デジタルで可視化されて初めてできるようになること

倉橋健太氏(以下、倉橋):最後は変わり種なんですけど、「パル」さんでやったデスノートとのコラボキャンペーンです。

左下に携帯のアイコンが出てきて、押すとコンテンツが出て「リンゴを探せ」って言われる。リンゴがサイトの中に埋まってるんですよね。スクロールしていくと、フッターのところにリンゴが出てきて、獲得すると「1個目回収」みたいなのがありました。

これを、サイト側をいじらずにKARTEだけで実装してるんですよね。いわゆる人の動きをリアルタイムでトラックしながら、その方に適した体験提供をできます。なので、「接客」と僕らも言ってるんですけど、顧客との自由なインタラクションが可能になったというのがプロダクトのコアでございます。

木下慶彦氏(以下、木下):こちらの顧客実績では、大企業事例が多いですけど、スタートアップも使ったりしているんですか?

倉橋:そうですね。最後に言おうと思ってたんですけど、ローンチパッドというか、IVSに参加していた企業様で言うと、例えばfreeeさんとかですね。

宮田昇始氏(以下、宮田):うち(SmartHR)は使ってます!

倉橋:そうですね、優勝者は特別っていうわけじゃないんですけど、お使いいただいたり。

宮田:安くはしてもらってないかもですね。

倉橋:今後がんばります(笑)。けっこうスタートアップ界隈で使われている方が多くて、エンジニアがいるとか開発環境みたいなものなので、そういうパワーのある企業さんには、すごく楽しいプロダクトかなと思います。

宮田:うちだと、CSのメンバーがKARTEを使ってゴリゴリやるんですよね。「開発に投げると待ってらんねえな」みたいなやつを、その場でパッと障害のアラートを出せたりとか、いろいろ便利なので使わせてもらっています。

倉橋:ありがとうございます。なので、デジタルで可視化されると初めてできるようになることがあるよね、というプロダクトです。

売り上げゼロで1.5億円調達

ローンチして2年ですね。これまでインバウンドのみでやってきて1,430社まで増えてきました。月間で1億UUを解析しています。ECに限るんですが、年間で5,000億くらいの流通規模を解析しております。だいたい6割くらいがECサイトさん、それ以外が銀行さんとか人材、不動産です。

いろんなところでお使いいただいています。MAツールとか、いろんなプロダクトがあるんですけど。サイト内に関してグローバルでトップクラスに強いプロダクトは、KARTEだと思っています。なので、サイト外に向いたMAとかDMPと、サイト内のKARTEと併用されているケースが非常に多いという状況です。

これは撮影とか遠慮いただきたいんですけど。(スライドを指して)売り上げのグラフなんですが、2014年5月に1.5億円ファイナンスして、その後2014年10月にβtestを開始。12月にIVS入賞。翌年3月にローンチしたあとに、5億円をファイナンスして現状まで来ました。

木下:すみません。これって、売り上げゼロで1.5億円調達なんですが、どういうことなんですか?

倉橋:これはですね、けっこうハードな戦いだったんです。夢で戦うというか。「こういう世界になったら良くないですか?」みたいな、それだけです。この時はなにもなかったですね。こんな感じで今まで頑張ってきていて、僕らもチャーンレート(解約率)1パーセント以下でがんばってます。『Forbes』にも、「Webの歴史に名を刻むかもね」みたいなところでお話いただいたりしています。

こんな感じで、すごく使いやすいので、スタートアップのみなさんにもぜひご利用いただきたいなと思っています。

正確の定義・ルールを極小化・円滑なコミュニケーション

最後に、サクッとなんですが、僕らもやってきてよかったことと、よりよくできたことを4つ持ってきました。

1つは、Web接客というマーケティング手法は、この2〜3年くらいで出てきた言葉だと思うんです。でも、この言葉自体、自分たちで作りました。作って、ファイナンスと合わせてやっていくことで、いろんなマーケティング向けの企業さんがWeb接客と言ってくださったり、メディアで取り上げていただいたりしました。最近だと、本当に市場として成立してきたなと感じます。

なので、性格の定義を自分たちがしていくということと、あとは社内にいる僕も含めたメンバー仲間が、「自分たちの性格として0→1で市場を作っていく会社なんだ」と市場定義ができるのが、非常によかったと思っているポイントです。

2つ目は、「ルールを極小化している」というところですね。会社の中のあらゆることがルールだと思っています。例えば、組織も1つのルールだと考えています。70人くらいいるんですが、役職者が僕とCTOのみで、あとは全部フラットな状態で、オーナーシップをものによって取りながらやっています。

よりよくできたところは、問題設定を間違えない。すべてのベンチャーによくあると思うんですが、僕らもBtoBなので、パワーのあるお客さんも増えてくるわけですね、声が大きいお客さんとか。

