今回はクイズ形式で進行

中原良太氏(以下、中原):こんにちは、株式予報の中原良太です。今週は、「第1回システムトレード・クイズ」というテーマで、動画セミナーを始めていきたいと思います。セミナーというより、今回はワークショップに近いかたちになっております。

具体的には、システムトレードに関するクイズをいくつか出していきます。システムトレードをやってない方にとってはあまり役に立たないと思うので、そういう方はそっと画面を閉じていただければと思うんですけども。この動画セミナーをご覧いただいている方は、大半がシステムトレーダーの方だと思いますので、そういう方はぜひお役立ていただけたらなと思います。

なんでこんなテーマを選んだかというと、システムトレードをやっていて、「えっ、それってやっちゃいけないんじゃない?」みたいなことをやっているシステムトレーダーの方が、ちょいちょいいらっしゃって……。このクイズが、自分の売買ルールを改良する1つのきっかけになればと思って、この動画セミナーを収録することに決めました。

もちろん役に立つ内容だと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただけたらと思います。ということで、さっそく始めていきましょう。

中原:まず、今回の講座の目的なんですけれども、「システムトレーダーなら、一度は悩んだことのある場面を、クイズ形式で考えてみる」ということです。この動画の半分ぐらい、僕はしゃべらずにぼーっとしてます。その間に(みなさんは)クイズに対する答えを「自分だったらこうするかな」と考えてください。そのあとに、僕なりの答えをお伝えしていこうかなと思っています。僕の考え方が必ずしも正しいとは限らないんですけれども、1つの参考になればと思っています。

中原:前置きとして、まず、僕らトレーダーは常に選択をしているかと思います。トレードはそもそも、選択の連続なんです。いつ、どの株をどれぐらい買って売って、どういう戦略を立てて、どのような手法を使って……と、常日頃から選択をしているものだと思います。

トレードの世界は、いかに賢く選択していくかが、利益を出し続けるための肝だと考えていて、一つひとつの小さな選択ミスが、のちのち大きな失敗につながりかねないと思うんです。ですので、選択ミスをしないように、常日頃から正しい選択をしようという心がけを持つのが大事だと思っています。

その上で、システムトレーダーもシグナルに愚直に従うだとか、いろいろ考えなきゃいけないことがある中で、売買ルールを作るときに度重なる選択があると思います。ですので、「システムトレーダーだったら、この場面でよく迷うな」という局面を今日は集めましたので、それをもとに、僕なりの考え方を共有できればと思っています。

中原:ただ、注意していただきたい点が1つあります。それは何かというと、今回の動画セミナー内で僕が示す答えは、あくまで僕個人が考えているものであって、必ずしも学術的に正しいといったものではありません。僕が正しいと考えているもの・意見ですので、その点について、あらかじめご了承いただければと思っております。

それでも、少しは参考になると思ってますので、僕なりの考え方を共有していきます。ということで、この点をご了承いただいた方から、次に進んでいきたいと思います。

第1問:最適値はどれ?

中原:まず、1つ目の問題です。今、売買ルールを最適化しています。あなたはこれから新しい売買ルールを作っていくんですけれども、ドローダウンを運用資金の2割に抑えた状態……(運用資金が)100万円なら損失を20万円に抑えた上で、利益を最大化したいと考えるとします。その場合、最適な選択肢はどれでしょうか?

今回調節していくのは、前日比という条件式です。前日比という条件式を上げたり下げたりして、ドローダウンを2割に抑えた状態で利益を最大化する。そのための最善の選択肢はどれでしょうか? というのを、考えていきましょう。

選択肢として、この中に(前日比)マイナス1パーセント以下からマイナス8パーセント以下まで、8通りあります。あなただったら、どれを選びますか? 考える時間を1分ほど設けますので、ぜひその間に、いろいろと考えてみてください。では、スタート。

(1分経過)

中原:それでは、1分ほど経ちましたかね? ドローダウンを運用資金の2割に抑えた状態で、合計損益を最大化したい。そう考えている場合、最適な条件式はどれでしょうか? 僕なりの考えを、ご紹介していきたいと思います。

システムトレードを始めたばかりの方だったら、おそらくこの中から「前日比マイナス4パーセント以下」を選んだかもしれません。ドローダウンがきちんと2割以内に抑えられていて、かつ年利が最大になっているからです。ただ僕は、これは答えとしてはふさわしくないかなと考えています。

