元銀行員の資産運用アドバイザーが語る、金融機関の裏事情

頼藤太希氏(以下、頼藤):こんにちは。

高山一恵氏(以下、高山):こんにちは。

頼藤:ゆる〜くお金について語るラジオ『マネラジ。』第38回です。今回も前回に引き続きスペシャルバージョンということで、ゲストはファイナンシャルプランナーの高橋忠寛さんです。

頼藤・高山:こんにちは。

高橋忠寛氏(以下、高橋):こんにちは。よろしくお願いします。

頼藤・高山:お願いします。

頼藤:高橋忠寛さんは、株式会社リンクマネーコンサルティングの代表取締役で、(そのほかにも)肩書きはいろいろとありまして、「成功する資産運用ガイド」として著書もたくさん出されていて、メディアでも解説しています。

高山:イケメンFP(ファイナンシャルプランナー)として引っ張りだこ。

頼藤:そうなんですよ(笑)。

高山:君臨している感じですよね。

頼藤:そうですね(笑)。というわけで高橋さん、自己紹介をお願いします。

高橋:ファイナンシャルプランナーの高橋忠寛と申します。私は元銀行員で、金融機関を辞めて、今はファイナンシャルプランナーとして活動しております。

ファイナンシャルプランナーも講演をしたり、保険の販売をしたり、いろいろな方がいますけれども、私は金融商品を販売するのではなく、相談料をいただいて、本業として資産運用のアドバイスしております。

頼藤:金融機関側の事情も知り尽くす、元銀行員の資産運用アドバイザー。

高山:すごいなあ……。

高橋:やっぱり金融商品や資産運用の話というのは、知らないことが多くて、金融機関側はすごくいろんな情報を持っているのに対して、一般の方は判断材料がなかなかないということがありますので、自分のお客さんには金融機関側の事情もわかった上でアドバイスをさせていただいてます。

銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術

頼藤:前回は大和書房から出ている新刊の『ズボラでも「投資」って、できますか?』という本について少し触れさせていただいたのですけれども、今回は何でしたっけ?

高山:『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術』です。

頼藤:おー!

高山:非常に気になるタイトル。

高橋・頼藤:(笑)。

頼藤:それはどこから出ているんですか?

高山:これは日本実業出版社から出ています。1,400円プラス税です。

頼藤・高山:(笑)。

頼藤:僕たちの最初の共著『年利20%の最強マネー術』が出たときと同じタイミングぐらいに。

高橋:そうですね。同じ時期に出させていたしました。

頼藤:なので、コラボで出版記念セミナーやったんですよね。

高山:そうですね、大盛堂書店でコラボイベントやらせていただきました。

高橋:はい。

頼藤:僕たちも自主的に50名を集めて。

高山:やりましたね。

頼藤:そのときに初めて忠寛さんとお会いしたのかもしれないですよね。

高山:そうですね。

頼藤:ではせっかくなので、今日はこの本の内容に触れながら。

高山:タイトルがすごく気になると思うんですよ。「(銀行員が)顧客には勧めないけど家族には勧める」ということで。

高橋:本の帯にも「『本当によい金融商品』と『よく売れている金融商品』は違います!」と書いたのですけれども、銀行でよく売れている金融商品を銀行員自身が「自分でも投資してみよう」とか「自分の親にも勧めよう」と思っているかというと、なかなかそうではない現実があったので、それを伝えたいなと。

頼藤・高山:なるほど。

高山:うちの親なんかも、銀行からどんどん営業がきているんですけど、なんか「買っちゃったわよ」みたいな。高橋さんコンサルにに行ってもらおうかな(笑)。

頼藤:でもそうは言っても、人情で買う人もまだまだ。

高橋:そうですね。やっぱり金融機関の信用力であったり、担当者と親しくなって「その方が言うなら」というかたちで取引をしている方も多いので、それはそれで別に。

頼藤:納得しているんだったらいいですよね。

高橋:はい。

「よく売れている商品」と「本当にいい商品」は違う

高山:では早速、(本の中身について)聞いていきたいと思います。第1章が「銀行員のアドバイスどおりに資産運用すると絶対にうまくいきません」という……気になる(笑)。

