緯度によって生物の多様性に差があるのはなぜか

オリビア・ゴードン氏: 熱帯雨林は生物学的に非常に多様性があることで知られています。色とりどりの鳥、虫や植物や菌類など、さまざまな種類の生物が生息しています。いまだにそこにいる全ての生物の図鑑を作るにはほど遠いくらいなのです。

もしあなたが、北極方面のツンドラ地帯を専門にする生物学者なら、地衣類が好きだといいんですけどね。この赤道での多くの生物的多様性と、しかし人々が両極側へ移動するというパターンを緯度方向の多様性の勾配(Latitudinal diversity gradients)と言います。

北半球と南半球、温血動物や冷血動物、大地や海の生態系や食物連鎖の上下は本当です。

化石の記録によれば、この勾配はある程度古生代の頃、つまり5億4千年前から始まっています。つまり、生命が最初にコロニー化した時となります。科学者たちは、長年に渡り多くのさまざまな説を唱えてきましたが、今は2つの主な仮説に落ち着いています。

1つ目の仮説は、年齢-面積仮説です。主な考え方は地質学的な時間のスケールで、熱帯雨林は温暖で極地の生態系よりも古く、多くの土地があります。つまり、それは多くの生物が蓄積するため時間と空間があったということです。

6,600万年前の新生代の初期、つまり恐竜が絶滅した後、熱帯気候は現在でいうとロンドンまで広がっていました。赤道周辺地域の温暖な気候は、それ以来ほぼ乱されないままでいました。つまり、さまざまな生物が蓄積される十分な時間を得たということになります。

さまざまな世代を経て、一種の生命体はランダムなDNAの突然変異を起こすことができました。これはある環境でより良く生き抜くために起こりました。例えば、毛皮の色が捕食者から子供を守るのに役立ったり、甘い蜜は花粉を運ぶ役割を果たす他の昆虫たちを集めます。

結果的に、これらの生物の助けとなる十分な特質は適応と呼ばれ、ある1つの種が2つ、またはより多くの種に分かれます。

全ての種は別々の方法で繁栄していきます。一方で温帯地方では、約200万年前の更新世の間にきた多くの氷河の波を切り抜ける必要があります。

つまりこれはより生物が生き抜くために困難な状況に置かれ、生き抜く足がかりを得ることが簡単ではないということになります。実際、現代の温暖な種は熱帯気候の種の子孫なんです。つまり氷河が後退するにつれ温帯地域に生息した熱帯の生命体の子孫ということになります。

年齢-面積仮説は、世界中でより大きく多様な生態系がある傾向にあるという理由である程度支持を得ていますが、ある考えによるといささか問題があります。例えば、化石の記録は、実際に今日の熱帯種のうち、更新世の初期にさかのぼるものはほとんどないと示しています。

ある統計では、たとえ熱帯地域であっても平均的な生物が絶滅するまでにおよそ1500万年しか生息できません。したがって、緯度方向の多様性の勾配では、熱帯の生態系が長い期間において安定しているとは言い難いということになります。他の何かが起こっているに違いありません。

熱帯の種はより早く進化する?

そこで、2つ目の仮説である、多様化率(Diversification rate)が出てきます。ある科学者は、熱帯地域では新しい種はより早く進化し、よりゆっくりと絶滅へ向かうと考えています。

古生物学の研究では、多様化率が熱帯地域ではより早いという説をほぼ支持しています。しかし、私たちは完全にこれが正しいと言えません。安定した温和な気候では、ある種が特化してしまうことが可能なのです。

極端な天候や食糧不足というような、生き抜くために多くの労力を要しないのであれば、その種の優れている部分が特殊化し、それぞれが持つ環境に適応するようになるのです。または、おそらく多くの相互作用がある可能性があり、種の間で早く進化する、共進化(coevolution)という過程があります。共進化とは、2つの種が互いの進化に影響を受ける過程のことを言います。

ある一種がその環境を他の種と共有する場合、彼らは生き残るための競争をします。したがって、さまざまな種が長い世代を経て新しい順応をし続け、その過程で新しい種が誕生することもあり得るかもしれません。

赤道のような熱い地域では、生命体の代謝に影響を与えるという考えがあります。これは、短い世代交代の時間とDNAの突然変異率を促進することによって、進化のスピードを上げ、より多くの異なる性質や新種の生命体を生み出しているかもしれないのです。

詳細はまだ闇の中ですが、生物がどのくらいの大きさになるかというような他の要因をコントロールするという研究があり、原生生物のような小さな生命体は、北極や南極の水よりも、熱帯地域の水中でより早く進化するという研究があります。

どう見ても、生物学者と環境学者達は長い時間このパターンについて熟考しています。真実は、これらの説を組み合わせることで、または私たちがまだ知らない説によって導き出されるかもしれません。今のところ、緯度の多様性の勾配が博物誌の大きな未解決の問題を抱えていると言えます。