ピープルアナリティクスとはなにか

對馬誠英氏(以下、對馬):それでは、ピープルアナリティクスの友部さんから。よろしくお願いします。

友部博教氏(以下、友部):みなさま、こんばんは。ピープルアナリティクスグループという人事分析をする部門のマネジャーをつとめております友部と申します。

経歴はDeNAに2011年に入社してるんですけれども、入社するまでの7年ほどは大学のほうで助教授をしたり、研究員やったりしていました。人工知能やデータマイニングといった、データを扱うものを使って研究をバリバリやっていました。

それを使ったWebサービスも専門にしていました。インターネット上から、AIを使って人の名前を入れると、その人の人間関係を全部取れるサービスを作りました。あとはInstagram上のきれいなお姉さんたちや、イケてるお兄さんたちの画像を自動的に集めて、それを表示していくサービスも運営しておりました。

ということで、ずっとデータ分析やAIの領域で生きてきた人間です。

本日お話しするピープルアナリティクスですが、最新のデータ分析技術を活用してあらゆるデータを収集分析して、フルスイングできる環境を作るのが我々のミッションとなっています。

DeNAはゲームやさまざまな事業で大量のビッグデータを使った分析を持っているので、こういった技術をちゃんとHRにも持っていこうとなりました。そこで使ってきたデータを使うノウハウと、実際に人事に集まってくるデータを組み合わせていって、そこから従業員の方々が働きやすい環境を作っていくのが私たちのミッションになっています。

こういうピープルアナリティクスの話をすると、みなさんが期待してしまうのが「人事に役立つなにかを見つける」ということかと思います。そういった知識を発見をすることが1つ目の目的です。

いい人材の特徴を可視化&定量化

友部:もう1個、大事だなと思っているのが、人事の中でいろいろな制度や施策、企画をやりますが、それがちゃんと改善されていき、最終的に従業員のみなさんにつながっているかどうかの改善を回していく。PDCAがちゃんと回る状況を作るのも我々のミッションとしては大事だと思っております。

まず最初に、発見というと、(スライドを指して)こういうことを期待してしまうんですよね。例えばマネージャーから見たら「メンバーをモチベートするようなコミュニケーションスタイルってどういうのがいいの?」。

いろいろな人と満遍なく話しているのがいいのか、質なのか・量なのか。そういったものを可視化していき、いいマネージャーの条件を可視化や定量化するなど、コミュニケーションがうまくいく条件を見つけていくことです。

あとはチーミングですね。いろいろなチーム、プロジェクトが立ち上がった中で、どういう組み合わせにすると、そこのパフォーマンスが最大化されるのか。人の個別のパーソナリティを見える化していって、それをパズルのように組み合わせて、最適なチームをAIなどを使って出していきます。

また、どうしても退職というのは大きなトピックになります。実際に退職予測を立てて、3ヶ月後、4ヶ月後にどれぐらいの人が辞める可能性があるのか。実際に退職に及ぶにあたって、単にやる気がなくなったから辞めという単純な話ではなく、どういうメカニズムで辞めていくのか。

まず「上長からこういうことを言われて、そのあと周りのメンバーとのギャップを感じて、自分の成長が行き詰まって」のような、いろいろなストーリーがあります。そのメカニズムをもっと明確に発見していくことなどをデータ分析を用いてやるのがミッションになります。

以上の点よりも、より大事だと思っているのが、人事自体の施策のPDCAを回すことです。施策や制度をちゃんと振り返って改善することですね。

施策の振り返りも重点的にチェック

友部:いろいろな制度とか施策をやると、なんとなく「仕事やったな」という感じがするんですけれども、それが実際にどれだけ従業員の方々に役立ってるのかを計測します。

もしうまくいっていないようだったらそこを改善しなければいけないし、うまくいってるようだったら、さらに良くするためにはどうすればいいかを考えていく必要があると思っています。

こういった制度、企画を考えたときに、振り返りをやっているとき、こんな「あるある」がある思います。とにかく新しい施策を始めました。施策して実際に施行して半年ぐらい経つと、「やったことはいいんだっけ? 悪いんだっけ?」と、いろいろな人から聞かれるので、振り返りをします。