頼藤:(笑)。

高橋:「絶対に」と言い切りました……。

高山:言い切っておりますけども、このへんのポイントを解説していただきたいなと思います。

高橋:そうですね。一番大きいのは、「利益相反」と言って、やっぱり金融機関の営業担当者はアドバイスをすることが仕事ではなくて、最終的に商品を買ってもらうことが仕事です。かつ金融機関としては別にいけないことではないんですけど、手数料を稼いでいくと。

営利企業なので稼いでいくことは別にいいことなのですが、手数料を稼ぐということは、お客さまは手数料を払うことになるので。

お客さまである投資家の立場からすると、手数料は当然払わないほうがいい。払わないほうが自分のお金を守れますし、金融機関からすると、手数料をいっぱい払っていただくほうがありがたいということで、お互いの利益が相反してしまっています。

全員が全員、「利益を出せればいいや、手数料を稼げればいいや」というアドバイザー、銀行員ばかりではないですけれども、構造的に相反する利益が存在するような状況になってしまっていることは理解しておいたほうがいいのかなと思います。

頼藤:では「お勧め(金融商品)は何ですか?」と聞くのは一番危ないカモネギみたいな感じですね。

高橋:そうですね(笑)。

頼藤・高山:(笑)。

高橋:「よく売れている商品と本当によい商品は違います」と言ったのは、やっぱり売れている商品は金融機関の担当者がよくお勧めしているから、よく売れているのであって、金融リテラシーの高い人が「これはいい商品だ」と言って評価して売れているというよりかは、残念ながらあまりよくわかってなくて買っている人が多いです。

(金融機関の担当者が)売りたい商品がよく売れていることになっているかと思うので、「お勧めは?」と聞くのは銀行員にとってはお勧めであっても、お客さまにとってお勧めとは限らないと思います。

高山:なるほど。NGワードってことですね……。

頼藤:「お勧め」はね(笑)。

高山:あとは「定期的なコンタクトは営業担当者のヤル気の表れ」と書いてありますけれども、これは本当に、うちの叔母のところにも頻繁に(来ています)(笑)。

頼藤:定期的にコンタクトが来るということは、資産を持っているということですよね。

高山:これは(顧客の)フィルタリングみたいなものがあるわけですか?

高橋:やっぱり銀行員も商売ですから……。

頼藤:言い辛そう(笑)。

高橋:銀行員も当然サラリーマンとして目標がありますので、単にお話がしたくて連絡をするというよりかは、何らかの商売につながる可能性があるところにコンタクトを取るので、頻繁に連絡をくれるということは、一生懸命提案して商品を売りたいという気持ちがあると思っておいたほうがいいんじゃないかなということです。

高山:なるほど。叔母に言っておきますね。

金融機関の課題と顧客へのアプローチ

頼藤:でもそう考えると、あんまり今の20・30代の人にアプローチは行かないんじゃないですか?

高橋:そうですね。そういう意味では、金融機関は顧客層の年齢が上がってきていますし、若い世代とどう接点を作るかというのが今の経営課題なんだとは思います。

頼藤:相続(金)が入った瞬間にすかさず行くとか、そういう感じになるんですかね。

高橋:まとまったお金、退職金とか相続で何か大きなお金が動いたところは、銀行としても商売のチャンスなので、コンタクトがあると思います。

頼藤:いきなり預金が増えたら、「アレ?」という感じで調べるときもあるのかなと。

高橋:金融機関には入出金のレポートが上がっているので、金融機関によってはいくら以上かというのはわかります。それなりのお金が動くと、その日というよりかは数日前に送金データが入っているので。

頼藤・高山:なるほど!(笑)。

高橋:例えば、60歳とか65歳ぐらいであれば、まとまったお金が入ると「この人は退職金が入るんだな……」というのは数日前にわかります。

頼藤・高山:なるほど!。

頼藤:そういうことか。

高橋:このお客さんに誰がアプローチするかというのは、支店の中で割り振りがあります。

頼藤:そうなんだ。

高橋:ちゃんと戦略的にコンタクトがくるようになっているということです。

頼藤・高山:なるほど。

頼藤:じゃあ、気をつけないとですね(笑)。

銀行員は「投資のプロ」ではなく「販売のプロ」

高山:気をつけないとですね。これ(第2章)がおもしろいです。「いまだから話せる コレが銀行員のホンネです」というタイトルで。

頼藤:おー! 教えてください。

高山:これは「金のない若い客には保険を売れ」という(笑)。

頼藤:わかりますけどね(笑)。

高山:これは……。

高橋:売り手としては、金融商品として、預金とか外貨預金とか、投資信託を売るよりも、保険を売るほうが収益性が高いんです。毎月1万円とか2万円、もしかしたら数千円というお金しか資産運用に回せないお客さんには、投資信託を勧めるより保険を売ったほうが収益性が高いということですね。

