東京電力ホールディングス第93回定時株主総会

數土文夫氏(以下、數土):対処すべき課題につきまして、当社社長および各機関事業会社社長から報告いたします。なお、映像を利用させていただきますので、前方のスクリーンも合わせてご覧ください。それでは、廣瀬社長から報告いたします。

廣瀬直己氏(以下、廣瀬):社長の廣瀬です。私からは平成28年度報告書の11ページから14ページの内容に従いまして、当社グループの対処すべき課題についてご報告申し上げます。

当社グループは、国の東京電力改革・1F問題委員会などの提言を踏まえた新々総合特別事業計画のもと、低廉な電気を安定的にお届けすることを基本に、福島への責任を果たしていくという使命を肝に銘じ、当社グループが果たすべき賠償、廃炉費用の資金確保や、企業価値の向上を目指してまいります。

同委員会により、福島第一原子力発電所の事故に関連して確保すべき資金の総額が、約22兆円との見込みが示されたなか、さらなる生産性の向上や、コスト削減、共同事業体の設立に向けた検討体制の確立など、改革に総力を挙げて取り組み、株主のみなさまのご期待に沿うよう、全力で努めてまいります。

福島復興に向けた取り組み

福島復興に向けた取り組みにつきましては、被害者の方々が一刻も早く、生活・事業を再建できるよう、引き続き被害者の方々に寄り添い、賠償を進めるなど、迅速かつ、きめ細やかな賠償を最後の1人まで貫徹いたします。

同時に、生活基盤や産業基盤の再建に向けた、国や自治体等の取り組みに全面的に協力し、1日も早い福島復興の実現を目指してまいります。

具体的には、4つの町村で、避難困難区域を除き、避難指示が解除されたことを踏まえまして、清掃・除草などをはじめ、地域の復興のステージに応じた住民支援活動を継続していくほか、放射線に関する不安の軽減や、生活環境の再生を図るための取り組みに人的・技術的に貢献してまいります。

さらに、浜通り地域の新たな産業基盤の構築や、広域的な視点での町づくりを目指す、国のイノベーション・コスト構想の実現に向けた検討。福島早々復興官民合同チームによる事業再開への支援等の取り組みについて協力してまいります。

合わせて、事業会社を通じた世界最新鋭の石炭火力発電所の建設等による就労機会の創出に向けた取り組みを継続するとともに、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて貢献していくなど、グループ一丸となって、福島復興の一層の加速化を進めてまいります。

福島第一原子力発電所の廃炉と原子力発電の安全に関する取り組み

次に、福島第一原子力発電所の廃炉と、原子力安全に向けた取り組みについて、ご報告申し上げます。

福島第一原子力発電所の廃炉につきましては、サブドレンや陸側遮水壁などの汚染水対策を継続して実施するとともに、使用済燃料や燃料デブリの取り出しなどの作業を着実に推進してまいります。

使用済燃料プールからの燃料取り出しに関しましては、引き続き原子炉建屋のガレキ撤去や、燃料取り出しカバーの設置工事を進めてまいります。燃料デブリ取り出しは、格納容器の内部調査等により、引き続き必要な情報を収集し、取り出し方法を決定して参るつもりです。

また、廃炉事業の運営体制全体の見直しにより、マネージメント機能や、エンジニアリング能力を強化するとともに、さらなる労働環境の改善や、適切な情報発信に引き続き取り組んでまいります。

さらに日本原子力発電株式会社との協力関係の拡大など、国内外の英知を結集した廃炉推進体制の構築を進め、長期にわたる廃炉を支えるための基盤を強化してまいります。

原子力安全の徹底した取り組みにつきましては、原子力安全プランを着実に実行し、安全意識・技術力・対話力の向上を目指してまいります。

また、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向け、安全性向上に向けた取り組みを進めるとともに、新規制基準適合性審査への対応にあたって、他の電力会社さんの協力をいただき、規制対応向上チームの設置や組織間の情報連携の改善に取り組んでまいります。

地域のみなさまへの理解活動につきましては、新潟本社の一元的な意思決定のもと、コミュニケーションの強化や情報公開を積極的に展開することで、誠実かつ丁寧な情報発信を徹底してまいります。

