個人が情報発信する時代になり、消費者行動が変わった

MCあまり氏(以下、あまり):じゃあ続いてですね、上田さん。

上田怜史氏(以下、上田):はい。いわゆる我々がやってることは、大きく言うと広告業界になります。ここにはいろんな情報を伝えるための手法として、例えば有名なのはテレビCMとか雑誌といった手段がありますね。

でも、昔に比べて広告って聞かなくなってきたと言われています。これも背景には、昔と比べて今はみなさんも個人が情報発信する時代になっているので、情報が溢れているんです。

あと、日本はすごく特殊な環境で、いろんな製品、サービスが成熟しているんですよね。たぶんみなさん記憶にないというか知らないと思うんですけど、昔は携帯電話も16和音から32和音になった時の感動とか、1ミリも伝わらないと思いますけど(笑)。

山川咲氏(以下、山川):このラインしか伝わらない(笑)。

上田:あとね、男性だと髭剃りの刃が3枚刃から4枚刃になったのをテレビCMで伝えるんですよね。

テレビCMって、一番伝えたいメッセージを1つに絞って伝えなきゃいけないんです。買ってない人たちに。

だけど、受け取る我々には老若男女いろんな人がいて、いろんな職業の方もいるの。そうすると、やっぱりメッセージ1つじゃなくて、そのブランドに対する思い出だったり満足感だったり。「なんでそれを選んだのか」という理由は、人それぞれ違うんですね。

CMというマスの広告は、効率良くたくさんの人に届ける手法としてあるんですけど。みなさんも経験あるかもしれないんですけど、お友達が「これいいよ」と言ったものを買ったこと、行動が変わったこと。

こういう口コミを、企業として非常に重要視してきていて。これがないと「物の価値、ブランドの価値が伝わらないよね」と変わってきてます。

プロモーションがコミュニケーションに変わりつつある

我々がやっていることは、「たくさんの人たちに伝える」という規模は負けるかもしれない。でも、その質や人を動かす力はすごく強いものがある。

当然、今まで広告をやっていた方、それにお金を投資する方は、慣れた手法のほうで偉くなってきて実績を積んでいるので、我々がやっていることはなかなかわからないし、コントロールできないと言われます。

僕たちも実は4年前まではキャンペーンっていう短期型のコミュニケーションをやっていたんです。でも、自分たちで自己否定をして「これじゃいかん」ということで、今のアンバサダーというコンセプトに変えて4年経ちました。今ではゼロだったところから50社を超える企業から「やっぱり、こういったものも必要だよね」と言っていただいています。

まだまだ道半ばで、「常識を変えられた」とはぜんぜん思っていないんですけれど。意思を持ってやり続ければ、それを実現できると僕自身が成功体験として感じているところがあります。

そういったところで、常識を変えるよりも、なにか課題に感じてそれを実現しようとする。とくに「それ無理じゃないの?」と言われるとやりたくなるんですよね。これ、あまり良くないことなんですけど(笑)。「できるんじゃないか」「これ、大切なんじゃないか」は、ひと通りやってみる。今は、その道半ばといったところです。

もしかしたらみなさんも実体験として、いいものを誰かに勧めたら相手が採用してくれたことがあったり、その結果、自分もうれしくなったりすることがあったかもしれません。この価値を、僕たちは証明したいと思っています。

証明する方法として、昔は(なんの手段もなかったので)無理だったんですけれど、今はいろんなテクノロジーが発達しているので、誰がいつどこでどんなSNSで発言したかが見えるようになっています。

だから、ブランドからしても「その人に対してなにか特別な機会を提供しよう」「商品開発を一緒に参加してもらおう」といった機会を提供できるようになっています。今までとはかなり違うやり方で、企業にとってプロモーションというよりコミュニケーションに変わりつつある。それが今までとの差じゃないかなと。僕らはそういった地道なことをずっと続けて、いつかすごいところにたどり着きたいと思っています。

出版社じゃなくてもメディアを作れるようになっている

あまり:ありがとうございます。では宮川さんはどうですか?

宮川洋氏(以下、宮川):そうですね、我々は先ほども言いましたように、次世代の出版社みたいなことを当時コンセプトとして掲げまして。

みなさんご存知かもしれないんですけど、日本に出版社ってだいたい3,300社あるんですね。年間で約9万点くらい本を出しているんですけど。そのうち、みなさんがよく手にするコンビニの店頭とかにある雑誌を出せている出版社って、実は200社しかないんです。

これは雑誌講座と取次講座というものに分かれているんですけれど。私がそういった業界にいた時「なぜこれを出せないのかなー」と思っていたんです。まあこれ、歴史や商習慣の違いによるものなんですけれどね。

2000年頃に会社を立ち上げた時、出版社に紐付いている編集者……いわゆるこれからメディアを起こしたい人や雑誌を起こしたい人、情報発信したい人を開放できないかと考えました。

