インスパイアを受けた、「1日だけの音楽解放区。」

太下義之氏(以下、太下):「会場とやりとりせよ」というようなご指定があったんですけど、どうでしょう。そろそろおうかがいしてみますか。

どなたか、マイクを持っていっていただいて。一応どんなお立場か、例えば「〇〇市から来ました」とか、前フリでご質問していただければと思います。

質問者1:失礼いたします。私、中央大学経済学部の◯◯と申します。企業のみなさんが多く、非常に肩身が狭い中興味深くお聞きしていたんですけども、ヤマハの佐藤さんにお尋ねしたいことがありまして。

今回、「渋谷ズンチャカ!」に非常に感銘を受けまして。「渋谷ズンチャカ!」のキャッチフレーズが、「1日だけの音楽解放区。」というキャッチフレーズだったと思うんです。

私はその解放区っていう言葉にすごくインスパイアを受けまして、今中央大学って多摩に所在してるんですけども、とても広い土地があって、広いペデストリアンデッキあって、ここを毎日解放区にしたい。

昼休みに音楽とかでゲリラライブが起きて、どんどんサークルとかのつながりが広がっていったらいいなというインスパイアにつながって、感銘を受けたんですけども、今回の「渋谷ズンチャカ!」についてご質問させていただきたくて。

現在、渋谷という街は、例えば外の視点から見ると国際都市、日本の観光客のみなさんが訪れる中では、かなりインパクトの強い都市になっているというグローバルな視点が。

内側の視点からすると、渋谷というのはストリートを中心にしてさまざまなカルチャーが発達している場所である。例えば、ちょっと死語になってるかもしれないんですけど、シブハラ系ファッションとか、クラブミュージックとか。

そのようなさまざまな複合性を持っている、孕んでいる渋谷という街の中で、なぜヤマハさんが渋谷で「おとまち」をつくろうと思ったのか、なぜ渋谷で「渋谷ズンチャカ!」をやろうと思ったというところから興味深くて、この件についておうかがいしたいなと思うんですけれども。

太下:はい、ご質問ありがとうございました。最近の大学生はしっかりしてますね(笑)。感銘を受けました。じゃあ、おじさんたちもがんばって回答しましょう(笑)。

渋谷の中に音楽祭をつくるなら、クリエイティブなものを

佐藤雅樹氏(以下、佐藤):本当に素晴らしい、ありがとうございます。そうですね、1日だけの音楽解放区というコンセプトをもとに、このへんの1日だけということも含めて後ほど左京さんに振りたいと思うんですけども。

どうして「おとまち」が「渋谷ズンチャカ!」に変わることになったかというのはですね、先ほどもちょっとお話しましたが、渋谷区さんからご相談があったんですよね。

「渋谷ズンチャカ!」を始める前から「おとまち」っていう取り組みをやっておりまして、それを知っていただいてたという背景もあります。それで、渋谷区の中に音楽祭をつくっていこうというようなことで。

渋谷の中に音楽祭をつくるなら、うんとクリエイティブなものをつくったほうがいいんじゃないかとか、日本中にある社会課題の縮図としての渋谷という見方も仮にあるんであれば、渋谷で新しいイノベーションを起こしたような取り組みまでコンセプトを高めたほうがいいんじゃないかなと。

単なる音楽祭ではなくて、1日だけの、残りの364日は渋谷の街の中で、さまざまなストリートで、街の中からいろんなイノベーションが起こってくるようなものを、その1日の中に集約しようというようなことも含めたコンセプトを、左京さんたちと一緒に考え出した、というようなことだったと思います。

結果的にそのコンセプトがあったから、4回を迎える中で相当多くの人たちが共感を持って、取り組みに参加いただけるようなものに、早いスピードで成長させてきてるのかなと思いますね。

「おとまち」ということも、もしかするとこの「渋谷ズンチャカ!」を通して成長してきているのかな、と思います。市民が市民の思いで作りだすということが、いったいどういうことなのかなということが、僕らも日々勉強させていただきながら、「渋谷ズンチャカ!」と一緒になって成長させてもらってるということが言えるかもしれませんね。ちょっと、左京さんに振ってみますので。

