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宮崎駿と高畑勲の差は「おもしろい」 庵野秀明が語った2人の明確な職人気質の違い

宮崎駿と高畑勲の差は「おもしろい」 庵野秀明が語った2人の明確な職人気質の違い

7月1日に、8日から公開される映画『メアリと魔女の花』の先行上映会が行われました。上映会後は、スタジオポノックの西村義明 氏、カラーの庵野秀明氏、ドワンゴ川上量生氏らによる対談。「でほぎゃらりー株主鼎談 ~いま、アニメーション背景を語る。」というテーマで「でほぎゃらりー」の設立、現代の背景技術などを語り合いました。

シリーズ
でほぎゃらりー株主鼎談 ~いま、アニメーション背景を語る。~『メアリと魔女と花』公開記念
2017年7月1日のログ
スピーカー
株式会社スタジオポノック 代表取締役/プロデューサー 西村義明 氏
株式会社カラー 代表取締役社長 庵野秀明 氏
株式会社ドワンゴ 代表取締役会長 川上量生 氏

庵野、宮崎駿の教えを回想

庵野 写真加工の場合、基本的に引き算じゃないですか。実写で写ってるそこの写真から、どれだけ情報を削っていくかっていう。 そういうことと、手描きの場合は、なにもない白い画用紙の上に、鉛筆で線描いて、ポスターカラーで色つけて。足し算なんですよね。 で、どこまで足すかっていうのが手描きのいいところだし、描くところで必ず誤差が出るんですよ、手で描くから。それがいいところですよね。 だから、宮崎さんが言ってた、僕が『ナウシカ』の時に教わって「なるほど!」って思ったのが、宮崎さんって一点透視とか二点透視とか三点透視、すっごく嫌がるんですよね。レイアウトをとる時に一点透視で描いてたら、まずNGですね。「描き直せ」って。 川上 (笑)。 西村 聞いたことありますね。 庵野 宮崎さんは「同心円で描け」って。だから、いい加減なんですよ、パースが。宮崎さんのレイアウトって、本当にいい加減なんですよね。 西村 (笑)。 庵野 パース的には。でも、それがいいんですよ。だから、宮崎さんのレイアウトって、宮崎さんしかとれないんですよね。 西村 パースそのもの、……パースペクティブ、その空間の図面というか、正しいかどうかっていうパースペクティブなんですけど、それを狂わせるのがジブリのレイアウトだったっていう。狂わせるというか……。 庵野 っていうか、宮崎さんのレイアウトはそうなんですよ。高畑さんはそんなの許さないですよ。 川上 (笑)。 西村 許さなかったですね。 庵野 ええ。高畑さんはかっちり描くじゃないですか。 西村 そう、かっちり。 庵野 小津監督みたいな。もう、畳の上3ミリにカメラを置く、みたいな。 西村 (笑)。

