人工脳という新しい概念を先立って研究していたSOINN

西山直隆氏(以下、西山):さて続いては、集められたデータをどう取り扱うか。ここからは、人工知能に話を移してまいりましょう。

人工知能自体は従前より研究されていたテーマです。ではなぜここにきて、改めて注目をされているのか。

さまざまなデータが取得できるようになり、ビッグデータの時代が到来し、ハードウェア・ソフトウェア相互で技術進歩がありました。先ほどのThinCIのような最先端の半導体が設計され、また安価にデータを保存するインフラが整備されました。そして、重要になってくるのがアルゴリズムです。

1980年頃から、人間があらかじめ解を設定していれば自動的にそれを見つけ出す、いわゆるマシンラーニングが普及しました。そして2010年頃から、人間があらかじめ解を設定しなくても、パターン認識そのものを自動的に判別する、いわゆるディープラーニングが普及してきました。

この技術に注目した多くの企業が、現在多額の投資を行っています。では現在、人工知能はどれほど優秀になっているのでしょうか? 

続いての登壇者は、マシンラーニング、ディープラーニング、もとい人工脳という新しい概念を先立って研究している、日本を代表するベンチャー企業です。

それでは、まいりましょう。4社目SOINN(ソイン)社です。どうぞみなさま、拍手でお迎えください。

独自の人工知能技術「SOINN」

長谷川修氏(以下、長谷川):SOINN株式会社の長谷川と申します。よろしくお願いいたします。

私どもはSOINNと呼んでおります、独自の人工知能技術を開発しております。西山さまから今お話ございましたディープラーニングが、真ん中でございます。非常に性能が良いと知られておりますが、まだまだ課題も多いですね。とくに、やはりたくさんのデータが必要であり、学習に莫大な計算量が必要である。これが一般的かと思います。

私どもはいろんな種類のデータを混ぜ合わせて学習できる。スマホでも学習できる。20〜30のデータから学習をスタートできる。対話的に指示することで、直接教えることができる。現場のエキスパートの方が、直接指示すれば教えることができる、といったような特徴がございます。

私どもでは、人工脳という言い方をしております。これは一言で申しますと、学習型の汎用人工知能です。

データを入れると細胞分裂して自分で細胞を増やして、ネットワーク構造そのものを作ってまいります。そして、自分で覚えていきますので、日頃の業務データを入れていただければ、成長して機能が高くなっていきます。

それから、投入できるデータに限りというものはございません。画像とテキストを混ぜたり、いろいろな売上のデータ、ロボットのセンサーデータ、ドローンのデータ、そうしたものを混ぜ合わせて柔軟に学習させることが容易に可能でございます。

人工知能の従来型のものですと、データサイエンティストのような方が設計をされて、作り込まれるものかと思います。しかし、私どもはデータを入れていただくことで自分で成長します。そのためお手もとで育てていただけます。

(スライドを指して)これは今年の元旦の『日本経済新聞』さまに「誰もが駆使」ということでご紹介いただきました。まさにそのとおりでして、みなさまのスマートフォンでも、いずれ自分専用の人工知能を育てていただくようになると思っております。

そのため、誰でも・いつでも・どこでも・人工知能。人工知能がありふれたものになり、それらが通信し合うことで我々を助けてくれる世の中になるのではないかと思っております。

(スライドを指して)これは動いているところなんですが、向かって左側が入ってきたデータの例でございます。

とくにバーッと乱雑に入ってくるデータに対しても、右側のように、「この中にはこういう構造のものがこれだけ入ってました」と、細胞分裂しながら自分でとらえていくことが可能でございます。こういう柔軟な学習は、従来技術ではちょっと難しいところがございます。

自分で成長していく、いろいろなデータを混ぜて成長させられる

ポイントをまとめますと「自分で成長していく」、それから「いろいろなデータを混ぜて成長させられる」。ノイズ混じりのデータでも、直接学習させることができます。

通常は(無駄な情報の)ゴミ取りをするのがけっこう大変だったりします。しかし、私どもの技術では検索結果から直接学習させるといったことも可能でございます。

ですので、私どもでよくやっておりますのは、SOINNのモジュールを調整しまして、パソコンに入れてそれごと収めてしまう。そして、お客さまのお手もとで日頃の業務データを入れていただいて、時々見て「あ、できてるかな?」「これ、ここを知らないよ」といった指示をしていただく。

そうすると、だんだん成長していきます。そして「だいぶ良くなってきたかな」というところで、置き換えていただく。こういったエキスパートの方の目視検査なんかも可能です。

