今必要なことは多様な価値観

榊原健太郎氏(以下、榊原)では、お待たせしました、勝見さん。今、実際に学校をされていまして、たぶん夢がメインだと思うんですけど。どう思います?

勝見恭子氏(以下、勝見):そうですね。

榊原:苦労されていると思うんですけども。

勝見:まさに、今必要なことはなにかと言われたら、本当に多様な価値観。多くの人、さまざまな経験を持った人に、子供が出会うことのできる場所を作ることだと私は思っています。

昔はおじいちゃんとか、地域の方とか、先生とご家族の方以外から、いろんな話を聞ける環境があった。けれども、今は情報としてテレビ、インターネットからの情報は入ってくるけれども、価値観として生き様を伝えられるような、身近な人が本当に限られているんじゃないかなと思っています。

私自身が、小中の頃にいじめられていて、その頃本当に自分の中で世界をどんどん狭く狭くしていってしまって、なにも考えられないで、布団にうずくまっているようなときがあったんです。けど、何に救われたかというと、私自身が図書館で読んだ『はだしのゲン』です。

榊原:僕もそうです。唯一あった漫画が、『はだしのゲン』っていう(笑)。

勝見:原発とか戦争を知って、日本に昔、こんなに生きたかった人がいるんだなって思ったときに、自分の命の価値を問うことは、生きたかった人に申しわけないなって思うことができて、初めてそこで少し命の価値観を広げてもらいました。

また、私が小学校だった頃は、20年以上前なんですけど、その頃世界で紛争があって、今、まさに命に向き合っている子供たちがいるんだなって思ったときに、本当に今この瞬間を一生懸命生きなかったら申しわけないと、小学生ながらに思うことができました。

いじめをなくすって、すごく難しいなと思うんですけど、いろんな人がいるんだって思える心があれば、少しいじめの牙が、発する側も受け取る側もマイルドになると思います。

榊原:そうですね。僕も最近、イスラエルだったりルワンダ。とくに、ルワンダは23年前に大虐殺があって、今35歳以下が人口の75パーセントですよね。だって、虐殺があったときの15歳とか、そのへんが中心になっているかなと思っていて、虐殺っていうのは最強のいじめかなと。

殺しちゃったやつなんですけど、やっぱりそこの国だったりとか、イスラエルの虐殺がある。ルワンダも今、ワン・ルワンダっていうかたちで、かつてはフツ族とツチ族が虐殺しあったんですけども、エリアを分けることなく隔たりなく、一緒に住んでいて、1つのルアンダを目指そうと。

ああいった過去に戻りたくないから、いじめない。イスラエルもそうで、イスラエルの場合はちょっと、またパレスチナと戦争をやっちゃって、あれはエリアを分けてしまってるので、そういう問題もあると思うんです。けどイスラエルも、ものすごい陽気ですよね。

陽気だから「いじめって、何?」みたいな感じです。結局自分たちの国を守る兵役ですよね。ルワンダも兵役があるので、やっぱりそういった意識があると、「なんで自分たちで殺しあっちゃうの?」と思う。

「そもそもいろんな人たちが虐殺なんて、殺されちゃったのを、なんで自分たちで、またさらにいじめるの?」みたいな概念があると、いじめはなくなるかなって思います。ただ、日本は島国なので、なかなかその概念は難しいかなと。

田舎と都会のいじめの差

昔よく、勝見さんがおっしゃったように、田舎のおじちゃんが、いろいろアドバイスくれたりという話があったと思うんです。僕も岐阜に奥さんと子供が住んでいるんですけど、やっぱり町を歩いてると、みんなが挨拶してくれたりとか、普通に鍵なくて、ドア開いてるじゃないですか。

でも、田舎はけっこう、いじめがある気がするんですけど、そのへんどうですか? 田舎と都会のいじめの差。そのへん、齋藤さんありますかね? 田舎だったら少ないのか、東京だったら多いのか、どうですか? 

齋藤長行氏(以下、齋藤):それは、急に振られて、困っちゃったんですけど。

榊原:あまり関連性もないですかね?

