メディアミートアップを開催

徳力基彦氏(以下、徳力):本日企画を担当させていただきました、徳力と申します。今日はよろしくお願いします。

今日は、台風はコースが変わるわ、北朝鮮が「今日(ミサイルを)やったぜ」っていう予告をするわ、よりによって、ヨッピーさんがまた炎上してですね。

ヤフトピに出た記事が、BuzzFeedの記事っていう。今日は星の巡りが悪いから、もうやらないほうがいいかなぁと思ったんですけど、さっき準備中にめちゃくちゃ良いことがありまして。ずっと買えなかったニンテンドースイッチが、準備中に買えました。

(会場笑)

ありがとうございます。今日はもうそれだけで来てよかったなと思います。すみません(笑)。

じゃあ、始めさせていただきます。先に基本ルールからご紹介しますと、ミートアップという取り組みは海外の言葉ですけど、どちらかと言うと、オフ会に近い言葉ですかね?

アンオフィシャルの、コミュニティっぽい言葉です。どこかの記事に、「オープンでフラットが原則だ」って書いてありました。

とくに、今日登壇者のお2人が、なんといってもカリスマ的な人なので、みなさん、お話を傾聴する感じになっちゃってるかもしれないですけど、できるだけみなさんと一緒にやりたいので、そんなつもりでフラットに聞いていただければ。

また、双方向でのミートアップなので、なにかとメディアの議論って、炎上絡みとかの結果になりやすいんですけど、今日はできるだけ前向きに、ポジティブなディスカッションができればと思っておりますので、よろしくお願いします。

WELQ騒動とメディアに対する不信感

今日のメインテーマは「メディアで発信することの責任やリスク」です。

ちょっと話が長くなるんですけど、私自身はどちらかと言うと、ブロガーとしてネット上で情報発信するのを楽しませていただいて、だからこそいろんな方とも知り合って、今がある人間なんですけど。

去年のWELQ騒動以降の、メディアに対する不信感だったりとか、個人で情報発信することのリスクみたいな議論がいろいろ出てきていて。けっこう個人的に滅入っちゃってたんですね。

実はお2人とも年末年始に、界隈のメディアの人たちが集まる飲み会というのを僕が主催して、お呼びして議論してたりした経緯もあるんですけれども。そういう話を、もうちょっと具体的な話ができればなというのが、今日の趣旨になります。

では、私ばかりしゃべっていてもなんですので、まずは自己紹介プレゼンを2人にお願いしたいと思います。

お1人目は、BuzzFeedの古田さんです。

(会場拍手)

ライターになるため、朝日新聞社へ

古田:BuzzFeed、古田です。1977年生まれで、最初に入ったのは朝日新聞社です。だからよく新聞の人間と言われます。……まさしくそうなんですけれども、ただ僕はインターネットはもともと好きだったんですよね。

当時を振り返ると、現場に行って記事を作る海外特派員をやりたかったんです。海外まで出張して、わざわざ書くっていうインターネットメディアは2002年当時はそんなになかったんですよね。

ライターになるにはどうしたらいいだろうというので、考えて入ったのが朝日新聞社でした。社会部で、自然事故とか災害を追っていたり。

その後は海外特派員をしたりして、シンガポール支局長をしていたころに、東南アジアの記者がデジタルツールで情報の受信発信を自由にしている姿を見て、日本はまだまだ遅れているなぁと思って。

そろそろデジタルの、自分の大好きな世界に戻っていこうと、デジタル編集部に行っていろいろ発信していました。そのころもインタラクティブな企画とか動画とか、いろいろチャレンジしていたんです。

新しいことをするとすごく反応がいいんですよね。でも、2度目、3度目になると、別に誰も褒めてくれないわけですよ。

読者からの反応が格段に下がるんですよね。例えば、浅田真央さんのラストダンスっていう、すごく綺麗なコンテンツを作ったときに、すごくバズったんです。

めちゃくちゃバズったんですけれども、その2ヶ月後くらいに同じくらいの労力をかけて、僕がもともと関心があった東南アジアの国際政治に関するやつを作ったら、もうぱったりウケなくて(笑)。あ、こんなもんだなぁって思ったんですよね。

古田氏とBuzzFeedの出会い

そのころに、BuzzFeedの人たちが日本に来て知り合ったんです。僕はBuzzFeedのことを知ってて、注目してたので、彼らに取材をしてたんです。彼らの感覚でハッと気付かされたのが、彼らは「人々がどうやって情報をシェアしていくのか」っていうことから議論を始めるんですよね。

僕がやっていたのって結局、インターネットを使えば動画が使えるとか、インタラクションが使えるっていうプロダクトアウト視線だった。本当の意味で、読者のことを考えてなかったって気づかされて。それで誘いを受けたときに、ぜひその分野にいきたい、この人たちと一緒に働きたいと思ってBuzzFeedに入りました。

