宇宙で体重を測るための装置

マイケル・アランダ氏:地球の上や、ちゃんと重力を感じる場所なら重さを量る方法はいろいろあります。病院の先生が使うメカニカルスケールや、商店街で使われるバネ式のはかりなどですね。

一方で、宇宙飛行士も骨密度や筋力低下、その他の人体に関する実験で記録を取る必要があります。ですが軌道上では、普通のはかりでは地球の周りを自由落下してしまいます。

では、重力がない環境でどうやって体重を量るのでしょうか。

質量を持った物体を加速させるには力が必要です。これはニュートンの「運動の第2法則」ですね。そして重さというのは、重力が物体を加速させている力のことです。地球で感じているのはまさにこれです。

つまり基本的には、物体を引っ張っている惑星の重力がどれぐらいかを計測しているのです。

ですが、国際宇宙ステーションのような軌道上にいる場合、前方に進む速度は重力によって引き寄せられる力と釣り合っているため、惑星の周りを周って落ち続けることになります。

つまり、宇宙飛行士たちはみなこの「自由落下」環境にいるため、重さを量れなくなってしまいます。

ですが、彼らは依然として質量を持っています。たとえ地球のはかりが使い物にならなくても、バネの力とニュートンの「運動の第2法則」を使えば質量を量れるのです。

NASAは軌道上加速重量計測器(SLAMMD)、通称スラムドという装置を開発しました。

この装置は、バネの力で宇宙飛行士を1メートル弱引き寄せます。バネにはバネ定数、つまりそのバネの弾性を表わす指標があります。さらに高性能のカメラを使って、宇宙飛行士が引き寄せられた時の加速度を測定します。

基本的に、体格の大きい人はゆっくり引き寄せられます。そしてバネの弾力性と距離は変わらないため、宇宙飛行士はこうした数値と加速度から自分の質量を計算できるのです。

一方でロシアの研究者チームは、体重計測器(BMMD)という装置を開発しました。こちらには頭文字をつなげた略称はないですね。

BMMDも似たような機構を持っていますがカメラで加速度を計測するのではなく、宇宙飛行士が片側に乗ってバネを圧縮した後、バネが解放された時の1秒あたりの変動つまり周波数を計測します。

微小な重力のホッピングのようなイメージです。

SLAMMDのように、体格の大きい人はバネの変動がゆっくりになります。バネ定数は一定なので、宇宙飛行士は振動を測定することで体重がわかるのです。

どちらのやり方にせよ、体重を正確に測定できるので科学に重要な貢献をしているんですね。