ポイントは、パソコンで動きますのでこういう方の足元に置いていただいて、「これはこうだよ」と、日頃作業されている様子をそのままデータを分けていただきます。そうすると、見よう見まねで覚えていって性能を出す。そういったことも可能です。

また、予測をするのは、2万2,000台全部別々にやっても、2〜3分で可能でございます。これ、普通のパソコン1台です。そのぐらいの性能がございます。

(スライドを指して)これはパラマウントベッドさまのこういうハードウェアなんですけれど。最近の機器には、もうCPUとメモリが乗っております。そのCPUを使い、空いているメモリを使って駆動いただく。そういったことも可能でございます。

私どもはそちらの展示のほうのブースも出させていただいております。もしよろしければお立ち寄りいただきたいと思います。どうもありがとうございます。

(会場拍手)

最先端の知能を持ったドローンを作るH3dynamics社

西山:データを取得し、解析し、得られた指示をもとにアウトプットして、ロボットやドローンを制御します。では、賢くなったロボットやドローンは、どのように制御されるのでしょうか?

人工知能を搭載したロボットと聞くと、『ターミネーター』のような怖いイメージを持たれる方も多いでしょう。しかし実は、我々の身近にすでに人工知能を搭載したロボットは存在しています。お掃除ロボットもその1つと言えるでしょう。

では、人工知能を搭載したロボットは、ビジネスの現場ではどのように活用されるのでしょうか? 「ロボットが人の雇用を奪うんじゃないか」という懸念を持たれる方も、多くいらっしゃると思います。

しかし、ロボットによって、従来まで人間が行っていた危険を伴う作業を代替することができ、あるいは、ドローンが人間の目や耳、手の機能を果たすように、人間の能力を拡張する存在になりえます。人間とマシンの共存がもたらす豊かな未来が、実現されることが期待されます。

続いての登壇者は、最先端の知能を持ったドローンです。彼らが開発するドローンは、指令局からの指示なしに自動飛行を実現します。

それでは、まいりましょう。続いての登壇者です。5社目は、H3dynamics社です。どうぞみなさま、拍手でお迎えください。

(会場拍手)

商用向けのドローンサービス市場は20億ドルになる

Taras Wankewycz氏(以下、Taras):みなさま、こんにちは。西山さん、ご紹介ありがとうございました。おはようございます。Taras Wankewyczと申します。

私はH3dynamicsの共同設立者及びCEOです。シンガポールで働いております。そして、シンガポールのほかにもフランス、そしてアメリカにも拠点がございます。あと日本はパートナー、ブイキューブロボティクス社経由でビジネスをしております。

「ドローン技術の次の波に備えよ」という話をしていきたいと思います。

ドローンに関連するいろいろな活動が行われております。それをけん引するという役割を持っております。私どものミッション、H3dynamicsでは、全体のプロセスの自動化、これをエンドツーエンドでやっていきます。ドローン関連のアクティビティ及びデータ収集に関してです。

フィールドからフィールドまで。そして、実際にアクションが行われる。問題をドローンが見つけ、解決をするところまでです。

ドローンがどういうものか、3つの種類がございます。

まずはコンシューマー向け、DJIの世界になります。中国のメーカーで、だいたい市場の80パーセントを持っている会社です。そしてもう1つは、軍用向けもございます。実際にすべてのドローンに関しての投資の90パーセントが、軍用と言われております。

そして、ボリューム的にはコンシューマー向けです。200万台のドローンが、昨年販売されました。今年、280万台のドローンがコンシューマー向けに売られております。

エキサイティングなのはB2B、商用向けのドローンだと考えられます。(スライドを指して)真ん中の部分ですね。ドローンのハードウェアというところではなく、サービスがドローンをけん引していると言えます。大変大きな伸びが出ているのは、そのサービスです。

そして、商用向けのドローンサービスの市場は20億ドルになると、今年は予測されています。そして、3年後には1,870億ドルになると予測されております。

電力供給がなくてもフィールドで展開できるドローン

軍用向けと商用向けにフォーカスをしていきたいと思います。軍用向けの歴史といいますと、やはりデータ収集、検査、安全、セキュリティがあります。3つの技術の課題を解決していきたいと思っております。

まずは、この見通し線を超えるところで自律させていくことですね。そして、電気駆動のドローンのは、あまり遠距離飛行ができません。そういったところを技術を使いまして、より遠距離に飛行できるようにしていきたいと思います。また、ドローンサービスのスケーラビリティも手掛けております。

