南極で巨大な氷山が崩壊

ハンク・グリーン氏:先日、南極で巨大な氷山が崩壊したと聞いたことで、みなさんは気候変動について気に留めているかもしれませんね。

氷のパーツはラーセンC棚氷という大陸から分かれました。この氷は数兆メートルトンあり、デラウェア州と同じぐらいの大きさの約5,800平方キロメートルにもなり、南極海で溶け出しているのです。

氷山が崩壊して溶け、突然水浸しの世界が広がるといったように、環境破壊に関する映画のあらすじが浮かんでしまいますね。しかしパニックになる必要はありません。なぜなら氷山は棚氷の一部分であり、それらが崩壊したときすでに溶け出しているからです。

そして氷が溶けると、それと同じ量の水がすでに動き出します。ですからこの出来事は海面を上昇させることにはならないのです。

また、これは研究者にとって驚くことではありません。実際には気候変動によって起こっていることではない可能性があります。

もちろん人間に原因がある気候変動は起こっていて、これはすでに南極に影響を与えています。しかし科学者が言える範囲で言うと、人間に原因がある気候変動と氷山が溶けていることは、直接関係がないということなのです。

氷山が氷河を壊すということは普通のことです。科学者はこの現象を分離と言います。牛の出産とは別の意味です(calvingには牛の出産と氷山の分離の意味がある)。

氷河が水の方へ広がっていくと、水に浮く棚氷を作り出します。そしてこれらが動き続けると、氷が不安定になってしまうはじっこの方へたどり着き、氷山へ流れ込みます。

ラーセンC棚氷の場合、科学者は7年間にわたり棚氷のひび割れを追跡していたので、このようなことが起こることは予測済みだったのです。

このニュースが注目されたのは、通常よりも氷山が巨大であったことが理由です。ラーセンC棚氷のおよそ12パーセントの大きさでした。これには悪いニュースもあるんです。

氷や氷河を研究している氷山学者は、氷山が分離すると、氷の土地がより崩壊しやすいこと知っています。氷をさえぎる棚氷の減少により、海に多くの氷が落ちることは海面を上昇させます。完全に崩壊することなく、ラーセンC棚氷が持ち直す可能性もまだありますが、これまでの状態は思わしくありません。

より小さなラーセンB棚氷は、部分的に2002年に崩壊し、7年後に棚氷は分離しました。気候変動はジョークではありませんが、ありがたいことにこの氷山は世界の終わりを意味するものではありません。

オーストラリアに住んだ初期の人類

一方で、考古学者は、65,000年前に人類がオーストラリアに到着したという証拠を発見したと先日発表しました。これは予測よりも5,000年早いことになります。クイーンズランド大学のチームが、マジェベべという岩窟住居から、およそ11,000個の新しい人工物を掘り出しました。この岩窟は、1970年代と80年代に2回掘り起こされています。

最初の発掘で、考古学者たちは石の道具やオークラと呼ばれる、黄土色の自然の顔料を発見しました。これらは、50,000年から60,000年前のものだと考えられていました。つまり、その頃に人類がオーストラリアにいたということを示しています。

しかしこれは科学者が、物がどれくらい古いか日付を予測する技術に関して、本当に完璧だった以前の話です。ある炭素原子の放射性崩壊を時計のように測定する放射性炭素年代は、50,000年前までしか巻き戻して測定できません。もっと前の年まで測定できる他の方法は、まだ始まったばかりなので、これらの技術はおよそ20,000年ほど予測を歪めてしまいます。

それに加え、多くの考古学者は、汚れの層やその土地の石が邪魔をし、測定された日時を十分に信用できないと考えていました。したがって、2012年と2015年に研究者たちは同じ岩洞へ戻り、新しい方法を用いて何を掘り起こすことができるかを見てみました。そして三度目に、ある発見があったのです。

研究チームは、すりつぶされた石、黄土色のクレヨン、世界最古の手斧など、何個もの新しいオブジェクトを掘り起こしました。

これらのオブジェクトがいつのものかを測定するため、チームはOptically Stimulated Luminescence(OSL)という方法を使いました。この方法は、前回明らかになったミネラルを太陽光へさらすというものです。

基本的に科学者は、放射性エネルギーを放出させるため、何世紀にもわたって存在するある環境から掘り起こした石に石英粒の光を当てることができます。そしてその放射性エネルギーを測定することで、各オブジェクトがどれくらい古い年代のものなのかを改名するのです。

OSLの方法を用いることで、研究チームはより古い年代の物も測定することができました。そして彼らは、最も古いとされていたオブジェクトの年代を、数千年の不正確さは残りますが、65,000年前まで押し下げることができたのです。この発見は、どのように人類がヒト科、あるいはその他の動物たちに適応していたかについての理解を助けます。

初期の人類が南西アジアからオーストラリアへ道を作ったということを意味し、最も近い祖先の一種であるデンソバ人やホモエレクトスのような、人間のようなヒト科の動物と異種交配を長期にわたって行なっていたかもしれないのです。

これらの初期のヒト科の動物は長い間、オーストラリアに生息していた巨大な動物と多くの時間を過ごしていたようです。もしあなたがオーストラリアに変な動物がいたと思うなら、2トンもある巨大なウォンバットがいてもおかしくはありません。

科学者は、ウォンバットのような巨大な動物や顔の短いカンガルーなどが、人間、気候変動、あるいはこれらの2つの要素が原因で絶滅したのか、ということを長年議論しています。最新の発見では、これらの問題はまだ未解決のままとなっています。しかし、この発見では、これらの巨大な動物たちは、人間と20,000年もの間一緒に生息していたと示しています。

したがって、ある科学者が提案しているように、動物たちが急速に絶滅へ向かったということではないのです。南極の氷山から、オーストラリアの初期の人類まで、地球の過去と未来を解き明かすだろう事柄がたくさんありますが、私たちはここまでわかるようになりました。