肉や餃子というアーティスト

牧野晃典氏(以下、牧野):そして(アソビシステムがきゃりーぱみゅぱみゅなどのアーティストを起用したイベントをプロデュースする)一方で、「肉フェス」のアーティストといえば、当然、肉屋です。ちょっと本人に言ってもらったほうがわかりやすいと思うんですけど(笑)。日本中の有名なお肉屋さんですよね。

遠藤衆氏(以下、遠藤):中川さんのところのアーティストが、僕らでいうところの肉屋さんだったり、餃子屋さんです。こういう方々とのつながりを大切にイベントを作り上げている感じです。

牧野:そし当然「肉フェス」「餃子フェス」がありつつ、そこに来るお客さんはスイーツやクラフトビールなどの楽しみ方もしたい。こういったスイーツ屋さんや、クラフトビール屋さんともリレーションを取っている。

遠藤:お肉だけだとやっぱり飽きちゃうので、こういうものも、楽しんでもらおうと考えています。

牧野:一押しのお肉屋さんとかあるんですか?

遠藤:全部ですね(笑)。

牧野:僕も何度か肉フェスにお邪魔していますけど、やっぱり簡単には食べられない普通にお店に行ったら客単価1万円くらい取られちゃいます?

遠藤:そういう店もありますね。

牧野:そんなお肉が気軽に食べられるのが、肉フェスの1つの魅力と思います。

ランドセルがファッションアイテム?

牧野:そういうイベントを仕かけている中で、企業との取り組み、それぞれのイベントにスポンサーさんというのは欠かせません。その事例をご紹介します。

まずはアソビシステム。イオンさんとマルコメさんが「もしもしにっぽん」というインバウンド・アウトバウンドプロジェクトにサポートいただいている企業さんです。ちょっとこの映像を見ながら話したいと思います。

(映像が流れる)

中川悠介氏(以下、中川):去年イオンさんと一緒にやらせていただいたものです。世界中のジャパンフェスを一緒に出展していきながら、うちのモデルの子がランドセルを背負ってリレー形式で世界中のいろんな場所を紹介していく。今年もイオンさんとは世界中のフェスに一緒に出て、いろんなことをさせてもらっています。

牧野:ランドセルって日本では当然、子どもの通学に欠かせないものですけど、海外ではファッションアイテムなんですよね?

中川:そうですね。ニューヨークでは、おしゃれなスーツのサラリーマンが「ちょうどパソコンが入る」と言って買っていました(笑)。

牧野:自転車でスーツを着て、颯爽とオフィスに行くニューヨーカーたちがランドセルを背負っている。イオンさんとしては、もともと日本の小学生のために作ったランドセルですけど、海外のニーズがあったり、ファッショントレンドとしてのニーズがあることで、「もしもしにっぽん」と一緒にランドセルを世界でプロモーションしている。

なおかつ、アソビシステムのモデルさんが各地に出向いて映像作品を作ってイオンさんのWebサイトでコンテンツをストリーミングしている。

企業イメージをカスタマイズ︎

中川:マルコメさんは1年目、「カワイイ味噌汁」ということで、世界中でお味噌汁のプロモーション、プラス日本でうちの三戸なつめが「味噌なつめ」になって、実際にファミリーマートさんでカワイイ味噌汁を作って発売しました。

あとは、うちの原宿観光案内所で外国人に無料で味噌汁を配ったり、そういう活動をさせてもらっています。マルコメ君がDJになり、DJマルコメデビューを一緒に組み立てて、作らせてもらいました。

牧野:イオンさんにしろ、マルコメさんにしろ、アソビシステムという会社と組むことでカスタマイズが可能になると。それは、イオンさんであればランドセルを世界のファッションアイテムとして伝えることであり、マルコメ君をDJとして若い人たちに伝えることである。

これはたぶんイオンさんや、マルコメさん単体ではできないことで、アソビステムと組むことでできることだと思います。じゃあ続いて、AATJの肉フェスのスポンサーシップの事例です。アヴァベルさんの事例ですね。

(映像が流れる)

映像音声:「ハローYouTube。どうもヒカキンと」「セイキンです」。「今アヴァベルの中に肉フェスステージがあるんですよ。その中にアヴァレ牛ってやつがいるんです。10体倒すと肉チケットがもらえるので、なんとタダで食べれちゃいまーす!」。

「あれ、これは、肉フェスお台場って書いてあるでしょ?」「めっちゃ食ってくれって感じのやついるじゃん!「肉食いてぇんだよ」「お~!」。

(ゲームの中で牛を倒してチケットゲット)

「この画面を見せるとお肉1切れもらえる」「アヴァベルで検索!」。

牧野:アヴァベルさんのゲームの中に、肉フェスというコンテンツを入れ込んで、牛を倒して牛が食べられる。ちょっとシュールだなと思ったんですけど(笑)。

遠藤:そうですね(笑)。一応ゲームの中に肉フェスのステージをすぐ作ってもらって、そこで遊んでその場で、このときは宮崎牛などが食べられるようなことをやりました。>

牧野:『食戟のソーマ』、これもコンテンツですか?