「うーん、振り返りの仕方がわからないな」という状況で、やることはとりあえず従業員さん向けにアンケートを取ります。アンケートを取ってみたら、この施策をいいなと思う人が60パーセントぐらいいました。「半分超えているから、いいような気がするんだけれども、40パーセントがダメだなと言っているなぁ」と思います。

さらに、もう少し細かいコメントを見たりすると、エンジニアの人からは「コストがかかっているこれは、意味があるのか?」など、いろいろ文句を言われます。それでは「コスト面を改善するために効率化するか」みたいなことを考えます。

実際にこれだと課題点がなんだか曖昧なままで場当たり的に対処していることになるので、制度自体が良くなっていきません。本来ちゃんと改善のフローを考えてやりましょうという話です。

(スライドを指して)私が事業部にいた時にやっていた改善のフローなんですけれども、本当に基本の基本の改善フローですね。

まずは現状を把握しましょうと。社内で、例えばやりがいという観点で見たときに、「そもそもやりがいを感じてる人がどれぐらいいるのか?」「どれぐらい感じていないのか?」みたいな話になると思います。

2番目が目標とのギャップです。先ほど對馬から話があったとおり、やはりうちのメンバーとしては、やりがいが100パーセントではないといけない。やりがいがあるか・ないかというメンバーが20パーセントいるのであれば、ここをうまく解決しようと考えます。

3番目に、実際にこの20パーセントのメンバーに対して、どういった施策をやるかを検討して考える。その中で、この20パーセントのメンバーのやりがいを上げるために、例えば「役員などのマネージャーとのコミュニケーションがどうやら少ないようだ」というものが見えてきたら、彼らとのコミュニケーションを活性化する施策を実際に実行します。

最後に、その施策が実行されたら5番目の結果の振り返りをやる。結果を振り返った結果、それがうまく回ってないようだったらもう1回、3番の解決策を考える。というごく当たり前のPDCAを回す。

施策に対してターゲットを明確に

友部:この中でとくに人事で回す上で我々が重要に思っているのが、解決策を考えるにあたって、それぞれの施策に対してターゲットを明確にすることです。

いろいろな制度を我々が作ると思いますが、なんとなく社員全員にうまく回ったらいいなという感じで動いてしまいます。社員全員に、例えば弊社の場合だと2,000人いるメンバーに対して、全員に効く施策はありません。

2,000人いる中で、新卒から上がってきたメンバーか、中途から上がってきたメンバー向けがいいのか。それとも職種別に、ビジネス向けか、エンジニア向けがいいのか。それとも年代別に、30代向けがいいのか、40代向けがいのか。みたいなものがあると思いますので、そのターゲットを明確にする。

次に、そのターゲットの人たちがどういう状態になっていればいいかを明確にしていきます。

そういうことを決めていくと、それを計測するにあたってのKPIとしてなにがいいのかって決まってくる。KPIを決めて、その上でKPIを計測できるようなアンケートやログ、ヒアリングをする仕組みを作ってデータを集める。その可視化をする準備をしてあげる。

そこまでできてしまえば、あとはそのKPIを追いながら目標値との差分を見ていって、ズレの要因を見て、施策を検討しましょうということをぐるぐる回すことができるようになります。

ここで決めるKPI、どういうものを用意するかが、実は我々の腕の見せどころになっています。実際に各HRのファンクションのいろいろなメンバーとコミュニケーション取りながら仮説を立ててもらって、その中でKPIを育てて、こういった振り返りのフローを作っていくのが我々の役割となっております。

多彩なメンバーたちが目指す世界観とは

友部:こういったPDCAを回す、発見するにあたって、ピープルアナリティクスを見ているメンバーが私を含め5名います。

それぞれいろいろなバックグラウンドがあって。例えば私みたいに事業部出身でデータサイエンスをやってるメンバーもいれば、つい最近までゲームプロデューサーをやっていて、その中でゲームの改善のPDCAを回したメンバー、もともとHRでデータを集約していくデータスペシャリストたちが集まっています。