齋藤:データに基づいて話すことはちょっと……。

榊原:そうですね。

齋藤:そのような資料はありませんので、話せません。ただ、私自身、田舎の山形県酒田市の出身でありまして、今おっしゃったように、いろんな人が関与して子供たちを育てるっていうところがあったことは感じてます。

榊原:西谷さんどうですか? このへんは。

西谷雅史氏(以下、西谷):そうですね。私のほうも、ちょっとデータというものはないんですけど。やっぱり違いがあるのは感じていて、発生原因はいろいろあると思うんです。田舎で見られるのは、地域が狭いからというのも原因になるのではないかと。

榊原:逆に。

西谷:はい。逆のパターンもあるかなと思っていて。事を荒立てたくないという、安定志向みたいなものがあったり、輪から外れるような行動を嫌う話であるとか、その地域にそぐわない、といった感じはあるのかなと。

とくに、私の地元は栃木なので田舎なんですけど、栃木で最近ニュースになった、ママ友いじめっていうのがありました。もともと子供がいじめられてるのを助けようとした母親が、逆に他の母親たちにいじめられることがあって。ちょっと事実は、わからないですけど。

報道しか見ていないんで、わからないですけど、そういうのもやっぱり地域性で、学校でいじめがあったっていうことを、外に出したくない。そういう「外から注目されたくないんだ」みたいな環境があって、そうなった。報道では、そうなっていたと思います。

そういう田舎特有の環境みたいなところも影響するのかなと思います。

日本と海外のいじめ問題の比較

榊原:今は、田舎と都会でいったんですけど、日本だけが特殊なんですか? このいじめって。このへんどうですか? 海外はあまりないのか? 海外の国では少ない。そのへんどうですかね?

齋藤:そこは私が。

榊原:お願いします。それは非常に助かります。

齋藤:みなさんにお聞きします。世界的にみて、通信環境が違いますから、主に先進国、G20とか、OECD加盟国とか、そういう国と比べて、日本っていじめが多いと思われる方? 平均よりも上だと?

(会場挙手)

ありがとうございます。(手を挙げられた方は)半分ぐらいだと思います。今日、22でしたっけ? 23ですよね?

榊原:そうですね。

齋藤:19日にOECDの生徒の健やかさ幸福度という調査が発表されて、そこでいじめの国際比較が報告されているのですが、日本は、平均以下でした。

榊原:え? 本当ですか?

齋藤:はい。以下でした。

榊原:へえ。

齋藤:他の国は、やっぱりもっと深刻なところがあります。今、データしかないですけど、そこからなにが言えるかっていうと、ここはあくまで私の憶測、見識ですけれども、日本が国際的にはそんなに悪くなく、良いほうなんです。72か国で調査をしている中のいい方から15番目ぐらい。

榊原:そうなんですね。

齋藤:なぜかといったら、いろんないじめの問題がでてきて、国として対処が進んできているんだと思います。いじめ防止法もありますし、対策はとってきている。なかなか世界的には、そこまで対策が取れてない国々も、まだまだあるということだと思われます。逆に言ったら、対策をとると、ある程度の効果がでてくるのではないかと。

今、学校現場で対策とっているのは、透明化だったり、風通しのよさだったり、いろんな価値観を認めるとか、そういう今まであまり及ばなかった教育をするようになってきている効果が、出てきているのではないか。それが私の意見です。

榊原:それ、うれしい。ポジティブに捉えたほうがいいですね。逆にいじめの環境が悪い国って例えばどのへんの国になるんですか? アジアとか?

齋藤:先ほど言っていた国ですね。

榊原:本当ですか? そっちのほうが悪い。アフリカとか?

齋藤:アフリカのほうは取ってないんですけど。もう1つ、出ましたね。

榊原:イスラエルですかね。どっちですか? 高いですか?

齋藤:高いですね。

榊原:本当ですか。いじめも違うんですかね。国別によっていじめ方とか、口頭じゃなくて、暴力とか。

齋藤:そうですね。暴力のいじめが多い国もあったり、陰湿な陰口が、とかいうことなんですけど。日本において、いじめが多いのは、やっぱり陰口。言語的ないじめが日本は割合が多いという結果データがありました。

榊原:あと逆に、韓国とか。先進国はどうなんですか?

齋藤:韓国は、OECD調査では、いじめの割合が他国に比べて低いという報告が出てるんですよ。え? っていう感じなんですけど。

いじめの実態把握ができていないことも

榊原:それは、やはり西谷さん、ちゃんとデータが取れてないってことですか。

西谷:そうですね。実態把握。

榊原:中学もそんなイメージがあるんですけど。

西谷:実態把握は基本的にアンケートが多いんですよ。

それって、結局思い込みとか、良く書いたりとかあるので、そのへんはテクノロジーをもっと活用して、本当に現場の使ったデータや、行動履歴、そういうものから、ある程度データ取れるようにする。そうすれば、「うちいじめないです、まったく」みたいな、そんな話は変わってくる。

榊原:先ほど韓国でいじめが少ないってイメージって言ったのは、中国とか韓国の方は、ガンガン言うからなんです。だから少ないのかなと思ったんですけど。でも、「いじめはない」って(笑)。

齋藤:OECD調査が正確だと私も言い切れません。ただ、OECDが発表したデータでは、そのような結果を発表している。付け加えると、アジア圏。

とくに日本も、韓国もそうだと思うんですけども、学校で調査すると、どちらかというと、いい方にアンケートを答えてしまうっていう国民性もありますので、欧米と比べて正確に出ているかは不明なんです。同じ質問した場合に、日本の方は、低く出ているということですね。

榊原:いじめって概念ごとあんまり日本にしかないかなと思ったんです。やっぱり海外もいじめという概念はあるんですね。

齋藤:あります。

榊原:いじめって英語で、何て言うんですか?

