寒さと風邪の関係に関する研究結果

マイケル・アランダ氏:髪が濡れたまま、あるいは薄着のままで寒い場所に出たら風邪をひくよ、と子どものころに言われたことがあるかもしれません。

ですが、今では風邪の原因はウイルスであって、冷たい空気ではないと知っています。では、こうした迷信が広まったのはなぜでしょうか。

1つには寒い季節のほうが風邪をひきやすいからでしょう。ですが、科学者が考える限り、寒いことは風邪をひく直接的な原因ではありません。寒い季節に風邪をひきやすくなることには、もっとわかりやすい理由がたくさんあります。

気温と病気の関連性は単純ではありません。風邪をはじめとした呼吸器系の病気は寒い季節に一般的になりますが、一番寒い真冬の時期に増えるというわけではありません。さらに調べてみると、寒さを感じることと風邪をひくことには直接的な関連性は見つかりませんでした。

例えば、1958年に行われたランダム化比較試験を考えてみましょう。研究者たちは、400人の人たちに摂氏27度、16度、12度の部屋へ分かれて入ってもらいました。

その後ウイルスを含んだ粘液を鼻の穴に塗りましたが、温度は結果に変化をもたらしませんでした。どの部屋であっても、3分の1強の人が粘液から風邪をひいたのです。

2005年に行われた冷たい氷水に足を浸す実験では、浸さなかったグループに比べて風邪の症状が多く見られました。ですが、影響が確かにあったと言えるほどの、事前に予測されていた多くの違いは見られませんでした。

寒さを感じたときに風邪をひきやすいとすれば、他の理由も考えられます。1つの仮説は、寒さが免疫システムを弱めることはなかったとしても、呼吸器系の防御はとくに弱くなるかもしれない点です。

2016年に『Medical Hypotheses』誌に掲載された論文では、微生物学者が「ウイルスは体内で休眠状態のまま潜んでおり、気温が下がった時に活性化する」と述べていました。

ですが、こうした考えにははっきりしない点も多くあります。また多くの研究結果は、寒くなることで風邪のひきやすさが変わるわけではないとシンプルに示しています。

一方で、寒さで風邪をひきやすくなる別の理由もあります。空気がとても乾燥することです。

気温が低いと気体は水蒸気を保持しづらくなるため、冷たい空気は湿度も下がります。湿度が高いと、息や鼻水、せきなどで体から飛び出したウイルスは、水蒸気とともに地面に比較的素早く落下します。

ところが空気が乾燥していると、小さな粒子となって空気中にいつまでもとどまり続けるのです。さらに湿り気が少ないと鼻の粘膜も乾燥してしましまい、ウイルスは防衛機能を簡単にすり抜けてしまいます。

別の可能性としては、冬場に十分な日光を浴びないためにビタミンDが作られない人もいます。ビタミンDは免疫システムを助けるはたらきがあるため、これが低下するということはウイルスに対する防御力も弱くなるということです。

他には寒い季節には人々の行動も変わる点です。屋内にいることが多くなるため、感染した人が触ったものに触れたり、くしゃみの残りかすを吸ったりしやすくなります。

研究者たちは依然として、寒い気候が風邪をひきやすくするのかそうではないのか、はっきりした理由をいろいろ探っています。

ですが、風邪をひかないようにする一番の方法は、外で薄着をしないようにしたり、濡れた髪のまま走り回ったりしないようにすることではありません。手を石鹸で洗い、洗っていない手で顔に触れないようにし、風邪をひいている人に近づかないことです。