異例の企画から生まれた書籍

中村慎太郎氏(以下、中村):みなさん、こんばんは。本日は、お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。今日のイベント、名前が長くて覚えるのが大変ですが「Yahoo! JAPANの歩んだ20年とは?!インターネットの過去・現在・未来を語り尽くす!村上臣☓鶴田浩之『Yahoo! JAPAN 全仕事』刊行記念イベント」ですね。

ちょっと私の自己紹介をさせていただきます。会場となるBOOK LAB TOKYOのスタッフなのですが作家も兼業しています。これ、僕が書いた『サポーターをめぐる冒険』です。1冊しか在庫がないんで、買いたい方はお早めに(笑)。

作家業の原稿を、偶然立ち寄ったBOOK LAB TOKYOで書いていたら妙に捗ったので、いつの間にか店員として居着いてしまいました。そんな経緯で、3月から働いてるんです。

2部で登場する鶴田(浩之)から最初に振られた仕事が、この『Yahoo!JAPAN全仕事』の刊行記念イベントです。僕はネット業界にはくわしくなかったんですけど、書籍のイベントならできるかなと思ってやってみることにしました。

まず、この会場の説明をさせて下さい。BOOK LAB TOKYOというんですけど、初めてきた方、いらっしゃいますか? 挙手をお願い致します!

(会場挙手)

あ、いっぱいいらっしゃいますね。ありがとうございます! これを機に、ぜひご利用ください! 

BOOK LAB TOKYOでは書店とカフェをやっていて、ときどき、こういうイベントも開催しています。

書店の特色としては、コンピューター系の専門書が多いのと、最近は旅の本とか、ライフスタイルの本とか入れたりとか。あと、どこの書店でもそうなんですけど、一番売れるのがビジネス書なんですね。書棚がイベント用の配置になっていて若干見づらいのですが、ご購入もできますのでぜひご覧ください。

異例の書籍企画が生まれた背景は?

では、さっそく始めましょうか。

第1部はですね、「異例の企画から生まれた書籍『Yahoo! JAPAN 全仕事』制作秘話」ということで、実業之日本社・経済実用編集長の安田宣朗さんと、フリーライター・作家の生嶋マキさんと、お話をしたいと思います。

では、ご入場ください。よろしくお願いいたします。あたたかい拍手をお願いします。

(会場拍手)

中村:では、よろしくお願いいたします。

どういう方かと言うと、安田さんが実業之日本社で(『Yahoo!JAPAN全仕事』を)企画編集をされた方です。なので、この企画の全部を知っていて、ある意味、ヤフーに精通した男と言っていいですか?

安田宣朗氏(以下、安田):ほんの一部です(笑)。

中村:そんなことはないですよね?(笑)。ただ、言い過ぎるとあとで怒られるかもしれないからやめときましょう(笑)。安田さんがもしご失言をされて、Twitterに書くときは……。

安田:書かないでください(笑)。

中村:安田さんの発言については基本なしで(笑)。生嶋マキさんは企画から取材・執筆をされているということですね。よろしくお願いいたします。

生嶋マキ(以下、生嶋):よろしくお願いします。

安田:よろしくお願いします。

中村:ではさっそく、本題に入りたいんですけど。僕、この本を初めて見たとき、びっくりしたんですよね。みなさん、びっくりしました? ちょっと手を挙げていただいて。

(会場挙手)

あ、いらっしゃいますね。どういうびっくりかは、みなさんそれぞれあると思うんですけど。僕は物書きをしているので、まず「200人にインタビューしたのか!」とびっくりしたんですよね。こんな企画がなんで存在するのかと。

ライターだからわかるんです。ちゃんと取材した上で、誰に取材するとか、どういうこと書くか。実際に読んでみると、ちゃんと構成した上でやってるので、ものすごい労力だなと思ったんですよ。

「最初は料理本の予定だった(笑)」

この本がなぜ誕生したのか、1からお聞きできますか?

生嶋:私は雑誌のライターをやっておりまして。エンタメ誌で、食べ物の企画をちょっと考えておりまして(笑)。私の知り合いの知り合いにヤフーの社員の方がいて、そのころに、「BASE6」っていう、ヤフーの新しい食堂がオープンしていたんです。売上によって、社員が無料になったりという……。

中村:売上がいいときはタダになるんですか?

生嶋:そう。

中村:あ~。それはいい。

安田:業績連動型。

生嶋:そう。当時、ニュースになってたんですけど。それとは別に、並行して、「なんかないかなぁ。なんか食べ物の企画ないかなぁ」と考えてたら、「そうだ、頭脳食堂って企画で、ヤフーを取材できないか」と。私はまったく文系なので、ITとかそういう頭脳を使う人々の食べている物を知りたいと思ったんです。

最初、知り合いを通じて、ヤフーの広報さんに連絡して、取材にうかがって。

中村:食堂の企画から始まったですね。

生嶋:そうなんです。仮タイトルが『頭脳食堂』という(笑)。そこが最初なんです。まだそのころは、安田さん登場していないんですけど、ヤフーさんに話したら「じゃあぜひいらしてください」と言われて、何回か食堂にうかがわせていただいて。そうしたら、広報の方が「そんなにメニューないですよ」と(笑)。

中村:1冊にするほどはない、と(笑)。

生嶋:そうそう、「普通のメニューですよ」と言われたんです。

中村:カレーライスとか(笑)。

生嶋:カレーとかハンバーグとか(笑)。別に頭脳がどうのこうのとか、そういうことじゃなかった。

中村:ダイエット本などを出しているタニタさんとは、ちょっと話が違うぞ、と。

生嶋:そうなんですよ(笑)。

ヤフーの裏側にあるものとはなにか

中村:そこで頓挫してしまったわけですね。そこで安田さんの登場ですか?

