新しい仕事はあまり増えない、生まれない
(会場挙手)
赤羽雄二氏(以下、赤羽):はい、どうぞ。
質問者10:ありがとうございます。確かに、お仕事がなくなるというのはそうだなと思います。いろんな発見や発明があって、文明が進化していったと思いますが、例えば携帯電話が発明されたことによって、カメラや電卓などいろいろなものがなくなったと思います。赤羽さんは、AIによって仕事がなくなる代わりに、なにが新しい仕事として出てくると考えていらっしゃいますか。
赤羽:あまり増えないと思います。AIがやる、ロボットがやる、ブロックチェーンがやるというので、人ができる部分が減ります。長らく「AIの時代」ということが言われいました。第5世代コンピュータとかエキスパートシステムなど言われてきましたが、結局どれも使い物になりませんでした。今回は初めて使い物になる時代になったと思います。
さらに、技術の発展が速くなりました。インターネットが普及した結果、今やなにもかもが速い状態になりました。すべてが速くなったので、時間的なリスクが高まったということです。
質問者10:そうですね、なので古いものがなくなる時に新しいものが生まれると思うんですが、アカバネさんはどのように思いますか。
赤羽:あっ、私は「アカバ」です。
(会場笑)
質問者10:すみません(笑)。
赤羽:その「新しいものが生まれると思うのですが」という前提が間違っているということです。今回は「新しい仕事があまり生まれない」になる。人が労働して、お金をいただいて、充実感のある仕事というのが、今回はあまり生まれません。
質問者10:生まれない……。
赤羽:はい、生まれない。その「生まれる」と思っている気持ちを、まず横に置いてください。
質問者10:了解です。
赤羽:「でも今まで生まれていたでしょ?」と思いたくなりますが、今回は変曲点であり、不可逆過程が始まってしまったと思うほうが妥当ですし、安全だと思います。
質問者10:なるほど。
ベーシックインカムという考え方
赤羽:確かに今までは新しい仕事が生まれたんですよ。労働者が金槌で叩いてた作業は、機械でやったらよりうまくでき、産業革命でも機械のオペレーションやメンテナンスの仕事が生まれました。しかし今度は新しい仕事はそこまで生まれそうにありません。AI、ロボット、ブロックチェーン、IoTなどで自己完結してしまいそうだからです。
勉強されている方は、おそらく「ベーシックインカム」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。「AI、ロボットなどで仕事が減る」という見解は、ほぼ世界的に完全に一致しているんですね。その時に、生産性が落ちるわけではありません。なぜならロボットが小麦を作ってくれたり、機械を作ってくれたりするので、モノ自体は生まれます。でもそこに関わる人が少なくなるということです。
仕事がなくなったらその人は生きていけませんが、その代わり「子どもも大人も、お金持ちもお金のない人も全員一律、毎月ある程度払ってあげましょう」「そうしたらその仕事がなくなった人も生きていけるよね」というのがベーシックインカムの考え方です。税金を徴収するコストを下げ、生活保護などの運営コストが高い福祉政策も簡素化して、一律に払ってしまおうというやり方ですね。
この考え方は何十年も前からありますが、それが現実的な意味で言われ始めたのが最近です。ただ私は、ベーシックインカムが意味のある形で実現できるとはあまり思っていません。税金を徴収するコストを下げたり、福祉費用を下げるだけでは足りないので、富裕層への増税が必要になるからです。今でも50パーセント以上の税金を払っている人たちに「もっと払え」というのはもう受け入れがたいのではないでしょうか。
増税をすると、富裕層の国外脱出が増えるだけのことで、現実的ではありません。
私は正確に計算していませんが、調べてみるとベーシックインカムの支給は「できなくはないけど7万円前後」という試算もあります。そうすると、「東京には住めない、地方でルームシェアでもきついかも知れない、外食はできない、吉野家に行くのも贅沢」ということになります。ベーシックインカムにおける「最低生活を保障する」というわけにはいきません。計算が合わないんですね。「ベーシックインカムがあるから大丈夫」というのは、忘れていただいたほうがよいと思います。
国としても、もはや成り立たない
赤羽:他にいかがでしょうか。
(会場挙手)
赤羽:はい、どうぞ。
質問者11:国としても、もはや成り立たないということでしょうか。