恐竜の脳は見つかるか

オリビア・ゴードン氏:「化石」をイメージするとき、最初に思い浮かぶのはおそらく恐竜の骨でしょう。博物館の天井から吊り下げられている、壮大で素晴らしい恐竜の骨格を私たちは見たことがあるはずです。

では、恐竜の「脳」はどうでしょうか? 血管、肌、そしてその他の臓器はどうなっているのでしょうか?

非常に古い化石の場合、私たちは骨のみを見ることができます。なぜなら、何万年も状態を保存するのは、他の柔らかい細胞に比べて骨がもっとも容易だからです。しかし、私たちは恐竜を含め、何億年も前に生息していた生物たちの化石化された軟細胞を発見しました。もちろん、恐竜の脳もその発見に含まれます。ただし、とても稀なことです。

どの生物も化石化が始まる前、最初に必要なのは死です。そしてほとんどの化石は埋葬される必要があります。しかし、だいたいの過程において、埋葬が適切に行われることは稀です。それどころか、死んでしまった体は長い間、外に放置されてしまいます。ハイエナなど死体を食べる動物や微生物にとってうってつけのターゲットになり、柔らかい細胞は腐敗していきます。そうするうちに、埋葬される前に動物の体は骨だけになってしまうのです。

長い時間をかけて、ミネラルは骨が埋まっている場所から溶け出し、今日私たちが見ている化石の中で凝固します。古生物学者は、化石化された骨から泥の中に埋まっている肌組織を再現するなど、間接的に軟組織の研究に使用できます。私たちはこれを生痕化石として認知しています。

しかし、動物たちの軟組織が腐敗する前に適切な速さで埋葬されていた場合、とってもとってもとーっても稀に、実際に化石化された軟組織を発見することができるのです。

このもっとも重要な例の1つは、カンブリア爆発時代のものです。これはおよそ5億5千年前で、非常に大量の生物が地球上に出現した時代です。しかし、その種の多くは軟体動物で、骨がありませんでした。ですから、普通に考えればその動物たちの化石は発見できないということになります。

彼らにとっては残念で、私たちにとってはラッキーなことですが、軟体動物のいくつかの種はすぐさま水中の泥の層の中に埋葬されたため、化石化が適切な方法で始まりました。私たちが発見したカンブリア爆発期の軟組織の化石がなければ、地球の歴史上でもっとも興奮する時代について私たちは知ることはできませんでした。

また、私たちは恐竜を含め他の動物たちの軟組織を発見しました。例えば、2005年、ノースカロライナ州立大学の研究者は、実際の血管とその他の軟組織がティラノサウルスの化石に残っていたことを発見したと発表しました。これはつまり、その組織が化石化されていない、ということを意味します。この組織はただ腐敗が進んでいなかったということです。

研究チームは、組織が腐敗しなかった理由として、恐竜の血液にある鉄がホルムアルデヒドに変化したことが原因なのではないかという説を出しましたが、この説は今では否定されています。なぜなら何億年にもわたる有機物の直接的な保存というのは、ホルムアルデヒドの有無に関わらず、可能ではないと思われるからです。

他に、議論の余地がない発見もあります。2016年に、古生物学者が9,900年前の恐竜の尻尾が、琥珀の中に完全な形で保存されていたものを発見しました。

さらに私たちは、2009年に発見されたオルニトミムスの化石のように、化石化された肌組織や羽が含まれている化石をわずかながら発見しました。オルニトミムスがダチョウに非常に似ているのはすでに知っていますよね。しかし、新しい化石は、おそらく体温調節を助けるための羽の構造や、毛がない脚などが同じだということを示しました。

そして、恐竜の脳も発見したのです。2016年、研究チームは、脳細胞が含まれている小石ほどのサイズの化石を発見したと公表しました。まだどの恐竜のものかはわかっていませんが、およそ1億3,300年前のものだということはわかっています。この化石が私たちが発見した、唯一の、恐竜の脳の化石です。

しかし、多くの化石が発見されるのを待っているのです。恐竜の軟組織の部分から何を学べるか、楽しみですね。