転職ではなく、会社に残って変えようと思ったことはあるか

安藤哲也氏(以下、安藤):ほかになにか質問は?

質問者2:(佐藤氏が子どもを保育園に週2で行く)幸福度の高いお迎えを、7年間続けてきたんですけども。

佐藤雄佑氏(以下、佐藤):素晴らしい!

(会場拍手)

質問者2:毎日定時に退社してっていうなかで、やっぱり会社の中で厳しい視線に晒されるときもありますよね。そういう厳しいなかでやりながらも、私は会社のなかにずっと残って厳しい思いをしたからこそ、後輩に同じ思いをさせたくない。

それがたぶん僕の芯にあって、そいつらを守ってやるためには自分も会社で上に上がっていくしかないなと思って、残るという決意を今しています。来年はどうなってるかわからないです(笑)。今のところはそう思っています。

(会場笑)

さっき川島さんがおっしゃったように、転職ありきが良しというのはどうかなと思いながら、私もみなさんの話を。選択肢としてみなさん、ご自身であったり家庭の大事なことというのを優先されて、決断されてっていうことですけど。

例えば、企業に残って、いろんな考えがあって転職されていますが、残って下の人のためであったり、もちろん自分の家庭とか個人の考えを優先されてやられているんですけども。

私みたいな、今みたいなメンタリティで、後輩に同じ思いをさせたくないとか会社に残って変えようとかっていう、そんな思いがちらついた方はもしかしたらいらっしゃらなかったのかな、というのが聞きたかったんです。

川島高之氏(以下、川島):僕は29年間サラリーマンをやってたからね。逆にこのなかではレア系ですね。安藤さんは9回転職で、僕は初めて転職というか会社を辞めて。でもまさに大きな組織に残ってもできるし、やるべきこともあるよね。それはさっきも話したけど、自分が早く帰りたい、子どもといたい、PTAをやりたい、NPOをやりたい。

でも部下たちにも当然やらせたい、あるいは、やらせるべきだとなると。大企業のなかでも会社全体は相変わらずオールドファッションなモーレツ社員の集団だけど、自分の部署だけでも変えることはできると思うのね。ある程度できる。

ポジションが上がれば傘の範囲が広くなっていく

川島:少なくとも自分の部署だけは変えてやろうって言って、僕はずっとやってきた。会社はでかかったので、会社を変えるほどの力はなかったんだけど、少なくとも自分の部署は変えることができた。だから、それをやっていけばいいんじゃないかな。

質問者2:傘の範囲が、徐々にポジションが上がれば広くなっていくという。

川島:そうそう。当然係長よりも課長、課長より部長だったら、傘がでかくなるし、横への影響も高まるので。ただ、会社全体を変えるまでいかないうちに辞めちゃったんだけど。

ある程度まではできるはずなので、僕は大企業に勤めて自分のできることを、会社というか部下たち・後輩たちのためにやるっていうのも、1つの選択肢でいいと思います。すごく忙しい会社なんですよ。私、知り合いにいっぱいいるんですけど。

質問者2:長時間労働で有名(笑)。

(会場笑)

だから視線が痛いんですよね。帰るときに背中に刺さってる視線が。それを、中で変えたいなと思って。

川島:変えられますよ。いいじゃないですか。もうね、怖いものなしでやっちゃえばいいと思いますよ。

小津智一氏(以下、小津):成果を出してても、厳しい視線に晒されるんですか?

質問者2:直接晒される場合もあるし、自分のなかでおばけと戦ってて。「きっとこういうことを思ってるんじゃないかな」「こうだろうな」みたいなのを、やっぱり自分のなかで作ってますよね。

小津:ちょっとストレスですね。

質問者2:自分は耐性があるから、中に残っててもたぶん生きれるだろうから残ってるけど(笑)。たぶん、耐性がなかったら違う選択をしてるかもしれないですけど。自分はまだ残っててもいいかなと思ってるので。

川島:時代がこっちにゴロンと変わろうとしてることは、間違いないから。逆にフロントランナーでいい稀有な存在、ポジティブに会社が見てくれる境目だと思いますよ。

安藤:社長になっちゃえば?

