「臨床試験済み」という表記の意味

オリビア・ゴードン氏:シャンプーのボトル、ビタミン剤、お気に入りの保湿クリームに「臨床試験済み」(clinically proven)と書かれているのを見たことがありますか?

それは実際のところどういう意味なのでしょうか。

普通はそうした表記を見ると、人への効果がいろいろな試験を通じて実際に証明されたんだろうと考えます。おそらくはその製品を利用したグループと、利用しないグループに分かれて行われたのでしょう。

その結果、そのローションかサプリメントか何かの製品を使えば、その効果が定量的に現れたのでしょう。実験を繰り返しても似たような結果が表れるはずです。

至極当然の話で、「臨床試験済み」という表記をするのはそういう商品だと思わせる狙いがあります。ですが、実際のところその他にも意味があるのです。

「臨床試験済み」というのはほとんどキャッチフレーズでしかなく、明確な意味や、いわゆる臨床試験をクリアしたという意味を持っていないのが現状です。臨床試験が行われていたとしても、きちんとした手順が踏まれておらず、その結果の正当性には疑問符が付くこともあります。さらに時には、その製品のウリに合致した結果が出ない時もあるのです。

企業は「臨床試験済み」という宣伝文句を箱や看板に貼り付けて、とにかく製品を売り込もうとします。

そこまでの意図はないかもしれませんが、実際そうなっています。

アメリカではこうした事態を防ぐため、FDA(アメリカ食品医薬品局)とFTC(連邦取引委員会)という2つの政府機関があります。FDAは食品、医薬品、化粧品の安全性を保証し、その認証を製品に与えています。

医薬品は店頭にならぶ前に、その安全性と効果を厳格な認証を経て認められる必要がありますが、ほとんどの化粧品は医薬品ほどの検査を求められません。

医薬品でなければ、企業は病気を予防したり治療に効果があるといった宣伝文句はつけられません。仮につけようものなら、FDAは企業に対してそうした宣伝文句をつけた製品の販売停止を求めることができます。

多くの規制を発行するFTCは、誇大広告や虚偽の広告をさせない役割を担っています。例えば「認知症に効果が認められる臨床試験済み」という表記を製品にしたならば、認知症への効果を示す明確な証拠があることになります。仮にその主張を裏付ける証拠を示せなければ、FTCはその企業に対して罰金を課すことができるのです。

実際、脳トレゲームを開発していたLumors Labsなど世間が注目する2つの事例がありました。FTCはこのゲームメーカーに対して、間違った印象を与える広告を取り下げるように命令すると共に、200万ドル(約2億1千万円)の罰金を課したのです。すごいですね。

ですが、消費者としては、FTCはちまたに溢れている虚偽広告の製品の後追いしかできないことを覚えておく必要があります。ルールを徹底させるには時間がかかり、その間に多くの企業が虚偽広告をします。

「臨床試験済み」という記載も、実際に臨床研究されたものかもしれませんし、そうではなく法の網をかいくぐっているのかもしれません。

お店で「10歳若返って見える臨床試験済み」という表記の保湿クリームを見かけても、購入する前によく調べたほうがいいでしょう。

なんとか買ってもらおうと時間と策をめぐらしているかもしれませんよ。