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これからは「人事エンジニア」の時代へ テクノロジーがもたらす知性と、HR業界で求められる人材像

これからは「人事エンジニア」の時代へ テクノロジーがもたらす知性と、HR業界で求められる人材像

企業の枠組みを超えた人事主導の「働き方改革」を牽引していくためのフォーラム「HR Intelligence Forum 2017」が2017年9月14日に開催されました。オープニングでは、イベントの主催者である株式会社リクルートホールディングスの北村吉弘氏が「HR Intelligence」がイベント開催の目的・背景などを語りました。続いて、冒頭のセッションでは、リクルートワークス研究所の所長・大久保幸夫氏が登壇。「HRテクノロジー」と「ピープル・アナリティクス」という定着しつつある概念について説明し、「働き方改革」の文脈においてテクノロジーが果たす役割を示しました。

(提供:株式会社リクルートホールディングス)

シリーズ
HR Intelligence Forum 2017 > HR Intelligenceで働き方改革は進むか?
2017年9月14日のログ
スピーカー
株式会社リクルートホールディングス 常務執行役員 メディア&ソリューションSBU SBU長/株式会社リクルートテクノロジーズ 代表取締役社長 北村吉弘 氏
株式会社リクルートホールディングス 専門役員/リクルートワークス研究所 所長 大久保幸夫 氏

データが人事にもたらす知性

北村吉弘氏(以下、北村) みなさん、こんにちは。リクルートホールディングス、北村でございます。 本日はお忙しいなかお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また日頃より当社サービスをご利用いただきまして、あわせて御礼を申し上げます。冒頭、プログラムに入る前に、一言ご挨拶をさせていただきたいと思います。 IMG_3825 一昔前の話です。例えばその人の配属を決めるときに、「君、元気いいね。サッカー部だったんだ。足腰強そうだ。営業に行ってもらう」。もしくは例えば「なんかちょっとおとなしそうだな」「じゃあスタッフで」。これは実際、一昔前に普通に行われていた配属の決め方だったりします。 また、なにか新しい事業やプロジェクトを始めようというときにどうやって人選をしていたでしょうか? 例えば「この人ことを知っている」とか「こういう働きをしてくれる」。「だったらアサインしようか」。「この人はこういう能力を持っています」「いや、でも知らないな」「じゃあちょっとやめておこうか」。こういったことは、さまざまな職場で行われている会話だと思います。 私は「これがはたして本当に、大切な人的資産といったものを最適に配分して、活かしきっているのか?」、そんな疑問をもともと持っておりました。 私は人事の専門家ではまったくございません。人事の担当役員等を経験したこともございません。どちらかというと、戦略やマーケティングといったところをこれまで生業としてまいりました。 この戦略やマーケティングの分野は、一番大事だと言われるものに「因果推論」という考え方がございます。因果関係を明らかにし、適切な原因にもとづいた、それに導かれた結果というのが必ずあるはずで。 まことしやかに言われている定説を信じるだけではなくて、そこに少しちゃんと検証を入れてあげて本当にそうかというのを確認しながら進めていくというところが、基本的な戦略やマーケティングのベースとなっているものだと思います。 例えば「ゲームをふだんいっぱいやっている子は勉強ができない」。これはまことしやかに定説として言われているようなことだと思いますけれども。昨今はITの技術が進化して、データがとれるようになってきたなかで検証されておりまして、実際はゲームをやる子どもは勉強もできたりします。そういうことがわかってきています。 このように、一般的に定説として言われているものって、実はそんなに相関がない。本当はまったく別のところに答えがあるというのは、これはマーケティングでも、戦略でも、そして人事の世界でも普通に起こりえると考えています。 僕が言うまでもなく、テクノロジーの進化というのはすさまじいものがあると思います。これまで因果関係のわからなかったものが、テクノロジーによってわかるようになってきました。それがデータで証明され、わかるようになってきた時代。この時代は、今後私たちに新しい知性というものを与えてくれるものだと確信しております。 今回のイベントでございますけれども、「昨今話題のHRテックのツールを導入しましょう」とか「こういったものがありますよ」ということをご紹介するイベントではございません。 むしろその先にある、HRテックのツール等々で取得するデータを使って、今後、人事のみなさまにどのようなインテリジェンス、知性をもたらすことができるのかということを見ていただければと思っています。 今日はそんな新しい知性をみなさまの手の中に収めていただきまして、今後のみなさまの企業の成長、そしてそれを集積した結果としての日本の産業の構造変化、そして生産の拡大、日本の拡大といったことに寄与できればいいなと願っております。 本日は短い時間ではございますけれども、かなり内容は濃くなっております。なにか1つ2つお持ち帰りいただけると幸いでございます。それでは始めさせていただきます。よろしくお願いいたします。 (会場拍手)