質問者2:一番大きな傘になる。

安藤:ガラっと変える。

小津:会社だったら、残業代を払わずに定時に上がって成果を出してたほうがよっぽどいいですけど、会社としては。

質問者2:経営者はそう思ってるってことですね。

小津:中間が……。

安藤:そこ、今イクボスでやってます(笑)。ほかにはどうですか?

家庭の視点と会社の視点からの質問

質問者3:私、男性が9割の会社に勤めているので、男性の多いなかにいるのはなんとも思わないんですけど。いつもこういう感じなんですけども(笑)。こういうセミナーとかって、だいたい女性が多いじゃないですか。

これだけ男性がたくさんいらっしゃるので、みなさん興味関心があるんだなというのをすごく感じて。会社で人事部で働いているんですけれども、当社の9割の男性にはこういうテーマが響くんだなというのが、今日すごく勉強になったことの1つです。

みなさんに質問したいことが、2つありまして。1つは家庭の視点、1つは会社の視点なんですけど。家庭の視点は、私は4歳の娘がいて夫と共働きをしています。ただ、川島さんはよくご存知かもしれないですけど、私の夫はほとんど言葉を発しなくて。

(一同笑)

言葉をほとんど発しないんです。連絡事項はLINEですべてやっていて、言葉がなしで物事が進んでしまっているんですけど。ただ発しないだけで、実は思ってることってあると思うんですけども、パパの気持ちを引き出すために私はどうしたらいいですかっていうことを1つ、パパのみなさんに聞きたいのと。

もう1つは会社の視点で。当社は平均年齢が43歳くらいで、あと10年もしないうちに、会社の半分以上が50歳を超えてしまうんですね。やはりバブル世代以上の方は守りに入ってたりとか……。

川島:逃げ切ればいい。

質問者3:逃げ切ればいい!(笑)。口には出さなくても、心ではそう思ってる人たちが多いんですけども。その人たちに、そうじゃないんじゃないのって、逃げ切ればいいって流しに入らないで、もっと……。

安藤:成長しろよと。

質問者3:はい。そう思ってもらえるためにはどうしたらいいかという、2つを教えていただきたいんですけども。

安藤:悩ましいですね、どっちも(笑)。現役のパパが。

定年という仕組みをやめるべき

秋鹿良典氏(以下、秋鹿):参考になるのかなあ(笑)。いいですか。2つ目のご質問。第4コーナーに入りかけて、守りに入りかけてる人をアクティベートするっていう話ですよね。まさに今日、100年ライフっていうタイトルでやってるんですけども、定年のあとはたっぷりあるわけですよね。そこを逃げ切れると思ってるんですかね? 逆に、そこが残念でしょうがないですね。

安藤:想像できないんじゃない?

秋鹿:例えば、サラリーマンで定年まで勤め上げていいんですよ。そこから先、まだたっぷり時間がある。そこをどう楽しむか、どうしたいかっていう想像力が、たぶん乏しいんですよね。

坪井:定年がゴールなんですよ。

秋鹿:そうそう。

安藤:定年後のことは定年になってから考えるっていう人が8割。

秋鹿:そこに疑問を感じたんですよ。

安藤:定年っていう仕組みをやめるべきなんですよ。そこがなくなれば、この先も現役で稼ぐためにどうすればいいのか。家族とハッピーになるにはって考えるじゃないですか。ゴールと思っちゃうから、そこでもう思考停止になってます。

秋鹿:そこからまた違う第2章、第3章があると思えば、そこへの仕掛けは人より早くやったほうが、後が楽じゃないと。

安藤:というのを、誰が言うと一番テコが動くかっていう話だよね。

質問者3:そうそう、そうです。

安藤:たぶん僕らが会社に乗り込んでいったって、「なに言ってんの、こいつら」みたいになるよね。こんなチャラいのに。

川島:お前に言われたかねえんだよって(笑)。

(会場笑)