その中で、日常からお客さんとの接点が増え、いろんな課題とか要望をいただくんです。お客さんから言われて、僕らもやりたくなっちゃうんですよね。

それ=課題みたいになるんですけど、ほとんどのことが課題ではなくて、その裏でどのようなことがあるから、こういう声が出てきてるのか。これを抽象化して捉える能力が非常に必要だと思っているんです。問題設定の置き方がすごく大事だなと思っています。

最後はシンプルですね。社内も人数が増えてきてるので、コミュニケーションロス。代替手段みたいなところから上手くカバーできてないと、問題は絶対発生するという話と、クライアントサイドも同じだと思っているので、より円滑なコミュニケーションを今後構築したいなと思っているところです。

じゃあ最後、トリの平田さんに。

スマホアプリのグロースハックツール

木下:はい。それでは、ご準備をお願いします。最後、たぶん一番働いている地獄系起業家の平田さんにお願いしたいと思います。

平田祐介氏(以下、平田):はい、地獄系の会社ではないですけども(笑)。

リプロ株式会社の平田と申します、よろしくお願いします。僕らはスマートフォンアプリの、いわゆるグロースハックツールという物を作っています。

簡単にプロダクトを説明させていただきますと、僕らは、スマートフォンアプリにSDKを入れていただくと、そこからデータを取得してできることが2つあります。分析とマーケティングですね。

さらに分析が2つに分かれています。GAに代表されるような定量的な分析ができるだけじゃなくて、アプリのユーザーがそのアプリをどう使っているのかを、動画でトラッキングできる。なので、実際のユーザーさんがアプリをどう操作してるかの動画を通して定性的な分析できます。

一方、マーケティング機能なんですが、それがまた2つに分けて、CRM活動と広告出稿に活用することができます。

CRMって呼んでるのは、KARTEさんにも似てるんですけど、ユーザーのアプリ内での行動データと、ユーザーの属性データ。この2つを掛け算してユーザーをターゲティングし、MAツールのようにユーザーとコミュニケーションをとることができます。

例えば、昨日買い物しそうだったけどしなかった人にだけ、プッシュ通知やアプリ内のポップアップを通じてコミュニケーションを取ることができます。また、属性データとして、それがFaceBook広告からダウンロードしていうユーザーに限定して、キャンペーンを打つ、みたいなこともできます。

あとは、アプリでよく買い物をしてくれている人のデータを、FaceBookとかTwitterのAPを通じて自動連携できるので、それらのデータを活用してその人たちと似ている人たちだけに広告を配信する。みたいなことができるようになっています。

一番伸びてるのは、アプリ内マーケティング

Reproのざっくりした使い方は、定量分析機能で大まかな課題を見つけて「なんでその課題が発生しているのか」の要因を定性的な動画分析で特定し、サービスを改善していくのが左です。右は、サービスを改善するまでもなく、自分の頭の中で考えて、ユーザーとコミュニケーションをとることによって、グロースハックしていく使い方です。

もともとReproはツールから始まっているんです。でも今はアプリの戦略企画を非ITの大企業様から、月間4件くらいご相談のお仕事をいただいたり、最近は右の運用ですが、アプリの分析・改善やアプリ内マーケティングの運用をReproで支援させていただく機会が多いです。

一番伸びてるのは、アプリ内マーケティング。どういうユーザーコミュニケーションを設計してCRMしていけば継続率が伸びるのか。そういったところを我々の方で企画して運用させていただき、アプリの主要KPIを伸ばすことに貢献しています。

ざっくりどういうシナリオを作っていくかというと、新規ユーザーがアプリを初回起動してからロイヤルユーザーになるまでに、どういうパターンのシナリオが考えられるかを、我々の方で仮説を作らせていただく。

それに基づいてアプリ内マーケティングを運用し、その効果を定量的に検証することで、効果がなかった施策は見直し、効果があった施策は継続的に実行することを週単位でゴリゴリ回しています。

おかげさまで、我々はまだ広告費を1円も払ったことはないんですけど、口コミとかみなさまに書いていただく記事をベースに、世界46カ国、3,500アプリ以上に使ってもらっています。ナイジェリアとかケニアとか、その辺にもユーザーがいたりします。

KPIがどうなっているかというと、折れ線グラフが社員の推移で、棒グラフが売り上げです。現状会社を設立してから38ヶ月が経ってますけど、おかげさまで人員数が48人いますが、昨年の10月に黒字化を達成しています。横線入れるとバレちゃうなと思って、さっき消しました(笑)。

今は黒字化も達成してるんで、どんどん優秀な人材を入れて、あえてもう1回赤字でも掘ろうかなと思ってがんばってる最中でございます。

イグジットと期間の考え方

じゃあ、私の方からも「これだけはやっておいたほうがいい」というのを、自分の失敗談とかをベースに、最後にお話させていただこうかと思います。

まず1つ目なんですけど、EXITと期間の考え方は、本当にしっかりと自分の中で検討したうえで、初期メンバーに話した方がいいですよ、という話です。

ざっくり言うと、リプロは会社を設立して優秀なメンバーを集める時に「お願いだから僕に2年間貸してください。2年後にイグジットするので」って言って、それぞれセールスとかカスタマーサポートとかエンジニアとか、過去に僕が出会った方々の中で、スペシャリストの人たちだけをリクルーティングしました。