こういったHR出身のメンバーと事業部出身のメンバーが互いにコミュニケーションを取って切磋琢磨しながら、シナジーを生み出しつつバリューを出す体制を我々は作っております。

こういったメンバーで最終的に目指す世界観ですが、我々はやはりデータ分析やピープルアナリティクスのスペシャリストです。実際に各ファンクションで施策を回すメンバーの下支えとなって新しい良い施策を考えられる状況を作ってあげる。そうすると、その施策がやがて社員に伝わって、社員の人たちがフルスイングできる状態ができることを目指してやっています。

実際に我々がやる仕事としては、いろいろな施策を決める、制度を変えるというときの意思決定を後押しするような分析を行います。

あとは実際に施策を考えるメンバーが、課題が明確なものは実はそれをやればいいだけの話です。中に入っていると課題が顕在化されていないものがあります。そこもコミュニケーションを取りながらどんどん解決していく。

だから、要はデータ分析だからといって分析だけするよりは、ちゃんとその施策を回すメンバーとコミュニケーションを取って、そこと同じ釜の飯を食いながら、一緒に仮説を立てながら、社員がフルスイングできる環境を作るのが我々の仕事になっております。

では、次にブランディングの野崎のお話になります。

クラブ勤務→DeNAの事業サイド→HR本部

野崎耕司氏(以下、野崎):こんばんは。

僕の自己紹介をさせていただきますと、2015年にDeNAに入社しました。

入社したあとの2015年10月から、子会社出向ということで、2年間ぐらい子会社にいました。メディア部門で、雑誌を作ったり、サブスクのサービスの責任者をやっていました。今年の7月からHR本部に移ってきたというキャリアになっています。

ブランディンググループとはなにかということについてご説明します。ミッションは、さっきご覧いただいたように、DeNAにはやりがいをもっている人が約80パーセントいます。その熱意をもって働いている人、そこに至るための環境や仕組みを広げていくことが我々の役割としてます。

今年5月ぐらいのギャラップ社の調査で「日本では熱意があって働く人が6パーセントしかいない」という結果がありましたが、少なくともそれよりは多い数字だと思っていますので、その事実をしっかりと伝えることが大事だと思っています。

メンバーには、もともと雑誌の編集長やっていた方や、カメラマンのキャリアを持つ人材と、人事で10年近いキャリアを持つ人材が集まっています。コミュニケーションと人事に長けたハイブリッドなチームを作っています。

もう1個の特徴としては、発信だけを担うわけではなくて、「制度開発から発信まで」ということを掲げて、そのベースとなるネタまで掘り下げてチームとしてやっているところです。

「フルスイング」プロジェクトの要諦

野崎:(スライドを指して)まとめると、こういうロールになっています。制度開発して、そこで作ったネタを漏れなくオウンドで展開をしていく。レバレッジのきくPRやイベントを作っています。

当然、対外だけではなくて、対内に対しても「うち実はこんな熱意ある人いるよ」「こんな役割あるよ」「こんなイケてる制度あるよ」ということをしっかり伝えていかなければいけないと思っていて、そういったインナー向けのコミュニケーションも重視しています。

実はそのインナーコミュニケーションが、ただ中に伝えるだけで終わるのではなくて、その外側に対しての1個の情報収集ツール的な位置付けにもなっています。そのため、ただの社内報で終わらせないことが大事です。

しっかり外へ伝えるためのツールなんだという位置づけにしています。そこも一貫してどういった切り口で伝えていくのかをテーマに決めてやっています。

そこで具体的にやってきたことはなにか。まず「フルスイング」というプロジェクトを立ち上げました。「全員でフルスイングするぞ」と、全員でゴールを認識することがすごく大事かなと思っています。

これはDeNAの中だけでの思想ではなくて、「日本中フルスイングしようぜ」という思想でこのゴールを立ち上げました。

このフルスイングできる仕組みを作ることと、これを実際にやっていることを発信したり、やり方を伝えることによって、僕らだけではなくて多くの人をフルスイングさせたいと思っています。

