エロは漫画における彩りである

乙君氏(以下、乙君):前、この番組でエロコンテンツの歴史みたいなのをやったことがあるんです。

立川氏(以下、立川):いろんなことやってるんだね。

乙君:いろんなことやっておったんですけど、やっぱり漫画雑誌にエロがあるということが全部規制されて、もしない世界だったら、なんの彩りもなくなっちゃうと思ってる。

別にそれを単行本で買ってまで欲しくはない部分ってちょっとあって、集めたいというほどではないんだけど、それが同じ雑誌にあって、それってすごく豊かなことだなって思うんだよね。

遊人さん、あれですよね。『桜通信』の人ですよね。

山田玲司(以下、山田):そうだよ。その後『桜通信』やってる。

乙君:俺とか、しみちゃんとか、もう大分お世話になってますから。だから、子どものそういうののってわかるんですけど、大人というか、高校生とか中学生のそういうものを解放してはくれますよ。リビドーだけではなくてね。なんか夢があるし。

山田:漫画をファンタジーという遊び場だと思えば、その中にエロが含まれるでしょう。

乙君:というか、ないとやっぱり。

山田:男は透明人間になって女湯に行きたいんでしょう。漫画はそれを描くのが一番得意だったんだよ。

立川:そうね、確かに。

藤子・F・不二雄漫画のエロの重要性

山田:だから藤子不二雄先生の話をすると、藤子・F・不二雄、F先生のほうで言うと、あの人は非常に倫理的な人ですよね。ちゃんとした大人ですよね。

だけど、非常にエロが多い漫画家ですよね。『エスパー魔美』とか、もちろん『ドラえもん』もそうだけど、あの人物はすごいエロチックな漫画家なんだよね。でも、そこのバランスって非常に大人として正しかった。あの人からエロ抜いたら、いびつだったんじゃないかという気がする。それこそ教科書的になり過ぎてる。

熊谷氏(以下、熊谷):そうですね。だから、僕も『ドラえもん』はちょうど世代というか、小っちゃいころから読んでるんであれですけど、多分、そこでのび太がなんにも思わないようだとすると、多分本当のことを描いてないって思うでしょうね。

子どももそういう気持ちがあるということはわかっているんだけど、それがないことにされちゃうと、それはそれでゆがむんじゃないかなという気はします。

乙君:ただ、一方で女性からの意見としては、もうあまりにも女というものがそういう対象としてされ過ぎてて、おもちゃのように都合よく描かれているというところの批判もあるわけじゃないですか。そのへんについては、この間のゆらぎ荘の問題ですけど。

立川:そうね。うちのカミさん(注:漫画家の石坂啓)なんかも、けっこうそういうのを描いたりしたけど、そういうのをテーマにして漫画描いてる人もいるぐらいだし。

山田:そう。けっこう石坂さん、ぎりぎりのとこ攻めてたよね。

立川:だから、さっき『桜通信』の名前が出てきて思い出したけど、『桜通信』って俺がやったんだよね。

乙君:え! 忘れないでくださいよ! あなたは、それで遊人さんのことを(笑)。

(会場笑)

立川:そう。あの問題が。

乙君:そういう信頼関係があるからね?

漫画のエロ規制で編集者は窮地に

立川:有害問題で編集部がみんな辞表握りしめたとこがあって、当時の部長だった、当時の部長って今から思えば貫禄があったね。

俺の役職の立場の人が、「おまえらの辞表、ちょっと俺によこせ」って、預かるっつってやって、(辞表を出すのを)止めたんだけど。少し頭を冷ませという話になって。異動もちょっとあって、その異動のときに、たしか俺ヤングサンデー編集部に行ったんだよ。

それで、やっぱり『ANGEL』はやめざるを得なくなって、でも、遊人さんは売れるから使いましょうよっつって。

山田:けっこうあいてましたけどね。ちょっとあいてから。

でも、実を言うと、俺、1回デビューのときにヤンサン描いてるんだけど、1回モーニング行っちゃってるの。で、ぱっとしないんで謝ろうと思ってヤンサンに戻ってくるの。『Bバージン』っていう原稿を持って。

山田玲司のデビュー秘話

そのときに、実は遊人問題で大騒ぎ。で、遊人がいなくなるっつって、思いっきり穴あいてるっつって。しかも、新年1号。誰やるんだみたいな。「俺やります」(笑)。「ユー、やっちゃいなよ」って言ってたから91年の新年1号に『Bバージン』載っかるわけだ。

