2017年2月期 連結業績

三宅香氏:それでは、始めさせていただきます。

はじめに、当社を取り巻く経済環境ですが、国内景気が緩やかに持ち直しつつあるものの、家計における消費マインドの改善は限定されております。さらに、天候不順の影響なども重なったことから、実質的な消費支出は足踏みがみられました。

そのような環境のなか、当社は連結業績につきましては、増収増益を達成しております。

営業収益は過去最高となる8兆2,101億円、営業利益は4.4パーセント増益の1,847億円、経常利益は4.3パーセント増益の1,873億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は87パーセント増益の112億円と各段階の利益において、増益となっております。

2017年2月期 連結営業利益前期差(四半期推移)

次に、営業利益の前期差の四半期推移になります。第1四半期はダイエー店舗の移管に伴う影響もあり、減益となっておりますが、第2四半期以降は着実に増益を重ね、通期での増益達成となっております。

2017年2月期 事業セグメント別業績

次に、セグメント別の業績です。SM・DM事業は101億円の大幅増益となっております。地域密着経営を推進するマックスバリュ各社に加え、事業構造の転換に取り組むダイエーが50億円、イオンマーケットが20億円の損益改善を実現して、業績に大きく貢献をしております。

GMS事業はダイエーからの移管店舗の影響により、減益となりましたが、事業セグメントをまたぐ店舗移動があったGMSとSM・DS事業の合算は、32億円の増益となっております。

小型店事業におきましては、都市シフトの一役を担う、まいばすけっとが生鮮デリカの取り扱い強化により増収増益となっております。

ドラッグ・ファーマシー事業におきましては、ウェルシアホールディングスが店舗活性化や調剤併設の推進などにより、増収増益となりました。

総合金融・ディベロッパー事業も利益の大きな柱として、着実に増益を重ね、結果、6つの事業セグメントにおいて、増益となっております。

国際事業につきましては、マレーシアにおける消費の冷え込みや、香港での大型活性化投資が今期の損益に影響を与える結果となっておりますが、一方で、カンボジアやベトナムといった新規展開国では、黒字転換を果たし、中国本土のGMS各社におきましても、損益改善トレンドとなっております。

国際事業は第4四半期は損益改善に転じております。

イオンリテール 業績(営業収益、営業利益)

次に、イオンリテール改革、ダイエー改革についてご説明します。

まず、イオンリテールですが、営業収益につきましては100.4パーセントの増収、営業利益につきましては荒利益の改善と、過年度の店舗活性化効果などにより、73パーセントの増益となっております。

イオンリテール 営業利益前期さ(四半期推移)

こちらはイオンリテールの営業利益前期差の4半期推移になります。新規出店が集中した第1四半期は減益となっているものの、荒利益の改善と、経費コントロールの推進により、第2四半期以降は期を追うごとに損益が改善しております。

荒利益の改善につきましては、前年度から計画的に実施してきた、荒利益率の高い商品の構成を高める政策が功を奏し、通期で0.8ポイントの改善となっております。

一例を申し上げますと、食品売り場のデリカ部門を強化してきた結果、2014年度と2016年度を比較すると、食品全体に占める売上構成比が9.4パーセントから12.9パーセントへと拡大し、荒利益高の構成比も14.7パーセントから17.8パーセントまで拡大し、利益改善に大きく貢献をしております。

経費につきましても、販促費の効率的な運用などにより、既存店ベースで98.5という結果になっております。

イオンリテール 営業増益の内訳

次に、イオンリテールの増益の内訳となります。直近の新店・活性化店舗は、経費が先行するため、一時的な減益営業となっておりますが、前年度の店舗活性化は58億円の増益効果となりました。

また、先ほどご説明しました荒利益の改善と、経費の効率運用により、既存店が大きく増益しております。

事業成長のための新規出店は今後も継続してまいりますが、事業の大半を占める既存店の収益改善と、お客様の変化に対応した店舗活性化を推進し、さらに業績を改善させていきたいと考えております。