これ、ふだんは30分くらいでやってるやつなので、ここら先はザッと流していきます。 BuzzFeedというのは、この人、ジョナ・ペレッティっていう人が作ったんです。ずっと問いかけているのは、この2つです。「What makes thing go viral?」「Why people share?」。「なぜ人々はシェアするのか?」「なぜある情報はバズり、ある情報はバズらないのか?」というのが、根本にあります。

僕らが中心に考えているのはどれだけ読まれるか、つまり、PVじゃなくて、バズる、シェアされるもの。どうやったら人の心を動かして、シェアしてもらえるのかというのを、ずっと考えています。

コンテンツをいろいろ出して、それが読まれた結果を見て、そのデータを参考にして次のコンテンツをどう出したらいいのか。

より読者のためになるもの。それは、読者におもねるというわけではないんですよね。読者のためになるにはどうしたらいいかというのは、日々議論しています。それをいろんなプラットフォームに、分け隔てなく出していく。

それは、そこにオーディエンスがいるから。自分たちのサイトに来てもらわなくても、そこにオーディエンスがいるなら、そこのプラットフォームでバズればいいなと考えています。

人々の繋がりをもとに成り立っているメディア

そういうふうにいろいろやっているうちに、我々は気づいたんですね。我々が今やっていることは、人々の関係性をつなぐということなんだと。シェアというのは、人がつながるということなので、「BuzzFeed is the media built on human connection.(BuzzFeedは人々の繋がりをもとに成り立っているメディアだ)」という言葉をモットーにしてやっています。

いろんな感情が動くときがあるわけですよね。どういうことを人が思ったときに、どんどんシェアしてくれるのかというのを考えてやっています。順調に成長はさせてもらっているんです。

そのがんばりの根源にあるのは、うちはライターも社内でみんな好きな議論をして、毎週ミーティングをいっぱいやって。「ミーティングが多すぎる」ってみんなに怒られるんですけど、そこでいろいろ話し合ってやっている。

コンテンツを作るのは、やっぱりプロが作らないといけないよねっていうので、スライドにある「8割良ければ良いではない」という言葉についてははあとで説明しようと思うんですけれども。

我々は、常に読者の知的・精神的な健康を養う為にコンテンツを作っているということを忘れないでいようと話しています。わかりやすいニュースや、真実を暴く特ダネ。

ただ、笑ってもらうというのは、精神的な健康を養うのに最高ですし。いろんなやり方でポジティブに楽しんでもらおうと思っています。例えば、暇つぶしになるコンテンツを楽しんでもらうって、最高だと思うんです。そういったことを、我々はやろうと常々思っています。とりあえず、これくらいで。

徳力:ありがとうございます。

(会場拍手)

BuzzFeedの記事は内製がベース

僕はBuzzFeedさんの話を聞いてすごく印象的だったのが、通常のネットメディアだと、どちらかと言うとライターさんに書いてもらった記事を載せるケースが、すごく多いイメージなんですけど。BuzzFeedは、基本社内で内製ですよね?

古田:基本社内ですね。今度、一部寄稿を始めます。ただ、その寄稿っていうのも、分野を限って。まあ言っちゃうと、医療なんですけれども。医療健康情報って、ネット上ですごく求められてますよね。でも去年の、このあと話すことになると思いますけど、WELQの流用騒動というものがあって。

本当にみんな求めていると思うんですよね。困るじゃないですか、病気のとき。みんな役立つ情報、正確な情報、わかりやすい情報が欲しいわけですよ。そういうのをBuzzFeedで積極的に発信していこうというので、医者とか医療情報の専門家たちのごく限った人に寄稿をしてもらうというのを、一部だけ始めます。

それもあくまで、BuzzFeed社内で抱える医療専門ライターたちが、信頼されている専門家を選んで、わかりやすく伝えるにはどうしたらいいのかということを考えながらの上でやろうとしています。

徳力:基本、内製がベースと思っていいですよね。

古田:内製がベースです。

徳力:その話を聞いたとき、すごく意外で。外部のライターに頼んで書いてもらった記事を集めてサイトにするのがネットメディアの基本パターンだって、勝手に思い込んでいたので。

新聞社は垂直統合で内製なんだけど、それがネットメディアになると、どっちかと言うと分散化なのかなと思ったら、BuzzFeedは垂直統合に戻るっていうのが、個人的にはおもしろいなと思ってます。

ヨッピー氏、商社マンだった

徳力:では、既にインパクトのあるスライドが出てますが、ヨッピーさんの自己紹介をお願いします。

ヨッピー氏(以下、ヨッピー):ヨッピーと申します。よろしくお願いします。

(会場拍手)

僕の経歴をザッとお話します。大阪生まれです。36歳です。(子供の頃の写真を見せながら)めちゃくちゃかわいかったんです。

徳力:ここから始まるんですね(笑)。

古田:絶対10分で終わらないでしょ!?

