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捕鯨問題の本質はどこにあるのか 脳科学者・茂木健一郎氏と映画監督・佐々木芽生氏が大激論

捕鯨問題の本質はどこにあるのか 脳科学者・茂木健一郎氏と映画監督・佐々木芽生氏が大激論

2017年8月29日、代官山 蔦屋書店にて、同書店主催が主催の「価値観が違う人とわかり合える? わかり合えない?」『おクジラさま ふたつの正義の物語』刊行記念トークイベントが開催されました。映画監督・プロデューサーの佐々木芽生氏が6年の制作期間をかけて「捕鯨論争」を描いた映画、『おクジラさま ふたつの正義の物語』。その書籍版の刊行を記念して、著者の佐々木氏と脳科学者の茂木健一郎氏との対談が実現しました。欧州社会から厳しい批判を受けている捕鯨問題。はたしてこの問題に解決策はあるのか? 白熱の議論が繰り広げられます。

シリーズ
「価値観が違う人とわかり合える? わかり合えない?」 ~『おクジラさま ふたつの正義の物語』刊行記念~
2017年8月29日のログ
スピーカー
映画監督/プロデューサー 佐々木芽生 氏
脳科学者 茂木健一郎 氏

なぜ、イルカやクジラを「神聖視」するのか? 

茂木健一郎氏(以下、茂木) 質問は受けるの? 司会者 もしも質問がある方いましたら、1つ2つぐらいはお受けできるかなと思いますけれども。 茂木 ぜひ。シーシェパードの方もいらしてますかね? (会場笑) 司会者 そうですね、あるいは太地町出身の方ですとか。 茂木 グリーンピース? 司会者 いらしたらぜひと思います。何か質問ある方いらっしゃいますでしょうか? 茂木 前世はクジラだったとか。 (会場笑) 司会者 はい、ちょっとマイクをお渡しします。 質問者1 興味深いお話をありがとうございました。説得力のないなりなんですけど、一応お坊さんをやってまして、太地町にも2回ほど行きました。まだ本とかちょっと読ませていただいていないので、あれなんですけれども。一番の疑問は、なんで西洋の人がクジラとかイルカを神聖視するのかっていうのが、やっぱり未だに理解ができないというか。 茂木 あっ……、まぁいいや、ちょっと黙っていよう。 (会場笑) 質問者1 やっぱり宗教観の違いなのかなというのは職業柄思うところもあるんですけれども、いつも思うのは、マグロの解体ショーをやるなら、別にイルカだって解体ショーやったって構わないと。サンマを食うのもマグロ食うのも同じだと思うので……。 茂木 あの、ちょっとイルカやクジラの知性に関する標準的な科学論文をお読みになったらいいんじゃないですか? 単に無知なだけだと思いますよ。あと、「西洋」って十把一絡げにするのはそれは違うんだっていう話をしたじゃないですか。 質問者1 先ほどおっしゃられていたのはそうなんですけれども、頭がいい・悪いで決めてしまうと、生き物を食べずに生きていけない我らとしては……。 茂木 だから、それもよくあるクソリプみたいなあれで……。そういうレベルで議論をしてたんじゃ、すごく緻密に議論してたはずだったんですけれども。まぁいいです、すいません。ほとんどクソリプに近いコメントだと僕は正直思ってるんですよ。 質問者1 申し訳ありません。 茂木 もうちょっと自分で考えたらいいんじゃないですか? っていうか、調べたらいいじゃないですか。 佐々木芽生氏(以下、佐々木) でも、情報があんまりないんですよね。 茂木 いや、ありますよ。Wikiとか。 質問者1 ただ、なぜ神聖視するのかがよくわからない。その1点だけお願いします。 茂木 「神聖視」っていう言い方自体が、だいたいすごい不正確だと思いますよ。