宮崎駿と高畑勲の違い

庵野 そんなん、どうやってアニメーターに強要できるんだろうっていう難しいアングルをやるじゃないですか。宮崎さん、そんな時はもうパッとカメラ上に上げちゃいます。 宮崎さんのいいところは、自分が描けないレイアウトはやんないんですよ。「あー、面倒くさい」って思ったら、たぶん面倒くさくないカットに変えちゃいますよね。 高畑さんは自分で描かないんで、それを絵描きに強要してますよね。あれが高畑さんのすごいところですけど。 西村 うーん、まあ、強要しますよね。 川上 自分がやらないと強要できる(笑)。 庵野 宮崎さんの場合、「じゃあ、俺が描く」になるし、アニメーターも「じゃあ、宮崎さん描いてくださいよ」になる。 西村 あの2人の差は、すごくおもしろいですよね。 庵野 おもしろいです。 西村 鈴木さんが一時期言ったのが、「宮崎さんは自分で描くから、自分が描ける範囲のことでやっちゃうけど、高畑さんは自分が描かないから、みんなに要求しだす」と。 庵野 ええ。 西村 「そうすると、高畑さんの現場は人がグワーッと育つんだ」と、みんなもう上限上げなきゃいけないんで。「その2人の差があるんだよなあ」って言ってて。 庵野 まあ、宮崎さんの下にいても、人育たないですよね。 (会場笑) 川上 その人のできることをやらせようとする、と。 庵野 宮崎さんって、自分の下駄がほしいわけですよ。 川上 はいはいはい。 庵野 あ、こんなこと言っちゃいけない(笑)。 (会場笑) 西村 でも、なんか僕、今お話聞きながら思い出したんですけど。それこそ僕、庵野さんとお会いしたのが『かぐや姫』の時ぐらいだと思うんですけど。 あの時に『かぐや姫』の終盤で、『思い出のマーニー』って作品も作ってたんですけど、鈴木さんを介して「ちょっと庵野さんがお話がある」って。で、川上さんとお二人に会ったのを思い出してて。 僕、『かぐや姫』作ってるじゃないですか。僕ら、スタジオジブリ解散して、『マーニー』で最後になるってことは、『かぐや姫』の終盤ぐらいからわかってたんですけど、その時に「庵野さんがおまえに会いたいって言ってるよ」って言ってくれて。僕、庵野さんとはその時、本当に一度……。 庵野 あいさつぐらいですかね。 西村 スタジオジブリでごあいさつしたぐらいだったんで、これ、本当怒られるんじゃないかなと思って。 庵野 いやいや。 川上 (笑)。 西村 なんか僕、どっかのメディアかなんかで、「『かぐや姫』が遅れてるせいで『エヴァンゲリヲン』が遅れるんだ」みたいなことを言ったことがあったんで(笑)。 川上 (笑)。 庵野 それはそうでしたね。 (会場笑) 西村 「アニメーター全部使っちゃってるから」って。それで庵野さんに怒られるのかなと思って、忙しかったけども行って。で、鈴木さん座ってて。もうすっごい覚えてますよ。 鈴木さん座ってて、川上さん座ってて、庵野さん座ってて、僕来て、で、座ったんですよね。そしたら、「何でしょうか?」って。 僕は殊勝な態度でいくわけですけど、じゃあ、鈴木さんが、……鈴木さんは庵野さんのこと「庵野」って呼び捨てにします、「庵野、おまえ西村に話あるだろ」って。 その時に、庵野さんが「もうジブリの制作部門閉じたんだったら、西村さん、会社作ったらどうか」って話を、お2人(庵野と川上)にいただいたんですよね。 その時は、僕、現場が忙しかったんで、「もうなにも考えられません」ってコメントしましたけど、あの時、庵野さんが言った言葉がすごく残ってて。 庵野さんが言ってくれたのが、「宮崎さんの絵、僕大好きなんですよ。宮崎さんの絵、残したいんだ」って言ってくれたのと。 あと、「こういう子供が主人公で一生懸命生きていくっていう、児童文学的な流れっていうのを1つ残していきたい」って話を受けたんですよね。それは川上さんもそれで賛同してたんだと思うんですけど。 それで僕たぶん、思い出して、でほぎゃらりー作る時に、川上さんに相談したんですよね。その経緯があったなっていうのを思い出して。そんな中で協力していただいたんだな、っていう。 今回、実はいろんな協力をいただいてて、製作委員会にも入っていただいて、本当にありがたかったんですけど。……まあ、でほぎゃらりーっていうのができあがったんですよね、その中でね……、うん。 (カンペを取り出して)ちょっと今日、なにを話せばいいか話題を書いてあったんで、……ちょっとすいません。 (会場笑)

『メアリと魔女と花』の感想

川上 でも、映画の話はしなくていいんですか? 西村 いや、映画の話は、ね、みなさん……。映画の話をして……、するんですか? 川上 いや、わからないですけども(笑)。 (会場笑) 西村 (取り出したカンペを見ながら)「アニメーションの背景美術について話をし、これまで築きあげてきた世界に誇る背景美術についてお話をしましょう」ということはしたので……。 まあね、今回、『メアリと魔女と花』どうだったでしょうか? 一生懸命作りましたが。けっこうやっぱゼロから作るって、大変でしたけどね。 庵野 まあ、大変ですよね。 西村 最初にスタジオ作る時も庵野さんに相談しに行って、「始められるところから始めたほうがいいよ」っていう話もしていただいたし、いろんなアドバイスをいただいたのはすごく覚えてるんですけど。 川上 え、でも、本当プレッシャー感じてますよね。 西村 ん? 川上 プレッシャー感じて。なんかすごいね、深刻な顔ずっとしてるじゃないですか。 西村 え、僕ですか? 川上 そうそうそう、今回。こんなの見たことないんですよ。高畑さんって本当大変なので、高畑さんの下のプロデューサーの時って本当やつれてたんですけどもね、会ったらずっと文句を言ってたんですよ。 西村 (笑)。 川上 で、今にしてみたら、あれはやっぱり他人事でやってた部分があったんじゃないかな、と。 西村 いやー、高畑さんの時はやっぱ楽でしたね。 川上 そうですよね。 西村 高畑さんの時は、やっぱね、これ、自分で出てわかりますけど、なんだかんだやっぱりジブリがあるから。そして、高畑さんもいるし、鈴木さんもいるし、「『かぐや姫』作りたい」って言ったの高畑さんだしね。だから、他人事って言ったら他人事……(笑)。 川上 (笑) 西村 いや、高畑さんのやりたいやつを仕上げればいいんだ、っていう思いがありましたけど。 川上 はいはいはい。