「HR Intelligence」という言葉の定義

司会者 北村常務執行役員より、みなさまへご挨拶でした。 それでは第1部 Keynote Sessionsです。はじめに「HR Intelligenceで働き方改革は進むか?」と題しまして、株式会社リクルートホールディングス専門役員、リクルートワークス研究所所長、大久保幸夫さんにご講演いただきます。 大久保幸夫氏(以下、大久保) みなさん、ようこそお越しいただきました。ありがとうございます。 IMG_3862 HR Intelligence Forum。「HR Intelligenceってなんだっけ?」という方が大半だと思います。実はまだ言葉として使われ始めてから日がすごく浅いんです。アメリカでも使われ始めておりますし、欧州でも使われ始めておりますが。 今日は新しいHR Intelligenceの考え方をみなさまに俯瞰的にご理解いただくことを目的としながら、密接に結びついている働き方改革の問題との関連性についてもお話をさせていただきたいと思っております。 「HR Intelligenceとはなにか?」ということを言葉で整理をしましたので、まずはこれをご紹介したいと思います。 (スライドを指して)「組織が、戦略目標を達成するためにテクノロジーを駆使して、人・組織に関するさまざまなデータを収集・分析することにより、科学的な人材マネジメントを効率的に行う体系的なプロセス」という定義です。少し噛み砕いてご説明をしたいと思います。 ここで「戦略目標」と申し上げているのは、昨今、人事の中で社会の流れとあわせて大きなテーマになっている、働き方改革であるとか、ダイバーシティ経営。 もともと人事のピュアなテーマではないですけれども、イノベーションの推進や生産性の向上を目標として置いたときにどうするか、というのがこの「戦略目標を達成するために」というところです。 そして「テクノロジーを駆使して」。テクノロジーは第4次産業革命と言われている、AIやIoT、あるいはロボティクスといったものを取り入れる、という意味になります。 それを駆使して「人・組織に関するさまざまなデータ」。旧来人事が持っていたデータ。おそらくあまり積極的には活用されていなくて、データは保有しているけれども、それぞれが分離した状態で保有してるだけになっていたデータ。さらには新しく採取したデータもあると思います。 そのようなさまざまデータを「収集・分析する」。テクノロジーを使って収集する。そしてテクノロジーを使って分析をするというイメージです。 そして「科学的な人材マネジメント」。ミンツバーグという人が「マネジメントというのは『アート』と『クラフト』と『サイエンス』の3つのバランスによって作られる」ということを言っております。アートというのは「主観」と言ったらいいですかね。クラフトは「経験」。サイエンスは「分析」というような日本語訳が与えられております。 これは若干揶揄した言い方ですけども、従来の人事の仕事は、勘と経験によって意思決定する要素が大きいと言われ続けています。これはある意味アートとクラフトということなんだと思います。 それに対してもう1つ「サイエンス」、この「分析」を加えることによって科学的な人材マネジメントを行う。もちろん主観や経験、アートやクラフトなんかいらないという話ではなくて、この3つをバランスよく活かして人事施策に関する意思決定をしていく。こういうことを申し上げているわけです。 「科学的な人材マネジメントを効率的に行う」。新しいことをやるときに、どうしても今までのやり方を単に積み上げていくだけだと、人事の業務が非常に煩雑になってきます。労働時間が伸びていくことになります。そうではなくて、そこもまたテクノロジーを使って業務効率を上げて実施していく、というのがこの「効率的に」ということです。 「体系的なプロセス」。「体系的な」というのは特定の分析や行為だけを指しているわけではなくて、一貫したこのプロセスですね。データを収集して、分析して、そこからなにか新しい知見を生み出す。そのことから「なにが起こるのか」ということについての予測をしつつ、実際の施策を展開、それからPDCAサイクルを回していくまでの一連の体系です。 「HR Intelligence」はそれほどかっちりと定義されて使われている言葉ではないですが、一般にアメリカ・欧州で使われている考え方を、改めて私なりに整理してみました。