もっとニュートラルな関係性を

左京泰明氏(以下、左京):はい、じゃあ短めに。佐藤さんとお話をして、2点コンセプトの中に盛り込もうと思ったことがあります。

1点は佐藤さんがご発言の中で、従来の商業的な音楽ビジネスでは、ホールの中でプロミュージシャンが演奏している。一般の市民は聴衆として来ている。というのではなく、プロではない市民が音楽を奏で、みんなが聴く、参加するということもひとつの音楽の価値ではないかと。

こういったことに着目したいということは、すごく共感しましたね。通常の街を使った音楽祭の中でも、そういったものがあると思うんですけど、「渋谷ズンチャカ!」の場合はプロもアマも関係なく、どちらかと言えばアマの、市民の方が参加できると、ステージに立てるということがおもしろいところかなと思います。

もう1つは、先ほどのストリートともつながるんですけれど、ストリートを含む道ですね、公共空間と市民との関係性というテーマもありました。

これはわりと個人的になんですけど、例えば今渋谷の駅周辺ではストリートミュージシャンの方が、年末、昼や夜など演奏してると、すぐに警察から止められてやめさせられるんですよ。ですが、止められる瞬間までは、観光客の方も含めて非常にいい風景になってたりするんですよね。

それはひとつの、渋谷の街にきた思い出として、都市の体験として残るかもしれないけれど、それができないことになってる。なぜできないかというと、歩行の妨害になる可能性があるからなんです。でも、その折り合いってあるんじゃないかという気がするんですよね。

ルールじゃなくて、もっとニュートラルな、もうすこし緩やかな公共空間と市民の関係性ってあるんじゃないかと思っているんです。

ストリート、公共空間でやっていくことにこだわりを

それで、参考にしたのがパリの音楽の日というイベントなんですけど、彼の地では毎年夏至の日に、パリの街どこでも市民が音楽を奏でていいっていうイベントなんですね。それはもう、セーヌ川沿いから教会の街の道まで。そこに対してクレームっていうのはあるそうなんですよ。

ですが、パリ市の職員が言うには、「なにをやったってクレームなんかあるでしょ。楽しいっていうことを大事に、この事業をやってるのよ」っていうような言い方をしていたらしいんですね。

すごく格好いいなと思ったんです。ルールがある、それを守るだけじゃなく、市民がクレームがあっても、楽しいって気持ちと嫌だって気持ちとが対話の中で折り合いをつけながら、公共空間と市民の関係がある。そういうほうがより成熟した都市だと思えたし、そういうことがあると、たぶん今日の主題であるシビックプライドにもつながっていくんじゃないかと思ったんですね。

なので「渋谷ズンチャカ!」はストリート、公共空間でやっていくことにこだわりをもってやっています。その2点です。

質問者1:ありがとうございます。

太下:よろしいでしょうか。公共空間は誰のものかっていう深い問いかけが、「渋谷ズンチャカ!」の中にあるっていうことですね。はい、ほかになにかご質問ございますでしょうか。大学生からいい質問でちゃったもので(笑)。出しにくいですよね。

じゃあどうぞ。

大学がたくさんあるのに活用できない

質問者2:八王子市から、西の果てから来たので都心はあんまり慣れてないんですけど。私は八王子市で、NPOみたいなかたちで音楽を使ったまちおこしをできないかと考えてるんですけど、八王子市って今課題で持っているのが、大学がたくさんあって、若者がたくさんいるんですけど、そこをうまく活用できてないっていう問題があって。

今までは企業とか行政が入ってきたところなんですけど、やはり利益としてなかなか生みづらいというところがあって、上手く活用できてないところがあります。そういった課題があるんですが、みなさまの中で若者を活用した方策とか、そういったことを考えたことがあったら教えていただきたいなと思います。

太下:ご質問ありがとうございました。無料でですよね、もちろんね(笑)。いかがでしょうか、無料で披露してもいいというところをぜひ。

佐藤:まさに今お話をさせていただいた、ズンチャカ、これは若い人たちの力で持続的に展開できている好事例だなと思っています。

先ほども自治会の問題というのがあって、自治会というのはどうしてもシニアのみなさんがお役を持って、それに対して子育てママなんかはなかなか自治会に入ってこれないという、大きな問題がありますよね。