安藤:固まっちゃってるおじさんたちが、いちばんこの人に言われれば動くよねみたいな人を探すべきです。

質問者3:どうしたらいいのかっていうところ……。

安藤:同じ言葉でも誰が言うか。奥さんからも絶対無理だし。

秋鹿:娘だ! 娘。

安藤:やっぱり(笑)。僕もそうかなと思ったんだよね。最近、僕も女子大で授業をやってるんだけどね、必ず女の子たちに言うのは、「うちに帰ったらね、『お父さん、イクボスって知ってる?』って聞いて」って(笑)。娘にそれを言われると、けっこうショックっていうか。知らなかったりすると、「えー、今イクボスは働き方改革のメインエンジンでしょ」とか言っちゃって!

(会場笑)

マネープランなどを教えたら、その後は余生だと思ってしまう

秋鹿:やっぱり家族、身近な人が言うのが一番いいと思いますよ。半径2、3メートルに言われたほうが。

安藤:娘にな。

秋鹿:家族は大事ですよ。仕事をたくさんやって、寝食も忘れて外でたくさんお金を稼ぐお父さんはいいお父さんですよ。1つの例として。でも、家族同士が過ごす時間は唯一無二ですよね。

しかも今、仕組みとして定年というのがあるから。そのあとのことを考えたときに、65歳で突然ある意味裸で放り出されて、「さあ、どうする」っていうのは、いくらなんでもちょっとさみしいですよね。

安藤:怖いよね。正直ね。

秋鹿:その不安のほうが先に来るんじゃないかと思うんですよ。

川島:そういうセミナーは、中高年者に向けてはないんですか? セカンドライフセミナー、セカンドキャリアセミナーって、大企業でよくあるじゃないですか。

質問者3:今はないので、50歳以上のキャリアセミナーというのはやっているんですけれども、なかなか……。

川島:響かない。

質問者3:退職金がいくらもらえてって……。

川島:あー、そっちのほうになっちゃうんだな。

安藤:老後のマネープランね。

秋鹿:マネープランは大事だなぁ。

安藤:それは手段だから(笑)。

尾形和昭氏(以下、尾形):結局のところ、要はマネープランだとかそういったことを教えたら、その後は余生だと思っちゃうんでしょうね。たぶん逆効果になると思っていて。

私も40歳のタイミングで、会社にいたときに労働組合として、このあとどういう会社生活を送っていくのか、世の中にどう問うていくのかということを、会社って結局社会の公器じゃないですか。その中で、自分をどうやって実現させていくんですかっていうことをやっていかないと。

安藤:40からだね。40だとまだ伸び代があるから。

尾形:50からのタイミングでよく言われていたのが、結局は50のタイミングで言われても、あとの対策を打つのはあと10年か15年ですよと。そんなタイミングで言われても困っちゃうんだよねって。

川島:今さら言われても困ると(笑)。

尾形:組合員からけっこう言われたんですね。

最近のママたちは夫を諦めてる?

安藤:だから、この年代の人たちがきてるような気がするんだよね。50代の人はここにはこないですよ、たぶん。

川島:今、新橋にいますよ。

(会場笑)

安藤:このまま逃げ切れればって(笑)。

川島:「今どきの若い者は」みたいなね、ずっとやってますよ(笑)。絶対。

安藤:来てる50代は、危機意識があるんだろうね。

尾形:やっぱり40代からそういったことを考えるきっかけをいかに作っていくかが、今から企業に求められることかなと。

安藤:夫の話だ。

川島:夫の話は坪井君が一番いいじゃない。

坪井:今のお話と絡むんですけど、身近な人が言ったほうがいいっていう。ただ、たぶん40代50代の人たちって、家族からも実は家族じゃないと思われている可能性が高くて。

川島:あー、そういうことか。

坪井:ママ友がいっぱいいるんですよ。主夫なので。

安藤:夫を諦めてるママたちね。

坪井:そう、夫を諦めてるママたちがあまりにも多すぎて。

安藤:(会場を指しながら)みんな「ヤベー」みたいな(笑)。

(会場笑)