「HRテクノロジー」と「ピープル・アナリティクス」

一番ポピュラーに使われている言葉は「HRテクノロジー」です。みなさんもHRテクノロジーという言葉についてはこれまで何度も接点を持っていらっしゃると思いますし、一部はすでに利用されていると思います。 このHRテクノロジー、「HR」という言葉が頭についてるわけですから、人事部門が主導しながら活用してきた、もしくは人材サービスについてビジネスを展開している我々のような企業も含めて、労働市場の中で活用されてきたテクノロジーです。とくにAIやモバイルといったテクノロジーを活用している要素が大きいです。 とくに人事業務の中でも一番先行的に使われているのは、採用領域です。人事業務の効率向上あるいは質向上のために使われているHRテクノロジーというものが高まりつつあります。 その文脈とは別に、「ピープル・アナリティクス」という言葉も昨今頻繁に使われるようになってきています。 ピープル・アナリティクス、これは言葉どおりですね。人の行動やさまざまなデータを分析する・解析するというアプローチなんですけれども、これも人事だけのアプローチというよりは、むしろ全社的な取り組みとして、科学的な経営をやるために使われているアプローチです。 とくにビッグデータの分析の意味合いがかなり強くあるかと思いますが、事業の生産性向上のために、あるいは業務効率向上のために行われている一連の活動として、ピープル・アナリティクスというものもあるということです。 HRテクノロジーとピープル・アナリティクスとは、実は似て非なるものとして、それぞれ別々のアプローチで発展をしてきた経緯があります。 そういうものも含めて、よりストーリー立てて全体的な人事施策の中での活用をイメージして、「HR Intelligence」という包括的な考え方が生まれてきた。こんなふうにご理解いただくと、雰囲気がわかるのではないかなと思っております。 このように、ピープル・アナリティクスはピープル・アナリティクスとしての進化をしてきていますし、HRテクノロジーはHRテクノロジーとしての進化をしてきているわけですが、実は日本の企業の中では先進的にこれを取り込んできているわけではございません。むしろ、日本においては少し遅れているかもしれないのが、この2つのアプローチになります。

ピープル・アナリティクスの概念

では、「ピープル・アナリティクスについて詳しくお話しさせていただきたいと思います。 言葉としては範囲が広いんですけれども、イメージとして思い浮かべられるのは、ウェアラブルの端末をつけて、今までは取っていなかったような行動データやコミュニケーションデータ、バイタルデータといったものを収集して、それを活用する。 例えば「どういうコミュニケーションを取ると業績が上がるのか?」「人間の動き・行動をどう変えたらオフィスの効率が上がるのか?」、あるいは自分自身の体調のデータを逐次取っていって、「現在、自分が非常に集中して働ける状態なのか」。 ピープル・アナリティクスは、そういうことを分析して業務に活かしていく意味合いだと思います。一部の企業の特定の部署で実験的に現在行われている状況だと思います。 これは現実にはなかなか難しい問題がございます。データを取るときにどうしても取られる側の社員が気持ちが悪く感じるという問題があります。自分の状態を赤裸々にデータ化されて会社側に使われるということに関する抵抗感もあります。なかなかその壁を超えられずにあまり前に進んでいません。 これは本人がこのデータの活用の仕方に関して自分自身がコミットできる、あるいは自分自身が望むかたちで活用されるというときに前へ進むものかと思います。 ただ、冒頭に申し上げたとおり、人と組織の領域におけるピープル・アナリティクスは歴史的にもさまざまな展開をしてきております。 ピープル・アナリティクスというと、もう完全に科学的なものばかりを想定しますが、広く言えば、人事に関するデータの分析・活用だとお考えいただければいいのではないでしょうか。 その中で取り込んでいるデータ、例えばパフォーマンスのデータ。パフォーマンスのデータは人事部門はけっこうたくさん持っていますよね。 もともと採用時の適性検査のデータがありますよね。定期的な人事考課のデータもあるはずです。そして、例えば昇進試験をやっているような会社であれば、その時のスコアもあるでしょう。 その他、個人の評価・能力に関するデータを人事ではそれぞれ蓄積をしてきていますが、おそらくそれぞれスタンドアローンの状態で所有しているだけで、統合的に活用するというかたちにはなっていなかった。 そこに、さらに従業員満足度調査のデータ、組織のエンゲージメント・サーベイのデータなどを加えながら、いかにして働きがいのある会社を作っていくかといったテーマで展開していく流れがあります。 もともとアナログだったものがデジタル化され、それがさらにテクノロジーを駆使して分析されたり活用されたりしていくという流れがあるわけです。