Willに沿った役割にアサインされているかが大事

野崎:もう1個はスライドの下に書いてある吹き出しなんですけど、人がフルスイングするために大事なことは、1つではないと思っています。

「Willに沿った役割にアサインされてますか」ということも大事ですが、それだけではなく「その役割に沿って適切に裁量権任されていますか」「その裁量でやったものに対していいフィードバックもらえていますか」「出た成果に対して報酬がフィットしているか」。

「一緒にやってるチームに安全性があるか」「ハード的な意味での働く場所や環境、自分のコンディションがいいか」などそういったことを一つひとつ、イメージとしてはスライドの左から右に、順番にいろんなものを作っていくのがこの思想です。

もう1つは、10月にリリースをしましたが、自分の工数の原則30パーセントを他の部署の業務に使える「クロスジョブ制度」と、「副業制度」を作りました。

クロスジョブだと、先ほど對馬から話がありましたけれども、弊社はかなり事業が多様なので、例えば人事からオートモーティブに行くとなると、もはや転職感覚です。

「そこにどこまでコミットできるかわからないけど、ちょっと試してみたい」という時の、トライアルのような使い方もできると思っています。実は「やっぱりこの仕事おもしろいわ」と思ったら、そちらでフルでやってもらうことも考えています。

こういった社内外における、自分がやりたい仕事ができる制度を作ることによって、先ほどの図に戻ると、Willに沿った役割をしっかり提供する制度を作っています。

働く人たちの姿を通して制度の魅力を訴求

野崎:あとは発信ですね。オウンドメディアをやっているんですけれども、それ以外にも外に発信している中で、ユニークなことでいうと、毎日社員を紹介する「毎日DeNA」を発行しています。

これもただ人を紹介するのではなくて、その人を通じた「実はこんなおもしろい仕事あったんだ」という、その役割自体を多くの社員の方に伝えたり、「この社員の方がこんなに熱意を持って働けているのは、実はこういう制度があったから働けてるんだ」などを紹介しています。

人を通じた、役割や制度、それ以外の環境などを伝えることによって「だったら自分もこれをやってみよう」「これ使ってみよう」などに気づくきっかけになったらいいと思っています。これが取り組んでいることの3つ目です。

今後、取り組んでいきたいこと

野崎:今後、取り組みたいことですが、コアはやはりコンテンツを作っていくことが大事だと思っています。コンテンツを作った結果、それがブランドとして広がることだと思っています。

もちろん、今「コンテンツ=人」も含めていますが、僕らとしてできることは人を伝えていくだけではなくて、その制度や人事企画を作っていくこともあると思っているので、いろいろなものを作りたいなと思っています。

実際にすでにこれからまさに始まる予定の「マネージャーノート」これはまだ仮の名前なんですが、マネージャー向けの社内報のようなものです。

書籍でも多くのマネージャーにとっての教科書があると思います。そこで紹介されている事例とかが他社のケースだと、「これは、やっぱり●●社の話だよな」となってしまった時に、なかなか自分に腹落ちしにくいこともあるかと思います。

そこで、実際にDeNAのマネージャーの人に、自分のマネジメントで苦労したことや、DeNAのカルチャーにおいて、どんなノウハウがあるのかを伝えてもらうことによって、「確かにこれなら俺もすぐ使えるわ」と思ってもらう効果があります。要するに、DeNA版のマネージャー向けの教科書のようなものを作りたいと思っています。

また、「役割を見つけましょう」という文脈において、比較的スムーズな話ですけど、社内に求人メディアなどを作っていくことだったり。役割という意味で、外でトライしたいという思いはあると思いますので、企業留学みたいなものをしていく制度も検討したいなと思っています。

DeNAの働き方改革のために

野崎:その人自身がなにをやってきたのかというキャリアの話や「これからなにをやりたい」「なにをできるのか」を、可能であれば全社員で透明化できたらいいなと思っています。

それによって、先ほどのシェイクハンズなども含めて、「君がそういうWillで、そういうcanで、かつこういったキャリアがあるんだったら、うちに来てほしい」など、そういったことも広がると思います。そういった人材の流動を図るためにもこういったことができたらないいなと思います。