環境保護団体と当時のアメリカ政権の利害が一致

佐々木 やっぱりいろんな経緯があって、クジラって本当に乱獲されたんですよね、欧米の歴史の中で。油だけ取って、もう本当に獲り尽くしてしまったと。その中で、これでいいのか、「もしかしたら減ってるんじゃないか」という議論が20世紀のはじめぐらい、19世紀の終わりぐらいから科学者たちの中から出てきました。 でも、やっぱり産業としてオイル、石油が発見されるまでは(クジラを)獲り尽くすという感じだったんですね。ただし、これは食糧として獲ってないので、欧米の人たちには燃料、資源っていう考え方だったんですよ。ところが、いろんな環境保護運動とかが出てきて、(1970年代に)「Save the Whales」っていうすごいキャンペーンがはじまるわけなんですけれども。 その時に、チラッと映画の中にも出てくるんですけど、この時ちょうど日本が車を輸出しはじめたり、あとは冷戦の最中でクジラを獲ってるのはロシア・日本だということで、ちょっと政治的に結びつけられた感もあったりするわけなんですね。 さっき茂木さんがおっしゃってたジョン・C・リリーという人が、ずっと「イルカは賢い、賢い」って、イルカの知性に関する研究が1950年代からずっとはじまっている中で、『わんぱくフリッパー』という人気ドラマが出てきたり、いろんな映画が出てきたりすることで、イルカはすごい身近で、人間の友達なんじゃないかっていう感覚がずっと培われてきたんですね、メディアを通じて。 そして「Save the Whales」という、これはある意味政治的なキャンペーンなんですけれども、これでクジラを神聖化すると。クジラっていうのはアメリカの有権者にとって、1970年代には獲らなくてもいいわけですよね。アメリカには獲らなくて困る有権者や産業は残ってなかった。 だから、環境保護を進めたい環境保護団体と、アメリカの当時の政権なんですけど、そこで利害が一致して、「じゃあ、クジラだ」と。「クジラを守っていくんだ」と、これを象徴として、だんだんキャンペーンで盛り上げていったっていう経緯があります。 その中で、やっぱりグリーンピースとかが、すごく有効な、映像を使ったメディアのキャンペーンを展開するわけですね。「Save “the” Whales」と、「the」をつけることによって、クジラって1種類しかいないんじゃないかと(思わせる)。本当は80種類以上いるのに、すべてのクジラが絶滅に瀕しているというような印象操作をしたり。そういったことがいろいろあって、やっぱりクジラっていうのはある意味、環境保護運動の象徴になっていったっていうことですね。 環境保護運動の象徴になり、理由はどうあれ、非常に偉大な動物だと、本当に守りたい動物だっていうふうに、欧米の人たちが決めたわけです。なので、これは本当に人類共有の財産だというような認識も持っているわけです、彼らは。 例えば、「牛と豚とどう違うんだ」ってなった時には、牛と豚っていうのは、国境内でみんな飼育して、屠殺して、それぞれの国がそれぞれの国のルールに則って管理をすればいいわけですね。 映画の中でも漁師さんが言っているのは、「僕たちはカンガルーを食べるわけじゃないし、カンガルーはいいのにどうしてクジラはダメなんだ」みたいな話もあるんですけど。カンガルーというのはオーストラリアならオーストラリア国境内で管理をされていると。ただしイルカ・クジラっていうのは、人類共有の財産だっていう共通認識ができてしまったので、これがたまたま日本の近海を泳いだからといって、それを獲らないでほしいという思いがあるわけですね。 日本の人たちは、「いや、でもこれは水産庁で管理されている魚類と同じなんだ」と。鳥類と哺乳類を管理する法律があって、それは環境省が哺乳類、鳥類を全部保護してるわけなんですけれども、クジラに関しては水産庁が管理してるんですね。 だから、水産庁が管理するということは、やっぱりできるだけ獲って食べると。国民の食卓にできるだけ安い値段でおいしい水産物を届けるというのが水産庁のゴールであって、でもこれが環境省に管理されると、これはなるべく獲らないで保護しましょうっていうことになるわけですよね。 例えば、IWC、国際捕鯨委員会なんかに出ると、捕鯨に反対する、いわゆる「反捕鯨国」と言われるところの代表者はだいたい環境省の代表が来て、日本は水産庁の代表者が行く。そこからしてもぜんぜん目的も違うし、クジラに対する見方が違うので、そのへんは本当になかなか噛み合わないなぁっていうふうに思います。すいません、長くなりましたが理解いただけたでしょうか?