多様な領域を孕むピープル・アナリティクス

それ以外にも、「キャリア」と(スライドの)真ん中に書いている、人材育成や活用で使われていたデータがあります。 人事異動の希望を取った時のデータ、あるいは社内公募した時に応募をした際のデータ、あるいはキャリア研修をやったときに本人が記入したデータなど、さまざまデータが蓄積されているのではないかと思います。 これは本人の職務に関する志向が非常にはっきりと記録に残って積み上げられてきているものなので、こういうものを統合して、一番最後に書いているような、ERPのシステムに組み込むというかたちが最近とられ始めてきています。 人事管理システムはその後ローカル型のERPとなり、現在はクラウド型のERPが主流になってきておりますけれども、これは企業の経営のグローバル化と非常に密接に関係している。海外展開して、海外に事業会社を作りました、あるいはM&Aをやりましたというときに、そこの会社にどんな人材がいるのかが見えなかったわけです。 そのときにクラウド型のERPにいくつの機能を付け加えたものを使いながら、例えば新しい事業を展開するときに、どこの国にそれに適した人材がいるのかということを見つけ出すために、そのようなデータを活用しています。 これは言葉を変えれば、タレントマネジメントのためのデータベース、あるいはシステムと言えるかもしれません。 そして3つ目にはヘルスケア系の進化があります。これは例えば健康診断のデータ。これは人事部門は極めて使いにくく現実にほとんど使ってる会社はないと思いますけど、膨大なデータがあるわけです。 加えて、ストレスチェックのデータ。また、EAPのような、従業員アシスタンスシステムとして相談されたもののデータ。これらが今まではバラバラに、主に社外で蓄積されていました。 そういうものに加えて、ウェアラブルの端末を使って新しい健康に関するデータを収集し、業務の効率を上げるということが行われてきています。 昨今はやはり生産性向上に関する関心が強い、とりわけプレゼンティーズムに対する問題意識が強くなってきています。会社に出勤してきてそこで働いているにもかかわらず、仕事に集中できない、仕事がはかどらない。この生産性の低下というのが全体に対する影響は極めて大きくなります。アブセンティーズムを超える影響を持っていると言われています。 ですから、例えば自分でウェアラブルを端末をつけて、自分の体調を自分自身で見ることができたら、「どうも今日は早めに帰ったほうがよさそうだな。残業しても効率は上がらないな」ということが見られることが将来的に出てくるかもしれない。こういう展開がヘルスケア領域でも進んでいるわけです。 こうしたものを全部をひっくるめてピープル・アナリティクスと我々は呼んできています。1つの言葉で呼ぶにはあまりにも大きすぎるぐらい多様な領域が、この中に含まれているわけです。