先ほども360°フィードバックを見てもらいましたけれども、懸念が1つあります。当然インプットするのは、負担がなかなかかかります。半年に1回の頻度でやっているんですけど、それを毎月で「先月と比べて良くなったか、悪くなったか?」ぐらいの、レバーを差し替えするような、そういったようなツールが作れたらおもしろいなと思っています。

「ヘルスコーチ」とスライドに書いてあるのは、コンディションもすごく大事だと思っているので。ダイエットのためのヘルスだけではなくて、パフォーマンスを上げるための体調管理。例えば、コーチをつけてやりたいという、妄想レベルではありますが、できたらいいなと思っています。

いろいろと妄想やアイデアを紹介しましたが、ここで大事だと思っているのが、「トライ&エラーで最適解をつくりだす」。やはり制度でやろうと思うと、とくに2,000人という規模でいざ導入すると重いところがあります。

そこは基本トライ&エラーで、例えばまずはチーム小さくやってみる、期間限定でやってみる、もしくは失敗前提でやってみるというかたちで、トライ&エラーでやって最適解を作り出していく。そういったことをしていけたらいいと思っています。

ありがとうございました。以上です。

司会者:ありがとうございました。

野崎:ありがとうございます。

(会場拍手)

事業サイドを巻き込むための策は

司会者:ここまで広く取り組みについてご紹介をさせていただきました。少し駆け足だったかもしれません。

ここからは質疑応答の時間とさせていただきたいと思います。「もっとここ聞きたかった」や自身の悩みでもいいです。会社で課題に感じていらっしゃること、うまくいかないようなことなど、もしあるようでしたら、ぜひ手を挙げて質問いただければと思います。

質問者1:お話ありがとうございました。僕は事業部側から来ていて、参加させていただきました。その背景として、今まで弊社だと、人事主導で採用とか進めていたんですけど、やはりなかなかうまくいかないなというところがありました。

人事側からは「もっと事業部ちゃんと参加してくださいよ」と言われていながらも、なかなか事業部が参加したときにどういうインパクトが出るのか。そもそも「いや、俺、採用のことわかんないしな」という悩みがありました。

人事の方から事業部を巻き込んでいくのは、最初はハードルがなかなか高いのかなと思うんですが、初期の段階で巻き込んでいくために、とくに実践したことや苦労したことがあれば、ぜひ教えていただきたいなと。

對馬:ありがとうございます。そうなんですよね。そのサイクルが回り始めると「いいね」という感覚が全社の中に浸透してくるので続くんですよね。「やっぱり、そういう感覚のやつがあっち側にいっていろんなこと考えてくれると、いい制度もできるし、いい採用ができるよね」って思ってくれるといいんですけど。

本当におっしゃっていただいたとおり、最初の石をどう転がすかというのは重要だと思ってます。我々でいうと、会社の判断だと思いますけど、事業側をやっていた本部長が人事に持ってきました。そうして、「やっぱり、その感覚いいよね」ということが浸透して生まれていったと思います。経営者がどう判断するかが、ベースでは重要だと思います。

そういえば、このメンバーもなんで人事に来たのか聞いたことないので聞いてみますか。

無理に会社の意思に寄せることももちろん1つの解だとは思います。ですが、人事をやりたい人が実はいるんじゃないかなと思っています。そういう声に耳を傾けて、人事で迎えることをもっと柔軟にやれば、そういう人材が人事に集まるかもしれない感覚があります。私は最後に話しますけど、友部さんどうですか?

友部氏と野崎氏がHR本部に異動した経緯

友部:私は去年の12月までゲームの事業部の分析の部署の部長をやっていて、約50人のメンバーを見ていました。それでいうと、もう少し人事にレバレッジが利きそうだという思いがありました。

ゲームの事業部の分析をしていて、ほかの部署の分析とかもう少しやりたいなと思ってた中で、けっこう欲張りなので、「横断で人事に行くといいかな」というのが人事に来た1つ目の理由です。

もう1つは、もともとはデータ分析をやってたので、一番おもしろいのは人の分析です。ですので、希望を出して、對馬といろいろ面談して、「じゃあ来いよ」「いくよ」という感じで行きました。じゃあ、あと野崎。

野崎:あまり参考になるか、わからないんですが。どっちかというと、自分の人生のミッションは、人はもっとアクティブにクリエイティブであったほうがいいと、すごく信じていました。

例えば、僕は外で仕事するのが大好きで、自分のデスクに1日に10分ぐらいしかたぶん座ってないんですけど。

對馬:ちょっと問題ですよ(笑)。

野崎:(笑)。

對馬:いないんですか?