旧ダイエー移管店舗の売上状況

次に、ダイエーからイオングループへ移管された店舗の状況についてご説明します。

2015年9月に先行して移管した店舗は、移管から1年が経過した第3四半期以降の売上が前年を大きく上回って推移しております。

2016年3月に移管した店舗に関しても、移管から1年が経過した今年の3月、2017年3月には、売上前年比が103パーセントとなり、先行して移管した店舗と同様に、前年を上回る結果となっております。

ダイエー店舗移管の効果

ダイエーの店舗再編は、イオングループ内において、地域と業態を基軸に運営体制を再編成し、イオンもダイエーも業績を改善させ、トータルで大きく成長することを目的として、推進してまいりました。

この1年間を総括しますと、移管店舗を運営しているイオングループ各社の損益から移管店舗の損益を差し引いた営業利益が51億円の増益となっております。

現在のダイエーと、ダイエーから移管された店舗の合算から移管コストや、イオンスタイル化といった改装の一時的なコスト影響を除くと、通期で4億円の改善となっております。

結果、移管店舗を運営している既存のイオングループ各社と、もとのダイエーのトータルで55億円の改善ということがいえるかと思います。

イオン、ダイエーともに、来年は今まで継続してきた収益構造改革を推進し、さらなる連結業績への貢献度を高めていける、と確信をしております。

2018年2月期 連結業績見通し

続きまして、2018年2月期の見通しです。

今期は営業収益8兆3,000億円、営業利益は102億円の増加となる1,950億円、経常利益は26億円の増加となる1,900億円、そして、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、37億円増加となる150億円を見込んでおります。

2018年2月期 配当予想

また、配当につきましては、2017年2月期から据え置きの計画となっております。決算に関するご説明は以上の通りです。引き続き、グループ中期経営計画のご説明申し上げます。

2017年度~2019年度 中期経営計画の主要計画

今、世の中の消費環境は大きく変わりつつあります。お客様の価値観や、ライフスタイルの多様化、社会のデジタル化も急速に進んでいます。

このようななか、競争ステージもいかに柔軟にこの変化に対応できるかという視点が大変重要になってきております。

イオングループは現在、収益8兆円超と国内全産業でも第9位、小売業としてはナンバーワンの規模にまで成長してまいりました。

しかし、これはあくまでもグループ総和の数字であり、今後もグループとして持続的な成長を続けるためには、確実にそれぞれの事業がそれぞれの地域において、ナンバーワンにならなければなりません。

本中期経営計画はそのための3ヶ年としたいと考えます。

今期の主要改革の軸は2つです。

1つ目。「既存事業の収益構造改革の完遂」。これは、イオンリテール、ダイエーに代表されるGMS事業およびSM事業の収益構造改革の完遂です。

そして、2つ目の柱は「新たな成長に向けたグループ構造改革」です。これは、新たな成長分野の特定と、2019年度以降の成長を見据えた改革であり、そのために必要となるグループ基盤の刷新も重要な取り組み項目であると考えております。

中期経営計画のロードマップ

こちらがロードマップとなります。

先ほども申し上げましたとおり、リテールとダイエーの収益構造改革の完遂が最優先課題となります。こちらの内容に関しましては後ほどご説明します。

一方で、グループの新たな成長に向けた構造改革については、IT物流基盤の刷新および成長市場への事業の再定義、新規事業の確立に向けた準備を段階的に進めてまいります。

既存事業の収益構造改革の完遂

2013年8月にダイエーをイオンの連結子会社としてから、両者のシナジーを創出するため、重複する専門事業の再編や、統合。双方が有する共通インフラの相互活用を実施してまいりました。

