スタートアップで一番大事なのはプロダクトマーケットフィット

木下慶彦氏(以下、木下):みなさん、こんにちは! 初めてIVSのセッションでモデレーターをやらせていただきます、Skyland Venturesの木下といいます。

本日は「若手ホープ経営者らが語る『一年前の自分に告ぐ。これだけはやっておけ!』」というセッションで、素敵な豪華ゲスト4人に来ていただいています。僕の方から進行をアナウンスした後、それぞれプレゼンをしてもらおうと思います。

今日の4社のみなさんはRepro、KARTE、SmartHR、yappliという、BtoB分野SaaSと言われるビジネスで事業成長している企業になります。

この4社とも知っているという方、だいたいの事業内容がわかっていらっしゃる方は、どれくらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

やや少ないですね。これは、IVS Launch Padなどピッチイベントを総ナメにしている宮田(昇始)さん以外にとっては営業チャンスということになります。

この4社なんですけど、やっているサービスReproはアプリのグロースハック、KARTEはウェブ接客プラットフォーム、SmartHRはクラウド労務、yappliはアプリ運営プラットフォームとなっています。

今日のセッションを始めるにあたって、登壇者と議論した際に「スタートアップで一番大事なのは、結局はプロダクトマーケットフィットではないか」という話になりました。プロダクトマーケットフィットをメインに、プレゼンしてもらいつつ、セッションを進めたいなと思っています。

セッションに先立って、この4社の年表を作ってみました。細かく取り上げると長引いてしまうので、僕のFacebookやTwitterでこの年表をツイートしていますので、創業からの時間軸の中でなにがあったのかを見てもらうといいと思います。

共通するのは、今の成長軌道に乗るまで2〜4年くらい要していること、各社それぞれファイナンスを5億円くらい行っていること。月商は数千万規模くらいです。

これから3〜5分で各自のサービス紹介、成長推移と「これだけはやっておけ」というテーマについてを、それぞれプレゼンしていただく流れになります。

それでは、SmartHR宮田さんからやっていただきたいと思います。拍手をお願いします。

(会場拍手)

サービス開始から1年半で利用企業社数5,000社へ

宮田昇始氏(以下、宮田):ありがとうございます。SmartHRというサービスを運営している、株式会社SmartHRの宮田です。サービスの説明は今回はあまりせずに、「これだけはやっておけ」というところに時間を割きたいと思います。

近況です。サービスを開始して約1年半なんですが、利用企業数が来週には5,000社に達する見込みです。1年前にIVSのローンチパッドを出させていただいた時と比べると、5倍に成長することができました。サービスの継続利用率も非常に良くて、今年に入ってから毎月の退会率が0.8パーセント。99.2パーセントの方は、そのまま継続してご利用いただいている状況になっています。

1年前は一番大きな会社さんで、300〜400名ぐらいの規模だったんですけど、今は8,000名規模のところでも導入いただけるようになっています。1年間で20倍の企業規模にも耐えられるプロダクトに成長してきています。サービスは伸びがこんな感じでして、ざっくり2年くらい前から開発を続けています。こんなような変遷で来ているという感じです。

資金調達はこんな感じです。一番直近だと、昨年8月に5億円の資金調達ができたっていうのが、大きかったかなと思っています。

「びびって生きながらえるための受託はやめておけ」

本題の「これだけはやっておけ!」。今日はおそらく、木下さんの出資先などの若い起業家が多いかなと思っていて、シード前後くらいの方たち向けのアドバイスを4つほど考えてきました。

1つ目は「受託はやめておけ」です。SmartHRというプロダクトはまだ1年半くらいなんですが、会社自体は丸4年くらいやってまして。最初の2年間くらいは、受託をやりながら自社サービスを作るっていうことをやっていました。

そうすると、半分くらいの時間を受託に使おうと思っていても、なんかズルズル長引いちゃうんですよね。自社サービスをやる時間って、実質使える時間の1割くらいだったりして、サービスがぜんぜん伸びなくていくつかのサービスが死んでいったっていうのがありました。

びびって生きながらえるために受託やっちゃいがちですが、基本はやらないほうがいいと思います。もし仮にやるとしたら、実際に自分たちがプロダクトに直接関係があるもの。これだったらやってもいいかなと思います。

