2017年8月、真木よう子やアニメで町おこしが話題に

乙君氏(以下、乙君):8月、次いきますね。

真木よう子のコミケ炎上。クラウドファンディングで資金を集めるも参加取りやめで炎上しましたと。これ、ありましたね。しみちゃん、真木よう子大好きだよね?

しみちゃん氏(以下、しみちゃん):なんで勝手に決まってるんですか?(笑)。でも悲しい事件ですね。

乙君:これはちょっとあんまりあれなんで。

アニメ聖地88ヶ所が決定。アニメで町おこし。ただ、これがけっこう問題になったというか、「なんでこのアニメのあそこは選ばれてないんだ」とか、長谷川町子記念館とか、やなせたかし記念館とか。

山田玲司氏(以下、山田):記念館が聖地になってるの?

乙君:そう(笑)。アンパンマンの聖地なの、それ? みたいな。そういうのがけっこうありまして、誰が選んだのかも含めて問題になったというのがありましたね。『シティーハンター』はあったのかな? 新宿。

スタッフ:入ってないと思います(笑)。

乙君:それ入ってなかったらやっぱりダメだなって思っちゃうね。俺なんかは。

スタッフ:湘南もそうですね。

ヤンキー漫画の聖地は含まれず

山田:湘南はなにが選ばれてるんだろうね?

乙君:でもアニメじゃねぇか。『湘南爆走族』もそうだし、『純愛組!』もそうだし。

山田:『ホットロード』もそうだし。

乙君:あと(長野県)松本市なんかね、『クローズZERO』じゃん。

しみちゃん:あ、そうだね! まさしく。

乙君:俺さっきちょっとランキング見たけど、ランキングというか88ヶ所、ヤンキー漫画がほとんどなかった気がする。ヤンキー漫画、完全に無視。

山田:ありがちだよね。ヤンキー漫画でご当地を盛り上げようなんてあんまり考えないもんな。

しみちゃん:確かに(笑)。

乙君:たしかに『ろくでなしBLUES』で吉祥寺盛り上げてるとこみたことないかも!(笑)。

山田:『特攻の拓』で盛り上げようとかな。

乙君:「やばい! ここが拓が突っ込んだ防波堤だよ!」みたいな(笑)。「あれが武丸がへし折った標識だよ!」みたいな(笑)。めっちゃおもろいやん!

山田:それを暴走族がみんなで聖地巡礼行ったらおもしろいけどな。

乙君:それめっちゃおもしろいですね。富士山に行くんじゃなくて。

山田:でも、みんな悲しいけどな(笑)。うるさいっつってな。スピードの向こう側に行く集会が(笑)。

乙君:それやばいですよ。レミングのネズミみたいになって、みんな……

山田:何言ってるんですか(笑)。

乙君:え、『特攻の拓』の最後(笑)。やばいな、それ。セロニアス時貞……聖地になってもいいじゃんね!

『特攻の拓』の話やめようか、もう。

(一同笑)

漫画の聖地でもう一盛り上がり

山田:あのさぁ、保土ヶ谷球場は入ってるのかね? 『ドカベン』のほとんどの試合はあそこで行われてるからさ。

乙君:もう無いんじゃない? 保土ヶ谷球場。

スタッフ:入ってないです。

山田:なんだおっかしいなぁ。

しみちゃん・乙君:(笑)。

山田:そういえば山下公園は『ガラスの仮面』の聖地だろ。

乙君:そうなんですか?

山田:第1話でラーメン配達してたじゃん。なんだっけ、主人公出てこないからダメだな(笑)。

乙君:そしたらヴェルサイユとかさ、あそこは。

山田:もう聖地だらけですな。

乙君:歴史漫画とか含めちゃうとやばいな。

山田:そうだな。

乙君:ちょっと盛り上がっちゃうな(笑)。『特攻の拓』盛り上がっちゃうんだよな~。

山田:ヤンキー漫画聖地一覧とか勝手に作ってやろうか。

乙君:それ玲司さんがやるんですか?