齋藤:「bullying」。

榊原:それは、ポピュラーな単語なんですか?

齋藤:そうですね。あとは、カナダなどでは、cyberbullyingがやっぱり深刻で。それを防ぐための州法ができてたり、かなり進んでやってます。カナダは、やっぱりいじめの度合いが高い結果が出てますね。

いろいろな大人に触れ合う環境を作ることが自己肯定感につながる

榊原:わかりました。了解です。また勝見さんに戻りますけど、今めだかの学校で、みなさんに夢を追ってもらおうと教えている。でも、なかなか難しいと思うんですよね。ただでさえ、大学生も夢がないとか、目標がないって方がいると思うんですけど。どうやって夢を持たせるというか。

勝見:そうですね。夢っていうと、日本の今の子供たちにとっては、とても重たいものというか、キラキラしたかっこいいものを言わなきゃいけないみたいなプレッシャーが、あるのかなと思うんです。けど、私たちがめだかの学校の現場で言っている夢は、本当に小さなことです。

例えば、現場レベルの毎日の学習支援では、子供たちが勉強してるところを、地域の人が見守るスタンスなのですが、その例で言うと、「今日の目標は、ここまで終わらす」のように、子供が自分で宣言して、それを応援するスタンスを、大人と一緒にやっていくことから始めますね。

また、大人も、自分自身がやりたいことを、その場でやるっていうことを、すごい大事にしていて、例えば囲碁が好きな方が、囲碁をスタッフ同士で始めたら、自然と子供がおもしろそうだから寄ってきますく。

紙飛行機を得意なおじいちゃんが、「こんなかたちでやるとすっごい飛べるよ」って教えることで、「この重心が……」など、子供たちが工夫を始めます。

本当に、日常、大人が好きなことをやっている姿を、たくさん見せることから、子供たちのやってみたいことを作る。それをすごく大事にしています。

なので、やっぱり夢を追う大人をもっとたくさん増やしていきたいなって私自身は思っています。そこがサムライの仕事ですごく大事にしてることなんです。

夢を応援する人を、もっともっと日本の地域でたくさん作る。その人たちと子供がふれ合える環境を作っていくことが、私たちは子供に夢を与えることに繋がると思っています。

そして、いろいろな大人に触れ合う環境を作ることが、自分も自分らしく生きていいっていう自己肯定感につながる感覚を作ることになるんじゃなかなと思っています。だから、私は本当に今のサムライインキュベートの仕事とNPOの仕事が、とてもリンクしていて、どちらとしても夢を追うことを応援してくことなので、日々の一歩一歩を積み重ねて、夢に挑戦する方を増やすことで、世界を平和にしていきたいなって思っています。

榊原:齋藤さん、今みたいな、めだかの学校でやっているような授業を、なんで普通の学校でできないんですか? それをやれば、みんなが夢を持てばいいと思うんですけど、それをなんでできないというか、やれないというか。そういう教える人がいないのか、どこが問題なんですかね?

齋藤:1つは、学校、生徒だと思うんです。

榊原:そういう授業があれば、いいんですけどね。そういう問題でもないですよね?

齋藤:学校自体、現場の先生自体は、それには気付いています。しかしながら、学習指導要領の範囲で、授業をやっていかなきゃいけないから、がんじがらめになってるところとの板挟みですね。

そのような自由な学校が裁量で決められる枠があるので、そこで人権の問題や、現在が取り扱っているところではあるんですけども、絶対数をもっと増やしていき、日々そういう教育にふれる機会があったほうがいいと思います。

保護者も含めた学びのエコシステムを

榊原:西谷さん、どうですか? そういうのどうやって学校で教えていけばいいですか?