根本的に解決できてるところっていうのはないと思いますけども、渋谷の場合は日々の活動、いろんな企画を考えてくるところは若い人たちが、これは社会人という切り口になっていると思うんですけども、若い人たちがさまざまな取り組みをやっていて。

チャレンジをする価値はある

そこを町内会の会長さんたち、さまざまな町内会のリーダーが、これはシニアの方たちが多いんですけども、その方たちが非常に暖かくサポートしてるっていう構図ができておりまして、非常にいいかたちで回っているなと思います。

そこらへんも、シブヤ大学さんとヤマハのほうでサポートをしながら展開をしてるということで。八王子市さんの場合は、学生に置き換えたときにどう上手くいくのかなというのは、いろいろ議論や考えてみなきゃいけないポイントがあるのかもしれません。

渋谷のズンチャカの場合には、そこに働きにきていた渋谷に対しての愛着を持ってるみなさん、そこはわりとスパンが長いという見方があるかもしれないですね。

学生さんの場合、4年という見方をどう継続させていくのかなっていうのは、チャレンジとしては、そこらへんのポイントが逆にいえばおもしろいのかもしれない、良い事例になっていくのかもしれないなとは思いますね。

太下:村多さん、もしあれば。

村多正俊氏(以下、村多):質問がすごくざっくりしすぎていましたが、八王子で大学同士っていうのは仲良かったりするんですか? 点在してるのか、ある一箇所で、ハブになるような場所ってあるんですか? 京王八王子とかJR八王子駅とか。

質問者2:点在していて、その中心は八王子駅になります。大学をつなぐ組織はあるんですけれども、実際のところはあまり学生同士の交流というのはないというのが現状です。

村多:なにかきっかけがあれば、その人たちはきちっと集まるような機運は……。

質問者2:内向的です。

村多:じゃあ、学校が終わったらすぐ帰っちゃう感じなんですよね。それを、みなさんはなにかきっかけを持って活性化させたい、元気にしたいということなんですね。

質問者2:はい、いろんなイベントとかをやっていくと、連携することでできる価値というのがけっこう生まれてくるところがありまして、それを継続的に回していくっていうのが今大事かなと思っています。

学生たちで地域を元気にしていく

村多:あとは商店街さんとか、もともとエリアに根付いてるところと、大学の交流しているイベントみたいなものっていうのはリンクしたりしてるんですか。

質問者2:1つ、学祭みたいなかたちで街の中でやるのがあるんですけども、それくらいで、それが終わったら各大学に散らばっていく、そういったイメージですね。

村多:僕のイメージでいうと、エリアの商店街の人たちとなにか始めるとなると、継続的にその人たちと会わなきゃいけないじゃないですか。で、どっかのタイミングで1年に1回イベントがあって、それをちょうどみなさんのいろんな大学の真ん中になるようなエリアで設定して、または気概のある町衆がいるような街で、なんかやれたら生まれるような気がしますよね。

そういうときはご相談していただければ、なにかしらのアクションを起こせると思います。

質問者2:ご相談させていただきます。

佐藤:ちょっとだけ補足を、ごめんなさい。実は「おとまち」は、パンフレットの中にありますけども、奈良で春日野音楽祭っていうのをやってましてね。奈良っていうのは、なかなか学生たちが居つかないっていう課題があって、ここに対してのチャレンジで、学生たちで地域を元気にしていくという計画をしてまして。

そこらへんの話を、担当しているうちのメンバーが後ほど紹介しますけども、悩みながらやってますね。また共有したりしてというのがあるかもしれないですね。

太下:このあと懇親会もあるみたいなんで、ぜひ残っていただいてパネリストにご質問いただければと思います。

高橋:懇親会は当日参加もウェルカムですので、ここで聞けなかったこととか、ぜひご参加していただいて交流してもらいたいなと思います。

太下:総合司会のほうにお渡ししたいと思います。

司会者:はい、ありがとうございました。これにてパネルディスカッションを終了させていただきます。