コンピューターはデータをどう記録している?

マイケル・アランダ氏:コンピューターはさらに小型に、速く、いつでもさらに強力になってきています。これはさまざまな面においてすばらしいことですが、同時にこれにより問題も生じています。

ほとんどのコンピューターは何十年にも渡ってほとんど同じ方法でそのデータを保存してきましたが、その技術はいかに小さく速い速度で扱えるかという点において、基本的な物理的限界に直面してきているのです。

それゆえ、多くの研究者たちはその役割を果たせる新しいテクノロジーの開発に取り組んでいます。そしていつか、あなたが書いているかもしれないシャーロック・ホームズのファンフィクションを、極小のガラス製ディスクに何十億年も保管できるかもしれませんし、ホログラムとして保存できるかもしれません。あるいはDNAに刻み込むことすらできるようになるかもしれないのです。

もしかしたらみなさんは、コンピューターの中にあるファイルは、たくさんの1や0などのリストとなって保管されているというのをご存知かもしれません。しかしそれらの1や0が一体どのようにしてコンピューターの中に保管されているのかについてお話ししたことはありませんでした。

通常よくある説明では、1は「オン」0は「オフ」を意味するとされますが、それだけではコンピューターの電源を落とした状態でどのようにその跡を辿ることができるのかについては説明がつきません。

あなたがコンピューターをシャットダウンする時、画面には何も写っていませんが、あなたの音楽や資料はその中に保管されています。なぜならコンピューターは「オン」や「オフ」というパターンの中で永続的にデータを保管することはないからです。代わりに、「ビット」と呼ばれる1と0とは違った方法、例えばハードディスクドライブのなかに魔法のパターンのようになって保管されるのです。

コンピューターはハードディスクを正しい場所で回転させ、小さなヘッドでそのパターンを読み取ります。それはまるで昔のレコードプレーヤーのようですが、そのヘッドはずっと小さく、レコードに擦り付けるレコードプレーヤーとは異なり、ディスクの上を浮かんでいます。あなたはもしかしたらフロッピーディスクのことを覚えているかもしれませんが、あれはこの技術がポータブルになったものです。

私たちがハードドライブの中にデータを半永久的に保管できるようになってから何十年も経っています。初期の頃、音楽1曲のファイルを保管するのに、冷蔵庫の大きさほどのコンピューターが必要でした。現在のハードドライブは、平均1曲分のデータに含まれる、約3千万個のビットを保管するのに、たったの百万分の数百平方メートルほどしか必要ではありません。

しかしその技術は似通ったもので、より小さくなったにすぎません。ハードドライブは安定しているため、私たちはそれを使い続けています。磁気パターンとして保管されたデータは何年、長くても何十年しか保管することができません。しかしそれら保管されたビットはどんどん小さくなっていき、その周囲のビットを変えてしまう前にどれだけ小さくできるかどうかという点では限界があるのです。

ハードディスクを1分間に何千回も回転させるのにはたくさんのエネルギーが必要となります。それに素速く動くパーツは壊れたり擦り切れたりするかもしれません。

光ディスクであるCDやDVDもパターンによってデータを保管しますが、その場合は表面にある物理的な凸凹のパターンをコンピューターがレーザーを跳ね返すことによって読み取ります。しかしどれだけ多くの凹凸を詰め込むことができるかには限界があります。なぜなら、レーザーの種類それぞれが読むことのできる凹凸のサイズは異なり、小さい凹凸を読むことのできるレーザーは通常より高価になります。

トランジスタを用いたデータの保管

コンピューターはまた、トランジスタを用いてデータを保管することもできます。それは簡単にいうと1や0が実際「オン」や「オフ」の小さいスイッチとなっている状態です。例えばあなたがファイルを1つ開く場合、そのファイルがランダムにアクセスできるメモリー、RAMの中にコピーされます。RAMはトランジスタでできていて、「0」により電流をブロックしたり、「1」により電流を流したりします。

トランジスタは稼働するパーツがありませんので、異なるステータスにすぐに変更することができます。回転するディスクがありませんので、トランジスタにデータを書き込んだり読み込んだりするのはずっと速くなります。しかし半永久的にデータを保管するにはRAMは不適切です。なぜなら電力がなければトランジスタは「オフ」のポジションへとリセットされてしまうからです。

代わりに、データを半永久的に保管するには、SSDつまりソリッドステートドライブを用いることができるでしょう。これは、異なる種類のトランジスタで、継続的電力がなくてもデータを保管することができます。なぜならこれは荷電を溜めた状態でトランジスタのパーツにそのままの状態で保持することができるのです。荷電されたトランジスタは「0」を表し、そうでないトランジスタは「1」となります。そして電力がなくともその荷電はそのままの状態を保ちます。

SSDのもう1つの利点は、回転ディスクや他の壊れる可能性のある稼働パーツがないという点です。SSDは伝統的ハードドライブと比べてまだ一般的ではありませんが、過去数年の間にどんどん人気になって、容量も大きく、価格は安くなってきています。SSDはより速く、たくさん使われれば擦り切れたようになってしまいますが、それでも通常コンピューターを買い換えるより長く使うことができます。

