実際の活用例を紹介

村石知実氏:ここから3つ事例をご紹介します。いずれの事例もどのSNSで、どんなコンテンツを配信して、結果としてソーシャルメディアのマーケティング活用目的の「理解者や意向者の獲得」が達成できたのか、を中心にお話したいと思っています。

まず1つ目は、東京西川という布団の老舗メーカーのFacebook運用事例です。

1回の購入単価は高めで、検討期間も長い商品です。 ですのでFacebook公式アカウントを始めたときの目的としては「理解者を増やす」「長期的に購入に転向してくれる方を増やす」ことでした。

この目的で投稿案を考えていく上でいくつか軸があると思います。 例えば新規顧客向けの情報を配信していったほうがいいのかとか、既存客向けの情報がいいのか、もしくはコミュニケーション、挨拶みたいな投稿がいいのか、販促みたいな内容がいいのかですね。それぞれの象限ごとに投稿が作れると思います。

「実際に各象限の投稿をやっていって、1年後とか半年後ぐらいに、どれくらい顧客が購買に結びついたのかを可視化しながら運営をしてほしい」というのが課題でした。

そこで当社で考えたのがこちらです。縦軸に購入ステータスですね。

買ったことがあるのか、ないのかということと、横軸に心理的な顧客ロイヤリティみたいなものを取りまして、それぞれレイヤーで必要なコンテンツを分解してみました。

例えばですが、商品を買ったこともなくて、“自分事化”されていない「そんな高い布団とか枕とかいらないでしょ」と思ってるような人に向けて配信したいコンテンツ。

あとはもうすでに何度もご購入をいただいていて、ほかの人にも勧めたいって思っているような熱狂的なファンの人も、中にはいるでしょう。

まずこれについてFacebook上でアンケートを取り、Facebookページにいいね!している人を可視化するというところからスタートいたしました。

さらに単に投稿していくだけではなくてポストアドを使って、見込み顧客にそれぞれに合った投稿を、広告を使ってリーチをさせる施策を行いました。

具体的には顧客を3つぐらいに属性に分けて実施しました。購入経験がある、あるいはブランドに対してロイヤリティが高い人と、その逆と、その中間ぐらいのレベルに分けています。

最適なユーザーにFacebookで情報を届ける

この結果、8ヶ月後に未購入者の16.6%を購入者に転向させることができました。

また、購入には至らなかったものの、ブランドリフトというところでいくと、実際に78%の方が関心層に引き上がったという結果が出ています。

ポイントとなるのは、FacebookはじめTwitterもそうですが、定期的にいろんなコンテンツを配信していきますよね。

ブランドとの接点がものすごく多く作れるというのがメリットです。

テレビCMとは違って、究極のワンコンテンツということではなく、「いろんな情報をとにかく小出しにいっぱい打てる」点がやはりソーシャルメディアの価値だと思います。

この施策を通じて見込み顧客を理解者に引き上げたところが評価できるポイントだと思っています。

実名制でターゲティング精度が高いFacebookだからこそ、購買経験といった定性データを取得することによって、情報を届けたい人に積極的に情報を届ける場に変えていくことができるのです。

またこういった試みを通じて、本当に投稿するべきコンテンツを再定義して、ポストアドと組み合わせて運用することによって、不必要な投稿を削減しつつもFacebookページの月間総リーチ数は上げられる、そういった効率的な運用が可能になります。

東京西川様ではやや年齢が高めの方向けにFacebookを使ったのですが、Twitterで同じようなことをやらせていただいている事例もあります。

Twitter活用の方法をレクチャー

常盤薬品の眠眠打破Twitterでは、ブランド価値向上への貢献が明らかになりました。

こちらは先日、当社からリリースを出しておりますので、よろしければぜひご覧になってください。

2つ目の事例は、毎日のように店頭で購入する商品に対してソーシャルキャンペーンを活用して成果を上げた実績です。

鍋焼きうどんのキンレイというメーカーです。スーパーなどの冷凍食品のコーナーにありますので、よかったら手に取ってください。

これまでも店頭での販促施策は投資対効果が明確なため外せない施策と思われてきました。

一方で、ソーシャル等のブランディングや理解促進のための施策は「やりたいけれども、なかなか評価基準がない」点が課題だったのではないかなと思っています。

そこで、「本当に効果がないのか」を改めて問いたいと思っています。

例えばユーザーのブランドに対する心理的な興味関心の上下変動をこちらの曲線で表してみました。

テレビCMを見てちょっと興味を持って、例えばそのあと、Webのキャンペーンでサンプリングされているのを見てさらに興味を持って、もしかすると1回Webサイトを見たりするかもしれませんよね。

