小保方氏の博士論文に関する結論

恩蔵直人氏(以下、恩蔵):予定の時間ですので、これより記者会見を始めさせていただきます。私は早稲田大学の広報室長・恩藏(おんぞう)でございます。本日はご多忙のなかお集まりいただき、ありがとうございます。

小保方氏の博士学位論文に関する、大学としての一連の方針がまとまりましたので、ご報告申し上げます。

まず総長・鎌田(薫氏)より、博士学位論文に関する取り扱いについてご報告申し上げます。

鎌田薫氏(以下、鎌田):本日はご多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

早稲田大学では、本学大学院・先進理工学科におきまして、2011年3月に博士学位を授与されました小保方晴子氏の博士学位論文に対し、本年2月以降に多くの疑義が寄せられました。

こうした事態を受け、慎重に同氏の博士学位及び博士学位論文について調査を行い、議論を重ねてまいりました。本日は第一に、小保方氏の博士論文の取り扱いにつきまして、本学としての結論が出ましたので、これをご報告申し上げます。

第二に、このような事態を招きました、大学院先進理工学研究科の指導教員の責任、並びに博士学位審査体制における制度上の不備の責任について、ご報告申し上げます。

第三に、本学における他の博士学位論文に同様な問題があるか否かを検証してまいりましたので、その中間報告をさせていただきます。

第四に、今後二度とこのようなことが起こらないように、本学の全ての大学院研究科における博士学位論文の審査体制を見直し、再発防止策として、また一層質の高い博士学位論文を世に出すことが出来るように、課程博士における博士学位及び博士学位論文の質向上のためのガイドラインを策定いたしましたので、これをご報告申し上げます。

本学と致しましては、今回の事案について深く反省し、今後は全力で信頼回復に努めてまいります。同時に今回の事件を契機としまして、早稲田大学は今後どのような覚悟をもって、国際的基準に照らして恥ずかしくない博士学位を授与するべきなのか。同時に、いかに世界の学問の発展に貢献できるかを真剣に議論してまいる所存でございます。

本論に入ります前に、不適切な内容を含む博士学位論文の取り扱いに関する我々の基本的な考え方について、一言説明させていただきたいと思います。

第一に、学問の府として不適切な内容を含む学位論文がそのまま存続し、公開されている状態を放置しない、ということであります。第二には、教育の場として学生の指導と責任を放棄しない、ということであります。

第一の点に着目しますと、不適切な内容を含む博士学位論文は、直ちに取り消すことが妥当であると思われますが、すでに調査委員会報告書が述べておりますように、一旦与えた学位を取り消すためには、本学学則第23条の定めるところに従って、不正の方法により学位の授与を受けた事実が必要とされています。

従いまして、不適切な内容を含むけれども、学位規則23条の定める取り消し要件に博士論文、これをどのように取り扱うかという問題が生じてまいります。

また大学側の指導や審査体制に不備や瑕疵(かし)があって、それが無ければ不適切な論文に学位を授与することは無かったであろうと思われる場合に、単純に学位を取り消すことで、果たして大学としての責任を果たしたことになるのであろうか、という問題がございます。

今回の問題は、こうした場合に教育の場としての指導と責任をいかに果たしていくのか、こういった課題を含んでいるということをご理解いただければと思います。

我々は先ほど申し上げましたように、今回の事件に適正に対処すると同時に、これを契機として本学の教育研究体制を飛躍的に向上させるため、総合的な対策を講じることと致しました。

小保方晴子氏の学位を取り消す

鎌田:それではまず、小保方氏の学位論文について、本学の検討結果をお伝え致します。

慎重に検討を重ねました結果、本学は学位規則23条に則って、小保方晴子氏の学位論文について、不正な方法により学位の授与を受けた事実を認定し、この学位を取り消すことと致しました。

ただし、学位を授与した先進理工学研究科における指導審査過程には、重大な不備、欠陥があったと認められるため、一定の猶予期間を設けて、再度の博士学位論文指導、研究倫理の再教育と行い、博士学位論文を訂正させ、これらが適切に履行された場合は、学位を維持できることと致します。

しかしながら当然のことでありますが、これが適切に履行できない時は、学位は取り消しとなります。

なぜ猶予付きの取り消しとしたのか?

鎌田:このように猶予付きの学位取り消しとした理由について、若干重複もありますけれども、ご説明をさせていただきます。

本学学位規則第23条に、先ほど申し上げましたように、不正な方法により学位の授与を受けたと判明した時には、学位は取り消すことが出来る旨を規定いたしております。

調査報告書を見ますと、博士学位審査における小保方氏の研究には実態があり、その内容は学位請求に値すると認められております。

しかしながら、審査分科会及び研究科運営委員会において最終的な合格判定の対象とされた博士学位論文は、判を取り違えたことにより、公聴会における実質的な審査の対象となったものとは、大きく異なっていました。

実質的な審査の対象となったものとは異なる学位論文を提出したことは、研究者として果たすべき、基本的な注意義務を著しく怠ったものであり、これによって審査分科会及び研究科運営委員会での合格判定が行われたことは、不正の方法により学位の授与を受けた事実に、該当致します。

しかしながら、誤って提出された学位論文に対して博士学位が授与されたことについては、先進理工学研究科における論文指導、論文審査過程に重大な不備、欠陥があったものと認められるため、一定の猶予期間、まあ概ね1年間を考えておりますけれども、この猶予期間を設けて、再度の博士論文の指導、研究倫理の再教育を行い、論文を訂正させ、これが適切に履行された場合は、学位を維持できるものと致しました。

大学側の責任者も、減給等の処分

鎌田:続きまして、今回の博士学位論文に関する責任についてご報告申し上げます。

本論文における指導・審査が不適切であったことにより、小保方氏の指導教員及び論文審査の主査を務めました、大学院先進理工学研究科の常田聡教授を1ヶ月の停職とし、副査であった教授を訓戒といたします。

また今回の案件は、全学の教育研究体制における極めて重大な事案と受け止めており、その管理責任をとり、私、総長は、総長手当の20%、5ヶ月分を返上することと致しました。同時に、当時の研究科長も研究科の審査体制の不備の責任をとり、役職手当20%、3ヶ月分相当額を自主的に返上致します。

以上が、私からご報告申し上げることでございます。