一例ではありますが、それぞれの強みを生かして、生産性をあげることができているのが、例えば、アルティフーズとイオンフードサプライの取り組みがあります。

イオンフードサプライは日本一の畜産インフラを有しております。また、アルティフーズは生鮮魚処理技術に大変長けた企業でございます。すでに一部のリテールおよびダイエー店舗では、この2社のセンターのそれぞれの強みを生かした商品供給が開始されており、両者の売上および利益率の改善に大きく貢献しております。

商品調達やサプライチェーンマネジメントの効率化は、イオンリテール・ダイエー両者の荒利益率の改善に一定の成果をもたらしています。

ダイエーでは、会員カードをイオンカードやWAONポイントに集約することで、イオンクレジットカード会員、WAONカード会員が215万人増加しました。

イオンリテール・ダイエーの収益構造改革

先ほどのパーツ、決算のところでもご説明しましたが、イオンリテール・ダイエーともに収益構造の改革を進めております。一部、ダイエーから移管した店舗は少し時間がかかったものの、1年経過とともに利益改善への手ごたえを感じることができています。

ダイエー社においては、2016年度、50億円の利益改善を実現し、今年は黒字化ができる見込みでもあります。再度新規出店を開始していく段階にきております。

両社とも、売上高の拡大に向け、中期3ヶ年においては活性化投資の配分を増やしています。両社の収益構造改革は基本的になにか新しいことをするのではなく、地道に、一つ一つに施策を実行し、着実にやり遂げることだと考えています。

荒利益率の改善について、先ほども商品構成の変革でデリカ部門の一例を挙げましたが、これらの取り組みとともに、昨年来からダイエーとともに取り組む、SCM物流体制の改革効果による荒利益率の改善は継続できるものと考えております。

また、イオンリテールでは、本格的なSPA型開発を実現した大型ユニットのホームコーディを本年度より本格的に展開し、トータルコーディネートによる買い上げ点数を増加させ、売上と荒利益の拡大を目指します。

また、リテールでは、本社から地域カンパニーへリーシング担当者を再配置し、地域におけるテナントリーシング力の強化を図っています。

その地域で求められているテナントミックスを確実に実現していく体制が、昨年実施した機構改革の一つの柱でもあり、今後、その効果が享受できると考えています。

もちろん、2016年度第4四半期に実現できたコスト構造の形を維持し、販促費や本社カンパニースタッフのスリム化や、時間外給与の削減など、人件費のコントロールを徹底的に継続して行うことで、両者とも安定的に利益を創出できる構造となってまいります。

グループ事業構造の改革①

収益構造改革の完遂と並行して、新たな成長に向けたグループ構造改革にも着手してまいります。

グループ構造改革により、この3ヶ年において、世界水準の規模と収益性を有する真のグローバルリテーラーへと進化するための基盤固めを行ってまいります。

グループ構造改革の主要取り組みはグループ事業構造の改革と、事業基盤の刷新です。

冒頭お話しました通り、イオングループは小売業としてナンバーワンの規模になりましたが、グループとして持続的な成長を続けるためにも、今後はそれぞれの地域、事業において、確実にナンバーワンの企業の集合体に変えていかなければなりません。

消費形態の変化、業界構造の変化が加速度的に進む中、これらへの大変化への対応が求められており、中期3ヶ年で既存事業の再定義、事業分野の見直しを行い、グループ企業の統合、分割といった再編を進めることで、グループ事業構造改革を大きく変革してまいります。

それぞれの分野別にみていくと、食品分野においては、地域を軸にグループの総力を合わせた体制を構築し、規模の優位性と地域密着を両立させてまいります。

スーパーマーケット事業はエリアごとにグループ企業の統合、分割といった再編を進めることで、生産性・成長性を高めていきます。

また、衣料品、住居余暇、ヘルスビューティーケアといった商品分野では、より一層の専門性を目指します。

イオンリテールを中心とするGMSは、従来の総合小売業から専門性を掛け合わせることで、食品・医療・住居余暇など、それぞれの分野でナンバーワンの事業体が集まった、強い総合小売へと進化を遂げてまいります。