開発をしておりますのはロボットで、これはドローンの展開ができるものです。全体のプロセス、ドローンの充電、データ取得、クラウドへデータ送信、そして配備というところまで全部できるものです。コネクテッドIoTの世界です。

そのため、これをリモートからも行えます。そして、さまざまなサービスをこのデバイスで実行することができます。

また、注力をしているのは、軍用にドローンの飛行距離を伸ばしていくものです。これは商用にも展開できる技術になります。エネルギー密度を450から550に上げていくことをやっています。

これは10年ほど手掛けているものでして、DARPA、アメリカの防衛用のリサーチプログラムで、シンガポールでは稀なものですけど、パートナーシップを持っております。そして、世界記録を持っています。

(スライドを指して)これは遠距離飛行のためのものです。5キロのUAVが、実際には500キロ、カリフォルニアで飛行できました。

そして、自律パワーがございます。これにより、ドローンを独立させていくことができます。電力供給がなくてもフィールドで展開できるのです。これによって、リモートからドローンによる測量のようなもの、この問題を解決できる。

そしてまた、ドローンサービスのスケールアップも行っています。ビジュアルデータの解釈というところですね。そこはAIを活用しています。

耐用性の高い電力、データ収集の自動化、データプラットフォーム

(スライドを指して)これは高精度の画像で撮影した壁を写しています。そこにAIを適用し、表面画像上の異常はなんなのか、ということを教えているわけです。

ここで見ているのは、問題がある確率です。その確率をシステムが検知していきます。大量の画像から見出していくもので、オペレーターにどんな問題を解決しなければならないのか、どこの場所に問題があるのかを示すものです。

ということで、異常値検査の時間を削減できます。サービスのスケールアップができ、大きなビジネスとして使えるものです。だいたい数千万ドルものコストを削減できた、というお客さまもいらっしゃいます。

結論としましては、私どもの会社では3つの活動をやっております。まずは、耐用性の高い電力提供、そして、データ収集の自動化。そして3つ目は、データプラットフォーム、またはサービスプラットフォームで、グローバルに展開できるものです。ロボットデバイスによって実行可能なものです。

日本におきましては、ブイキューブロボティクス社とともに行なっています。ブイキューブ社は日本での上場企業になりますけども、いろいろなパートナーシップを持っています。ブイキューブ社がNTT、またはそれ以外のお客さまと、その技術、私どもがシンガポールで開発した技術の展開をしていただくかたちになっております。

私どもは今後も新たなパートナー企業を探しております。ありがとうございました。

(会場拍手)

最先端のサイバーセキュリティ技術を持つThetaRay社

西山:IoT、ロボット、ドローンによって、人々の暮らしがますます便利になるイメージが持てたかと思います。

一方で、悪意を持つグループがいたるところに潜み、セキュリティの脆弱性があれば悪用しようと待ち構えています。デジタル時代の恩恵を十分に受けるためには、我々はIoTのメリットがリスクを上回ると確信できる環境を整備する必要があります。

例えば、IoT機器は常にネットワークに接続されていることが多いため、一度セキュリティ攻撃に遭った場合、その被害はIoT機器単体にとどまらず、ネットワーク全体に広がる可能性があります。

ましてや、自動車や医療機器といったIoTデバイスが狙われた場合、その被害は人命にまで及ぶ可能性すらあります。

物理的アクセスとサイバーアクセスの入り混じる、このチャネルの多様性と複雑さは、それぞれに関連付けられる固有のリスクに影響を受けるため、セキュリティの複雑さを増大させています。サイバー攻撃を撃退する準備を整え、いかに対応していくべきか。

続いては、イスラエルから最先端のサイバーセキュリティ技術を持つ、ベンチャー企業を紹介します。それではご紹介しましょう。最後の登壇者です。ThetaRay社になります。どうぞみなさま、拍手でお迎えください。

(会場拍手)

攻撃は毎日のように起こっている

Shiri Septon-Etchin氏(以下、Shiri):おはようございます。今日はみなさんの前でお話しできて光栄です。ライアンと申します。スタートアップでありますけれども、市場でも認知されております。

ThetaRayというのは、大きなデータアナリティクスの会社です。プロプライエタリなマシンラーニング、それからAIのアルゴリズムを使っています。これによって非常にクリティカルに、これまでわからなかったような脅威を把握し、守ることができるがというものです。

