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物々交換から貨幣経済へ お金の歴史から学ぶ、資本主義の誕生とともに私たちが失ったもの

物々交換から貨幣経済へ お金の歴史から学ぶ、資本主義の誕生とともに私たちが失ったもの

2017年10月18日、一般財団法人Next Wisdom Foundationが主催するイベント「まわるケイザイ大YEN会」が、東京都千代田区のLIFULL Tableにて開催されました。ビットコインをはじめとした仮想通貨やFinTechなど、近年注目を集めている「お金」の話。ほぼ毎日と言っていいほど触れるお金ですが、その本質について改めて考える機会はあまり多くありません。そこで、お金の歴史・現在・未来の3つのテーマを設定し、ゲストとともにお金の成り立ちから今後の在り方まで、余すところなく語り尽くします。第1部「お金の歴史」には、東京大学教授の黒田明伸氏と文化人類学者の竹村真一氏が登場。お金の原点を紐解きます。

シリーズ
まわるケイザイ大YEN会 > そもそもお金とは何か?をテーマにお金の成り立ちと、その思想的背景について
2017年10月18日のログ
スピーカー
東京大学東洋文化研究所教授 黒田明伸 氏
文化人類学者/一般財団法人Next Wisdom Foundation評議員 竹村真一 氏

利子というシステムを普遍OS化する

竹村真一氏(以下、竹村) 今の話と関係あると思うんですけれども、ここはある意味でアンビバレントというか矛盾した事情があったと思うんです。つまり、利子の起源は農耕社会で、土地・生態系に人間がある投資をするとそれが何十倍にもなって返ってくるので、それは利子をつけて返すことを可能にする自然経済の増殖性に基づいたものだったけれども、実際、貨幣経済の中で利子というシステムを1つのOSにして作っていくのは非農耕民だったと思うんです。 具体的にはヨーロッパ社会では、一応教義上はイスラムと同様にキリスト教も利子を禁止しているので、結局ユダヤ人という排除された存在がそれを担うようになった。ユダヤ人はとりあえず同じ旧約聖書を根幹に持ってはいるけれども、だから教義上は利子はいけないはずだけど異教徒からは(利子を)とってもいいという話だったらしくて、いろいろと利子を使った経済をやっていった。 ユダヤ人はヨーロッパでご存知のように迫害されていて土地所有を禁じられていた。ということで、利子の根源的な概念は自然経済の増殖性から生まれたのに、利子を人間の経済としてOSとして流通させていったのは非農耕民的な部分で、そのあたりがどうやって分離していったのかというのは、もう残り時間少ないらしいのでここから続編なんだろうけど、すごくおもしろいところだと思うんです。 どういう経緯でヨーロッパでそうなったのか、それと同時にそのヨーロッパの図式というのが果たして世界的に普遍的なのかということで、ご専門の中国の話をぜひ聞きたいですね。中国では文字という1つの普遍OSが3,000年前くらいから、殷の次の周というあたりから多文化・多民族、文化とか言語が違う民族をつないで1つの普遍OSとして使われ始めた。そのあたりと中国における普遍的な貨幣の発生みたいなものというのはリンクしているのかどうか、これはぜひ教えていただきたいです。

中国での普遍性と多様性

黒田明伸氏(以下、黒田) そうですね、本当はそこが専門なんです。もう時間がないですが、今、漢字の話をされましたけども、これって非常に得てして妙で、例えば私の「黒」という漢字、これは日本でも朝鮮でも昔のベトナムでもわかるんですけど、意味はみんなわかるけども読み方は違うんです。僕らはコクというし、北京だったらヘイと読むし、南だったらククとも読むし。 だから読んだら違うんです。でも意味としては同じ。これが中華文明の1つの特色だと思うんです。ある点でいくとものすごく共通しているけれども、同時に多様性がある。だから上のレベルでの普遍性と下のレベルの多様性をうまくぶつけているのが中華文明だと思うんですが、お金も一緒で、銅銭、四角い穴の空いたやつです。 あれも一応中国全体で通用するようにはなっていたんですけれども、すごくかさばります。穴があるのは、あれは紐で結ぶためのものなんです。紐で結んで100枚にするかというと、日本は正直だから100枚結んで100枚として、1,000枚なら1,000枚結んでいくかもしれないけど中国はそんなことしないですね。970枚結んで1,000枚だと。俺のところは980、俺のところは490枚だと。 同じ町でも魚屋は480枚で肉屋は450枚だったり、そういうことになっていて。だから流している通貨は完全に一緒だとしても、どう使うかは全部ローカルに従う。そういう普遍性と多様性を組み合わせていることの典型的な感じですね。 竹村 そういう普遍経済がけっこう漢字の浸透、漢字も1つのOS、両国のOSとしてとして秦の始皇帝あたりが、漢字がOSとして。だから日本でも「峠」という山に上と下と書いてすごい上手い漢字ですよね。でもこれは日本で作られて中国にはないとか。つまりOSだからそれぞれのローカルで自由にそのOSを使って新しい漢字を作り出すことができる。 でも、そうすると多様性がすごく増えてしまう。だからそれをもう1回、普遍的に統一しようということで秦の始皇帝が標準化した漢字体系を作ったのか、度量衡を作ったとかそういう感じで展開していったと思うんですが、同じようなかたちで貨幣制度というのは中国で成立していったんでしょうか? 黒田 やっぱり王朝は税金を取りたいですから、手段としては統一していきたいわけですけども、具体的にどう取るか、となるとそれは地方の多様性に任せるしかない。だから秦の始皇帝は滅ぶわけで。そこの上の普遍性と下の多様性、この組み合わせが近代の西洋国家の概念とはかなり違う権力のあり方なんですね。 竹村 中国でおもしろいのは、元とかでもイスラム教徒が財務大臣をやったりしていたと思うんです。イスラムは利子は禁じているけれどもけっこう交易の民ですよね。非農耕的な共同体と共同体の間をつないでいくような、そういう普遍OSとしての経済をすごくダイナミックに、グローバルに展開した、そういう民が中国でも1つの大きな役割を果たしてやっていた、そのあたりはどうですか。イスラム教徒の交易。 黒田 それはモンゴル帝国の特殊性ですね。私の中ではモンゴル帝国が世界を変えたと思っています。13世紀までは、今言ったようにそれぞれの文明が勝手に違ったお金を使っていますし、その下にさらに地方通貨がありますけれど、モンゴルって朝鮮から東ヨーロッパまで銀の単位で税金を集める体制を1回作ってしまったんです。 モンゴル帝国は滅ぶんですけれども、結局銀で物の売り買いができるという記憶が残るものですから、300年後に南米で銀山が発見されて銀が大量に出た時に流れることになるわけです。モンゴル帝国はある意味破壊者であり、創造者でありますね。 竹村 銀の役割というと、南米のポトシ銀山から銀が流布して、スペインが世界に流布したことですごいインフレが中国の中でも起こって、それに対するリアクションとして日本の徳川政権が鎖国をしたとか、世界史を読み解くにも実はそのへんはすごくおもしろくて。 こんな感じで話してると4時間5時間必要なんですよね。だから主催者に今日のテーマは時間の設定がぜんぜん足りないよということをまず申し上げているわけなんですけれども。 (一同笑)