先ほど上田さんのお話にもありましたが、今、テクノロジーの力がどんどんましてきています。インターネットを中心としたテクノロジーがどんどん力を増してきている。そのため、出版社じゃなくてもメディアを作れるようになっています。

極端なことを言うと、雑誌講座や書籍講座といったものがなくても、一人ひとりがログミーの川原崎さんのように1人で……1人じゃないかもしれませんが(笑)。ほぼ1人で情報発信やエンティティ(法人)という個体を作ることができる。そういった常識に変わってきているところだなと感じています。

日本は、今でもそうですが、それまでは店頭に置いてもらって情報発信するというのは、3,000社強の人しかできなかったんです。

3,000社強で働いている人は約1,000人くらいいます。でも、そのくらいでおさまっているんです。今ご存知のようにテクノロジーの力によって、誰でも出版社状態になっている。我々からすると、そこが1つ。

ただ、誰でも出版社状態でも、2000年当時のインターネットではまだビジネスモデルが成り立たなかったので、結局はそういうことができる人も少なかったんです。

あまり:今、そのプラットフォームを生み出したということですね?

宮川:そうですね。いわゆる収益のプラットフォームを我々のところで作り、情報発信のプラットフォームとしてビジネスモデルが成り立つものを開発し、今横展開をしているところです。

全文書き起こしで報道を変える

あまり:はい。ありがとうございます。川原崎さんはどうですか?

川原崎晋裕氏(以下、川原崎):はい、いろいろあるんですけど、一番社会的インパクトがあってわかりやすいのが、報道マスコミの関係性というところです。

みなさん新聞を読んだことあると思うんですけど、正直言ってあまり違いがわからないことないですか? どの新聞に書いてあることも似ていますし。あれはなぜかというと、新聞社はもちろん独自の取材もやっているんですけど、基本的には通信社というところから情報を買ったりします。

あと、例えば誰かの謝罪会見みたいなところへ取材に行く場合。マスコミはみんな同じ場所へ来るんですよ。年収1,000万円くらいもらっているすごく高給な人たちがその記者会見へやってきて、みんなで同じ話を聞いて、そのまま書いちゃうわけですよね。それって、本当にあまり意味がないと思っているんです。

先ほど申し上げたように……うまく伝えられたらいいんですけど、偏向報道問題というものがありますよね。話したことの一部を切り取って、あたかも逆のことを言っているように見せたりする問題なんですけれど。要するに、各社違いがない上に、下手するとすごく悪い結果として伝わってしまうかもしれない事態には、価値があるどころかマイナスじゃないですか。

逆にログミーは、もう自分たちで恣意的な意見などを一切入れず、全文すーっと書き起こすんです。そうすると、本当はそこでなにが起こったのか、「朝日新聞さんはこういった見出しをつけているけれど、それはどういった文脈で語られた言葉なのか」が全部わかるようになっているんですよね。

となると、究極的には……まだ目指している途中ですが、ログミーであれば記者会見で記者が来なくていいんじゃないかと思っているんですよ。そうすると、記者の方々は人間にしかできないことをやり始めるわけですよね。例えば、記者会見後に関係者に取材して、そこでしか知り得ない情報を新たに聞き出したり、当事者に取材したり、その裏を洗ったり。書き起こしではできないようなことを……。

あまり:プラス反応が生まれていくということですよね?

川原崎:そうですね。

あまり:もっとなにかしなきゃいけない、という能動的な動きが出てくると。

川原崎:そうです。

あまり:そうすると個性が生まれてくる。

川原崎:それは本当にそう思いますね。もともとマスコミって、めちゃくちゃ優秀な人しか行けないというか(笑)。そもそも優秀な人が集まってる場所なんです。

本当はもっとすごいことできるはずなんです。でも、今やっていることはわりと僕らでもできちゃうようなことをやってしまっているところが一部ある。そこがもっと創造的なものに置き換えられればいいかなと思っています。

事業をやるには“旬”がある

あまり:なるほど。ありがとうございます。そうですね、なんでもそうですけど、結婚式も、今までこのかたちだったから、今回これからもこうでいこうみたいな、ちょっと楽してる部分とか。

今の出版のお話や編集のお話もそうだったと思うんですけども。逆にみなさんの業種じゃないところの常識もあると思うんです。そういったものは、これからどう変わっていくか、もしくはなにか気になっている、ここ変わりそうだな、みたいなところはありますか? 山川さんは?

山川:ちょっと、言っていることが意味わかんなかった。

あまり:あ、ごめんなさい。

山川:(笑)。もう1回いいですか?

あまり:はい(笑)。みなさん、ご自身の業種の話をすると、すごくやっぱ、すーっとなっちゃうので。できたら別の業種で気になってる、「これ変化が起きそうだな、これから」と思っているおもしろそうな、今つばつけてるような場所ってあります?