結果なにが起こっているかというと、僕が2年詐欺みたいな状態になってですね、去年の夏くらいにこれが原因で組織が崩壊しそうになりました。

「2年だから限界を超えるくらい毎日働いて、一気に成長させよう」と、自分を含めみんながんばってきたんですけど、去年の夏くらいから「おい平田、俺ら100m走のつもりでやってたんじゃなかったっけ?」「マラソンやるんだったら、死ぬぞ俺ら」「そこをハッキリしないとみんな辞めるぞ」みたいな感じまできて。

そこですぐにメンバーを集めて謝って、「2017年の9月末までに、いつまでにどういう出口を達成するかを僕が決めて共有するので、そこまでは120m走のつもりで走ってくれ」という話をして、コミットしてもらっているところです。

会社の成功のため、伝える勇気を持ったほうがいい

2つ目。これも日本のスタートアップでは、あまいなぁって思う会社が多いのですが、完全に成果・実力主義で評価制度を作ったほうがいいですよ、という話です。当社で言うと去年、CTOを変更しました。

当時は開発スピードが上がらず、障害も発生したりして、僕から見たら会社の成長のボトルネックは開発になってたんですね。今はビジネスサイドがボトルネックなんですけどね。(笑)

当社はクライアントファースト、それを達成するためのトークストレートという行動指針があるので、「正直、会社の成長のボトルネックはお前だ」っていうことを言って、「君より優秀なCTOを僕がリクルーティングするから、降りてくれないか」という話をさせていただきました。

そこから4ヶ月間くらい、ビジネスサイドとエンジニアサイドの中で溝と壁ができて、大丈夫かなこの会社って思ったんですけど、新しく就任してくれたCTOが、当時のメンバーと圧倒的な実力差があったこともあり、その人が就任して1ヶ月後には、きちんといいチームができた。

正直、めちゃくちゃ本人に伝えるのも辛かったですけど、僕らはなにをやらなきゃいけないかというと、会社を成功まで導いていかないといけないという思いがあったので行動に移すことができました。

共同創業者だろうが、もともと「役員でずっと据え置くよ」と言っていたとしても、結果を残さなかったら、会社の成功のためにちゃんと意思決定をして、伝える勇気は持った方がいいかなと思っています。

木下:その初期CTOの人も、まだいらっしゃるんですね?

平田:はい、めちゃくちゃ仲いいです。本当にです(笑)。もともと人間的に尊敬している大好きなやつですし。

木下:それはすごいですね。そこで入れ替え制が行われるケースが多いと思うんで。退社されたりとか。

平田:そうですね。ちなみに、ウチの会社は今まで、自主退社したメンバーって1人もいないんです。めちゃくちゃハードワークをしてる会社のイメージがあるかもしれないですけど、メンバーに対して成長の機会を提供できれば、自分から辞めるというのはなくなると思っています。

プロフェッショナル人材の足し算しかやらなかった反省

2つ目も重要だと思いますね。自分もサラリーマンをやったことありますけど、自分より上の人が仕事できないと思った瞬間、めちゃくちゃモチベーションが落ちるんで、ここの設計ってすごい重要かなと思っています。

最後、3つ目なんですけど、これは当社リプロの反省です。

ついこの前まで、僕の下がインターンみたいな、マネージャーがいないような組織でした。僕がインターン10人分のレビューをAM2時くらいから始めて、朝までかかる状況になって、さすがにこれは死ぬなと自分でも思いました。

なぜかというと、その業界のスペシャリストしか雇いたくないと思っていて、そういうチームを作れば絶対成功すると思ったのが僕の間違いでした。ビジネスをスケールさせる組織を作ることと、スペシャリストがそれぞれの戦場で一騎打ちをして全勝するっていうのは、ぜんぜん違う。

プロフェッショナル人材の足し算しかやってこなかったのが反省点でした。そこで、1マネージャーに対して複数のスタッフをつけるとこんな感じでスケールできるんだっていうのをようやく気付くことができました。

仕事ができる人って、1人で4人分くらい抱えて回せちゃうんです。でもそのやり方に限界がきて、クライアント数がバーって増えてる中「1人で150クライアントを見るんですか」みたいな状態になった。

マネージャーは本当に早い段階で必要なので、スケールの目処が立つ前くらいから、どんどん作っていって、その人たちが会社のキープレイヤーになるように、設計していくことは本当に重要だと思っています。

これがリプロの、今日お話したかった内容です。ありがとうございます。

木下:ありがとうございました。みなさん拍手をお願いいたします。

(会場拍手)