今度は判断力がテーマ

司会者:次のテーマで「判断力」。これ、Wikipediaの文章から取ってるんですが、「判断力とは、物事について個人的な判断をなすことのできる能力のことである。それは、可能性、能力の問題でもあるといわれる」と。

スポーツ選手は、この判断力のウェイトは非常に高いイメージがあるんですけれども。

福西:まあ、サッカーだと瞬時だということですかね。

秋田:そう。

福西:サッカーでいうとね。

秋田:僕、昔ね、旅行会社のおばちゃんに「サッカー選手ってバカでしょ」つって言われたんですよ。面と向かってね。「いやいや」。

福西:すごいな、それは(笑)。

秋田:いや、本当にびっくりしたんですけど。「すいません」って。「ボールが来る間に、もういろんな状況があって、いろんなイメージを何個も出して、そのなかでチョイスして、それをプレイするんですよ。

もう0.コンマ何秒なのか、1、2というぐらいの間のなかで。だからバカだったらできないんですよ」。

だからといって、僕は頭いいって言ってないですよ。言ってないですけど……。

福西:勉強ができるかって言われたらねえ、僕もちょっと「う~ん」って。

秋田:この判断力というのはむちゃむちゃ必要なんですよ。

福西:だから、僕も判断が重要だろうなと思っています。

司会者:とくにそうですよね。ボランチ、真ん中にいる選手というのは、まさにこれができないとチームを動かせないですよね。

秋田:そうですよね。

司会者:この一般的に判断力がない人の傾向というのをまとめると、こういうことがよく言われるらしいですね。上からちょっと読んでみましょうか。

(スライドを見て)「自分がなにをすべきかわかっていない」「他人のことを考えすぎている」「心配性の傾向が強い」「常に誰かに判断を委ねてきた」「絶対に失敗や損をしたくないと思っている」「人の顔色をうかがいすぎてしまう」。

秋田:なるほどねえ。

司会者:これは、はまるんですかね。

福西:サッカーで、そうですね、じゃあ「自分がなにをすべきか?」っていうのは、どういう特徴が自分にあって、じゃあできないことをやらなきゃいけなかったら、やっぱり自分じゃなくなるというかね。

自分のよさを出せないということにもつながりますので、これ自分はわかってなきゃいけないなとは思います。

秋田:あとは、全体の中の自分の立ち位置とか、やらなきゃいけない仕事がわからない人もいるよね。だから、自分勝手なプレーが多かったり、「そこで取られちゃダメでしょ」っていうところで、自分でドリブルにいって取られちゃったりする人もいるし。

福西:そうですね。団体でいうとそういうことはありえるかもしれないですね。それぞれがそれぞれの判断をして、チームとならない。じゃあチームにとって利益にはならないというのはありますね。

ただ、そういうことでいうと、「他人のことを考えすぎている」というのは、判断はしてると思うんです。

秋田:そうだよね。

福西:人のこと見て、「ああ、こいつこっち行ったから、じゃあこっち行こう」「ああ、こっち行ったから、こっち行ったから、じゃあ……」というのは、もうボランチには必ず必要なことなので。

司会者:常に考えてなきゃいけないですね。

福西:なきゃいけないです。だから、その判断をどうするかというのをやっぱりしなきゃいけないという。

サッカーは自己責任の連続

司会者:「心配性の傾向が強い」というのはどうですか?

福西:これディフェンスとかじゃないんですか。リスクを考えたら、じゃあやっぱりこう、もしかたらプレーで。

秋田:そうだね。

福西:ボランチだととくにそうなんですけど、攻撃に、点取りたいから「行きましょ、行きましょ」って行っちゃったら、もう後ろスカスカというかね。

秋田:そう。

福西:だから「待て。来い」って言うんですけど。

秋田:「フク、いろ」。

福西:「いろいろ」って言うんですけど。もう点とりたくてしょうがないから、「ちょっと行ってくるわ」みたいな。

秋田:「いや、待て」っていう。

福西:そうそう。というのはありますけど、でも心配性だったら、「やっぱりやめとこ、やめとこ」っていうと、もう相手を上回れないので。

秋田:まあ、気が小さいのか、どっちかというと、僕はこっちの心配性のほうですね。

福西:だからこそ、失敗を恐れて、損したくないと思っちゃうと、リスクも考えて、判断が遅れてしまうとか。

司会者:この「誰かに判断を委ねてきた」というのはこれはないですもんね。常に自分で判断していかなきゃいけない。

福西:していかなきゃいけないんですけど、もしかしたら監督が「こうしろ」って言われたことが強すぎて。「ポジションを動くな」とか。

司会者:フィールドにおいて、やっぱり監督の意見は……。

福西:フィールドにおいて絶対ですから。

秋田:聞いてなかったしょ(笑)。

福西:いやいや(笑)。それはちゃんと監督の顔色はうかがいますよ。

秋田:そう(笑)。

司会者:なるほど。ここに来るんですね。顔色をうかがってしまうと。

福西:うかがいますけれども、でも判断がないわけじゃないですよね。これは判断して顔色をうかがってるわけですから。

司会者:なるほど。それはいいわけですね。

福西:そのなかで、でも、判断をしていかなきゃいけないというのはあると思いますよ。

司会者:そうですよね。

みんなの力関係がカギ

福西:でも、パッと上がって、「やべえ。失敗した。帰らなきゃ」。パッと監督見たらすげえ怒ってる、もうダッシュで帰ればいいわけですから。そういうね、負けなきゃいいというか。

司会者:結果オーライというところもやっぱり。

福西:多少はそうですね。サッカーでいうとありますからね。ある程度はいかなきゃいけないし。対敵とかあるのがサッカーですし、団体で1つのチームを作ってるということでいうと、またちょっと違ったところはあるかもしれないですね。

秋田:だから全体のバランスですよね。バランスが前行きすぎず、後ろにかかりすぎずみたいな。あとは、みんなの力関係。

相手との力関係によってもポジションも変わってくるし、それを判断しなきゃいけないとか。

福西:そう。じゃあシリア戦、観た人いらっしゃいます? 