山田:お前だよ。

乙君:俺がやんの!?

山田:そらお前だろ。

乙君:でもめちゃくちゃありますよ! それこそ浅草のあそことか、河原のね。葛西と……ぜんぜんわかってくれない。

山田:もちろん国は支援してくれないだろうけどな(笑)。

乙君:なんで誰も言及しないの? 不良漫画のそういう文化のね。

山田:そうだな。

乙君:9月にいきます。

女子高生の制服姿はエロいという風潮

山田:ちょっと待って、その前に7月のジャンプのお色気問題あったじゃん。ラッキースケベだとかなんとかいろいろ言われてた時期があったじゃん。ここにきて、女子高生がちょっとでもエロいっていうコンテンツが作れなくなったらしいね。

乙君:ん?

山田:女子高生の制服というものでエロいことすると、それはコンテンツとしてダメですよっていう傾向がすごくあって。

乙君:はいはい。

山田:こんなの初めてだよ? 俺が業界に30年いて、ここまで厳しくなるの見たことないね。青年誌って、だいたいセーラー服って言ったら、エロいものっていうふうに描いてたもん。それは少年誌でもそうだったでしょ?

乙君:まぁね。

山田:エロアイコンじゃん。セーラー服とかブレザーもそうだけどさ。そういうものがちょっとでもエロとして描かれると表現できませんみたいな。この間『FLASH』の編集者が「グラビアで制服はもうダメです」って言ってたね。

乙君:グラビアで制服もダメなの?

山田:ダメだって。「ちょっとでもエロい要素になるとダメなんですよ」って言ってた。

乙君:エロい要素って誰が判断するの?

山田:なぁ? 本当誰が判断するかわかんない。

エロは文学じゃない

乙君:AKBとかどうなの?

山田:あれは、がんばってる少女たちなんですよ(笑)。またAKBの話になってますけど。あれはエロを売り物にしてる少女たちじゃなくて。体育会的にがんばってる。

乙君:清純だから?

山田:そう、清純的なコンセプトだから、オッケーだったりする。わかんないけど、ずいぶんいろんなことがグレーになって、なんだか嫌な空気になってるなぁって感じがする。

なぜかと言うと、エロは文学じゃない。もともと。闇の部分を描くのが文学なわけじゃん。漫画に文学の要素がないわけないじゃん。それは初期からあるし、漫画の文化が一番盛んだったころに『あしたのジョー』とか、60年代から70年代のころって、半分文学で、その流れで『エヴァンゲリオン』ってあるわけじゃん。

闇の中の光みたいなものを描いてたのが文学だったんだけどさ、まとめてダメってことになっちゃうの? って言うと、意外とセーラー服の問題だけで言っても、文化の危機だね。

ラッキースケベの話で表面的に揉めている、もしくは俺がヤングサンデーでやってるときに「遊人問題」って言って、遊人さんが描いてた『ANGEL』っていうのが過激すぎるって言って。

あのときの過激さとはぜんぜんわけが違うからね(笑)。遊人さんのやってたのはガチでやばいところのギリギリだったし、でもそれもオッケーだったし、70年代はもっとひどかったからね。

ここへ来て猛烈な圧がかかってしまったなというのが、今年の7月のあの問題だったな。隠せばいい、やめさせればいい、規制すればいいっていう流れまでの道のりがものすごく短くなってるね。

性の商品化が著しいのは結婚というシステム?

山田:これ誰も言わないけどさ、性を一番商品化してるのって結婚っていうシステムじゃねぇのって思わない?(笑)。

乙君:おっと?

