3年に1度、最大3週間の休み&30万円の支援金
瀬名波文野氏(以下、瀬名波):ちょっといくつか飛ばして。キャリアウェブはさっき言ったんですけど、基本的には社内のフリーエージェント制です。手を挙げて「仕事をやりたいです」という。
曽山哲人氏(以下、曽山):求人が載っているんですか?
瀬名波:載ってます。
曽山:これはいつ応募するんですか? いつもですか?
瀬名波:常時ある場合もあるんですけど、基本的には年に1回の大きなタイミングが多いですかね。
それから、「Recruit Ventures」は新規事業の提案制度で、基本的に誰でも提案できます。今の事業の多くがそういった従業員の提案から生まれています。
その下のステップ休暇という制度がおもしろくて。私も1度取ったことがあるんですけど、3年に1度、従業員は最大3週間のお休みがもらえるんですよ。当然、そのお休みはお給料も発生する。かつ、30万円の支援金が払われます。
これはなにかというと、「自分がこういうことに挑戦してみたい」がある時にお休みをとる。お給料も、支援金もいただいて、それを自分を磨くために使っていいですよという制度です。基本、誰でもとれます。別に挑戦じゃなくて、ゆっくりしてもいいんです。ちなみに私は丸々3週間、旅行に行ってました(笑)。
その下のフロンティア制度というのは退職金で、何年以上働いたみなさんは前年の年収1年分という制度があるんです。
ちょっと面白いのは、さらにそこに上乗せする制度もあったりします。
3年に1度とか、社内では「当たり年」と言われるんですけど。その「当たり年」がくると、さらに金額が積み増されて退職金として支払われる。
これはなにを意図しているかというと、リクルートグループの中にいても、退職して離れても、その人たちが自分の人生をかけてやりたいものがあれば、それに向き合って社会とつながることが一番いいと信じている。それを応援するよ、と。
そういう意味では、我々は退職のことを「卒業」と言うんですけど、明るく卒業してもらう。「卒業してもらって、本人がやりたいことで社会に貢献する」でいいじゃないってことを、明るくやっています。
「どのポイントを褒めるか」にこだわるリクルート文化
その下の「リモートワーク」は、物理的なロケーションに関係なく、どの場所にいても仕事してもいい制度です。
先ほども申し上げましたけど、いろんなラベリングに関係なく、意思がある人に身の丈以上の仕事を任せる。身の丈以上のことなので、だいたい多かれ少なかれ失敗する。その失敗からなにを学ぶかということに価値があると信じてます。
カルチャーの話とか制度の話とか、わりと人事っぽい話をしちゃいましたね。こんなこと言うと、人事のみなさんに怒られますけど(笑)。
ちょっとオフィシャル版の話をしましたけども、もうちょっと現場で見れば「褒める」「なにを褒めるのか」にこの精神は宿っているなという感じがあります。
例えば、ある営業マンに対して表彰するとき。うちの会社って表彰することが大好きで、いい仕事をしたら大勢の前でするのがけっこう多いんです。どういうポイントを褒めるかにすごくこだわるんですね。ちょっと細かいので全部お話できませんけど。
曽山:ある人が表彰を受けるときに、こんな要素で書かれているという例が知りたいですね。
瀬名波:賞状の構造をだいたい分けると、3つです。まず1つ目に、「どういう評価基準であなたを素晴らしいと言ってますよ」があります。
曽山:むしろ、じっくり見たいですよ。
瀬名波:じゃあ、かいつまんで説明しますね。この賞状は、リクナビという新卒学生向けの情報メディアの営業の表彰ですね。
基本的にこの事業は日本の企業さまに日本の学生を採用して日本で働いていただくという、なんとなくの前提があります。その中で、海外の現地法人が日本の学生を募集するというのをリクナビでやったケースがあります。それの表彰状なんですね。
海外留学や就職が少なくなっているとか、日本の若者は内向きだ、ということが当時こ世の中では盛んに言われていました。でも、本当に日本の若者は元気がないのか、と疑問に思っていた若い営業マンがいて。機会や情報を提供すれば、もっと大胆に挑戦したい若者はいるはずだと信じて、マーケットの常識を変えていったわけです。
かなりのパワーを投じて、1年ぐらいかけて、最終的にかなりニュースやメディアでも取り上げられ、マーケットに一石を投じるいい仕事ができた。そして、「この新たな価値の創造は、リクルートの営業としての模範だと僕たちは思っているよ」という、判断の基準がまず提示されるわけですね。
構造の2つ目が、そのプロセス。このケースで言えば、顧客のキーマンに「ノー」と言ったり、反対する自分の上司を同僚の結婚式で説得したりして、このプロセスはあっぱれだねと、具体的なプロセスを書く。
ここで具体的に書ける上司は、いい上司です。このプロセスがのっぺりしている上司は、仕事してない上司です。表彰状が上手に書けない上司は、あんまりうちの会社で言うとアレです。
曽山:逆に言うと、書ける人はすごいいいところを見ている?
瀬名波:よく見ている。
曽山:ああ、なるほど。それは大事ですね。
尊敬・尊重よりも、面白がる
瀬名波:(スライド上の)3つ目の「教訓」とは、周囲への共有ポイントですね。
表彰状というのは、その本人に渡すだけのものではなくて、そこにいる人たちに共有するためにやっています。このプロセスから、みなさんになにをシェアしたいのかを上司が書くんです。「自分自身の日々の仕事で感じた小さな違和感に逃げずに向き合うことが、やがて大きな志となり、顧客、パートナーの心に火をつけました。リクルートらしい素晴らしい仕事~」といっているんです。
要するに、例えば可愛げではなくロジックで上司を説得できる強みとかが合致したときに、いい仕事ができたんだと、言語化している。表彰の基準、プロセスの素晴らしさ、周囲への共有ポイント。この3つが表彰状の構造で、できる限り多くの人がいる前で、徹底的に褒めるわけですね。
曽山:いいですね。徹底的に褒めるって。
瀬名波:そうなんですよ。中途半端にやるとこういうのはしら~っとするんで。わりと大げさに褒めるのを大事にしてます。いい仕事を表彰するイベントは、もはやお祭りみたいなとこがあります。
曽山:なるほど。
瀬名波:こういう文化とか制度のすべてにおいて、そのコアには「価値の源泉は人」という考え方があります。
人事的に言えば、人材マネジメントポリシーですね。人が他人を評価をしたり、人が他人の能力開発について議論したりするのは、とかく足りてないところ、弱いところを指摘しがちなんですよね。
曽山:なりがちです。
瀬名波:なりがちなんですけど、それをやりだしちゃうと足りないところに目がいって、それを補おうとする。そして、似ている人を量産することになりがちなんですよ。