洗剤ポッドをピザのトッピングにしていたり、ラビオリの大皿のように盛っている写真がネット上でシェアされているのを見たことがあるでしょう。

さまざまなミームのように、ばかげていて実におもしろいです。みなさんは洗濯洗剤を食べるようなことはしないでしょうが、この小さなポッドは食べ物に似ているのです。

「タイドポッドチャレンジ」というものがあり、主にティーンエイジャーがそれを食べるビデオをシェアし始めました。問題は、ポッドが実はとても危険だということです。

2018年の最初の3週間で、少なくとも86人のアメリカ人ティーンエイジャーが病気になり、注意喚起が出るほどでした。人々は当然のことながら震え上がりました。YouTubeやFacebookはそういったビデオを公共の安全対策として禁止にしました。

では、なぜタイドポッドは制御不能になったのでしょうか? 流行の裏にあるその心理を分析し、リスクのある選択とインターネット上での名声は役に立たないということをご説明しましょう。

ポッドは大きめのキャンディやFruit Gushersに似ています。噛めるサイズであり、カラフルな渦巻きです。このせいで幼児が口に入れたりするのでしょう。

子どもたちはおやつが欲しかっただけであり、濃縮されたベタベタした洗剤を欲しかったわけではありません。大人たちは騙されることはありませんが、この食べ物に見えるポッドに関するミームは似たような理由で始まったのかもしれません。

光るプラスチックコーティングですらも目を引きます。人間は光る物が好きです。ある心理学の研究では、それが人間が生きるために必要な水を連想させるからだとしています。ある実験で、飲み物なしでクラッカーを与えられたグループは、飲み物もクラッカーも両方与えられたグループと比較して、光るものを欲しいと認識するという結果が出ました。

タイドもポッドの香りをフローラルでフルーティと表現し、あたかも高級なワインのようです。もちろん、すべてが食事のメニューのようであるわけではありません。プラス・ファブリーズやスプリング・ミードーは洗濯洗剤の名称のように聞こえますよね。

洗剤や衛生商品を売り込むために、食品と結びつけるマーケティングは一般的なものです。しかし今までも問題を起こしてきました。

私たちは食べ物が好きです。企業はつまらない洗剤という商品をアピールするために食べ物を連想させようとします。シュガークッキーのキャンドルや、メロンのような香りのシャンプー、カップケーキ風のバスボムを想像してみてください。そういったものを口に入れてはいけないのは当たり前なのですが、人はやってしまうのです。

ある研究では、パッケージが部分的に問題なのだということを見つけました。人をMRIに入れて洗剤商品の一般的なデザインを見せてみると、時々食べ物のパッケージに対して反応する脳の一部が活発になるのです。この研究はごく初歩的なものですが、著者は食べ物と関連したマーケティングは、ある段階で脳を騙して洗剤商品は食べられると思い込ませているのだと指摘します。

ティーンエイジャーが危険に挑戦する心理

しかし、タイドポッドがキャンディに見えるから楽しみのために食べるというのは、話に飛躍があるように思えます。

それはティーンエイジャーである場合には重要なのでしょう。ティーンエイジャーはリスクのあることをすることで有名です。そしてそれは脳の発達と関連があると考えられています。

奇妙なティーンエイジャー時代には、自己制御を司る前頭前皮質がまだ発達中であると科学者は考えています。同時に、脳の中の褒められることに敏感な部分は活動的です。

ティーンエイジャーたちが社会的で友人に囲まれている場合、このアンバランスさはさらに悪くなってしまうようです。

よく知らない薬を使うときなど、未知のリスクとなるとティーンエイジャーは大人と比べて挑戦してしまう傾向にあります。これはおそらく可能性のある結果より、可能性のあるご褒美の方に興味を持ってしまうからでしょう。

これはつまりリスクを取るような行為を克服できないということではなく、なぜ大人と比べてティーンエイジャーがタイドポッドを口に入れるのかを説明できるのです。

その1つとして、ポッドを食べてはいけないという注意喚起と関連があると考えられます。それが「どれだけ悪いことなんだろう」とティーンエイジャーに思わせてしまうのでしょう。これが精神科医がリアクタンスと呼ぶものです。

人間は何かをしろと命令されることを嫌います。自分の独立性への制限に対する自然なリアクションは、するなと言われたことをすることです。研究者たちはこういった注意書きをタバコにも暴力的なテレビゲームにもつけています。それが裏目に出て、注意を引くことになるのです。

これはブーメラン効果や禁断の果実効果と呼ばれています。

公平にするために言うなら、全ての警告がこうなるわけではありませんし、みんなに影響があるわけではありません。ですから、これがポッドを食べるように促しているとは言えないでしょう。

大半の人は洗剤ポッドを食べるなんてことはしません。なぜなら凝縮された洗濯洗剤を食べることは良いことではないと理解しているからです。しかし、何かがその冗談を引き延ばしているのです。おそらくそれはインターネットでの評判と関連があるのでしょう。

精神科医の一部はここ最近、インターネットでの評判に魅了される思春期前の子どもたちが増えていることに気づきました。そして子どもたちは評判を得るためにソーシャルメディアを使っているのです。

あるグループでは、20人の子供のうち8人が評判こそが最も重要な価値であると話し、優しさや成功などの項目より優っているのです。タイドポッドチャレンジはまさに拡散していくタイプのもので、評判を欲しがる人々が自分たちの動画に欲しいものなのでしょう。

研究者たちは人を感情的にするコンテンツはよりシェアされやすいということを見つけてきました。それには怒りや畏れ、不快感なども含まれています。激しい好奇心はリスクをより追い求め、チャレンジ動画を撮ることを促すことになります。

タイドポッドを食べるとどうなる?

では、タイドポッドを食べたら何が起こるかお話ししましょう。端的に言うと、多くの熱傷です。

洗濯ポッドは表面活性物質と呼ばれる化学物質でできています。この表面活性物質は片方で汚れを見つけ、もう片方で水を引きつける分子です。それを洗い落とすと汚れも落ちるのです。つまり、洋服を洗うには素晴らしいものですが、体内にあるべきものではありません。

口から入れてしまうと、ポッドの化学物質は喉から腹部までの繊維を侵食します。これによって起こる一般的な症状が、血を吐くほどに強烈な嘔吐です。

ポッドを食べてしまった子どもは呼吸が止まったり、脳卒中が起きたり、昏睡状態に陥ったりしました。何人かの子どもや、ポッドを食べた数人の痴呆症の大人は死に至りました。

医者はなぜポッドがそんなに危険なのか知りません。普通の洗濯洗剤はそんなに危険ではないからです。それはおそらく高い濃縮度と、成分、包みに関する何かのせいでしょう。

洗濯ポッドは皿洗いポッドよりもさらに毒性が強く、液体ポッドはパウダーポッドよりも毒性が強いのです。ですから、タイドポッドチャレンジは最も害のある組合せということになります。

インターネットが魅力的なのは知っています。少なくとも、チャレンジ動画について精神科医が真剣な研究をする前に、私たちでも想像することができます。

ミームがおもしろくなるのに十分なほど、ポッドは食べ物によく似ています。でも本当に食べたらダメですよ! 死んだら評判も関係なくなってしまいますからね!