野崎:いない。本当にいない(笑)。本当にいないんですけど、「Slackで連絡取るからいいかな」と思ってます。

やはり、そのほうが僕にとっては、クリエイティブに仕事ができるなと思っています。アクティブにクリエイティブに働くということがすごく大切です。

「それができるのはどこだろう?」と考えた時に、やったことに対してレバレッジが利く、効果が見えるものはやはり人事だと思って、自分から希望して来ました。

成長途中に「つまらない大企業になっちゃうかも」

對馬:そういうものが純粋な動機かもしれないです。私も2012年に人事に異動してきました。当時、会社はアメリカのゲーム会社を買収したタイミングで、良く言えば、ダイバーシティが進んだ。「いろんな人材をしっかりマネジメントしていかないと、これ以上成長できないね」というフェーズに入ったんですけど、悪く言うと、DeNAのDNAが薄れていく感じでした。

なんとなく今までの共通言語が通じなくなって、なんとなくなし崩し的に大切なものが失われていく感覚を、事業サイドでやっている時にすごく感じていました。「これ、気がついたら、つまらない大企業になっちゃうかもな」という感覚をすごく持っていて。

大切にすべきものを決めて、変えるべきものを意志を持って変えて、ということをうまく舵取りしながらやりたいなと思いました。それを自分がやりたいなと思って「だったら人事かな」と思って異動してきたんですよね。そういう純粋な声に耳を傾けながら、人事のメンバーを増やしていったら、こうなりました。あまり答えになってないかもしれないですけど。

質問者1:ありがとうございます。

對馬:ほかいかがでしょうか? どなたでも。

(会場挙手)

なぜ「フルスイング」という言葉を使ったか

質問者2:ありがとうございます。大きく諸々の人事の改革をされたと思います。今回、「フルスイング」で大々的にやられた背景として、経営や会社のあり方として葛藤する部分がある中で、大きく同時多発的に人事のあり方を見直そうということがあったと思います。

そこの背景・ストーリーとか、そこの中でなにを大切に、今回「フルスイング」という言葉を使われようと思ったのかがすごい気になりました。教えていただけると幸いです。

野崎:いったん僕から。今回「フルスイング」というプロジェクトを立ち上げて、いくつかの制度などを新たに始めさせてもらいました。でも、実はその施策の中には、けっこう過去からやっているものも、いくつかありました。先ほどのキャリアマネジメントアンケートだと2年以上前から実はやっています。

なぜこのタイミングなのか。大きななにかというわけではないんですけど、やはり、言葉が適切かわからないですけど、うちの会社は良い意味でも悪い意味でも内弁慶的なところというか、持っているものをもっと外に出していこうというところに対して、そこまで積極的ではない武士っぽいカルチャーがありました。

世の中にシェアすべきDeNAの文化

野崎:でも、それがすごくもったいないと思いました。むしろ僕の視点でいうと、社会にとって良くないなと思いました。先ほどの繰り返しですけど、すごい熱意ある人がたくさんいて、そういった仕組みがあるのなら、還元と言うと大げさですけど、世の中に対してシェアすべき事柄だと思います。

そうしたことが大きい背景としてあり、ちょうどそのタイミングでいくつか新しい制度というのができていました。このタイミングでまとめて、世の中に発信することになりました。その中でより発信しやすいというか、みなさんに伝わりやすいかたちでお伝えしたほうがいいだろうなと思いまして。「フルスイング」という標語を作ったというのがアンサーになるかと思います。

質問者2:ありがとうございます。

對馬:繰り返しですけど、「フルスイング」というプロジェクト名が多少キャッチーではありますけど、人事の中を大きく改革したという感覚はあまりないですね。なので、これまでもやってきたことをさらに加速させるために旗印を掲げたという理解です。

いろいろな制度を新しく取り入れていますけど、それは世の中や、社員と対話をする中で、新しい会社や人事のあり方というのは、常に不断の努力としてかたち作っていかなきゃいけないなと思っています。そういうタイミングで「フルスイング」というパッケージで括ったという理解でいただければと思います。

データサイエンスを取り入れるとコストはどうなる?