高山:なるほど。声がちっちゃくなって(笑)。

高橋:言い辛いですからね……。誰が聞いているかわからないので。

頼藤:投資信託を買うよりかは、保険を買うという人のほうが多いですよね。

高橋:そこは日本人の特性なのかわからないですけれども、なんとなく保険に対する信頼感や安心感が強くて、投資はやったことないけれども保険には入っている、保険にお金を貯めているという方は多いと思います。

高山:日本人の特性というと、みんなと同じって安心するじゃないですか。「みんなと同じだと安心するお客様は要注意」と書いてありますけど。

高橋:先ほどの「よく売れている商品」の話と同じなんですけれども、「みんなと同じ、よく売れている商品はないんですか?」と聞かれる方も多いですし、「ほかの人がそれをやっているならいいや」と思うんですけれども、残念ながら、みんなで赤信号を渡っているような状態で……。

頼藤・高山:(笑)。

高橋:みんなと一緒だからといって、まとめてひき殺されてしまうのではないかなということはよく見ますね。

高山:なるほど。「プロに任せればお金は増やせる」と思っているお客さまは要注意だと。

高橋:そうですね。まず「何のプロか」ということを意識したほうがいいと思いますね。

金融機関で相談に乗ってくれる人は、別に投資のプロではないですから。たしかに一部投資のプロはいるかもしれないですが、そういった方はもっと大きな金額を運用している人で、一般の私たちの相談に乗ってくれる人は決してプロではない営業マンです。

頼藤:販売のプロであると。

高橋:はい、販売のプロです。まずは相談相手が投資のプロではないということ、もう1つは資産運用の結果は経済環境や市場環境によって決まる部分が大きいので、プロに任せても必ず増やせるわけではないということを肝に銘じておかなければいけないと思います。

高山:この「担当者の人のよさに惹かれて取引するお客様は要注意」というのもそうですか?

頼藤:(笑)。

高山:私のお客さんも女性が多いので「担当者がよかった」という人はけっこう多いですよ。

高橋:そうですね。例えば、食事は自分でいいかどうかがわかると思いますし、財布や靴なども実際にいいかどうか判断できると思うんですけど、金融商品はわからないので、残念ながらどんなに感じのいい担当者であっても、多くの担当者はあまり詳しくないですし、人が良いから良い商品を勧めてくれるとは限りません。

高山:なるほど。

高橋:金融商品の場合、同じようなタイプでも手数料が何倍とか何十倍違うものもあるので、いい人がいるからといって任せっきりではいけないと思います。

高山:では一般の方はどうしたらいいんですか?

高橋:やっぱりまずはしっかり自分で勉強というか、情報収集することだと思います。

高山:この本(『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術』)でもいいし(笑)。

高橋:この本でもいいですし、頼藤さんや高山さんが出している本もあると思いますし、Webもあると思いますので、まずは主体的に情報を集めることと、その情報を誰が発信しているのかと(いうことを考える)。

世の中に出回っている情報は、CMも広告もそうですけれども、何かしらの金融商品やサービスを販売したい人が提供しているので、どうしても中立というよりかは売り手目線の情報が多いです。

なので情報収集をする時にも、どういう立場の人が(情報を)発信しているのかを意識して、情報収集すること(が大事です)。

あとはやっぱり失敗しても困らない金額から経験を積んでいくしかないと思います。「勉強したほうがいいですよ」と言うと、なかなか始められない人も多いんですけど。

頼藤:勉強したらすぐ始める。

高橋:(勉強にも)きりがないので、とりあえず始めてみると。数百円からできる投資がいっぱいあるので、まずは困らない金額で始めながら、いろいろ情報収集をしていくことが大事だと思います。

頼藤:経験からたくさん学びますからね。

高山:そうですね。