次は、「サービスローンチ時の機能は、最小限に抑える」がいいと思っています。SmartHRは、ざっくり4つの機能がある状態で出しました。でもこれ、めちゃくちゃ失敗したなと思っていて。1個で出せばよかったと思いました。

ローンチする前って、すごいく恥ずかしいっていうか、びびるんですよね。「こんな機能で大丈夫なのか」みたいな。不安になっちゃって、「4つの目の機能ができたらローンチしよう」みたいなことを言い出すんですけど、これは完全に失敗でして。

ユーザーさんが求めているのは、だいたいメインの1機能だったりするんですよね。その1機能だけを、なるべく早いスピードで改善していくのがいいと思っています。うちの場合は、最初から4つ機能を作っちゃったんで、残りの3つの機能に引きずられて、メイン機能の改善が遅くなることがありました。いまだに引きずることもあるので、仮に2年前に戻れるとしたら、最初は機能を1つに絞るっていうことが一番やり直したいことです。

特にB向けサービスは、ピッチに出たほうがいい

あと、ローンチパッドでさっきもありましたね。「ピッチに出たほうがいい」と僕も思っています。特にB向けサービスは、お客さんとなる経営者が会場にたくさんいらっしゃるので、顧客の獲得につながります。

実際、ローンチパッドを見て興味をもったという1,000名規模のお客様と、プレゼン直後に名刺交換させていただいて、導入に至るということもありました。ものすごいチャンスですよね。

資金調達もかなり楽になります。この場に出ること自体が「資金調達を検討しています」というメッセージになるので、いろんなVCさんからお声がけいただくことになります。

こちらから1件1件、VCさんを回っていくっていうと、リソースが少ないスタートアップではけっこうしんどいんです。でも、ピッチに出ることで逆にいろんな方に来てもらえるようになる。選択肢が増えるので、こちら側から「この条件でやりたいんです」ってことを臆せず伝えられるので、資金調達にもすごくいいです。

自律的な組織を作りたいなら少人数から文化作りを

最後に、4つ目。

これは上手くいってる話なんですけど、うちの会社は自立した組織作りがすごく上手くいってるなと手前味噌ながら思ってます。僕じゃなくて、各メンバーがどんどん意志決定をして、プロダクトだったり採用だったり広告だったり、いろんなところを決めてくれています。

秘訣は、メンバーの情報共有ですね。僕が持っている情報と、メンバーが持っている情報をほとんど同じにしようとがんばっています。

例えば、VCさんから「こういう理由で出資を断られました」とか、営業マンが商談で「こういう懸念があって受注できなかった」とか、その他にも銀行口座の残高とか、なんでも従業員に公開するようにしています。そうすると、僕と従業員の頭の中身が同じになるんですよね。もともと価値観が合う人を集めているので、持っている情報が同じで、価値観が似ていると、意思決定がだいたい同じになるんですよ。

というやり方をやっていて、僕が全部の課題について考えて意思決定をしていると、すごい時間がかかっちゃうし精度も悪いんですけど、従業員が自分でバンバン意志決定して、1つの課題に何回もトライアンドエラーしている。そうすると、精度も高まるし、スピードもめちゃくちゃ速くなるんですよね。

そのやり方の秘訣は情報共有で、具体的には議事録とかをなんでも細かくメモして、共有することをやっているんですよ。人数が増えちゃうと、すごいやりづらくなるんですね。始めにくくなる。「なんでそんなことやるの?」「日報書くの嫌だ」みたいな反対意見がでたり。

うちの会社はなにも考えずに、たまたま2名の時から議事録文化をやっていたんですよね。誰も反対することがないどころか、「議事録すごいいいじゃん」「今までお互いの仕事ほとんどわかってなかったね」と思いながらやってました。それが今も自然と続いてるという感じです。

よく「情報をオープンにする文化とか、いいよね」って言われたりするんですけど、なかなか組織が大きくなってからはやりづらくなると思います。なので、そういうオープンで自律的な組織を作りたいと思っている経営者は、少人数の時から日報や議事録を共有する文化を始めることをお勧めしておきます。

ありがとうございました。

木下:ありがとうございました。

(会場拍手)