なぜミミズは雨が降ると地面に出てくるのか?

オリビア・ゴードン氏:みなさんはおそらく、激しい暴風雨が止んだ後、土から這い出してきたミミズが歩道や駐車場の至るところで立ち往生している姿を目にしたことがあるかと思います。

鳥もいればおぼつかない足取りで歩いている人間もいて、太陽が照りつける地表に、居心地よく安全な巣穴から出てくることは、ミミズにとって危険な行為です。それにもかかわらず、ミミズたちは雨が降り出すなり突然、自らの船を放棄してしまうのです。

雨がこうしたミミズの行動の引き金となる理由について、科学者たちがさまざまな説を唱えていますが、いまひとつ意見の一致をみていません。

最も古くから言われている仮説は、みなさんも聞いたことがあるかもしれませんが、溺死を避けるために地表に出てくるのだ、という説です。

なぜならミミズは、拡散と呼ばれる受動的なプロセスによって皮膚から酸素を取り入れるためです。拡散というのは、酸素が高濃度な体外から低濃度な体内へと移動する運搬の仕組みです。

豪雨の後に地面が水浸しになっても、水に十分な酸素が溶けていれば、通常ミミズはまだ呼吸を続けることができます。しかし、水は空気よりもはるかに密度が高いため、拡散の速度がかなり遅くなります。最大1,000倍も遅くなるのです。

つまり、ミミズにとって、土砂降りの雨の後は非常に呼吸のしづらい状況になる可能性があり、そのために急いで地上に出てくるのではないかというわけです。

しかし、生物学者の間では、多くのミミズが……種類にもよる可能性がありますが、実際には何日も水中で生き延びることができると指摘する声もあります。2008年に発表されたある研究は、2種類の異なるミミズの酸素の使用量が異なることを明らかにしました。

熱帯種のミミズ(Pontoscolex corethrurus)は酸素の使用量が比較的少量であり、雨の後に地表に現れることはありません。一方、ハワイミミズ(Amynthas gracilis、英名:アラバマ・ジャンパー)は、特に夜間により多くの酸素を必要とするため、地表に這い出てきます。

こうしたことから、ミミズのなかには、呼吸をするために地上に出る必要のあるものがいる可能性があります。あるいは、少なくともそれを好むミミズがいる一方で、好まないミミズもいるということです。

他にも違う理由を挙げている専門家がいます。ミミズが安全な巣穴から撤退するのは、雨によって絶好の移動条件が整うからだという議論です。

ミミズは地上のほうがより速く動くことができます。そして、湿った状態であれば干からびてしまう可能性が低いため、より安全に素早く這うことができるのです。

また、土壌の浸水を交尾の合図と取り、交尾相手と出会う確率を上げているのだとする科学者もいます。しかしこれは、大ミミズやその他数種のミミズに限られるようです。

最後に挙げる仮説は、雨粒が地面に落下するときに生まれる振動が、ミミズの最大の天敵であるモグラによる振動と似ているのだとする説です。ミミズがある種の揺れを感じると一番近くの出口へと一目散に駆け込むのは間違いありません。

人々は実際、「ワーム(ミミズ)・グランティング」による餌用のミミズの捕獲でこの習性を利用しています。この方法では、杭を地面に打ち込み、それを振動させます。

しかし実験によると、ミミズはモグラの振動を真似た振動のみに反応し、雨による振動では同じようにはいかないことがわかっています。

そんなわけで、嵐の後に賜るミミズたちのご臨席についてはっきりとした理由はわかっていないかもしれませんが、少なくとも釣りに出かける前にすべきことは明確だということです。