遠藤:これは漫画からのアニメです。ちょうど食をテーマにした漫画で、この漫画の中に出てきた唐揚げを、リアルに作って肉フェスの中で売りました。

牧野:こちらも同じく肉フェスというコンテンツにカスタマイズしたときに、アヴァベルさんにしろ、食戟のソーマさんにしろ、コンテンツがどう肉フェスのターゲットに合ったかたちでカスタマイズできるか? それはコンテンツ側で考えて常にクライアント側に提案しているので、肉フェスにしかできないことだと思います。

イベント1本で1億5,000万円の赤字︎

牧野:ここまでお2人が手がけてきたイベントの数字やコンテンツによる紹介をしてきました。これを見ていただくと、すげぇなと。この2人、すげぇことを手がけていると伝わったと思います。

BACKSTAGEという言葉の通り、ぶっちゃけトークの場なので、当然いいことばかりではない。長いことイベントをやっていれば当然失敗もあれば、それなりのトラブルも抱えていると思うので、そこをちょっとぶっちゃけて話していただきたいと思います。まず中川さん。「赤い字」と書いて、赤字。

中川:これはまさしくその通りです(笑)。僕たちはイベントを自分たちで企画することがすごく多いので、天気や集客、クライアントが付かなかったり、いろんなことを経験しました。たぶん本当に10万の赤字から、1億5,000万の赤字まで1本でくらったことがあります。ここは相当、勉強になりました。

牧野:イベントを黒字にするって、なかなか大変ですよね?

中川:イベントを主催するって、みんなやりたがったり、やることだと思いますけど、それをイベント単体で黒字にすることは相当大変だなと……1発目から黒字はなかなかないと感じています。だからこのBACKSTAGEはすごい。

食中毒から学んだトラブルとの向き合い方︎

牧野:そして遠藤さん、これは昨年ちょっと話題になってしまいましたが、食中毒。

遠藤:本来、食のイベントでは絶対起こしてはいけないことですが、僕らの不注意と言いますか、こういうことになりました。

肉フェスもちょうど始めてからから2年目、3年目に入るとこだったので、けっこう勢いだけで突っ走ってきちゃったところもあったんです。ここでちゃんとした食のイベントとして、改めて立ち返って諸々を点検してできたかなと思います。

牧野:(具体的に)どういうことですか? お客様への対応や行政、いろいろあったと思います。眠れない日々が、胃が痛い日々が……。

遠藤:そうですね。行政で言うと、厚生労働省と保健所とも相当お話をさせてもらいました。食のイベントのガイドラインって、けっこう曖昧なところが多かった。そこのところを随分お話させていただいて、今はもう自主規制みたいなところで、民間側がガイドラインを作って守っていこうとやっています。

牧野:さっき、勢いだけでと言われましたが、イベントって勢いがなければ絶対できないので、そこは一番大事な部分ですけど、そこに潜む金銭的なリスクであったり、商品、口に入れるものを扱うリスクは当然ある。

そこに対して、どこまで気をつかって万全の体制を組めるかもイベントのバックステージの重要なポイントだと思います。こういったトラブルは必ず起きてしまうかなと。

僕もいろいろイベントをやっていますが、トラブルのないイベントなんてない。そこにどう向き合うか? トラブルをいかに解決するかで次に大きなメリットを得るというプロセスが、長くイベントを続ける上での重要なことだと思います。

いいことばかりでない中で、このお2人はイベントを辞めるという選択肢は絶対に取りませんでした。続けて、改善してさらに良くするためにどうしたらいいかを常に考えていらっしゃる。年間100本、200本というイベントをやっています。

リアルとITを融合する︎

牧野:ここからは、ここにいるみなさまといろいろ情報を共有していくことで、接点を築いていきたいと思います。

先ほどイオンさん、マルコメさん、アヴァベルさん、食戟のソーマさんという、自社が主催でやってるイベントに協賛していただいて、そこにカスタマイズしてベネフィットを提供する。これはどのイベントでもやっていると思います。

でも、イベントを長く続けることで、イベントそのものは有名になっていきますが、そうしたときに自分のリスクを切ってやるイベントに協賛をつける、諸々リソースを割くのではなくて、彼らが得たノウハウを他のイベントに提供することでビジネスをしていく。それを今お2人は力を入れてやってらっしゃいます。

これは、お2人からご説明をいただければと思いますが、まず中川さん。「PAC-STORE(パックストア)」と「ASOBASE(アソベイス)」。

中川:PAC-STOREですけど、バンダイナムコさんとツインプラネットさんと3社共同のプロジェクトです。もともとパックマンという、すごく強いIPだったと思いますが、それをちょっと今風にというか、クリエイティブをうちでいじらせてもらってデザインし直して、PAC-STOREという新しいIPAを作りました。このIPAを使ってさまざまなことをやっていこうというのがテーマです。

ちょうど今年の3月はTGCに出展したり、あと原宿の「カワイイモンスターカフェ」という、増田セバスチャンプロデュースのカフェで実際にイベントを開きました。8月は日本橋の三越さんで祭典を開いたり、さまざまな場所と連携してプロジェクトを作った。なので、僕はリアルな場所と、実際の商業施設や売る場所をつなげて、キャラクターを使ってやっています。

ASOBASEは9月の2週目にやるんですけど、BASEさんという、スタートアップで誰でもECサイトを作れるサービスと一緒に組んでやります。わりとこれは取り組みとして、IT系の会社さんと組んでやるので、そういうさまざまなIT系の会社さんとリアルの大事さに気づいてもらえてると思っています。

実際、下北沢の高架下にケージというイベントスペースがあるんですけど、そこでBASEに出店しているお店さんと、うちのモデルのフリーマーケットだったりワークショップだったり、DJライブみたいな音楽と合わせたファーマーズマーケットみたいなものを企画して、リアルなイベントと実際にネットで買えるものとの連動をやっていこうと思っています。

このほかキャラクターIPだったり、IT系の会社さんと組んだり、あとは地方創生で地域のいろんな方と組んだりもしています。9月2週目、9月9日、福島県の田村市という郡山の隣の市で、フェスがあります。

そこでうちのTEMPURA KIDSが実際に田村市に行って、地元の小学生にダンスを教えて当日ステージで一緒に踊る。そういう地方創生もけっこうやっています。