そして「いいな」と思ってSNSのフォローはしました、一時的に好意度は上がったものの、他社の商品が目に留まって別なものを買ってしまいます。

ただ、何かのきっかけでもう一度好意度が上がって、最終的に店頭にいったら半額で売ってたから買いました。

こういう購入にいたるまでの心理的な変化があったうえで、最終的な購入につながるのではないかと思います。

ユーザーと何度もコミュニケーションが取れる

SNSの場合、とくに最初のリーチから購入にいたるまで、もしくは次の購入にいたるまでのつなぎ止めにすごく効いているはずです。 何度もコミュニケーションが取れるため、プロモーションとプロモーションの間の埋め合わせに寄与すると思っています。

キンレイのプロモーションでは、SNSキャンペーンとテレビタイアップ、WEB動画を実施しました。新製品が出るタイミングでこれらの施策をまとめて行いました。

定点調査の結果、ブランドの未購入者で、複数回ブランドに接点を持った人の12.3%が購入者に転換しました。

さらにこの施策を通じて、心理的な変化を可視化できた点が大きな気付きになりました。 実はこれ数カ月おきにSNSで定点調査を行っており、こういったことがわかってきました。

まずプロモーションの最初の段階でSNSサンプリングを実施しました。その際に接点を持った人たちの購入経験をアンケートで取得します。そのあとテレビタイアップがありました。テレビタイアップが放送されたタイミングで全体的にブランドの意向が上がっていたということがわかりました。

そのあと、しばらく期間が空いたためブランドの推奨度はやや下がっていたのですが店舗の販促施策が走ったタイミングで、購入に結びついたというような結果です。 つまり購買に結びついた人たちとは、こういった心理の変化を辿っていたことがわかってきました。 ポイントは、他社と比較してどういう強みがあるのかをキャンペーンで接点を持った人が理解していたということです。 実はサンプリングのキャンペーンも、ただお配りするだけではなくて、色々なアンケートをはさんで応募者にWebサイトを見に行っていただいたりとか、そういった理解促進の施策を絡ませながらサンプリングを行いました。 その結果、理解者を増やすことに成功したため販促施策を実施したタイミングで実績を出せたのではないかなと思っています。

SNSで配信する広告で効果的なのは

最後にSNS広告の効果改善事例です。

こちらは、『幻獣契約クリプトラクト』というゲームの広告です。これは見ていただいた方が早いと思いますので、前のスライドでデモをします。

Facebookのキャンバス広告をご覧になったことある方もいらっしゃると思いますが、バナーみたいなものが流れてきて、ここのバナー上のexpandするアイコンをクリックすると、Facebook上にフルスクリーンでこういった画面が展開されます。

これはLPに飛んでいるわけではなく、Facebook上にフルスクリーンで展開されているだけです。

ここで物語のストーリーや、ちょっと リッチな動画コンテンツをいろいろ見せます。 さらにはYouTuberによるプレイ動画もあります。

事前に有名なYouTuberの方に試していただいて、プレイ動画を作成したものをキャンバスの中に埋め込んで、興味を持った人がこのインストール画面に遷移する流れです。こういったLPみたいなものをCVページとの間に1枚かますことによって、トータルの ROIを高める施策です。

1ステップ多くなってしまうように見えがちですよね。しかしFacebookのようなSNSで友達のコンテンツが多くシェアされている中で従来の獲得系のバナーを配信してしまうと、まったく効率が上がらないということがよくあります。

そのため「SNSってあんまり獲得には向かないよね」って言われがちですが、そもそもコンテンツの問題なのではないでしょうか。

友達の情報がシェアされている中で「どれくらいおもしろい内容が作れるか」というところが広告の施策においても重要です。

こちらの施策ではYouTubeも同時に展開しており、こういったプレイ動画を作ったりしています。

さらに動画単体も広告クリエイティブとして配信しています。これはガチャを引くシーンを15秒ぐらい切り出して広告にしています。ゲームの中の山場ですね。

「場に応じて最適化」がキーポイント

駆け足でしたが、3つ事例のご紹介をさせていただきました。

ソーシャルメディアをマーケティングに活用をする場合は、理解者と意向者を増やすことを目的にし、結果としてその前後にある購買とか認知に寄与すると考えると、ワークしやすいと思います。