HRテクノロジーで人事の業務を効率化

次に、HRテクノロジーの話をしたいと思います。 HRテクノロジーは、言葉のとおり、人事業務全般的なテクノロジーの活用です。これは採用関連領域において圧倒的に先行的に使われています。世の中にサービス開発されて提供されているものも、採用関連領域のものが圧倒的に多いです。 なぜか。1つは業務効率を上げていくことと密接に関わって進化をしてきたからだと思います。 人事の中でも採用業務はどうしても長時間労働になりやすいんですよね。最初の募集の段階、あるいは新卒なら説明会を実施する。そして面接を行う。選考する。配属をする。一連のプロセスの中に細々とした雑務が集積するわけです。 採用を担当すると、日々この周辺的な業務に追われてどうしても労働時間が長くなりますし、あるいは採用までのスタッフの数も多く必要になってくる。そこの業務を効率化したいというニーズが企業人事の中にはかなり強くあり、それを受け止めて展開をしてきているんだろうと思います。 そしてこの採用テクノロジーは企業が使うだけではないんですね。転職・就職を希望する個人をサポートする採用テクノロジーもあります。 例えば、一般の求職者だと、自分でレジュメを書くときに、それに対してアドバイスをしてくれるようなシステム。どの会社に応募したかということを自分の手元で一元管理するシステム。あるいは、口コミで企業評価情報を集めるなど、個人向けのテクノロジーもかなり多くのものが開発されてきております。 そして、人材サービス会社が使っているHRテクノロジーもたくさんある。広く言えば、SNSによるマッチング、ジョブボード、あるいはこのような情報のアグリゲーターなども含めて広義のHRテクノロジーと呼ばれています。 そして企業の側でいうと、募集のプロセスと選考のプロセスそれぞれに、かなり多様なサービスが展開されています。 とくに社員の募集だけでなく、アルバイト・パートタイムの募集やフリーランスに対する業務委託なども含めて、採用人材関連業務というのがだいぶ複雑になってきています。そういうものを効率化するためのツールが開発されてきているわけです。

採用の質をAIで改善

もう1つ採用に関するHRテクノロジーの中で昨今注目されてきているのは、採用の質を上げるということですね。 テクノロジーと関係なく昔から言われていることですが、採用選考での面接による選考は、採用に至る確率がたいへん低いと言われています。 日本ほど面接によって人を採用している国はおそらくないと思います。実は世界的な潮流は、インターンシップなどを通じて実際に働いてもらってから採用する考え方が主流です。面接でその人の能力を測るということはそれほど過信されていないわけですね。 日本はやはり面接依存度が高いです。面接の時の評価はその後の活躍、例えばその人が採用されたあと、3年後5年後に人事考課でどんな点数がついているかというものと 照らしてみると、ほぼ相関関係がないということが繰り返し検証されているわけです。 であれば、より効率的に、科学的に行うためには、現在活躍している人たちのデータをAIで分析しながら、それを応募者と照らしていく。そこからリストを作っていって、もちろんデータだけでは採用しませんけれども、有力な候補者をリスト化した上で面接の負荷を軽くして採用するというところに進み始めています。 あるいは採用したあとも、配属して定着したときのその後のフォローアップ。例えば離職について。早めに辞めてしまう人もいるわけですけれども、「この人はもしかしたら辞めてしまうかもしれない」とか、まだ人事も上司も、もしかしたら本人も気づいていないような、離職のサインを読み取って早めにフォローをするという仕組みも、今作られ始めている。 このあたりになってくるともう効率化の問題ではなくて、人事の質の向上という観点でテクノロジーを使う領域になります。これらを含めてHRテクノロジーと呼ばれています。 今日みなさんのお手元にお配りしていると思いますが、リクルートワークス研究所でまとめた 『HR Technology』という冊子がございます。世界の人事が注目するHRテクノロジーを28個のカテゴリーに分類して細かくご紹介しているものになります。 この中に赤字で書いてあるところは、多くの企業がすでに使っている、とくに利用率の高いものになります。 例えばSNSによるマッチング、ジョブ・ボード、カレッジ・リクルーティング、口コミ企業評価情報、求人情報の一括掲載、リファラルプロセスの自動化、インターネットに上にある人材情報の収集・評価、最適候補者の自動化・リスト化、身元照会、スキルアセスメント。こういったものはもうすでに多くの企業が活用しているHRテクノロジーです。 そして、その中でもさらに今注目を集めているのがCRMですね。将来の採用候補者との関係を維持するためのものです。 実際に募集するときって、「今、欠員が出たから2名採用します」というときでも、実際には応募していただいた方・選考した方の中から「本当はもう少し採用枠があれば採りたい」と思った人がいたかもしれない。そういう候補者となりうる人についてはその後も関係性を維持していくんです。 例えば、その人がSNS上で今なにをしているのかを把握しておくということを自動的にやります。こうしたことが進められていると言われています。