山田:話が変わっちゃうかもしれないけども、そもそも女の人が結婚しなければいけないっていう圧はどうなのって思わない? 女っていう、人格ではなく子どもを産む性質っていうのが先に立ってしまって、個人ではなく性別で人生を決められてない? これって。

乙君:あ~。

山田:子どもを育てるだけのスペックがあるかどうかで男は選ばれたりするじゃん。これもちょっと微妙じゃない? つまりここまで考えて規制する話してんのかって話じゃん。ものすごく表面的なところで網がかかってる気がしてならんね。

一方で少子化対策だとか言って結婚しろとかなんだかんだ言うけど、それって逆に人道的にどうなのかって俺は思うけどね。

むしろもうちょっと違うパラダイムシフトをしないといけない時期に来てるのに、どうも見当違いなことが起こってるが今回のジャンプ問題のときに考えたことだね。

乙君:う~ん。なるほど。

山田:だって学校にいて共学でさ、前に女の子がいて汗かいてて。あんな狭いところにいてさ。先生の話つまんなくてさ。見るに決まってんじゃんね(笑)。

しみちゃん:はい。

山田:でしょ?(笑)。ねぇ! それが男だし、10代のころの思い出のほとんどはそこでしょ? そうでしょ!? それ表現するなって言ったらさ、なにを表現するんだよな?

しみちゃん:本当ですよ(笑)。

山田:そう思わない?

乙君:それはそうですね。

山田:そうでしょ? 川端康成どうしたらいいの?

乙君:どうしましょうね?

山田:ノーベル文学賞じゃないの? そういうことも全部、わかんないよ、有識者が考えたんですとか言うかもしれないけど、あまりにもわけがわからない状態で漫画に圧かけやがってっていうのがちょっと正直なところこれはやばいんじゃないですかね? 今年のこの動きはね。不健康ですよ。本当に。

そう、村上春樹もアウトだし、村上龍なんて完全にアウトだよね(笑)。デビュー作から完全にアウトですけどね。

社会的な「圧」に苦しむ女性たち

乙君:あ~でもそういうこと言わないで40になって子ども産めなくなって後悔したらその人の人権はどうなるんだっていう。別に圧が……。

山田:余計なお世話だと思わない? それだって自分で決めてるじゃん。

乙君:まあね。でもその情報はあっていいと思うんですよ。俺は別に女は子どもを、女しか産めないんだとしたらね、現在の科学で。シュワちゃんみたいなことにならないわけじゃん。まだ我々は。

だからその時点で差別というか区別はあるし、家に嫁に行ってみたいな旧体制的なものが残っているのはそれはそれで美学の1つだと思っちゃうんですよね。

山田:俺は選択肢の1つでいいと思うよ。

乙君:結局それはそっちのルートに乗るんだったら乗って美しく生きてくださいと。

山田:そのラインを完全に否定するわけじゃないんだけど、あまりにも社会的に圧があってそれに苦しんでいる人の話ばかり聞くよね。

乙君:それは社会的に苦しんでいる人がノイジーマイノリティっていう可能性もあると思うんですよ。俺は。

29歳の女子たちの人生は終わってない

山田:「29歳になったらこの世の終わりだ」みたいな顔してる女の人いっぱいいるじゃん。この世の終わりじゃないですよ!

乙君:この世の終わりだって顔してる奴ばかりでもない気がするんですよ。

山田:これはね~どうかなぁ。多いと思うよ~。

乙君:不満を抱えてる奴のほうが声を上げちゃうから。

山田:でもそんなこと別にいいじゃん。いつ結婚したって個人が選べばいいのに、なんでいつからいつまでの間にしなきゃいけないみたいな圧がかかるの? って話よ。

同時に、若い奴の顔を見れば「相手はいるの?」「結婚しないの?」ってことを言うじゃない。これこそ性の暴力じゃないですかね~って俺は思うんですけどね。

乙君:まぁまぁまぁ。

山田:そういう闇みたいなもの救済みたいなことを漫画はやってたんじゃないかなと思うよ。アホみたいなエッチ漫画ってあったほうがいいと思うよ(笑)。

乙君:それは思いますね。あれは本当に男の子にしかわからないオアシスなんで。

山田:あれ性の暴力じゃないよ。子どもエッチだよ。そうでしょ?

乙君:それがない世界はやっぱり窮屈ですよね~。

山田:なんか嫌な感じだもんね。