パリ協定がダメになることはない
枝廣淳子氏(以下、枝廣):今、(ニコ生の)コメントで「パリ協定はいいけど、アメリカ脱退。トランプさんになって、逆行するようなことをけっこうしている」ってコメントがあったんで、ちょっとだけ言っておきます。
アメリカって今、世界全体の温室効果ガスですが、主にCO2ですけど、16パーセントを出してるんですね。アメリカが脱退したら、それがダメになっちゃう、減らないという心配されてるんですけど。
だけど、アメリカの中で、「たとえ連邦政府がやめても、うちの州はちゃんとやるよ」とか「うちの企業はちゃんとやるよ」って言ってるところが、たくさん連合をつくっています。
そこのGDPを合わせると、アメリカの半分以上になるんですね。なので、16パーセントの国が外れるって言ってるけど、少なくとも8パーセントはやるって言ってる。
世界全体で見たらそんなにね、もちろん8パーセントはやったほうがいいけど、アメリカが抜けたからもう瓦解するとか、ダメになっちゃうとか、そういうことはないし。
アメリカがやめるんだったら中国もやめる、インドもやめるってみんなが言ったら困るけど、逆に中国とかは、もう自分たちがそれでリーダーシップ取っていくって決めているので。なので、トランプさんでアメリカ脱退っていう事態になるけど、だからパリ協定がダメになるっていうのは、ないと思います。
山田玲司氏(以下、山田):うんうん。
フランスの出した温暖化対策がおもしろい
田中優氏(以下、田中):あのさ、COP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)の時に、フランスが出してるアイデアがすっごいおもしろくて。要は、地球の農地のところに、炭を一緒にすき込んでしまえば、現在よりも0.4パーセントだけ入れてやるだけで、毎年出してる温暖化ガスをさ、全部吸収できるっていうのを出して。
乙君氏(以下、乙君):おー。
田中:フランスが大真面目にやり始めたんだよ。炭を土の中に入れると、微生物がものすごい活発に活動するようになって。おかげで、従来出した炭素をしまうと同時に、土が豊かになって作物もいっぱい採れるっていう。そういうアイデア出してんのに、しかもフランスやってるのに、あんまり世界で聞かないよね。
枝廣:そうですね。
田中:なんでだろうと思って。
山田:そうですね。
乙君:(笑)。
江守正太氏(以下、江守):いろんなアイデアあるんですけど、そうは言っても、エネルギーですよね。エネルギーから出てくるCO2を、基本的には減らしていかなくちゃいけないので。
田中:そうだね。
人類は化石燃料文明から卒業しようとしている
江守:ちょっと映してもいいですか?
山田:お願いします。
江守:ちょっとパリ協定の話をもうちょっとします。長期目標が決まったっていうのがすごく1つ大きいんですけれども。このグラフは、長期目標というのは「世界の平均気温が産業革命前を基準にして、2度よりも十分低く、できれば1.5度よりも低く上昇を抑えよう」と。
今、産業革命前から、だいたい1度上がっちゃってますけど、「あと0.5度か1度上がるよりも手前で温暖化を止めましょう」と世界的に合意したんですよ。その気温のグラフが、放っとくとこういうふうに4度上がっちゃうわけですけれども。
田中:4度。
江守:こういうふうに、「1.5度とか2度よりも低く抑えよう」ということになったんですよね。
じゃあ、その1.5度とか2度よりも低く抑えるにはどうしたらいいかは、どれぐらい対策しなくちゃいけないかも、そのパリ協定の中に書いてあって。
一言で言うと、今世紀中に温室効果ガスを出さない世界になる。主にCO2になるんですけど。CO2がですね、過去から言うと、この黒で書いてあるみたいに、こうやってずっと増えてきたわけですよね。現在はここにいるわけです。
このまま、とくにエネルギーを化石燃料でつくり続けると、こうやって世界の排出量っていうのは、これからもどんどん増えていく。この場合は気温4度上がっちゃうわけですね。
そうじゃなくて、それを減らしていって、どんどん減らしていって、どんどんどんどん減らしていって、「今世紀中にゼロにしようよ」と言ったんですね。
だから、別の言い方をすると、これはほとんどが、大部分はエネルギーなので、人類は今世紀中に化石燃料文明から卒業しようとしてる。そういう決意みたいなのを表したのが、僕はパリ協定だと思うんですね。
山田:感動的ですねえ、それは。
江守:その規模っていうのを、ぜひみなさんに理解してほしいなという。
山田:すごいね。
江守:ゼロに向かってるんだ、ということなんですよね。
電気自動車の導入がカギとなる?