もう1つ、SNSのコンテンツは場に応じて最適化させるということ。SNSのコンテンツは究極の1投稿ではなくて、たくさんのトライをどれだけ積み重ねられるかところがポイントになってきます。

このような施策をやっていくと、漫然と運用しているよりも効果を上げることができ、狙って仕掛けていける感覚をお持ちいただけるのではないかなと思います。

最後に、このセミナーのまとめといたしまして、2点、ソーシャルメディアを活用いただく際のポイントをお話しします。

本日のセミナーのテーマにもしていた、共感力と発信力です。

1つ目の共感力について、SNSと一言で言っても、各媒体ごとに色々な方向性があります。

SNSそれぞれのメリット

実名と匿名、プライベートとパブリック、こちらの4象限で各SNS媒体をプロットしてみました。

Facebookについて、最近は特にテレビのようなメディアへと大きく舵を切っています。ご利用されている皆様も「以前ほどは投稿しなくなったけれども、ニュースだけは見てます」とか、「友達の転職の情報とか『結婚しました』『子どもができました』みたいな情報は、基本Facebook通じて知ります」みたいなこともあるかと思います。

自分用にカスタマイズされたニュースを受け取る意味では欠かせないメディアになってきていると思います。

今後媒体としてもこういった方向性を強めていくでしょう。

LINEに関しては、圧倒的なユーザー数を武器にインフラとしてのポジションを強めています。技術的な開発を進めていてFacebookと同じようにメディアの方向性もさらに強化していくものと思われます。

一方、プライベートな空間により近いのがInstagramです。ビジュアルを使ったプロモーションを実施する場合は、外せない媒体になっています。 拡散性を重視する場合には、やはりTwitter施策というのも外せません。

さて、ここで言う「共感力」とは、SNSの場の空気を読む力です。

ソーシャルメディアというのは、「掌上のプライベート」な空間と書きましたが、非常に個人に近い媒体なんですね。 その中で配信される広告というのは基本的には嫌われてしまいます。一方で友人の投稿というのは気になる情報になります。

ですので、その場の空気を読まない広告は一番嫌われるコンテンツになってしまうと思っています。配信の内容も、その場に合わせた、共感力を高めたかたちで配信していくことが必須になります。

そして、もう1つ大事なポイントとして考えているのが発信力です。従来型のマスメディアは、トップダウンで全員に一斉に情報を届けることができました。

それが現在どうなっているかというと、ユーザーの間で語られて相互に共感を生んだものが情報として広まって、それらがSNSでシェアされて、最終的にはテレビで報道される。そんなボトムアップのかたちで情報が伝わってきていると考えています。

「誰が一番発信力が強いのか?」と考えた時に、少なくともソーシャルメディア上では発信力が一番高いのはユーザーになります。

話題の作られ方が変化していますので、「巻き込んで、巻き込まれる力」が発信力と言えるのではないでしょうか。

これからのマーケティング活動に活かせるヒントを少しでもお持ち帰りいただければうれしいなと思い、お話させていただきました。

アライドアーキテクツのサービスを説明

最後にアライドアーキテクツのサービスをいくつかご紹介をさせていただきます。 「ブランドタッチマネージャー」というサービスを今年の秋にリリースいたします。

主にソーシャル上で接点を持った人たちがどういった態度変容したのかを可視化できるような計測ツールとなります。興味がある方は是非ご質問ください。

こちらも直近のリリースですが、「エンゲージメントセンター」を立ち上げました。結婚相談所とかではなくて、SNS運用の専門部署です。

アライドアーキテクツは160人規模の会社のためSNS運用を受けられる件数が増やせないということが課題としてありました。こういったセンターを作ってできるだけ多くの企業様をご支援できる体制を整えています。

またSNS広告に関しては、「ADU」というソーシャル広告の専門部隊があります。

ここではソーシャルメディア(LINE、Facebook、Twitter、Instagramなど)に特化して広告運用を最適化させています。 中国のSNSにも展開をしています。 主に微博という、中国版Twitterと呼ばれるサービスですが、そちらのプロモーションやインフルエンサーといったところを幅広くご支援しております。

最後までお付き合いをいただきまして、ありがとうございました。今日最後まで聞いていかれる方、がんばってください。どうもありがとうございました。

(会場拍手)