現在の世界には、さまざまなデータが集まってきます。そして、いわゆる干し草の中の針を見つけなければいけない。これが脅威であったり、チャンスであったりするわけです。

どのような脅威があるか。攻撃というものは毎日のように起こっている。そして、毎日のようにメディアをにぎわせています。

そして、それによって物理的なダメージとして、売上が下がる、ブランドが損なわれる、または時には死を招くといったこともあるわけです。攻撃者が常に先をいっている、いわゆる従来型の検知・検出技術では追いつかないことで、ルールとか、パターンとか、さまざまなヒューリスティック、またはシグネチャベースのものでは追いつかなくなっているわけです。

つまり、なにを求めているのかというのがわからない。そういった脅威が検出できないということで、非常にバイアスがかかってしまうわけです。

また、同時に私たちが生きているのは、ビッグデータの時代です。みなさんの中でボーイング787に乗ってきた方もいらっしゃるかと思います。30分でボーイング787は20テラバイトのデータを生成する、と言われています。また、Chevronですけれども、1997年には会社全体で5テラバイトでしたが、現在では毎日2テラバイトのデータが使われています。

ということで、こういったデータを格納するだけでなく、価値を引き出すためのツールも必要であるわけです。我々は15年、テラビテルアビブップ大学とイェール大学で研究をしてきました。

脅威またはアノマリーを、リアルタイムで検出

一連のアルゴリズムを作っています。パテントで守られているんですけれども、どのようなデータでも、どのような源から来る場合でも、データの理解がなくても、アノマリーというのを非常に正確なかたちで学ぶことができます。

実際の事例をご紹介します。これは大手銀行のトライアルなんですけれども、ローンをオフラインからオンライン化したわけです。デジタル革命ということで、変えたわけです。このトライアルの中では、3万件も承認されたローンに関して、カスタマー情報、それからプロダクト情報です。

私たち自身、このローンについてまったく知識はないわけですけれども、1週間でこれをデプロイし、データを使って私たちのアルゴリズムを使い、30秒でこの銀行にとって900万ユーロの節約をすることができました。これは、これまでよりも正確に、ローンのリスクを把握することができたからです。3つのパラメータによって、こういったアノマリーを検知できました。

まず1つは年齢です。16歳か18歳で、銀行口座は開けることができるわけです。あと、取引額でした。取引額が平均以下であれば、これはあまり異常ではないわけです。通常はいい兆候です。3つ目は、トランザクションのタイプでした。これは住宅ローンというトランザクションだったわけです。

それぞれ一つひとつ見るとわからない。しかし、このすべてのパラメータを比較すると、住宅ローンであり、そして20歳未満であり、実際に返済ができない人たちだとわかるわけです。

では、私たちThetaRayにとってなにが重要なのか。検出率が6倍高くなっています。つまり、データソースを取り込んで、これまでに見ることができなかったものを把握できているということです。

それから、非常に偽陽性または誤検出が低いということで、ほとんどゼロということもありました。そして、(起業して)1ヶ月しか経っていない時から、GEは投資をしてくれました。

また、これはまったくヒューリスティックでもないわけです。数ヶ月ではなく、数日でデプロイできるということです。いろいろな脅威またはアノマリーを、リアルタイムで検出することができます。そのため、ダメージが起こる前にそれを緩和することができるわけです。

先ほど言ったとおり、干し草の中の針を見つけようとしているものですが、これをすべて、みなさんの脅威であったり、チャンスであったりするものを見つけることのできるアルゴリズムが私たちの技術なのです。

ご関心があれば、ぜひ外で話を続けたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

未知なる世界には多くのビジネスチャンスが眠っている

西山:これですべてのプレゼンテーションとなります。いかがでしたでしょうか? 

収集したデータをリアルタイムでいかに処理をするか。どのように効率的にネットワークに乗せるか。アウトプットとしてのロボットやドローン、これらの一連をサイバー攻撃からどのように守れるか。我々は考えなければならないポイントが、非常に多くあります。

一方で、人々の生活を豊かにする、未知なる世界を拓くために、我々は多くのビジネス機会が眠っているとも言えます。新たなビジネスを創出し、自社の戦略を整理したうえで、自社でやらない領域は他社の優れた技術を持つ企業と連携をする必要があります。

本日お話をいただいた企業を筆頭に世界中から約50社、最先端のテクノロジーを持つ企業を、今日ここに集結させています。このような機会は、日本で初と言っても過言ではないでしょう。またとない機会となります。ぜひ積極的に、世界中の優れた技術を持つベンチャー企業と、ネットワークを築いていただければと思います。

それでは、本セッション「世界のスタートアップから学ぶ最先端テクノロジーが拓く未来」、これにて終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)