坪井:夫はそうは思ってないと思う。稼いでくるのが。

安藤:ATMね。

坪井:そうそう。

川島:だってさ、俺の息子が高校野球をやってて、野球部のママ友ね。うちのカミさんも行ってて。この前行ったときに、ママ友の1人のパパが単身赴任になったって話になったら。

うちのカミさんは「あら、大変ね。残念ね。かわいそうね」って言おうとしたら、来てたママが全員「ラッキー!」って。そこに来てなかった野球部のママ友から、LINEでハートマークで「よかったね」みたいな。

最初、カミさん意味わかんなかったんだって。なんでほかのママたち、夫の単身赴任にみんな「ラッキー!」って言ってるのか。1、2分考えたら、あぁそういうことかと。

安藤:亭主は元気で……。

川島:カミさんが家に帰って報告があって、「今のママたちはこんなこと考えてんのよ」って言われて。たぶん、そういうママが多いですよね。

安藤:LINEでしか意思を。

質問者3:会話がない(笑)。

安藤:夫の心をほぐすには、どういう手があるか。

質問者3:言葉を引き出すためには。

坪井:旦那さんがなにを考えているのか、その業務連絡以外でなにを考えているのか。

安藤:それがわかんないんだよ。

質問者3:それが聞きたいんです。

まったく会話のない夫婦が、会話のきっかけを掴むには

坪井:なにかを話す機会が、絶対に必要だと思うんですよ。夫婦だけでどこか出かけるとか、ランチをするとかないですか?

質問者3:ほぼないです。

坪井:お酒を飲むこともないですか?

質問者3:夫ね、お酒が飲めないんですよ。私が1人で飲んでる(笑)。

安藤:趣味はなに?

質問者3:趣味は車で、車にはすごくお金をつぎ込んでて。趣味の面ではたぶん満たされてるんですけれども。

坪井:車の中でしゃべるのは?

質問者3:いやいや、(運転に)真剣なんで! 話しかけるともう……。

安藤:自動運転。そういう問題じゃない(笑)。

(会場笑)

質問者3:自分で操ることが(笑)。

安藤:自分でやりたいのね。

坪井:子どもの話とかってどうなんですか?

質問者3:子どもを介して話をする。

安藤:かなり重症だねぇ。

坪井:かなりキテますね。

川島:ファザーリング・ジャパンにぶち込んだらどう?(笑)。会員で、みんなで揉んであげたほうがいいかもしれない。あと、よく夫婦のイベントがあるじゃない。パートナーシップか。そういうイベントもあるので、ぜひ。

質問者3:今度引っ張ってきます。

秋鹿:引っ張ってくるのが大変そうですね。

質問者3:そうなんです(笑)。

小津:そこは騙してでも。

川島:車と子ども、一緒に連れてきちゃうっていうのは(笑)。

小津:逆の立場だったんですけど、実は僕もそういった時期があったんですね。そのときに僕がしたのは、毎朝、朝起きたら奥さんの手を握って、「いつもありがとう」と、「今日も1日よろしくお願いします」と。

でもそれは、いきなりやろうとしたら、「なに、気持ち悪い」って。もうずっと言われてたんです。それがずっとやってたら、変わったんです。

安藤:何ヶ月くらい?

小津:手を握り出したのは10日くらい。

安藤:10日!

触れるというスキンシップは絶対大事

小津:これは、僕が奥さんにやったんですね。

安藤:奥さん、口聞いてくれなかったんだ。

小津:まあ、ちょっとの間。

安藤:あのころか(笑)。

坪井:スキンシップも大事ですからね。

小津:触れるっていうことは絶対大事です。旦那さんも考えてるかもしれない。

坪井:ちょっと触れる。ちょっとした、肩を叩くとかでもいいし。じゃれる。タッチからでもいいし、ちょっと触るみたいなことから始めると、少し心がほぐれてくる可能性があります。

小津:僕も絶対あると思います。劇的に変わりました。本当に。

質問者3:ありますかね。ちょっとがんばってみます(笑)。

小津:相当覚悟がいるんですけどね。

安藤:ママセミナーみたいな展開になってきた(笑)。