乙君:遊人さんのおかげじゃん(笑)。

山田:遊人さん、ありがとうございますって(笑)。でも、そこでも戦ってたの。だから、遊人さんの流れで、遊人さんのお客さんがいるから、パンチラも、シャワーシーンも描かねえわけにいかねえだろっていって、全力でやるわけ、俺は。

だから『Bバージン』、序盤はすげえエロなんだよね。それは、だからしようがないよね。そういう流れの中で。

立川:『桜通信』は、やるときに女性の扱い方であるとか、その辺はちょっと意識しましょうかみたいなことでやってましたね、だから。

乙君:そこはわりとデリケートな。

立川:そうそう。だから、ちょっと原作か原案に近いようなものを。まあ、使わなかったですけど、用意してったような気がする。

だから、コントロールさせてもらって。コントロールしてっていうのは、彼も大ベテランですから失礼なんで、させてもらって。

彼もこれ以上、有害でたたかれたくないわけだから、同じように山本直樹さんという人がいますけど、あの人はもう戦うから。山本さんは、もうそういう男だから。

山田:だから、学生運動から来てるからね。戦う人だから。

立川:運動は。

山田:してないけど、マインドがそうですよね。

立川:マインド的にはそういう人。

山田:だから、レッドを描くわけよ。闘争なんだよ、エロと暴力と。それが自由の戦いなんだよ。

有料放送の後半は江戸川乱歩のお話

そんなわけで、後半に限定のほうに行きます。だから、そのポイントの話なんですけど、なぜそういうことになるかという。俺は1人の男がキーワードだと思うんだよ。

乙君:1人の男。

山田:はい。江戸川乱歩です。

乙君:言っちゃうんだ。

(会場笑)

山田:はい。

乙君:そこ引っ張らないんだ。

山田:江戸川乱歩とピクサーを比較することによって見えてくる、日本文化というものの異常性、もしくは独自性、よさ、特徴みたいなもの。そして日本人の男性のメンタリティみたいなものというものが漫画の中にいかに入っているか、そしてそれにいかに価値があるのかという話を後半ちょっとやりましょう。

乙君:あと質問もたくさん来ていますし、もっとゆっくりお三方、後半詳しく話を。今日やっぱあれだね。キャリアが違い過ぎて、やっぱり恐縮してる。

高橋:恐縮。

立川:いやいや。

石橋:子どものころ読んでた漫画の話ですからね、本当に。

乙君:あっ、そうなんですか、石橋さん。

石橋:『桜通信』とか、高校のとき隠し持ってたから。

乙君:えー、俺と一緒。ヤンサンもね。

ということで、お世話になった方々、みんな集合していただいているんで、ぜひぜひ後半、お楽しみにしていってください。

次回もお楽しみに

そして告知させてください。来週は7月19日水曜日8時から特集、ツイン・ピークスさんのデヴィッド・リンチ、有名ですね。

山田:やりましょう。

乙君:ちょっとこのスタジオが赤く染まるかもしれない。玲さん、眼帯つけるかもしれない。

山田:小さくなってゆっくり踊るかもしれない。

乙君:小さくなる意味がちょっとわかんないけど。

山田:小さくなってゆっくり踊ります。

乙君:そして、その次が7月25日なんですけど、久世のスピンオフがあります。こちらはもうちょっとまた楽しみにしててください。  そして、7月26日は、ついにヤンサン主題歌のアニメが決定しますので、そのアニメの締め切りは24日ですね。よろしくお願いします。もうあの方から。

山田:あの方もあの方も頑張っていらっしゃいます。

乙君:あの方もあの方もなんですけど、マンガワンの編集長の前では言えないけれども。

山田:頑張ってます。

乙君:よくその連載の合間に。

山田:言ってんじゃん。コメントでばれてる。

乙君:ということでよろしくお願いします。

そして8月なんですけども、なんと我々ヤングサンデー、ついに大阪に行きます。大阪で公開収録の予定です。8月10日になっております。大阪ロフトプラスワンウエストというところで、UMA水族館もそうなんですけども、海の生物を徹底的に語り尽くそう。

山田:なにしろ『Bバージン』ですから、私は。サンデーでは『ドルフィン・ブレイン』だった。

乙君:ゲストはなんと京都水族館の館長・下村さんが『シン・ゴジラ』の話から全部語り尽くしていただくという夜が待っておりますので、こちら詳細がわかりましたら、また。まあ、恐らく来週までにはチケットも発売させていただきますので、よろしくお願いします。

山田:みんなコメントありがとね。

乙君:以上です。そして、シカーダよろしくお願いします。では、後半に行きます。

制作協力:VoXT