中原:なぜかというと、これは過去の動画セミナーでもお伝えしたことがあると思うんですけれども、前日比という条件式を1パーセント調節したことによって、ドローダウンが大きく変化していっているんです。

マイナス1パーセント以下のときには(ドローダウンが)35パーセントから、マイナス8パーセント以下にしたときにはドローダウンが15パーセントまで小さく抑えられたということで、前日比わずか1パーセントで、ドローダウンが大きく変動するんです。

それはどういうことかというと、前日比が小さな銘柄が偶然現れた瞬間に、ドローダウンが更新されて、大きくなってしまう。それだけドローダウンが前日比に大きく依存しているので、ちょっとでも間違いがあったら、簡単にドローダウンが2割を超えてしまうんじゃないかと考えています。

例えば「前日比マイナス4パーセント以下」を選んだとしたら、確かに検証結果上はドローダウンを2割以内に抑えられているんですけれども。そのすぐ近く、「マイナス3パーセント以下」という条件式には、ドローダウン25パーセントという条件式が待っているんです。しかもその隣(前日比マイナス2パーセント以下)には、ドローダウン30パーセントも待っています。

ということで、「ちょっと条件式が甘すぎると、簡単にドローダウンを更新しちゃうんじゃないの?」というのが、僕なりの考え方です。ですので、今回のような例の場合は、ピーク(のものの周辺も含めて、最適だと思える数字を選ぶ)。

ドローダウンを2割に抑えた上で利益を最大化するのは、もちろん大事なんですけども、「ちょっと間違いがあっても、ドローダウンは2割以内に抑えられるんじゃないか?」と考えられるように、条件式を微調節していく必要があるかなと考えています。

ということで、例えば安全を重視するのであれば「前日比マイナス8パーセント以下」とか。とにかく厳しくして、ドローダウンが小さな方にどんどん調節していく。

あるいは、少しでも利益を出したいと考えている場合は、「前日比マイナス5パーセント以下」とか。「1パーセントくらいのずれだったら、しょうがないかな」と考えて、隣(前日比マイナス4パーセント以下)にドローダウン20パーセントがある、現時点で(ドローダウン)17パーセントの条件式を採用する。こういう具合に、ピークのものの周辺も含めて最適だと思える数字を選ぶのが、大事かなと思っています。

ということで、「ドローダウンを2割以内に抑えたい」を必須条件だと考えた場合は、僕はまず「(前日比マイナス)4パーセント以下」は、ちょっと危険すぎやしないかと思います。

最低でも1パーセントの余裕を持って、マイナス5、6、7、8パーセント。下にいけばいくほど、ドローダウンを2割に抑えた状態という目的は達成されやすいのかなと考えています。とにかく下の方へ、選択肢をずらしていくのがいいんじゃないかなと思っています。

というのが、まず1問目の答えでした。いかがでしょうか? なかなかこういうことを一緒に考えていくことはないので、いい機会になればと思って、こういう問題を出しております。

ということでまず1つ目の「最適値はどれか?」という問題については、こんな具合に考えていくのが、僕なりにはいいかなと思っています。つまり、ピークの周辺値を確認する。一番良かったのは、マイナス4パーセント以下だった……これは間違いないんですけども、その周辺も含めて一番良かったかどうかを考えるのが、非常に大事なポイントかなと思います。

安全を見るのであれば、できるだけピークを拾って、その周辺全部が良いこと。自分の選択したパラメータの周囲全部が良いことを確認するのが、安全性・堅牢性の高い売買ルール作りにつながるんじゃないかなと考えております。

ということで次、さっそく2問目へ行ってみましょうか。

第2問:過剰最適化はどっち?

中原:次の問題です。過剰最適化であるのは、どちらでしょうか? 事例1は、前日比を0.1パーセント刻みで調節した場合の検証結果です。そして事例2が、前日比を5パーセント刻みで調節していった場合の検証結果です。どちらが最適な数値でしょうか? ではこちらも、1分ほどお時間を設けますので、ぜひ考えてみてください。

(1分経過)

中原:そろそろ1分経ちましたかね。ではさっそく、答え合わせをしていきたいと思います。と言っても、僕の答えが正しいとは限らないんですけど。僕ならこの場合、どちらが過剰最適化なのかと考えるか。僕が考える、悪い方は……。