質問者3:今日はどうもありがとうございます。

對馬:ありがとうございます。

質問者3:ちょっと欲張りなので、2つぐらい質問いきたいんですけど、いいですか?

對馬:どうぞどうぞ。

質問者3:まず1つ目が、今、社員の方々が「能力を発揮できている」と回答したのが8割ぐらいというお話だったんですけど。そこから100パーセントを目指すというのがROI的にはけっこう厳しいんじゃないかと感じていまして、そのへんがどうなのかなと思いました。

そう考えると、友部さんみたいなデータサイエンスで有名な人たちを入れるとコストになるんじゃないのかな? というのが、まず1つ目です。

2つ目は副業OKに関してです。私は弱小の中小企業に勤めているので、副業で来る人たちがすごく貴重です。というのは、もう優秀な人は大企業や有名な企業にしかいないので、そういうところしか人材を集められないと思っています。

実際、副業で来てもらっているエンジニアがいるんですけど、優秀でリクルーティングしてるんですね。けっこうなびきそうで、来るんじゃないかなと思っています。「そのへんってどのように扱うのかな?」というのが正直疑問としてあります。すいません、2つ質問お願いします。

對馬:1つ目、そうですね、ROIがどうなのかというのは友部の力で今後さらにクリアになっていくと思います。もしかしたらそういう時が、ある閾値がくるかもしれないですけど。

一度「一緒に働く」と決めてお迎えをした社員ばかりですので、みんなが100パーセント力を余すところなく発揮してほしい精神は持っています。しかし、そこにチャレンジやアタックはしたい強い気持ちは持っていますが、どこまでどういくかというのはこれからのチャレンジ次第かなと思います。友部さん、がんばってください。

友部:はい。

副業に寛容的なカルチャーはどこから?

野崎:副業の件は、議論する中で、経営陣を含めて同じような話はあったかなと思います。

その上で、僕の考えも多く含まれていますが、自然の摂理として、致し方のないものは致し方ないかなと思っています。ただ、その逆もまたあるのではないかと僕は思ってます。実際に外で働いてみた結果、やはりうちの会社がすごく魅力的だったなと思うかもしれない。

僕もデータがパッと出てこないですけど、実際に、DeNAに出戻っていただいている社員というか、1回辞めて戻ってくる社員が実はすごく多くて、外で働いたからこそ、この中の魅力というか価値が伝わったということなんじゃないかなと思っています。

究極的には、目的としてあるのは自己実現です。そういった制度を作ろうというところ自体の原理原則としては、すごく大事にしていきたいなと思っています。結果的に退職してしまったら、それは致し方ない部分もあるんじゃないかと思っています。

ただ、僕らとしての努力がたぶん足りなかったと思っていますので、そういったことをしっかり逆にやらなきゃいけないという、いい励みの材料になればいいかなと考えています。

事業内部に人事は具体的にどう入り込むのか

質問者4:よろしくお願いします。僕もできれば2個うかがいたいなと思います。

1個目が、對馬さんのパートの中で新たに取り組んでいる内容で、事業内部に人事機能を持つお話があったと思います。その過程で事業内部に入り込んでニーズの最適化をする。これは細分化していくことだと思っています。

その中でとくに事業内部に入り込むというところが、御社であれば、まだ60パーセントの方が事業部から人事に来られているという背景があるので、まだ見えやすいのかなと一方で思うものの。今取り組んでいる内容を透明化させて、その内容を人事と話すことで細分化させていくことは、けっこう難しいと思うんですよ。