日本と海外で異なるHRテクノロジーのニュアンス

それからリファラル。これも日本では海外ほどポピュラーではないですが社員の知り合いなどを紹介してもらって、採用するということですね。日本でいう縁故とは少し違います。 社員はそれぞれにネットワークを持っています。とくにSNS上にネットワークを持っていたりするわけです。そうすると「この人、もしかしたらいま声をかけたらうちに転職してくるかもしれないな」ということがわかるじゃないですか。そういうことを使って求職者を集めていく。 これは実はなかなか有力な方法だと言われています。リファラルを使うと、中間に立った社員が判断をしたうえで紹介をするわけなので、一定程度の質が保証されるとか。あるいは多様な社員がいれば、ネットワークする人たちの種類が違うので、ダイバーシティが担保されるとか。 こうした理由から、リファラル採用は国際的に非常に注目をされています。こういうものをテクノロジーを使って管理をするということですね。 あるいはブランド構築。採用力強化のために、企業ブランドを測定したり管理していく。こういったことが、とくにこの後しばらくはHRテクノロジーの中で注目されていくのではないかと言われています。 ただ、これは国際的な動向なので、日本はどうかと言えば少しニュアンスが違うかもしれません。日本の採用周りのHRテクノロジーでしばらく注目が高まるのは、おそらく人手不足や長時間労働を背景にした、それを改善するための採用に関するテクノロジーだと思います。 これは働き方改革の文脈とも重なってきますが、これからは残業時間についても、月平均60時間、年間で720時間を超えることができないんです。 我々が調査したところでいうと、月に平均して60時間を超えて残業している人が、働いている人の全体7.5パーセントもいるらしいということがわかっています。この7.5パーセントを0にしなければいけませんので、そのためにどうするのか。 例えば1人がやっている職務が5つあったとしたら、そのうちの1つはその人から切り離して別のパートタイマーを雇って任せるとか。そういうふうにジョブの分解といったことがこれから行われていくんだろうと思います。あるいは、長く働けない人であっても、うまくシフトを組んで、それによってちゃんと業務が回るようにしていくとか。 そういう人手不足の中での人材活用のために、テクノロジーを使ってそれを回していくような仕組み、あるいは職務を分解・再編しながら募集していくような仕組み。こういったところの期待が日本では強くなっていくのではないかと私は見ております。 このようなHR関係のテクノロジー、あるいはピープル・アナリティクスを総称してHR Intelligenceと呼んでいるわけです。これを展開していくためには、人事に求められるものも変わってくるだろうと思います。

これからは「人事エンジニア」の時代

リクルートワークス研究所で出している『Works』という雑誌でも先般、人事エンジニアを特集しました。 人事エンジニア。これは人事部門に所属しているデータアナリストのことを指します。もともと人事というと、典型的な文系のイメージが強いかもしれないですけれども、人事エンジニアはデータに強い人ですね。 ただ、一般的なエンジニアというイメージの人たちではなくて、我々の知る人事エンジニアの方というのは、人と話すのが好きで、社内の人と対話することを中心としながらも、一方でデータのマネジメントをすることによって、科学的に人の評価をできるように、意思決定ができるようにしていく。そういうタイプの人たちです。これからは、そういう人たちが人事に求められていくようになるのではないかと思います。 ウルリッチという人事分野の研究の専門家がいます。彼は人事のコンピテンシーとしてビジネス、人事データを蓄積する、意思決定をするために活用するコンピテンシーや、好業績や組織づくりを後押しするためのテクノロジーやソーシャルメディアを活用するコンピテンシーをあげています そういったものが人事で働く人の能力として求められるものになってきているということです。人事スタッフのあり方もHR Intelligenceが進んでいけば変わってくる。 (スライドの)1つ上に書いた「近い将来、統計学は人事部門の必修科目になる」。きっとそんな時代が来るのかもしれないと思っています。 とくに働き方改革ということを人事部門が進めていくためには、このデータの分析・解析は欠かせませんし、業務の効率化も欠かせません。 (スライドを指して)これは以前、私が働き方改革に関してのモデルとして発表したものです。働き方改革はこういう構造を持っているんじゃないかと考えています。 左上にダイバシティ&インクルージョンというものを置いています。それが働き方改革につながり、働き方改革をするとマネジメントの変革を求めるようになる。それらが進むとプロの人材が育ちやすくなる。プロの人材が育つとダイバーシティがさらに推進されていく。この4つには正の相関関係があるということがわかりました。 具体的なデータは、ダイバーシティのところに関していけば、女性、外国人、シニアといった人たちを戦略的に目標指標を持って取り組んでいる会社かどうかという数字を使いました。 働き方改革のところでは、時間当たりの生産性を意識した働き方が浸透しているかどうかというデータを入れてみました。 そしてマネジメントでは、社員の一人ひとりの能力に見合った仕事のアサインをできているかどうかというデータを入れています。 そして、プロフェッショナル人材育成のところ。社外に誇れる専門家・プロフェッショナルが育っているかというところを入れてみました。 東証一部上場企業を対象に調査したデータをここに入れてみたら、どうもその4つには正の相関関係があるのがわかった。つまり、どれか1つを推進すると自動的にほかの施策もやる必要が出てくる構造になっているらしいということですね。 この関係をぐるぐる回していくと、働き方改革とマネジメントの改革は労働時間を短くする効果が出てくる。 ここにマイナス2.17とマイナス1.72と書いてあるのは回帰係数と呼ばれるもので、こちらが原因となって労働時間を短くするという全部結果が出てくるわけですね。こういうことがわかっています。