(会場挙手)

福西:観てないか。ちょっとだけか。

司会者:あんまりいない。仕事してた時間かもわからないですね。

福西:そうですね。そのチームでいうと、前半と後半と変わったんですね。前半は固い試合。それはポジションも変えない、リスクも負わないし、相手が動く、プレッシャーに来る、だからいいプレーができない。

それはそうなんだけど、じゃあそれを上回るためになにをしなきゃいけないかというのができなかったから、試合展開が固かったといいますか。

秋田:そうだね。

福西:不安になったところなんですけど。

後半になると、相手が体力的にもなくなったから、スペースがあったとか、プレッシャーが少なくなったというのもあるけれども。

でも、乾(貴士)が入って中に切れ込んだりとか、本田(圭佑)が降りてきてとかっていう、いろんな動きがあって、相手チームが混乱して、じゃあ自分たちのペースで試合が運べたとかね。

司会者:ああ、なるほど。そういう視点でも見ていらっしゃるんですね。やっぱり全体的に。

福西:当たり前でしょ。それは、それは。もちろん、もちろん。

(会場笑)

司会者:そうですよね。当然そういうことですよね。

福西:そうやってプレイしてきたし、今、サッカー解説者なんですから。

秋田:だって、結局プレーしてるなかで、状況状況で変わってきて、流れも変わってくるわけですよ。押し込むときもあれば、押し込まれるときもある。

そのときのプレーの仕方とか判断とか、あとは勝ってるとき、負けてるとき、どういうふうにボールをキープするかとか。

若い選手たちは、どっちかというと、もう勝ってて1–0で残り5分なのに、1人でバーっとドリブルで行っちゃって、シュートで終わっちゃって、「お前バカか?」ということあるわけですよ。

もう残り5分だったら、時間稼ぎで、サイドにボール持っていって、また相手にぶつけてコーナーもらってっていうことをやってたら、時間が5分ぐらいすぎるわけじゃないですか。そういうことを、もう自分が点を取りたいからという欲で……。

まずやっぱり自分がいて、その次にチームというふうになるので、そういう判断になってしまう。ベテランになってくると、「まずチームが勝つこと。だから自分はなにをしなきゃいけない」という判断に。これはもう会社でも一緒だと思うんですよね。

司会者:そうですね。一緒ですね。

年齢や立場によって変わる役割

福西:あとは、変わってくると思いますよ。立場は。みなさんもそうだと思います。会社に入ってどういう立場なの? じゃあ……中堅っていうんですか。ねえ。

司会者:主任から課長になってとか、部長になってとか。

福西:なってったときに「どういう立場なの?」というのはあるんじゃないですか。

司会者:そうですね。それによって役割が決まってきます。

福西:みなさんもね、長谷部(誠)は知ってると思いますけど、長谷部は最初、もう若いうちから、だから、行って行ってもうぐんぐん走って、どんどん点取りにいきますっていう選手だったんですよ。

だけど、キャプテンしてきてどんどんしたら「チーム、チーム」ってなって、どんどんほかの、「取りにいってください。僕が守ります」という、ちゃんと自分の立場っていうのを考えながらやりますので、それは変わってくると思います。

秋田:僕もだいたい終わり頃は、口で言ってましたね。

福西:そう。だからだいたい……。

秋田:「行け、行け」。

(会場笑)

福西:そう。そうすると、だいたい俺が行けないから「うるせー」ってね。「じゃあちょっと待ってろ」と。「はい、誰か行け」って。こうなってくるわけです。でも、それでチームがまとまればいいわけですからね。

けっこう鹿島と磐田の人って仲悪かったんですよ。かなり。

秋田:悪かったですねえ。

福西:まあ代表で一緒になる人はね、グラウンド出たらすごい「おい、秋ちゃーん」「なんだ」っていう話はあるんですけど。でも、試合の中になったらもうバチバチですから。

秋田:まあ仲悪かったね。

福西:悪かったですね。

秋田:悪かったっていうか、なんつーかね。

福西:「悪かった」っていう言い方になるんですかね。あれ。戦ってたって言うんですかね。

秋田:僕は中山(雅史)をマークするのが多かったので、中山さんに対してはかなりのリスペクトがあったんですよ。中山さんもリスペクトしてくれて。僕、正直言って、ほかの選手たちにはもうけっこう裏側で汚いこともやってたんですけど、中山さんに関しては一切したことがない。

(会場笑)

福西:そうですね。

秋田:なんでかというと、あの人はもう正当にやってくるから。もう本当に全力でぶつかって、全力で飛び込んで、汚いことはなにもしてこない。だから僕も正々堂々とやるんですよ。だけど、ほかの外人とかはけっこう汚いことやってくるわけです。足踏んだり。

福西:だから蹴られたんですよね。(パトリック・)エムボマに蹴られたんですよね。

秋田:そう、エムボマにドロップキックとかされるわけですよ。あれは僕はなにもやってないんですけどね。

福西:そうですね。