川原崎:あ、僕、質問してもいいですか? 山川さんに。

あまり:ああ、いいですよ。

川原崎:ウエディングの話を聞いた時に、葬式業界も似てるんじゃないかなってすごく思っていて。そのあたり、どうですか?

山川:私、人生で4つは事業やろうと思っているんです。結婚式、出産系、教育系、お葬式は、自分が経験したらやりたいなと思っています。

川原崎:ああ、ライフタイム系のなんか。

山川:そうそう。お葬式は、本当おっしゃるとおり、絶対そうじゃないですか。

川原崎:そうですね。ブラックボックス。有名な。

山川:しがらみも、めっちゃあると言いますし。ただ、お葬式は、今やるにはちょっと重すぎるというか。まだちょっと33歳のひよっこなんで(笑)。もうちょっと年齢を重ねて、自分の器が大きくなって、どしっとしたらやりたいなと思って(笑)。

川原崎:ああ、なるほど。まだ時じゃないってことですよね。わかりました(笑)。

山川:やっぱり事業をやるのって、旬があるなと思っているので。

川原崎:なるほど。

山川:結婚式したくらいの年齢から私、起業しているんですけど。

あまり:じゃあその立場になってみないと、本質的なことは?

山川:そう。経験して本当に「これ、だめじゃん」「これ本当いいね」がわかった時に、初めて事業ができると思うので。

決算発表を即日で書き起こし、IR業界をオープンにする新サービス

あまり:なるほどですね。ちょっとですね、ここで質問したいのですけれども。次はなんの常識を壊してみたいのかについてです。みなさん、気になっているとは思うんです。

例えば編集業界、結婚式の業界。もうガチガチだったところにメスを入れ始めたところかと思います。これから、もしかすると10年後にはそれが当たり前になっている。

今常識じゃなかったものが常識になるきっかけが今だと思うんですが、その流れで次に仕掛けていきたいことについてですね。まさしく(山川さんにとっては)出産や葬式であるかもしれないのですが、今ちなみになにか動き始めていることはありますか?

山川:じゃあ、あちらから。

あまり:そうですね。

山川:(笑)。

あまり:川原崎さん。一番近いので、ちょっと目を見ちゃいますね。

山川:元モデレーターが、ちょっとしゃしゃり出てみました(笑)。

あまり:ありがとうございます。

川原崎:次にやろうとしていることですか?

あまり:はい。気になっていること、これはやるぞと思っていること。

川原崎:自分の会社でですか?

山川:もしくは個人で、みたいな?(笑)。

川原崎:個人で?(笑)。

あまり:立ち上げたいもの。

川原崎:なんかいろいろありますけど。それでいうと今やろうとしていることは、ちょっと難しい話になるかもしれないんですけど。上場企業って、3,500社くらい世のなかにあるんですけど、そこが決算発表を毎年やっているわけですね。

それはなんのためかというと、自社の株を買ってもらっている株主に対して、「前年の業績はこうでした。良かった原因はこうです。悪かった原因はこうです。なので、来年はこんなふうにやっていきます」という発表をして、「だから株をまた買ってください」みたいな感じの情報開示の義務があるんですよね。

ただそれって、実は個人投資家と呼ばれる、例えば「僕が株を買う」みたいな感じの人と、機関投資家やアナリストと呼ばれる株のプロの人たちに対して、公開されている情報は必ずしも平等じゃなかったりするんですよ。

それは内容だけでなく、開示のタイミングもちょっとずれたりするんですよね。そうすると、そこに不平等が生まれる。当然、情報は持っている人が得なので、そういった機関投資家やアナリストの方がもしかしたら有利になっちゃうかもしれない。

そういったものを、決算発表の内容を全部書き起こして(笑)。即日公開することによって、個人投資家の方も機関投資家の方もみんな同時に、その情報をできるだけ知れるようにする。IR業界をもっとオープンにするようなサービスを、先月から立ち上げてやっています。

全員に公開されるべき情報の制限を取り払いたい

あまり:じゃあ、本当に今始まったばかりの?

川原崎:始まったばっかりです。

あまり:壁いっぱいありますか?

川原崎:壁、めっちゃありますよ。まず、取材に入れてもらえない。日経新聞さんなら入れるけど「ログミー? ダメです」と言われる。

あまり:それは昔からの付き合いであるとか、社会的な知名度が引っかかっているところですか?

川原崎:それもありますし、もっと明確に記者クラブと呼ばれるものが存在するので、そこに高いお金を払って加入するとかしないと、取材すらさせてもらえないんです。

本当は上場企業の情報って、全員に公開されなきゃだめなんですよね。一般的に言うと。ただ、実際にはそういう制限かかっちゃったりしているので、そういったものも含めて、ぐっと取り除いていけたらなと思っています。