日本のアニメーターはすごい

堤大介氏(以下、堤):今日のプレゼンテーションはここでクローズして、ぜひみなさんと質疑応答に移りたいなと思うんですけど、その前に最後に、今日、この『丘の上のダム・キーパー』の日本側のスタッフもこの会場に来てるので、一瞬だけちょっと紹介させていただきたいなと思って。ちょっと立っていただけますか。

(会場拍手)

:やっぱり日本のアニメーターの方たちはすごいですよ。本当にもう。やっぱりエリックほどのスタンダードが高い監督でも舌巻いてましたから。本当にすごいです。じゃあ、ここで終わりにしていいですか。

司会者:そうですね。すばらしいお話、どうもありがとうございました。

(会場拍手)

それではここで、せっかくですので、みなさんからQ&Aを受けたいと思います。では、なにか質問ある方いらっしゃいますでしょうか。

質問者1:(会場で流れた『丘の上のダム・キーパー』の)第2話、すごくおもしろかったです。エリック・オーさんの描く線やアニメーション、躍動感というのがすごく魅力的でした。ご自身がアニメーションを志したもとになったものですとか、アニメーションに惹かれた理由とかがありましたら、なにか教えていただけませんでしょうか?

エリック・オー氏(以下、エリック):自分は韓国で育ったんですけれども、ラッキーなことに韓国ではいろんなアニメーションを見ることができました。アメリカのディズニーのようなものもたくさん見てましたし。それから、もちろん日本のアニメーションもたくさん見ていました。そして韓国で作っている韓国のアニメーションもたくさん見て育ちました。

だから、小さい時からそういうものに慣れ親しんで、そこのキャラクターをまねて描いてみたりとか、そういうようなことから、小さい時からずっと興味があって、その延長で自分はこういう仕事に就いたんだと思います。

質問者2:もう少しトンコハウスの物語の世界についてお聞きしたいんですけど。

先ほどスライドにも出てたグラフィックノベル、去年の展覧会でいろいろ含まれている部分が多いと思うんですけど、この小説と短編と今後ある長編というのは一貫した世界観なのか、そのあたりをお願いします。

:グラフィックノベルと、今まだ初期段階で脚本を書いてるところなんですけど、長編映画はけっこうつながっていまして。

「長編映画のお話をまず作るときにグラフィックノベルを使ってお話づくりやろう」というところからグラフィックノベルをやっているので、共通した主人公のブタくんがダムの外に出て旅をするという話としては共通してます。

ただ、やっぱり本のフォーマットと映画のフォーマットなので、まったく一緒ではなくて、少し変わってはいるんですけど。

今回の『丘の上のダム・キーパー』に関しては、ほぼ世界観というかキャラクターの性格とか、そういうのは同じなんですけども、話としてはぜんぜん違います。

これは本当完全にエリックの独自の、ブタくんが小さかったときの、彼の記憶というところから作った作品なので、お話はあんまり関係してはいないんですけど、ただ、お父さんがいなくなってる背景だとか、そういうところは一応共通しています。

「本当に自分が伝えたいこと」を突き詰めて考える

質問者3:今日はありがとうございます。エリック・オーさんに質問なんですけど。ショートムービーとか世界観がすごく独特で、ストーリーも、最後がシュールだったりとか、でも温かったりとか、いろいろなストーリーがあるんですけど。

トンコハウスのみなさんは自分たちの原体験をもとにストーリーを作っているというのをいろんなセミナーで聞いたんですけど、エリック・オーさんのシュールな世界観というのは、自分の中のどこから生まれてるかとか、子どもの頃にそういうのが好きなことが、自分でやった行動だったり、あったのかなというのがすごい気になってて。ストーリーの作り方みたいなのを教えてほしいです。

エリック:なんと言っていいか、わからないです(笑)。

(会場笑)

今まで本当にたくさん作品いろいろ作っているなかで、いつも考えるのは「なにか新しいものを表現したい」「なにかおもしろいことってないのかな?」っていうことをいつも考えるんですけれども、今回も「どういうことがユニークで、どういうことがおもしろいのかな?」ということを考えていました。

それが動機のもとになっていて、同時に、もちろん自分はアートも勉強して、シュールレアリスムも好きですし、そういうものと自分の「なにかおもしろいことないか?」ということが混ざって、こういうような表現が生まれてきたと思っています。

:実体験をもとにってね、僕らがよく「自分たちのパーソナルコア」って話をしたのを聞いたんだと思うんですけど。僕もすごい不思議なんですよ。こんな話はどういう幼少時の体験からこんなことになるのかなと。

(会場笑)

エリック:ちょっと実体験というわけじゃないんですけれども、こういうふうにストーリーを考えていくときに、2つのアングルを考えるということがありまして。

1つは、「本当に自分が伝えたいことってなんなんだろう?」ってことを突き詰めて考えるということが1つ。

同時に、それがある程度見えてきた時点で、表現の仕方として、本当に子どもみたいに、例えば、「雲を引っぱっていくことができたらおもしろいな」とか。そういう子どもみたいな考えや思いつきみたいなものをたくさん集めていって、それを練り合わせて作っていくみたいなプロセスになってます。

日本とアメリカの連携

質問者4:すごい楽しかったです。日本のアニメを作っていらっしゃる方たちとすごい連携体験ができているなというふうに思ったんですけれども。環境の作り、環境がすごい日本のほうもいいなというふうに感じていて、環境を作ることにもこだわってらっしゃるのかなというふうに思いました。すいません。

エリック:本当にちゃんと質問の意図を理解しているかちょっと微妙なんですけど、とにかく日本と離れているからこそ、コミュニケーションを本当にしっかり取れるかということを大切にしています。

サンフランシスコと東京、時差もありながら、そういういろんな障害があるんですけれども、Skypeだったり、Eメールだったり、ときにはFacebookのメッセージだったり、いろんなことを使ってコミュニケーションしていて。

同時に、今回日本に来て、直接アニメーターの方、それからペインターの方、こちらで働いている人たちと直接やっぱり話し合っていく。そういうふうにしてコミュニケーションを密にしてチームがまとまっていくということが、自分にとってはとても大切なことないかなじゃないかなと思っています。

ロバート・コンドウ氏(以下、ロバート):一番最初に日本で作ってもらった部分をアメリカに送ってきて、それが来た時に、みんなスタジオ中、ほかの仕事全部止めて、みんな一緒にそれを見たんですね。

それ本当に「うわ、信じられない!」という感じで、もう本当にその出来にみんな驚いていて。それで、なかには泣く人もいるぐらいな感じで、エモーショナルな体験だったんですね。

それで、みんなが感じたことをそのままビデオで撮って、それをちょっと簡単にパパっと編集して、日本のチームに送りました。それを見た日本のチームのみなさんが今度は簡単なアニメーションを作ってくれて、それに返してくれました。

そのやりとりができていって、今度すごく大変な時期を超えたところで、シュークリームの差し入れをしたりとか、それでまたそれに対して言葉を返してくれたりとか。

そういうやり方、そういうふうにエネルギーを共有していくということをこれまで少しずつでやってきて。まあ、それでも簡単ではないんですけれども、でも、そういうふうにして、みんな気持ちを1つにしていくことを大切にしたいなというふうにやってきています。

司会者:どうもありがとうございました。あっという間に時間が過ぎてしまいまして、以上でQ&Aを終わらせていただきたいと思います。

以上で、ロバート・コンドウさん、エリック・オーさん、そして堤大介さんのトークセッションを終わらせていただきます。みなさま、盛大な拍手でお送りください。どうもありがとうございました。

(会場拍手)