科学的にみてイルカとクジラはやはり特別な属性

茂木 でも、今のはぜんぜん違うと思いますよ。 (会場笑) 茂木 だから、それは全部人間界のくだらない政治的なポリティクスの話で、もっとエビデンスに基づく、普通にバイオロジーとして見て、イルカとクジラはやはり特別な属性があって、それがだから、特別な属性が特別じゃないっていう言い方はいくらでもできるんだけど、まず調べたらいいんじゃないですか? 佐々木 でも、それが特別だって決めるのも人間ですよね? 茂木 えっとねぇ、サイエンティフィックな議論というのは、別に価値判断はしてないんで。だから特別っていうのは、だから、なんだろう……。なんかずっと佐々木さんの話をさっきから聞いてて、一貫して人間界の政治とかそういう話しかしないんだけど、もっとバイオロジーというかそういうものに基づく議論もあってしかるべきだと僕は思います。 佐々木 例えばこの議論において、やっぱり科学者がいっぱい参加してるんですね。やっぱりクジラを守りたい、イルカを守りたい……。 茂木 いや、だから「守りたい」というよりは、単純に、バイオロジカルにスタディしてるだけだと思います。プライマリーには。だから、「保護したい」とか……。でも、それはもっと、なんかわけわかんない人間界の事情とか。だからさっきも「西洋」っていう言葉もすごく不用意に使ってるし。 佐々木さんも今、「日本では」とか、「水産庁が」っていう、なんかね、ガバナンスの話をしてるけど、そういう話が好きなんですよ、なんかこの日本語の言語圏は。でも、サイエンティフィック・スタディっていうのは、価値判断以前に、いろいろ調べてるんですよ。それをまず勉強をしていただきたいっていうのが正直な僕の感想です。 佐々木 この捕鯨問題に関しては、残念ながらサイエンティフィックないろんな調査結果とかっていうのは、わりと無視されがちなんですよね。 茂木 そんなことないでしょう。あなたが言ってるのは、単に資源の数とかそういう話でしょ? 俺が言ってるのは、バイオロジーとして、クジラの例えば群れの構造とか、コミュニケーションの構造がどういうふうになってるのかということについての膨大なデータが蓄積されているので……。 だから、佐々木さんの話ってさぁ、さっきから聞いてると、どっちかというと資源の有効利用とか、サステナビリティとか、人間側の都合に基づく議論の話にしか聞こえないんだけど、俺が言ってるのは、価値判断を前にした、純粋に生物界の中でイルカとかクジラはどういう属性を持った生き物なのかということについての科学的エビデンスの話をしてるんですよ。 佐々木 でも。じゃあそれはなぜイルカとクジラだけなんですか? 他にもすごく……。 茂木 いますよ、さっきからタコとか言ってんじゃねぇかよ! (会場笑) 茂木 なんかさぁ、素直に聞かないんだよねぇ。なんかすごく、単純な話……。 佐々木 素直じゃないですか。 茂木 ぜんぜん素直じゃないし。だいたい「日本が」とか「西洋が」っていう主語の立て方、本当やめてほしいんだけどね。 佐々木 じゃあ、どういうふうに言えばいいんですか? 茂木 あのさ、誰が主張してるじゃなくて、どういう内容のアイデアかっていうことだけ言えばいいじゃん。ただただ「クジラは利用可能な範囲で人間は獲って食べていい」っていう考え方があるって。それは別に日本人が全員それを思ってるわけじゃないじゃないですか。 「日本がそう思ってる」って言うと、日本の属人的な思想になるけど、別にそれはどこの人だってそういう考え方を持つ人がいるわけでしょ? だから、イルカとかクジラが知性を持った、例えば群れで行動するとか、例えば親子関係っていうのが数十年にわたって続くとか、そういういろんな特性を持っている生物であるということは、別にそれがいい・悪い、価値があるかどうかは別として、どの国の人でもある方法で調べればわかることなんだから、だからそれは別に属人的なことじゃないじゃん、そこらへんが気持ち悪いんですよ。

  
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捕鯨問題の本質はどこにあるのか 脳科学者・茂木健一郎氏と映画監督・佐々木芽生氏が大激論

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