真のダイバーシティ&インクルージョンの実現へ

一方、プロフェッショナル人材を育成したり、あるいはダイバーシティ&インクルージョンを推進していくことができると、企業の中でイノベーションが推進される。 ここでは新しい発明や製品の開発、ビジネスモデルの構築等の成果が出ているかどうかということについて、企業ごとに評価していただいて、それがこの2つによって説明できるということがわかっています。 真ん中の2つというのは労働生産性そのものになりますが、(サイクルを)ぐるぐる回すことによって、労働生産性が上がっていくという関係が成り立つわけです。 仮にこういうものが企業から見た場合の働き方改革のモデルとなりうるのであれば、我が社はどういう意図を持って働き方改革を推進していくのか目標を明確に決めて、こういう構造モデルにKPIを当てはめてマネジメントしていけば、科学的なアプローチで働き方改革をしていくことができる。 そのときは、テクノロジーを使って今あるデータ、もしかしたら新しいデータを取ることになるかもしれませんが、それらのデータを分析することによってモニタリングをしていくということになるのではないでしょうか。 働き方改革のような戦略目標を設定したときに、それを科学的に推進して人事をしてマネジメントしていくためには、HR Intelligence的アプローチを使ったほうが合理的だということになるのではないかと思います。 最後、HR Intelligenceが進んでいったときに、私は非常に大きな変革が起こると思います。 もしもHR Intelligenceが浸透していったら、膨大な個人情報を統合・分析することによって、今いる社員一人ひとりの能力、特性、健康、志向とか、いろいろなデータが分析されて、その人がどういう人なのかが非常にわかりやすく明らかになりますね。 それによって、性別、年齢、国籍などの属性の枠を越える。今までは十分な判断情報がなかったわけです。女性や外国人を一括りでしか考えていないということがあるのではないかと思うんですが。 そういうものを超えて個人一人ひとりに着目をして活躍の場をアサインすることで、真のダイバーシティ&インクルージョンの実現を効率よく進めることができるようになるのではないかと思います。 ある意味、HR Intelligence、HRテクノロジーというとなにか冷たい印象を持つかもしれませんし、先ほどの人事エンジニアがこれから登場してくると、なにか非常に冷徹なイメージを持つかもしれませんが、そうではないと思います。 むしろHR Intelligenceを本当の意味で活用することによって、温かさのある賢い人事が実現していくのではないかと思います。そんなイメージを持ってこのテクノロジーをうまく人事の中に取り入れていくことができたらいいと思っております。 日本は、人事領域でのテクノロジー活用については、国際的にも若干遅れている印象です。ただ、ここにきて、働き方改革を背景しながらやはり急速に進化していくのではないかと我々は見ています。 人事部門の方々にもこの新しい動き・流れといったものをぜひご理解いただいて、今抱えている課題に見合ったテクノロジーの導入をお考えいただくといいのではないかな思っています。ぜひ参考にしていただければ幸いです。 (会場拍手)

  
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