ヨッピー:終わります、終わります! パパパって。

徳力:完全にこれ、情熱大陸の15分くらいで流れるような写真ですけどね(笑)。

(会場笑)

ヨッピー:大阪の東成区というところで生まれて。今出してる地図の画像、これあとで気づいたんですけど、たぶんこれ、デリヘルのHPに載ってるの地図ですね。

(会場笑)

徳力:女性の方、すみません。ちょいちょい下ネタ入りますからね。

ヨッピー:関西学院大学というところを出て、在学中に、テキストサイトの「オレイズム」っていう日記サイトを運営し始めます。これは19か20か、それくらいからですね。

そのころは、バイト先の店長を空想で惨殺する日記とか、芸能人の悪口をひたすら書いたり、童貞ネタを書いたり。当時、童貞だったんですけど、まあ童貞はなにを書いても許されるんだと、ちょっと調子に乗っていろいろ書いてました。

こういう活動をインターネットでしながらも、商社に入りまして、上京して。今度、「オモコロ」という媒体で……。

徳力:普通の会社に入ってるんですね!?

ヨッピー:普通の会社に入りました。

徳力:ずっとライターをやってるものだと思ってた。

ぶっとんだ企画を多く世に出す

ヨッピー:普通のサラリーマンをやりながら、(過去のひどい企画の写真を出しながら)こういうのをインターネットで書き始めます。オモコロという、今ももちろんありますけれども、ふざけた媒体で書き始めまして。

徳力:このときは、まだ会社員?

ヨッピー:会社員です。会社に内緒ですよ、これ。

(会場笑)

徳力:顔、出てません?

ヨッピー:顔はね、微妙に出てるか出てないかわからないくらいですね。これも顔は仮面をしてますし。

徳力:本当だ。一応顔バレはしないように、まだしてたときですね。なるほど。

ヨッピー:このころに成し遂げた偉業がいろいろありましてですね。まず、「人類で初めて国会議事堂でオナニーする」というのがありまして。どういうことかと言うと、こういう(長方形の)箱を作るじゃないですか。これを腰に入れて、横に手を入れる穴があるんですけど、チンコが握れると。これを持って、こうですね。外から見たら箱のなかでチンコ握ってるのがバレない。

(会場笑)

あと、「電車内でSMする」っていうのもあるんですけど。これですね。

(会場笑)

これ、ひょっとしたら見たことある人がいるかもしれないです。インターネットで死ぬほど拡散されたんで。Googleの画像検索の結果ページなんですけど、数千とか数万のレベルで転載されてるので、見たことあるかもしれないです。これ僕です、はい。

徳力:これは、なにかの法律に触れたりはしないんですか?

ヨッピー:たぶんダメでしょう。

(一同笑)

芽生えた「パクリメディアをやっつけよう」

ヨッピー:2011年に、7年間働いたさっきの商社を辞めます。辞めて、今度は「会社にバレるとまずい」ってタガが外れます。で、ツタンカーメンの格好でツタンカーメン展に行ったり、iPhoneの格好でiPhoneの行列に並ぶとか。それで新聞に載ったり、あとCNNに出たり。

あとは、『変態仮面』という映画にさっきのSMの写真を勝手に使われて、作った会社を脅しにいってお金をぶん取ってですね。そのぶん取ったお金でパンツを買って、渋谷で配るっていうね。これも、最終的には警察に捕まるという。

(会場笑)

何が言いたいかというと、僕は真っ当な人間ではないということですね。ちゃんとした人間ではないんです。そういうのがいろいろありまして、ただ最近はパクリメディアをやっつけようと、ちょっと社会にとっていいかなと思うようなことをやったりですね。

徳力:このBuzzNewsの件、何年前でしたっけ?

ヨッピー:3年前くらいですかね? 「BuzzNews」をやっつけるというか、最終的に消させちゃって。まぁよかったなみたいな。

古田:これのせいでBuzzFeed、すごく勘違いされて(笑)。

徳力:いまだにBuzzNewsとBuzzFeedの違いがわかってない人、けっこう多いですよね(笑)。

ヨッピー氏とアドウェイズが組んだメディア「SPOT」

ヨッピー:あと、サイバーエージェントがやってるパクリメディアも「よくないよね」、みたいなことを書いたり。最近はですね、キュレーションサイトがあまりにも跳梁跋扈してるのが腹立つから、アンチキュレーションと銘打って、全部逆をやろうと。

適当にライターさんに安い賃金で、適当に画像を集めてきて、適当につないで書くっていうのじゃなくて。ちゃんと詳しい人がちゃんと現地に行って、ライターさんにお金を払ってやるという、こういうメディア(SPOT)をアドウェイズさんというところと組んで、今やってます。これ、かなり数字がいいんですよね。

けっこう知ってる人も多いんじゃないですか? 「パクチーを1週間食べる」という記事とか。「山手線全駅の女子トイレを全部行く」とか。あと、「ラーメン屋で1日働いてみる」とか。「千葉市長に、男性保育士の現場ってどうなってんの」みたいな話を聞きに行くとか。こういうのを、いろいろやってます。

ただ、大赤字なので「助けてください」って感じですけど(笑)。そんな感じで、今生きているというところですね。以上です!

徳力:ありがとうございます。

(会場拍手)