お金の歴史についてまとめ

竹村 もう終わらなきゃいけないんでしょ?(笑)。ということで最後に1つだけ、今の議論で出てないキュー出しをしておくと、今さらに新しいフェーズに入ってきているのかな。もちろんビットコインとかそのへんもそうなんですけど、ビットコインはむしろインターネット、バーチャルという技術が後押しして、しかしもう1回もともと我々が持っていた貨幣の多様性、お金の多便性みたいなところを再構築していくという意味では新しいように見えて古いテーマの実践なのかなと思うんです。 それに対してもっと新しいテーマというのは、本当の意味で地球自然経済との関係です。さっき言ったような、資本主義が地球生形態系の現実・真実を反映できなくて、もしかすると崩壊するかもしれない。このあたりはやっとTEEB(注:生態系と生物多様性の経済学)とか自然資本主義とかちゃんと自然生態系のサービスを貨幣価値に換算して見える化しようとする動きが始まっているものの、なかなか今の自然資本の元本を減らしているスピードを緩和するような勢いにはなっていないですよね。 これはさっきの自然資本とちょっと似たようなところから利子が始まりました。つまり、自然は増殖する。自然世界はものすごく豊かですから、こういうストックがそれの何十倍も、今や何千倍もそれを増殖して返してくれる。でも、利子の部分に注目した自然資本経済だったんです、かつては。数千年前は。利子の発生とか。 今、我々が問題にしているのは、あの頃は元本が減っていくなんて考えもしなかったんですね。人口だって1億も2億もいないですから。今や、100年ちょっとで15億から75億、やがて100億に増殖しようとし、一人ひとりが使うエネルギーが100年前のT型フォード以前は2馬力ですよ。2頭立ての馬車。みんなこれが誰でも200馬力くらい使っているわけでしょう。 つまり100倍になっているわけです。人口が5倍、使うエネルギー100倍、寿命1.5倍。これを全部掛け合わせると人間の地球に対する1,000倍。フォーダーですね。そんな中で、やっぱり元本の有限性なんてことはたぶん人類は考えたことがなくて、それが生み出すクローンの増殖性みたいなことに注目していった。 逆に、人間の1,000倍になった力で元本そのものがすごい勢いでスポイルし得る。実際、クロマグロを始め海の大型魚の90パーセント以上が消滅している。自然は本当に増殖性を持っているので、今漁獲制限や幼魚を獲らないといったことをやれば、数年で回復するでしょう、今やればね。だけどし損なうとダメになる可能性もありますし。 ということで、自然経済の増殖性みたいなことを、数千年前とかキリスト教が利子を云々したみたいな文脈とは違うかたちでリセットして、グローバル化して考えていかないといけない時代がきているかなという感じで、最後に僕なりの問題提起として主催者に残していきたいと思うんですが、黒田さんからも最後に一言、よろしくお願いします。 黒田 宇沢弘文さんが昔『自動車の社会的費用』という本を書いていますけれども、自動車を買うときのコストは実はぜんぜん短期的な費用しかはらっていないわけです。

つまり大気汚染を引き起こすとか、いろんなことを費用、負債を伴っているんだけれども。それですから、長期的な費用をもっと払うべきなのです。だから費用というのは物事を復元させるための代価だとすると、我々は今、短期的な費用しか払っていないわけです。長期的な費用を払わせるような代価として貨幣システムをつくっていく必要があるのではないかと思います。 竹村 非常に重要な問題提起をいただきました。全部宿題ですからね(笑)。よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

  
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