今回は「こんなに怖いことない」

西村 今回はね。 川上 もう完全に自分のプロジェクト。 西村 自分……。まあ、みんなでね、米林宏昌監督も含めて、一緒にやってったわけですけど。いや、こんな怖いことないですよね。 庵野さん、「宮崎さんの絵、残したい」っておっしゃってくれたけれども、じゃあ、自分たちが……、まあ、宮崎さんの絵っていうよりも、もちろん綿々と続いてきたアニメーションのキャラクターだと思うんですよ。 小田部さんもいらっしゃるし、その前に森康二さんもいらっしゃるし。その流れの中で、アニメーションのキャラクターどんどん変化してきたっていうのがあって。 で、米林監督も約20年間ジブリにいらっしゃったので。で、ここに、今スタジオポノックっていう会社で『メアリと魔女と花』を作ったアニメーターも、本当約8割ぐらいはジブリ作品の経験者でやってきましたけど。 これがどう評価されるのかっていうのは、本当に期待というよりは怖さしかないですね。評価を受けるわけですからね。これでダメだったら終わりですから(笑)。 川上 (笑)。 西村 暗いというか、プレッシャーというか。 川上 プレッシャーですね(笑)。 西村 大人になんなきゃいけないんだろうなって思って、やってますけどね。……そんな違いますか?(笑)。 川上 いや、ぜんぜん違いますね。 西村 あ、そうですか(笑)。 川上 『かぐや姫』もつらそうだったけど、「つらそう」の意味が違いましたよね。 西村 え、いつですか? 川上 いや、『かぐや姫』の時。 西村 あー、あの時はね。

西村の「サラリーマン的つらさ」

川上 あの時、やっぱりすごいつらいけれども、サラリーマン的つらさっていう感じでしたね。 西村 はい(笑)。今は何ですか? 川上 今はなんか、本当つらそうだなと思って(笑)。 (会場笑) 西村 いや、大変だったですよ、本当に(笑)。 川上 いや、あの時、本当ね、「本当に西村さんって強い人だ」って思ったんですけども。高畑さんのプロデューサーっていうとね、もうなかなか続かない中でやり遂げたっていうのは、「本当すごい人だ」って思ってたんですけどね。……なんか(笑)。 西村 あの時は、もうね……、もうあんま思い出したくないですよね、あれね。 川上 (笑)。 西村 すごいつらかったんでね。本当に吐きそうになりますよ、本当に。1回鈴木さんが……、これ、『かぐや姫』の話してもしょうがないですよね、『メアリと魔女と花』なのに。まあ、いいや。ついでに話しちゃうと。 川上 (笑)。 西村 鈴木さんに『かぐや姫』作ってる時に、「おまえちょっとブログ書け」って言われて。「何書くんですか?」って言ったら、「悲惨な日々書け」って言って。 (会場笑) 西村 で、悲惨な日々書いてくんですけど。遡るじゃないですか、どうやってプロジェクトが立ち上がってんのかって。 で、ジブリってすごくおもしろい教育があって、ジブリっていうか鈴木さんですね、「事実を事細かく事実のまま覚えろ」っていう訓練を受けるんですよね。 その人がその発言をした時にどんな顔だったのかとか、どんな様子だったのかっていうのも含めて、全部記憶するんですよ。映像で記憶しちゃうんですけど。 で、だから、訓練受けてるもんですから、『かぐや姫』の時に高畑さんが言ったこととか鈴木さんが言ったことは、全部メモってるわけですね。 で、思い出してブログに再現しようとすると、そのイメージがブワーッて浮かんできてしまって、本当にきつくて。吐き気もよおして、家に帰ったりしたこともあったですからね。 一同 (笑)。 西村 これ、ぜんぜん余談なんで、話してもしょうがない(笑)。 (会場笑) 川上 僕と一番最初に会ったのが、確かそうなんですよね。鈴木さんが本当に悩んでいて、身体にいろんな発疹とかができて。 西村 あれ、嘘ですからね。 川上 え、本当ですか?