その中で今どういった取り組みをされているのか、うかがえる範囲でもう少し具体的にいただけるとうれしいです。

一方で、僕も副業に関してなんですけれども。今、働き方の中で、1社に雇用される働き方がもうなくなってくると思いますが、なかなか副業が解禁されないのも課題だと思ってるんですね。

数年前でいくとロートがやってると思うんですけど、こちらに関して御社が踏み込まれたのはとてもいいニュースだと思っています。今後、副業が進む上で、会社の中で副業を推進していくメリットや、逆にこういったところが課題でなかなか副業が進まないというところで、もしお考えがあれば、いただきたいなと思います。

對馬:2点目は野崎から返しますね。1点目は、もう少し具体的に質問の背景を伺えれば。

質問者4:今取り組んでいる内容に対して、事業の内部に人事機能を持つお話があったと思いますが、その次に事業の内側に入るというお話があったと思っています。

「事業の内側に入る」というニュアンスが僕の中では消化しきれなかったので、そこに対して、人事に紐づけるかたちで、もう少し具体的な事例なのか、行っている業務をもう少し聞かせていただけるとうれしいです。

全社の部門を横断する人事のメリット

對馬:なるほど。そういう意味でいうと、スライドの1と2はだいぶ近しいことを言っていると理解いただいていいと思っています。

人事のメンバーがHR本部として関わっていたときに比べて、席も移りますので、通常の事業のミーティング、飲み会などにも参加する頻度も増えます。

もちろん、事業経験をしてる同じ人材ではあるんですけれども、事業の中に籍を置いて、実際のレポートラインも事業側に置いて、評価もそちらでするかたちに踏み込んでいくと、だいぶコミュニケーションが密になることは変化としては起きています。

そういうメンバーは、ダブルレポートにはしていますので、私にもレポートがあがってきて、リファレンスを取りながら、最終的な評価を決めていくかたちにはなります。比重としては事業部の中に入っているメンバーは、事業部のほうが(評価が)大きくはなりますので。

そういった意味で、距離感というか、そういうものによって多少影響されるところを私は無視できないなと思っています。人は感情の生き物ですので。綺麗事だけではうまく物事は進まないと思っていますので、そういう意味で内部に置くことの良さというは出てきているのかなと思います。

ただ、もちろん意識をしないとそのメンバーが全社観点とか持ちづらくなりますので、デメリットも生まれます。例えば全社を横断した異動の調整がしづらくなったり、採用時に候補者をうまく他の事業部につなぐことができなかったり。

こういう組織体制を組む上で避けたいが起きそうなことを想定しながら組織運営することが重要だと思っています。すいません。ちょっとお答えになってるかわからないですけど。ちょっと副業の話。

なぜ副業導入が社会で進まないのか

野崎:副業の件で、念のため確認なんですけど、「ほかの会社がなぜ導入が進まないのか?」で合っていますか?

質問者4:そうですね。

野崎:これも僕の考えですけど、基本的には副業は経営判断だ思っていて、会社によって違うと思います。経営=事業で、事業をするためには人が大事です。

大事なことは、どんな人がその事業に必要なのかということだと思っています。その人たちがどんなニーズがあるのかが会社によってすごく違うんだろうなと思っています。

例えばうちの会社ですと、非常に多様な、よりチャレンジングな働き方を希望・期待しているメンバーの人が少なからずいるというファクトが明確にあります。

とくにそういった人は今後もうちで活躍していただきたい方、そういった思想を持っている方は、今後も絶対増えていくだろうなと思いました。そういった意味において、うちにおいてはやるべきだと判断をして導入したというのが経緯だと思っています。

なので、そこの会社や事業にとって、どういった人が必要で、そのためにはその人たちがどんな働き方を期待しているのかを、より各会社がダイレクトに気づけば気づくほど、どんどん導入されていくと僕は思っています。

逆にいうとそこが実は違うとなった場合、働いている人にそこのニーズはないという会社も中にはあるんじゃないかなと思ってまして、そういった会社では無理にそういったことを導入する必要性がたぶん経営判断としては無いと思っています。

直接的な回答にはなってないんですけど、なぜ入れるところと入れないところの差があるのかを見てると、僕はそういった考えを持ってます。