中原:悪い選択は、下側(事例2)かなと考えました。なぜかというと、こちらは取引回数に大きな変化が現れていないからです。どういうことかというと、サンプルが大きく変化してないのに得られた検証結果の違いは、統計的には有効ではない。誤差の範囲だと捉えるのが、普通かなと考えています。

システムトレードは基本的に、統計的なデータの有効性を信じてトレードするのが定則だと思っているんですけれども。「統計的にデータが有効じゃない」と言われちゃったら、それってシステムトレードじゃないんです。

もはや、数字合わせと言えばいいですかね。「検証結果が良かったからやってます」というだけで、「統計とかぜんぜん気にしてません」みたいな、ちょっともったいないトレードになってしまうと考えています。

事例1の場合は、前日比をすごく細かく刻んでいるんですけれども、トレード回数に1,000回程度の大きな変化が現れています。確かに、誤差の範囲と言われればそうなのかもしれないですが、確実にサンプルには大きな変化が生じています。

ですので、大事なのはパラメータの区切り方。小さく区切るか大きく区切るかではなく、サンプルがどれだけ変化しているのか。

大事なのは、数字を細かく刻んだのがカーブフィッティングだ、過剰最適化だと考えることじゃなくて、取ったサンプルがどれだけ違うか。そして、そこでちゃんと傾向を見いだせるかどうかに注目するのが、大事だと思います。「サンプルが変化しているから、これは統計的に有効なんだ」と判断するのが、大事なポイントかなと思っています。

なので、条件式がいくら細かろうが、ちゃんと得られた検証結果に大きな変化が見られて、ちゃんと傾向が掴めているのであれば、それはカーブフィッティングじゃないんじゃないのというのが、僕なりの考え方です。

もちろん理想的には、前日比5パーセント刻みとかむっちゃ荒く、ざっくり調節した上で取引回数も大きく変化しているのが、一番の理想なんですけれども。前日比0.1パーセントなんて、偶然で変わってしまいかねない数字なので。

とはいえ、サンプルが大きく変化しているかどうかが、統計的な優位性に大きく影響してくるポイントだと思いますので、僕だったらこっちを重視するかなと思っています。これはあり得ない例なので、なんとも言えないんですけれども。実際にこういう例が現れたら、僕は事例1の検証結果を評価したいと考えております。ということで、過剰最適化なのは事例2。僕だったら、事例1を正しいと解釈します。

こんな感じで、システムトレーダーだったら「どれぐらい細かく条件式を調節しようかな」とか、いろいろ考えると思うんですけれども。基本的には、荒いに越したことはないです。細かく調節しすぎると、過剰最適化になるので。

じゃあそもそも、なんで過剰最適化が起こるかというと、「得たデータに統計的な有効性がないから、過剰最適化だ」という判断をするんです。なので、結果的な取引回数とか、得られたデータのもとはなんなのかを考えるのが、一番大事なポイントかなと考えております。

仮に「事例2も、得られたデータがぜんぜん違うサンプルに基づいたものなんだよ」と言われたら、それは過剰最適化じゃないよという判断になりますので、それはそれで留意しておく必要があるかなと思います。

こんな感じで、システムトレード・クイズを続けていきたいと思います。今日は3つだけご紹介したいなと思ったので。次が最後の問題です。

第3問:安全なのはどっち?

中原:最後、安全な投資戦略はどっちでしょうか? という問題です。これは人によって大きく答えが分かれると思いますし、僕も一概に答えを出すのが本当に難しい問題だと思いますので、こちらについては、ちょっと時間を取って考えてみていただきたいと思います。

ここに、2つの売買ルールがあると仮定します。1つ目(事例1)の売買ルールは「取引回数が1万回で、最大ドローダウンが運用資金に対して10パーセントに収まっているもの」。2つ目(事例2)の売買ルールは「取引回数が100回で、最大ドローダウンが(運用資金に対して)10パーセント以内に収まっているもの」です。

この2つのうち、安全な売買ルールはどっちですかという問題です。こちらはちょっと難しいので、考える時間を2分設けたいと思います。じゃあ、さっそく考えてみてください。

(2分経過)

中原:それでは時間がきましたので、さっそく僕なりの答えをお伝えしたいと思います。せっかく考えていただいたのに、なんなんですけれども……僕は、どっちも答えになり得ると思っています。

なので、「安全なのはどちらかわからない」というのが答えなんですけど、申し訳ない。せっかくこんなに時間をかけたのに、「どっちも正解です」なんて言われたら「はあ?」と思うと思うんですけれども。これはそれぞれ、安全だという理由があります。そして、それぞれ危険だという理由もあるので、その点についてご紹介したいと思います。

