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人類が火星に移住するには何人必要か? 「創始者効果」について解説

人類が火星に移住するには何人必要か? 「創始者効果」について解説

もしも私たち人類がほかの惑星に移住することを考えたとき、何人送り込むのかは非常に重要な問題になります。人数が少なすぎた場合、近親交配を避けるだけの遺伝的多様性が確保できない場合があります。これを「創始者効果」と呼びます。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、過去の「創始者効果」の例や、実際にコロニーを新たに作るのに何人の男女が必要なのかに関する研究結果を紹介します。

スピーカー
Stefan Chin(ステファン・チン)氏
参照動画
Founding An Inbreeding-Free Space Colony

多様性が低下する「創始者効果」とは

ステファン・チン氏 SpaceXかロッキード・マーチンかNASAになるかはわかりませんが、いずれは火星に人類を送り込むようになるでしょう。 Image01 その時代になればコロニーの建設も行われると思います。 Image02 地球に降り立つことなく、火星で生まれ、育ち、家族を持ち、死ぬ人が出てくるかもしれません。 何もない宇宙空間を超えて、荒涼とした惑星に人類を送り込むのは途方もない計画ですが、遠く離れた場所でのコロニー建設には別の問題も生まれます。遺伝的多様性の低下です。 他の惑星に新しい社会を築こうとすれば、近親交配を避けるために必要な送り込むべき人数を知る必要があります。小規模な集団を送り込んで新しい社会を始めるのがいつになるとしても、もともとあった大きな集団に比べれば遺伝的多様性は低くなってしまいます。 Image03 こうした多様性の低下は「創始者効果」と呼ばれています。 もともとの集団との違いは世代を経るにつれて増大していき、とくに新しい集団数が小さい場合は顕著になります。集団数が小さいほど、近しくない関係で子孫を作るのは難しくなり、多くの近親交配が生じます。 こうした事柄は、創始者がどれぐらいの子孫を生み出し、どの程度の対立遺伝子(アレル)、つまり遺伝子上の変動が生じていくかにかかっています。 ある特徴を持つ遺伝子が遺伝子プールから消えさってしまえば、珍しかった病気が一般的になってしまうかもしれません。これは実際に起こったことです。 例えばペンシルバニア州で暮らすアーミッシュという人たちは、一般的なアメリカ人に比べてエリス・ファンクレフェルト症候群という小人病の一種を発症しやすいようです。これは創始者がその対立遺伝子を持っていたことが原因です。 また南アフリカのアフリカーナーという、17世紀にオランダ人の小さなグループが中心となって設立したコミュニティでは、ハンチントン病の発症率が高くなっています。 近親交配によって生じるこうした事例を避けるためには、創始者グループが十分な数を持つ、つまり遺伝子的に言えばもともとの集団と同じほどの多様性を備えておく必要があります。さらには長期間が経過してもこの多様性が維持されなければいけません。 集団遺伝学では、その数は有効個体数として知られています。その種によって、また遺伝子変異が起こる頻度や雌雄どちらに存在するか、どれぐらいの子孫をもうけるかといった幅広い要素によってその数は決まります。 Image04 人間の場合、有効個体数は数万人、少なくとも1万人から2万人程度と考えられています。 ですが、それだけの人数を初期のスペースコロニーに送り込むのは難しく、費用も高額になります。そこで研究者たちはさらに必要最低限の人数を割り出そうとしてきました。その結果、より少ない人数で済む別の予測や、役立つ別の戦略もいくつか生まれました。

200人以下で遺伝的多様性はクリアできる?

2002年に人類学者のジョン・ムーアは、200年かかる星間飛行ミッションでコロニーを作って「Earth2.0」にする上で必要な人口を割り出そうとしました。 Image05 産業革命以前のコミュニティの生殖活動を元にしたコンピュータプログラムによって、時間経過とともに人口動態に何が起こるかをシミュレーションし、いくつかのシナリオを導きました。 その結果、カップルの選定と生殖活動を本当に注意深く行えば、初期のコロニーにおいて75組から90組の若いカップルが必要と結論づけました。全員合わせても200人以下で済みます。 ですが、他の人類学者は、これほど少ない数でうまくいくのは、旅の最中に子孫が子どもを作り続けた場合だけだと言っています。 これはあり得る話なのでしょうか。地球がアルマゲドンにでも見舞われない限り、むこう数百年、少なくともしばらくは火星に送るミッションを行う必要はないでしょう。 Image06 他にも、コロニーを作るために地球にとどまる人たちの精子と卵子を冷凍保存して持ち込んでおき、新しい遺伝子と混ぜていくというやり方も考えられます。 ムーアの予測に関する他の論点は、理想的な状態でのみ作用する点です。例えば、人口のかなりの割合が事故で死ぬケースは想定されていません。またこの産業革命以前のグループのなかで、別のコミュニティとの交配が起こる可能性も考慮されていません。これはつまり、健全な人口を維持する上で必要な人数が実際にはもっと多くなるということです。 『Acta Astronautica』誌上に2014年に発表された論文には、ある研究者が割り出した現実的な人数は1万4千人から4万4千人の間だろうと述べられていました。この助言に従えば、火星コロニーはおよそアイスランドと同じぐらいになります。 アイスランドはおよそ1,100年前に、約1万人の人々によって築かれました。創始者効果によって、アイスランドの現在の人口約30万人は、ヨーロッパにおける最低限の遺伝子多様性を持った国の1つです。 アイスランドの人たちは緻密な家系図を作り続けています。オンライン上のデータベースのかたちであっても1つの大きな家系図となっていて、過去3世紀の間に生まれた95パーセントの人の情報が含まれています。その中に含まれている人は、データベース内の他の人と自分との関係を調べられるのです。 さらにこれは近親相姦を防ぐためだけの仕組みではありません。データベースによって、アルツハイマーやガンといった特定の病気と関連のある遺伝子を特定できているのです。アイスランドのおかげですね。 別の惑星にコロニーを作るなら、同じような情報をもっと簡単にさかのぼれるデータベースを用意して、卵子や精子を調べられるようにするでしょう。ですが、こうした問題を考える前に、ある程度の人数を安全に火星に送る技術開発にまずは力を注ぐ必要がありますね。

  

SciShow

Hank Green(ハンク・グリーン)たちがサイエンスに関する話題をわかりやすく解説するYouTubeチャンネル。

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