加えて、原子力防災の充実に向け、地域のみなさまのご要請をお聞きし、有効な支援を実施してまいります。

ホールディングカンパニー制のもとでの事業運営

次に、ホールディングスカンパニー制のもとでの事業運営について、ご報告申し上げます。

持株会社であります当社は、賠償、廃炉、福島復興に責任を持って取り組むとともに、グループ全体の経営問題の策定や、経営資源のもっとも効率的な活用に取り組んでまいります。

このため、効率的な経営管理を行うとともに、若手外部人材の登用や、権限の委譲。女性の活躍等を促すダイバーシティの推進など、大胆な企業改革を実行するための体制構築を進めてまいります。

また、共同事業体の設立に向けた検討チームを立ち上げるとともに、福島への責任を果たすための資金負担のあり方などを検討してまいります。

加えて、利益の拡大と財務体質の改善に向けて、生産性倍増に向けた改善活動を引き続き、グループ全体に展開するとともに、業務革新、調達改革、IT革新等によって、コストの抑制と効率的な設備投資を図ってまいります。

また、社債の発行を継続するなど、当社グループの自立的な資金調達力の回復も図って参る所存です。

当社を取り巻く経営環境は極めて厳しい状況にありますけれども、グループの総力を挙げて、福島の責任を貫徹するため、各機関事業会社は、この後報告いたします事業戦略に取り組み、福島復興に向けた原資の創出と、グループ全体の企業価値の向上に貢献してまいります。私からは以上です。

數土:続きまして、各機関事業会社の具体的な事業戦略につきまして、各社社長から順に報告いたします。はじめに、東京電力フュエル&パワー株式会社の佐野社長から報告いたします。

事業戦略 東京電力フュエル&パワー株式会社

佐野敏弘氏(以下、佐野):東京電力フュエル&パワー株式会社社長の佐野です。

エネルギー利用の減少や、再生可能エネルギーの増加など、国内の事業環境が厳しくなる一方、新たな電力取引市場の創設や、ガスの小売全面自由化。海外でのエネルギー事業の新調などによる事業機会の拡大も見込まれております。

こうした中、株式会社JERAの発展と、火力発電所のバリューアップを核に、国際競争力のあるエネルギーを、安定的に供給してまいります。

中部電力株式会社との包括的アライアンスにつきましては、平成31年度上期の事業統合の完成に向けて着実に取り組むとともに、株式会社JERAへの適切なガバナンスを通じて、アジアトップレベルの燃料調達コストと収益力の実現、競争力のある国内電源の開発、海外でのバリューチェーンの一体開発による新たなビジネスモデルの展開等、統合効果の一層の創出を図ってまいります。

また、将来の市場を見据えた最適な電源ポートフォリオを構築するとともに、バリューアップ・プロジェクトのさらなる推進等により、世界トップレベルの発電コストを実現し、競争力を強化してまいります。

加えて、デジタル技術を活用した発電所運営に関するノウハウの商品化・標準化など、知識集約型ビジネスモデルの構築・始動にも取り組み、収益力を拡大してまいります。

東京電力フュエル&パワー株式会社では、ただ今報告いたしました事業戦略のもと、国際エネルギー市場で競合他社と互角に戦うことのできる、グローバルなエネルギー企業体への変革を図り、企業価値の向上に努めてまいります。私からは以上です。

事業戦略 東京電力パワーグリッド株式会社

數土:次に、東京電力パワーグリッド株式会社の武部社長から報告いたします。

武部俊郎氏(以下、武部):東京電力パワーグリッド株式会社社長の武部です。

国内の電力需要は低迷し、託送料金収入の減少が見込まれる一方で、経年設備の着実な改修や再生可能エネルギーの普及加速などに対応した、送配電ネットワークの構築が求められております。

こうした中、電力供給の信頼度を確保したうえで非連続の改革に取り組み、グローバルな競争に耐える世界水準の効率的な事業運営を実現しますとともに、それによって財務基盤や技術力を強化し、成長する世界エネルギー市場への事業展開を進めてまいります。