鈴木敏夫が西村の苦悩に同情

西村 鈴木さんのところに呼ばれたじゃないですか。で、川上さんがいて、製作委員会の方がいて。で、僕が「高畑さんが動かないから、鈴木さん、ちょっと愚痴聞いてくださいよ」って言いに行って。 そしたら、「おまえ、2人のほうがいい?」って言われて。「いや、別に2人じゃなくてもいいですけど」って言って入ってったら、もう製作委員会の方が面々いるんですよ。そこで、「じゃあ、おまえ話せ」って言われて。10人ぐらいいるところで。 「話します」って言って、バーッて話してるうちに、まあ、みんな笑うわけですよね、こんな悲惨な日々を。 で、笑ってて、バーッて話してたら、そこにある方がいて、その宣伝に関わってる方が。その方が、ストレスかなにかで……じんましんでしたっけ? 出る方で。 で、その方いたんですけど、翌朝、僕その会があって、ワーッて話して、鈴木さんが「おもしろかった。ありがとう」って言われて。愚痴言いに行ってね、「大変なんです」って言ったんだけど、「おもしろかったよ」って言って。 その翌朝、僕ジブリに入ってって、鈴木さんと会ったら、「おまえ、ちょっと来い」って言って、で、スマホ見せられたんですよ、鈴木さんに。 そしたら、「西村さんの話が悲惨すぎて、僕はぜんぜんまだまだ甘い、と。おかげで、じんましんが直りました」って書いてあってね。 (会場笑) 西村 「おまえの愚痴は癒し効果がある」って言われて(笑)。 (会場笑) 川上 いや、そうなんですよね。みんなに聞かせたいんですよね、鈴木さんはね。そんなに苦労してたのに、今のほうがはるかにつらそうですよね(笑)。 西村 もう10キロ痩せたんですよ。 川上 すごいですよね。 西村 本当、もうね、痩せましたね……。いやー、こんな大変だとは思わなかったですね。だって、庵野さんも立ち上げられたわけですよね、カラーって会社。 庵野 ええ。 西村 すごい大変だったですよね? 庵野 まあ、大変ですけど、まだ僕の場合は『エヴァ』なんで、最初が。 西村 あー。 庵野 ……。 (会場笑) 川上 それはどうなんですか?(笑)。 庵野 ある程度もう認識されてました、世間で。 西村 そうですよね。 庵野 だから、1から作るよりはまだ楽でしたけどね。でも、まあ、こんなにかかるとは思いませんでしたけど。 川上 (笑)。 庵野 そっちのほうが大変ですよね。 (会場笑) 川上 確かにそういう意味では、すごい自由にやってますよね、たぶん。庵野さんみたいに締切り自由だったら、もう少し楽だったね(笑)。 (会場笑) 西村 いや、庵野さんはいいですけど、僕ら守らないと次ないですもん、だって(笑)。 庵野 いやいやいや、それは似たり寄ったりですよ。 川上 (笑)。 庵野 だから、最初にアドバイスした時に「商売考えたほうがいい」って言ったんですよ。 西村 商売……、まあね、商売考えなきゃいけないんですけど、商売考えたことがないからなあ。それが社長になってしまったんで、ちょっとどうしようかと思ってるんですけど。あ、でほぎゃらりーじゃないですよ。 庵野 あ、でほは儲からないですよ。 (会場笑) 川上 いや、そうですよね。 庵野 これはもう最初に川上さんには、「儲かんないけどいいですか?」って。 西村 僕もそう言ったんですよ。 川上 何が役目かっていうと、赤字を補填するっていうのがうちの役割なんですよ(笑)。 (会場笑) 川上 それで、あの……、まあ、そんなに赤字じゃないんですけど(笑)。 西村 そんなこと言って大丈夫なんですか?(笑)。 川上 うーん……、上場企業だからねえ。 西村 上場企業ですよね(笑)。 (会場笑) 川上 まあ、その赤字を上回るいろんな効果がある、っていう。 庵野 いや、べらぼうな赤字にはならないですけど。 川上 なってないですよね。ぜんぜんなってない。 庵野 ええ。

  
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