中原:何を伝えたいかというと、まず事例1は、エクスポージャーが大きい。要するに、取引回数が多いので、そのぶん、危ないものを買ったり売ったりしている。現金でとっておくよりも、株式って危険なものです。危険なものを買ったり売ったりしているぶん、エクスポージャー……危険なものに、お金をさらしている。

(事例1は)危険なものに資産を置いている期間が長い売買ルールだと考えられますので、通常の場合は、「この(事例1は)エクスポージャーリスクが大きい、だから事例2の方が安全だ」と考えるのが、売買ルールとして妥当かなと考えています。これが、まず1つ目の考え方だと思っています。

もう1つが、取引回数が100回で最大ドローダウン10パーセントの、事例2について。「取引回数がたった100回だから、ドローダウンが10パーセントだったんでしょ。これが200回、300回、1,000回とかになったら、ドローダウンは当然増えますよね? そもそも、リスクを過小評価してますよね?」と言われたら、事例2も危険に見えてくるわけです。

ということで、事例2は取引回数が少ないから、これからドローダウンを更新する可能性がありますよね。事例1の場合は、1万回取引をしてドローダウンが10パーセントだったんだから、これから100回、200回とトレードしたところで、恐らくドローダウンを更新しないでしょう。

でも、100回しか取引してない事例2は、「さらに100回取引したら、ドローダウンを更新するかもしれないよね」と言われたら、確かにそのとおりだなと。なので、ドローダウンを過小評価しているリスクがある。ということで、(事例1と事例2は)どっちもどっちなんです。

ただ、事例2の場合については、例えばパラメータを調節した結果、取引回数が100回になったということだと思うんですけれども。調節する前の、例えば取引回数が1,000回とか1万回ある段階から、すでにドローダウンが10パーセントだった。それをあえて100回に絞り込んだということでしたら、恐らく事例1よりもエクスポージャーリスクが小さくなりますので、事例2の方が安全ということになるかなと思います。

逆に、「取引回数で150回のルールを作ったら、ドローダウン15パーセントだった」という検証結果が得られていたとしたら、(事例1の)取引回数1万回の、エクスポージャーリスクはありつつも、検証結果としては、最大ドローダウンの10パーセントに妥当性が感じられる事例1の方が、安全なんじゃないかなと思います。

ということで、(どちらが安全なのかについては)「状況によりけり」というのが、僕の答えなんですけれども。大事なポイントは、(事例1の)エクスポージャーと(事例2の)リスクの過小評価です。この2つのポイントについてバランスを見ながら、安全なのはどっちかなと考えていくのが、システムトレーダーとして大事なポイントかなと考えております。

ということで、今週は以上です。クイズを3つ出題させていただきましたが、最後に、それぞれのポイントについておさらいしていきたいと思います。

クイズを活かした投資戦略へ

中原:本講座のまとめです。まず1つ目のポイント、パラメータの最適値を選ぶ場合。僕なりの考え方ですけれども、周辺値も含めて最適な数字を選ぶのが、大事なポイントかなと思います。

2つ目のポイント、過剰最適化をどうやって判別するか。基本的には、パラメータの区切り方にはあまり重きを置いていないです。サンプルがどれだけ変化したか・統計的な傾向をもとにちゃんとパラメータを調節したかに、重きを置いておくべきかなと考えております。過剰最適化を判別するためには、サンプルの変化量に着目するのが大事かなと思います。

3つ目のポイント、安全な売買ルールを見つけるためには、どこに注目するか。僕は、エクスポージャーとリスクの過小評価があるかないかの、2つのポイントに重きを置いて、判別するようにしています。

「エクスポージャーもあるし、リスクを過小評価してますよ」というルールは、最悪の中の最悪なんですけれど……ただ、だいたいの場合は二者択一になると思います。

リスクを過小評価してないかが気になる場合は、条件式を微調節して、ドローダウンがかんたんに変化しないか確認する。また、エクスポージャーのリスクを抑えたい場合は、なんとかして取引回数をグッと絞り込んでみてはどうかと考えております。

ということで、今週は以上です。ぜひ今回の動画セミナーをもとに、少しでも売買ルールの作り方・投資戦略の編み出し方を見つけられればと思っております。最後までご視聴いただきまして、ありがとうございました。