過去数年間の間、SSDは未来だと言われてきましたが、いつの日か、時代遅れのフロッピーディスクのような存在になってしまうかもしれません。なぜなら科学者たちはデータの保管方法に関して全く異なるものを開発しているからです。

5次元データストレージ

2013年、イギリスのサウサンプトン大学のチームが「5次元データストレージ」と呼ぶものを開発しました。それは親指ほどのディスクで、そこにパターンが刻み込まれています。

まるでCDやDVDのように表面にデータが刻まれているのです。しかしCDの場合は、他の現代的データ保存技術同様、ほとんどの場合2次元に情報を保管します。DVDはそれより少しマシで、2つの異なるパターンを持っています。1つは上面に、もう1つはそれより少し下の層にあります。

しかしこの新しいディスクはもう1つ上のレベルをいきます。これには3つの異なる層に超高速のレーザーでパターンが刻み込まれ、それぞれの層には2つの異なるパターンが含まれます。ですからこれらのディスクを読み取るレーザーは5つの異なるパターンのうち1つずつに焦点を合わせなければなりません。

読み取る情報の5つ全てが異なります。ですからこれは「5次元」であると言えるのです。

これらすべての次元が使用可能なので、研究者たちはそのディスクそれぞれ360テラバイトのデータを保管できると見積もっています。それは約3千兆ビット。国会議事図書館すべてを14の小さなディスクに入れられるほどです。

それに、これらのディスクはガラス製で、私たちの手にできるものの中でも最も安定した物質です。もし私たちがラッキーでしたら、現在の半永久的ストレージデバイスに入っているデータが数年間、数十年間持てばいいという状態ですが、このガラスなら非常な高温も高圧にも耐えることができますし、さまざまな化学物質に囲まれても安定感は変わりません。このガラスのおかげで、これらのディスクに入っているデータを完全なまま何十億年も保管することが可能なのです。

ですから未来のコンピューターはこのような小さなガラスのディスクが内蔵されているかもしれません。そしてそれには巨大なストレージスペースがあります。そうなるとSFのようなことも可能になります。

ホログラムやDNAにデータを保管する未来

ホログラム保管について考えてみてください。「ホログラム」というのはホログラフィを用いたもの、つまりそれは光暗号をデータ化したもので、CDや5次元のガラス製ディスクのように読むことができます。

ホログラフィの映像を読むためには何かパターンのあるものをレーザーで照らさなければなりません。しかしそこにはいくつかの大きな違いがあります。まず、その層は1つや3つだけというわけではありません。何千もあるかもしれないのです。そしてそのレーザーは跳ね返る代わりに、クリスタルや他の材料を突き抜けることができます。それゆえ、何層でも次から次へと全体に焦点を合わせることができるのです。

さらにそれはCDやガラス製ディスク、ハードディスクやSSDとは異なり、一度に1つの凹凸やスクラッチを読み取る必要はありません。代わりにそのレーザーはクリスタルを貫通し、カメラのように一度にすべての層のパターンを記録できるものの上に映ります。

ですから、今日のコンピューターのように1ビットずつ読む代わりに、ホログラム保管搭載のコンピューターは一度に6万ビットも読むことができるのです。

私たちが使っているコンピューターは一度に1ビットずつ解析することにより動いています。つまり、コンピューターそのものが情報にアプローチできるように、私たちが手を加えなければなりません。ですからこれはまだまだ未来のことですが、ホログラム保管は実現可能なのです。

しかし、もしかしたらあなたは、半永久的保管場所は不変のガラス製ディスクやクリスタルの中に刻まれたものよりも、もっと個人的なものであってほしいと思われるかもしれません。それでしたらラッキーです。

あなたのDNAはヌクレオチドと呼ばれる化学混合物でできています。それは体にどの種類の分子を作るのか指令を出すものです。科学者たちはそれらヌクレオチドをアレンジして、コンピューターが読み取れるデータに暗号化できるように研究しています。

ヌクレオチドは、今日コンピューターがデータを保管するのに使っている最も小さい磁気ビットやトランジスタより小さいのです。ですから、ひも状のDNAの中にある各ヌクレオチドが情報の1ビットに相当するならば、DNAは世の中の何よりも効率的になります。もしそうなれば、世界中の情報が茶さじ1杯のDNAの中に収まってしまうのです。

しかもDNAは現在私たちが用いている他の多くの方法よりも安定しています。もちろん宇宙の年齢と張れるほど安定しているとは言えませんが、ハードドライブやSSDの寿命より何百年も長く持つことでしょう。

DNA保管は近年のたった20年ほどの間に出てきたものなので、その可能性にはまだ到達できていません。科学者たちはまだ、どのようにその極小のヌクレオチドを、ひも状のDNA全体に沿って正しい順番に並べ、その1つずつに1ビットの情報を持たせることができるかを模索しています。

現時点での最大記録は、約200メガバイト、つまり約16億ビット、音楽で言えば約6曲分のデータを短いDNAの上に保存したチームがいるというものです。それに特定のランダムな部分のDNAを読み取る方法は難しく、ファイルを開ける度にコンピューターがその働きをしなければなりません。

しかしもし研究者たちがその問題を解決できたなら、あなたが自分のDNAの中に音楽を持つということができるようになるかもしれないのです。または少なくともコンピューターのDNA上に保管できるかもしれません。