飛行機でスマホの電源をオフにする理由

マイケル・アランダ氏:飛行機に乗れば毎回、携帯電話の電源を切ってくださいとか、機内モードに設定してください、といったアナウンスを聞きますよね。

座席に座るなり爆睡でもしていなければアナウンスを聞いているでしょう。もしかしたら、客室乗務員にバレないだろうと考えて、アナウンスを無視してメールをするもしれません。

ではどんなリスクがあるのでしょうか。ちょっとメールで友だちとふざけたやりとりをしたせいで、飛行機が墜落するのでしょうか。

少なくとも理論的にはありえます。

携帯電話やタブレットといった電子機器で問題になるのは、電磁波干渉です。飛行機の通信機や、ナビゲーションシステムを妨害するかもしれないのです。

電磁波干渉の1つは「フロントドア干渉」といわれるものです。電波が窓や金属フレームの隙間から漏れ出し、機体の外に取り付けられたアンテナが受け取ってしまうのです。そうしたアンテナは管制塔との連絡やGPS衛星との通信に使われているため、重要な情報のやり取りができなくなるかもしれません。

もう1つは「バックドア干渉」です。電波が飛行機内部のケーブルを伝って、電気系統の信号に干渉してノイズを乗せるのです。

ですが1980年以来、飛行機の電気系統は雷の直撃や、その他の電磁波妨害などに対しても耐えてきました。なので、携帯電話やタブレットからのわずかな干渉からも守られているでしょう。

また携帯電話、タブレットなどの電子機器を飛行中に使わないように、一人ひとりが努力してきたことも大きな問題に繋がらなかった理由でしょう。パイロットのなかには、乗客が電子機器を使えば機体の計器が狂ってしまうと言う人もいますが、そこまでの影響はまずないでしょう。

研究者たちは常にそうした問題を改善しようと努めているため、トラブルは起こっていません。多少の干渉の可能性はあったとしても、めったに起こりませんし、機体を危険にさらすような重大な問題にはならないでしょう。

ですが飛行中に携帯電話を使ったり、機内モードをオフにしたりすることが禁止されているのは別の理由もあります。

携帯電話がまだレンガのように大きかった1991年、FCC(連邦通信委員会)は機内の携帯電話が、地上の携帯電話の信号を妨害するのではないかと考えました。携帯電話が空中から電波塔群に近づくとシステムが混乱をきたします。

また飛行機は移動スピードが早いため、電波塔を次から次へと乗り換えて貴重な帯域を専有してしまうのです。

ですが実際にはそういったことは起こらず、近年は飛行機自体にシールドが施されています。携帯電話の通信が飛行機を墜落させることも、電話回線を妨害することもありません。

ですが、携帯電話が利用可能な特別な飛行機でもない限り、ルールには従うようにしてくださいね。