西谷:そうですね。今、新しく取り組もうとしてるアクティブラーニングっていう授業、もしくは考え方があって、ほとんどの生徒に考えさせるものすけども、それも1つつながるものかなと私は思っています。

どこの国だか覚えていないんですが、イタリアか、オランダだと思うんですけど、学校に教師だけじゃなくて、地域の方々が授業教えにくるっていうのがあるんですよ。もっと外の人を入れるっていう、そういう機会を増やすべきだと思います。

先生もいろいろ大変なので、それこそネットトラブルの話とか、うちみたいな事業者が来ればいい。どんどん外の人を入れていくことによって、外部の刺激ができる。こういう仕事もあるんだとか。こういう人もいるんだとか。

そういう多様性を受け入れていくような環境が作れると、わりとやりやすいという気はするので、そういうことを活かすべきだなと思います。

榊原:確かに、そうですね。今、またスタートアップと同じで、スタートアップも要はメンターシップがあるじゃないですか。要は、投資してる人が親みたいなもので、それ以外の方、僕らも今1万5千人ぐらいのコミュニティがある。今、今日ここで作ってもらっていますけど、その人たちが、起業家さんみんなで助けていく。

今、確かに、起業家支援をしているエコシステムを、子供と同じように捉えてやればいいということですかね。それは、いいかもしれないですね。

確かに、先生だけにすべてを押し付けている気がするので、逆に先生も、僕らとやることによって、考え方も変わりますし、自分たちの重要性も教えてもらって、その仕事を誇りを持つことがが、大きいかもしれないですね。

というところで、どうぞ、齋藤さん。

齋藤:今、言いたかったのは、学びのエコシステム。そこに保護者も入ってこないといけないですね。

榊原:そうですね! 確かに、学びのエコシステムってないですよね。確かに。そういう概念を作っていったほうがいいかもしれないですね。僕も本当にあくまで外野でいる立場なので、今は本当に西谷さんにがんばっていただいている。確かに、そこですね。

西谷:その話で、前に齋藤さんの論文を読んだことがあります。ちょっとネット・リテラシーの話なんですが、学校での情報モラルの教育は、成果をあげていると。ただ、家庭での教育は、成果をあげていない。

数値的には、そういう数字が確かに出ていて、これは私の完全な個人の考えなんですけど、家庭での教育が効果が出ていないのは、保護者があまり詳しくないからってところがあるんじゃないかなと思っていて、しっかり学びのエコシステムの中に、保護者を入れていくことで、保護者も学ぶと。

そういう環境が作れれば、情報モラル、ネットだけでなく、将来の夢みたいなものとか、いろんな可能性にもっと効果があげられるようなエコシステムになるんじゃないかなと今思いました。

榊原:わかりました。そろそろ僕のほうで、ちょっと締めようと思います。本当に今必要なことは、まず大前提として、齋藤さんがおっしゃった脳科学の部分。どうしても子供は、いじめざるを得ないような本質というか、そういう人間の習性ですね。

そこをしっかり認識して、まずテクノロジーで解決しないと、この問題は解決しないということがまず1つです。教育だけでは難しいことが、1つ。あと、親としてまずやらなくちゃといけないこともある。子供との接触頻度と両方ですね。

あとは、夢を与えてあげるような選択肢をたくさん与えてあげること、自分の信頼できる知り合いを紹介すること、ちょっとかぶるかもしれないですけど、あとは、命の大切さを、海外の自衛など、日本ではなかなか体感できないと思います。

ただ今は北朝鮮の方々とか、大変だと思うです。そこから、また命の危険は、みなさん身に染みると思うんですけど、そういったことをしっかり教える。

最終的にまとめると、教育のエコシステム。どういうプレイヤーがいて、その中に自分がどう関わっていき、そのエコシステムをぐるぐる回していくかですね。

今日すごい増えてきたので、うれしいんですけど、やっぱりいじめの問題、教育の問題となると、みなさん外野になってしまい、なかなかそこの一員として入っていけないと思います。

スタートアップ支援もそうですけど、だれもエコシステムを作っていない中、今、大企業さんや、政府がいろんな支援をまわってきたと思います。

あとは、齋藤さんがおっしゃった、すごいポジティブな、日本はそんなに悪くないという情報もありますので、逆にそういった意味で、自分たちが教育のいじめをなくすエコシステムの中で、技術者なら技術でいいですし、自分が親元であれば、自分に対してまずやる。先生に投資する。

逆にこういったかたちのサポートをする、お互い敵ではなくて、みんなが仲間で、それをぐるぐる回していくことによって、いじめのない環境を作っていく。

本当に教育のエコシステムってすごいいい言葉だと思うんです。僕も今、勝見さん一緒にいるので、会社になって、一緒になって、こういったことを解決していきたいと思っております。

時間になってしまったので、詳しい話は、また奥のほうで名刺交換しますので、そこでお話しいただければと思っています。いい意味で楽しくお話させていただきました。お三方に拍手お願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)