当面の取り組みとしましては、生産性倍増に向けた改善活動を全社的に展開しましたリ、最新のITの活用による設備保全の効率化・高度化、グローバル調達の導入、こういったことにより、国内トップレベルの低廉な託送原価を実現してまいります。

併せて、すべてのお客さまへスマートメーターを設置するほか、送電ネットワークの統合的運用に向けた検討、あるいは再生エネルギーの導入拡大に向けた系統増強や関連技術の高度化により、送配電ネットワークを高度化し、利便性の向上を図ってまいります。

また、住宅内の電気の使用状況などの情報をもとにした宅内IoTなどといった、新たな価値を創造するプラットフォーム事業の展開など、国内外で事業領域の拡大に取り組んでまいります。

東京電力パワーグリッドといたしましては、ただ今報告した事業戦略のもと、賠償・廃炉資金・廃炉費用の資金確保のために、重要な役割を担っていることを肝に銘じ、お客さまや社会の信頼を得て継続的に収益をあげることで、当社グループの発展に貢献してまいります。私からは以上です。

事業戦略 東京電力エナジーパートナー株式会社

數土:続きまして、東京電力エナジーパートナー株式会社の小早川社長から報告いたします。

小早川智明氏(以下、小早川):東京電力エナジーパートナー株式会社社長の小早川です。

エネルギー需要の減少や競争の激化など経営環境が変化しているなか、従来の電力販売ビジネスから、快適で安心な暮らしやビジネスの発展につながるサービスをお届けする「効用提供ビジネス」への転換を図り、お客さまに選ばれ続ける企業を目指します。

具体的には、ガス販売に必要な機能やサービスを提供するプラットフォームを早急に整備し、多くの事業者にご活用いただくことで、ガス事業における販売の拡大と市場の活性化につなげてまいります。

また、エネルギー関連設備の最適な運用などを支援するエネルギーマネジメントシステムの提案や、設備の計画・設置・運用を一元的に受託するエネルギーサービス事業を全国に展開してまいります。

また、ご家庭向けにはIT関連企業・イノベーション事業者などと提携し、住宅分野において、IoTと省エネルギー技術を融合した商品を創出するなど、省エネルギーを軸としたサービスの開発・展開に取り組んでまいります。

さらに、異業種のアライアンス・パートナーを拡大することで、販売網の構築を図りながら、新たなサービスと組み合わせた全国での電力販売を加速してまいります。

これらの取り組みを通じて、アライアンス・パートナーとともに、小売ビジネスを「競争」からともに創る「共創」へと進化させ、お客さまや社会に新たな価値を提供してまいります。

東京電力エナジーパートナー株式会社では、ただ今ご報告いたしました事業戦略のもと、需要の減少や電力・ガスの小売全面自由化といった事業環境の変化に対応しつつ、お客さま第一の視点でサービス品質や営業力の向上に取り組み、激化するエネルギー市場の競争を勝ち抜いてまいります。私からは以上です。

監査委員会からの報告

數土:続きまして、監査委員会の監査報告につきまして、監査委員である増田取締役から報告いたします。

増田祐治氏(以下、増田):監査委員の増田です。監査委員会を代表して、私からご報告いたします。

当監査委員会は平成28年度におきます取締役及び執行役の職務の執行を監査し、監査報告を作成いたしました。

その監査結果につきましては、お手許の平成28年度報告書、50ページから51ページに記載の「監査委員会の監査報告」のとおりです。

このうち、平成28年度の連結計算書類に関する監査結果について報告をいたしますと、会計監査人の監査の結果につきましては、平成28年度報告書、46ページから47ページに記載の「連結計算書類に係る会計監査人の会計監査報告」のとおりでございまして、監査委員会の監査結果につきましては、同じく50ページから51ページに記載の「監査委員会の監査報告」のとおりです。

従いまして、ただ今報告のありました事業報告、連結計算書類及び計算書類は、いずれも適法かつ正確です。

なお、福島第一原子力発電所の事故によります経営各面の課題への対応を含めまして、国の「東京電力改革・1F問題委員会」による提言などを踏まえました「新々・総合特別事業計画」の確実な実行につきましては、引き続き厳格な監査を進めてまいる所存です。以上、ご報告申し上げます。

數土:ありがとうございました。報告事項は以上です。