恐竜の新たな分類が誕生

ハンク・グリーン氏:古生物学が研究する生物は大昔に絶滅したかもしれませんが、科学の世界においては、それらの生物はいきいきとしています。恐竜を例に考えてみましょう。その遺骨は宝のような埋蔵物と言えます。

近年におけるまで、いくつかの鍵となる研究が、恐竜について彼らが何であったのか、どのような外見をしていたのか、どのように生き、どのように死んだのか、などの多くのことを教えてくれています。しかも今でも多くの発見がなされているのです!

2週間に一度のペースで、新しい恐竜の種類が報告されていますが、まだそれらすべてを「捕まえる」には至っていません。しかし新しい種類が、恐竜の生命の木の枝に追加されていくと、その根底を大きく揺れ動かすことになるのです。

今年の3月に発表された論文は、130年もの間広く使われてきた、恐竜を2つのグループに分ける分類システムに真っ向から逆らうものでした。そのシステムは恥骨と呼ばれる、腰にある骨の位置によってその種類を分類するというものです。

トリケラトプスやステゴサウルスのように、もしその恥骨が尾の方向を向いているならそれは「鳥盤類」に属し、前方を向いているなら「竜盤類」に属するという分類法です。

そのグループにはディプロドクスなどの竜脚類、そしてティラノサウルスやヴェロキラプトルといった獣脚類が含まれます。このような単純な分類システムを試すため、研究者たちは74の初期の恐竜とその親類の化石を大きなコンピューターの力を借りて精査し、できるだけ客観的に457の特性を測定しました。

彼らはティラノサウルスなどの獣脚類は、伝統的に振り分けられたグループより鳥盤類に近いことをつきとめたのです!

この「オルニトスケリダ」と呼ばれる新しいグループには21の基準があります。例えば大腿骨の形、上顎の隆起、特定の足首の骨の融合などです。

ですから結局、腰骨を基準にした分類方法は一見複雑そうに見えて実は単純だったようです。収斂的進化に惑わされていたのかもしれません。簡単にいうと、もし前方を向いている恥骨が異なる種族の中で一度以上進化をしたとしたら、その腰が同じような見た目であったとしても、我々が思っているより似た種類ではないかもしれないということです。

このような強い主張が生まれた今、我々の恐竜の見方に関して、さらに多くの協議と反論が生じることでしょう。教科書が書き直されたり、新しい研究に欠点が見つかったりして現状に満足せざるを得なかったりしたとしても、古いアイディアを試すのはいいことです!

恐竜には羽が生えていた

次にお話しする研究は骨を超えたもので、恐竜の外見に関してさらなることを教えてくれます。たくさんの化石化した跡から、多くの恐竜には羽が生えていたということが証明されてきました。

2016年の論文では、この羽について新たな面が付け加えられました。初めて、9,900万年前の羽の生えた恐竜の尾が琥珀の中に、驚くべきことに3Dの状態で閉じ込められていることが発表されたのです。尾の溶解していない骨を「椎骨」と呼びますが、それは鳥ではなく、非鳥類が持っています。

そしてこれらの羽には今まで見たことのない、平らな跡の中にはなかなか見つけることのできない詳細を見ることができました。この羽には交互に「羽枝」と呼ばれる枝が出ていて、中央の幹から突き出ています。

これは現在我々が鳥の羽に見ることのできる対になった羽枝とは異なります。それに、予想と反してその羽枝はたくさんの小羽枝でできていて、それは羽の構造を形作る特徴ですが、それはもっと後になるまで進化してこなかったと考えられてきました。

その大きさから、それは若い恐竜であると思われるため、その羽毛が大人の羽毛なのか、成長して抜け変わるものなのかはわかっていません。我々にわからないことがまだたくさんありますが、この発見により、きっと恐竜の羽毛のタイプも、恐竜とともに滅びてしまったということがわかるのです。

恐竜は卵から孵るのが遅すぎた?

古生物学者たちは、恐竜がどのような見た目をしていたかということの他に、恐竜がどのように生き、死んだのかも知りたいと思っています。それには6,500万年前の大量絶滅が関係しています。その時、数種を除く全ての恐竜が絶滅してしまいました。その生き残った数種は鳥獣脚類といい、現在は鳥として我々とともに生きています。

実は恐竜の命の始まり方に、その絶滅に至ってしまった理由が隠されていました。恐竜は卵からかえるのに時間がかかりすぎたのです。爬虫類と比べると、鳥の卵は比較的早く孵化します。平均で大体11日から85日で孵化します。

孵化してすぐに自分の足で立ち上がり、走り出すことができるというのは有利です。雛にその能力があれば、動き回ることによりその捕食者から逃げることができますし、巣が寒すぎたり、浸水したりしたならば、より良い住処に移ることができます。

しかしもし卵の中から出られなければ、外の世界の影響を受けっぱなしになってしまいます。絶滅した恐竜の近い親戚がそのようでしたら、恐竜も孵化するのが早かったのではないかと思われますが、その発達についてはわかっていません。

2016年、鳥盤類の恐竜の化石の珍しい胚子が再研究されました。この胚子の歯に見られる日毎の成長線を分析すると、研究者はそれが何歳であったかを知ることができました。

その結果によれば、その恐竜は孵化するのに3~6ヶ月ほどかかるということがわかったのです。

それは予想よりもずっと長いものでした。このようなゆっくりとした発育はきっと、白亜紀の時代には問題がなかったのかもしれませんが、小惑星がぶつかり、激しい気候変動が起きた時には不利となりました。そんなに長い間卵の中に閉じ込められていた遅咲きの恐竜は、厳しい変動する世界に順応するのが難しかったのです。

鳥獣脚類は小惑星の衝突がある前からきっと孵化するスピードが早かったと思われ、それが彼らの命を救うことになったというわけです。進化とは、単に幸運と順応の連鎖だったのです。