グループ収益の柱へと成長したディベロッパー、総合金融、ドラッグ・ファーマシーについては、業績が好調な今のうちに、グローバル強豪の水準を見据えるとともに、小売を中心とするイオングループならではの次世代モデルへと革新・進化を図り、もう一段高い水準の収益性を目指します。

また、家計におけるサービス支出の拡大を捉え、エンターテイメント・ウエルネス・ヘルスケアをはじめとするサービス分野における取り組みの強化も図ってまいります。

加えて、消費者の節約志向・メリハリ消費といった消費行動をふまえ、ディスカウント分野をグループの柱の1つとして確立すべく、今後、取り組みを強化していきます。

さらに、赤字企業群については、ホールディングスによる重点管理、再建支援などにより、戦略的な整理統廃合を進めてまいります。

現在、他社との差別化およびコストの競争力の源泉として、物流・ITは企業競争力の根幹を成しており、各社ともにこれらの基盤構築にしのぎを削っています。

当社においても、2020年以降の環境変化をふまえ、将来にわたりグループの持続的な成長と収益性の向上を実現していくために、これらの事業基盤の刷新が急務であると認識をしております。

お客様視点で考えたITはどうなるのか、店舗でどのようにITを駆使すれば生産性があがるのか、といった「お客様・店舗・商品・後方業務・デジタル・物流」という6つの視点をテーマに据えたプロジェクトチームを発足させ、IT改革に取り組み、3ヶ年でグループ成長を支えるIT基板に刷新してまいります。

例えば、2017年度上期より、AIを活用した補充・発注システムを導入してまいります。

過去の販売実績だけではなく、天候や社会行事を加味して、AIが自動的に発注数量を反映させる、精度の高いシステムになっており、この仕組みをSMや小型店中心に導入してまいります。

これにより、売り逃し額の減少による荒利増加、在庫の適正化を通じた店だし・補充・発注などの店舗作業の軽減を図り、コスト削減の実現が可能だと考えております。

サプライチェーンマネージメント・物流につきましては、現在グループには、イオングローバルSCMや、イオンフードサプライを始め、110数ヶ所のセンターが稼働しており、他社にはない有力な資産を保有しておりますが、この資産にテクノロジーを組み合わせることで、次世代型の基盤へと進化させてまいります。

調達・在庫、センター・物流網再編、センター・店舗オペレーション、PC・カミサリーという4つをテーマにプロジェクトチームを発足させ、中期経営視点で生産・物流から店舗・オペレーションに至るまで、サプライチェーン全体の改革を進めていく計画です。

事業基盤の刷新

事業基盤の刷新にあたって、これまでのやり方、考え方から完全に脱却し、外部リソースの活用も含め、技術革新・デジタル化に適合する人材を積極的に活用してまいります。

全体最適を追求しすぎるがあまり、取り組みが十分ではなかった過去の経験をふまえ、本中経においては、それぞれの事業で事業特性を踏まえた上で事業最適な物流・IT基盤を構築します。

その上で、共通部分については、グループ最適な基盤を構築することで、スピード感を維持しながらも、グループシナジーも追求していける推進体制としていきたいと考えております。

最後に、繰り返しとなりますが、中経初年度である2017年度におきましては、現在のグループの最大かつ喫緊の課題であります、既存事業の収益構造改革を完遂させることに最大限注力し、必ずこれを達成いたします。

新たな成長戦略については、2017年度をその準備期間と位置づけ、本日お話しさせていただいたようなことを中心にグループ構造改革の検討および着手を進めてまいりますが、重点的に改革に着手できるのは2018年度以降と考えております。

この17年から19年度の中経期間において、まずは足腰を鍛え、その上で、次世代を見据えた基盤を固め、新たな成長への種まきを確実に実施し、2020年度以降のグループの大いなる飛躍へとつなげてまいりたいと考えております。

以上となります。ご清聴ありがとうございました。