田中:でも、そういう意味では、今、EUが電気自動車に変えて。しかもEUは、今新設される発電所の7割以上が自然エネルギーになってる。
だから、自然エネルギーで自給して、そこでつくった電気を使って車を走らせる。世界の中の二酸化炭素の排出量の2大要素っていうのが、家庭の電気。それともう1つが車だからね。こいつがゼロになったら、相当できる可能性があるんじゃないかと思うんだよね。
とくに日本も、フランスが電気自動車化するぞとか、イギリスも、ドイツも言い出しちゃったおかげで、電気自動車に向かわざるをえなくなってるからね。
江守:あと中国も。
田中:中国もな。その方向があると、少しは期待できんのかなって気はするよね。
山田:そうですね。
枝廣:電気自動車がいいのは、車ってだいたい24時間のうち平均して走ってるのは1時間って言われていて、だいたい置いてあるんですけど。電気自動車のそのバッテリーを使って、蓄電池の代わりにできるんですよね。
なので、家庭で太陽光発電で発電して、昼間は発電できるけど夜は発電できない。それを自分のお家の電気自動車に貯めておいて、夜また使うっていう。
そうすると、そのセットで電気自動車とソーラーパネルがあったら、もう優さんのお家みたいに、電力会社のお世話にならなくてもすむようになる。なので、これだけEVが、電気自動車が流行ってくると、価格が下がるので、蓄電池もきっと価格が下がって、そうすると再エネ自体が使いやすくなる。たぶんそういう時代がきていると思いますね。
田中。それ、スマートグリッドっていうのは実はそういう考え方なんだけど、その人がね、エイモリー・ロビンスっていう、江守が「俺にそっくりだ」って言う(笑)。
枝廣:(笑)。
江守:インタビューしに行ったことありますから、はい。
羊のゲップから出るメタンに苦しむニュージーランド
乙君:「牛のゲップのメタンは温室効果ガス高いから、人類がいくらCO2でやってもあんまり意味ないんじゃないか」っていう意見あるんですけど。
江守:意味なくはないんですけど、それも無視はできないことで。だから、CO2以外のところもそれぞれ対策が必要で。例えば牛のゲップだったら、エサを改良すれば、メタンのゲップをあんまり出さないようになるとかですね、そういう対策もそれぞれ進んでるんですよ。
枝廣:ゲップの話で言うと、困ってるのがニュージーランドなんですね。
乙君:ほうほう。
枝廣:ニュージーランドって、人の数よりも羊の数のほうが多くて。
乙君:あー、はいはいはい。
枝廣:なので、羊のゲップから出るメタン。メタンってCO2の21倍温室効果が高いので。
江守:同じ重さあたりですね。
枝廣:同じ重さでね。だから、メタンが1出ると、CO2が21、同じ重さだと、出すのと同じになっちゃうので、だからニュージーランドは家畜の、羊のメタンどうするかっていう話で。1人ずつ、こうね、口押さえてってわけにはいかないので。
(一同笑)
枝廣:江守さんが言ったように、酵素を加えて、エサを変えて、中の消化の仕組みに影響を与えることでメタンを減らすっていう。逆に言うとね、そういう酵素入りのエサをつくった人たちは、新しいビジネスなんですよね。なので、温暖化対策っていうのは、新しいビジネスが生まれる。
乙君:あーー、なるほど、なるほど。そう、それ質問もありましたけど。
田中:あの、メタンガスってさ、別名都市ガスなんだよ。だから、我々が煮炊きに使ってるのってメタンガスなんだよな。ドイツとかさ、ゴミを捨てた後の、その発酵してきたガスを燃料に使ってるわけだよな。
山田:はい、そうですね、はい。
田中:だからその、ね、ゲップのほうもさ、燃料にできねーもんかな?
枝廣:いやー、集めてね。
乙君:ゲップを集めるんですか?(笑)。
(一同笑)
枝廣:こうやってマスク(笑)。
乙君:それ、怖い世の中だな、なんか(笑)。
田中:けっこう重たいガスだからさ、集めやすいんじゃないかなと思う。
江守:それはまだやってないかもしんないけど、糞から出てくるほうはバイオガスでエネルギーに使うっていうのは、けっこういろんなところでやってますよね。