生嶋:そこで、「じゃあどうしよう」と。せっかく3〜4回ほど足を運んだので、なにか企画をやりたいなと思っていました。「じゃあ書籍はどうでしょうか」と言ったら、その当時、ヤフーさんの本が2冊くらいあったのかな?

安田:(マイクなしで答える)そうですね。

中村:マイクを通してくださいよ(笑)。

安田:まだ僕のしゃべる番じゃないので(笑)。

生嶋:そして「じゃあビジネス本にしましょう」と飛躍した。ビジネス本といったら、実業之日本社さん。

中村:それまでは、ご面識はなかったんですか?

生嶋:あ、あります。

安田:ノープランでした。まず「どういうビジネス書にしようか」と、広報さんを交えてお話しをしていたんですね。そうしたら、ヤフーさんが20周年だと知ったんです。

中村:あ~、なるほど

安田:そこでそういった話が出たので、「じゃあなにか20周年の特別企画になるような」というところで、何案か出したんですね。実業之日本社は文芸もやってるので、作家さんの誰かにヤフーの日常でエッセイを書いてもらったり。あと、漫画もやってるので、漫画家さんにヤフーを絡めたような「ヤフーと私」じゃないですけど。そういう本はどうかと提案をしたんですよ。

ヤフージャパンさんの広報さんは、なにを言っても、「あ~いいですね」と言ってくださるので(笑)。

中村:大丈夫ですか、それは(笑)。

(会場笑)

安田:ただ、技術系の人たちのような、あまり外に出ない人たちにちょっとスポットを当てたいっていう話が、その打ち合わせの中であったんです。「じゃあ、そういう人たちの話を聞いたのをまとめますか」と言って、「じゃあ、何人くらい?」とうかがったら「20周年だから、200人」と。

中村:そんなざっくりとした決まり方なんですか(笑)。

生嶋:そこに至るまでに長かったんですよね。なにしよう、なにしようと。

中村:なるほど。打ち合わせを重ねて。

安田:そうですね。そして広報さんがにっこりしながら、「200人」。

中村:ライター的には笑顔が怖いですね(笑)。キリのいい数字ということですね。

安田:ただ、僕らもそういうところすごく興味あったんです。僕らがいつも使っているYahoo! JAPANのサイトの裏には、なにがあって、どういう人が働いて、どういう仕事をしているのか。本当に興味があったんですよ。

それだったら、そこで働いている人たちの話を聞くのが一番かなと思いまして。「じゃあやりましょう」となったんですが、そこからがまた大変でした。

1日7〜8人の取材を3ヶ月間続けた

中村:本を見るだけで、大変さが滲み出てるというか、伝わってくるというか。

安田:僕らも大変なんですけど、広報さんがすごく大変でして。

まず8,000人いるんですよ、ヤフージャパンさん

中村:8,000人も!?

安田:その中で、まず200人を選ばなくてはいけない。「こちらからは全部署を網羅したい」という希望を出したんですね。全部署、人事部とか総務部とかも含めて。

中村:エンジニアとかWebの総務と人事まで取材するって、すごくおもしろいですからね。

安田:そういった中で、「わかりました」「200人用意します」と広報さんも引き受けてくれて。それから取材に行ったんです。

中村取材するのに、1対1で行うわけじゃないですか。アポイントとって、取材して、文字起こしして、記事にして、構成して……とやっているわけですよね。

生嶋:はい(笑)。

中村:これ、200人×最低2時間かかりますよね?

安田:取材が?

中村:取材がというか、最低限の初校を作るのに、2時間はかかりますよね。もっとかかりますか?

安田:まず取材のシフトを組んでもらいました。1日7人くらいを、2グループに分けて行う。会議室を2つ用意してもらって、Aグループは生嶋さん、Bグループは私。

あまり人数はかけたくなかったんですね。書き手のほうの取材。それはなぜかと言うと、トーンが変わってしまうので。

中村:あ~、そうですね。

安田:実質3人で取材をして、Aグループで生嶋さん、Bグループは僕。1人30分の取材なんですけれども、誰か来て、お話を聞いて、15分休憩。そしてまた来てっていう。朝10時から17時くらいまでに、7〜8人の取材を行っていました。

中村:大変ですね、それ。

生嶋:なんかもう、ヤフーの社員みたいな感じ(笑)。毎日出社して。

中村:(笑)。それは何日続くんですか? 

生嶋:3ヶ月?

安田:毎日ではなかったんですけどね。

中村:期間としては3ヶ月?

安田:……くらいですかね。そうですね。

15分の休憩時間で、取材対象者の事前情報を詰め込む

中村:ちなみに、食堂は使えたんですか? そのとき。

生嶋:食堂は、1回だけ、食べに連れてっていただいたんですけど(笑)、広報さんに。

中村:基本的には、時間もなく、弁当食べてみたいな感じですかね。

生嶋:そう。

安田:ヤフージャパンさんは、すごく部署がいっぱいあるので。事前に、広報さんからアンケートを用意してもらって、自分の肩書きや、なにをやっているか、趣味とか。そういったアンケートを基に、次に取材する人を下調べして、取材するかたちで進めていたんです。15分しかない休みの間に頭に詰め込んで、取材して。

中村:そっか~。

生嶋:本来、インタビューでは前日よりもっと前に「その人がどういう人物か」を調べてからインタビューに臨むんですけど。

中村:もうぶっつけ本番の。

生嶋:1日7人を、毎日やらなきゃいけない。だから毎晩、一人ひとりじっくり調べたりできなかったんです。そこも大変だったよね。