刀鍛冶の「はい、クソ」

西野亮廣氏(以下、西野):俺、先週だったか先々週だったか、『情熱大陸』見て、刀鍛冶の方が取り上げられてて。江戸ッ子の、もう超刀鍛冶の。

小谷真理氏(以下、小谷):かっこいいですよ。「てやんでえ」の。

西野:てやんでえの人で、弟子20人ぐらいいるんですよ。弟子の方が、自分が叩いた刀を師匠のところに持ってくるんですけど、師匠は「はい、クソ」「はい、クソ」って(笑)。

(一同笑)

小谷:気持ちええなあ(笑)。

西野:気持ちいいんですよ(笑)。弟子もそれに慣れてるから、「クソでした。すいません」っていう。そう仕上がっちゃうといいですね。

小谷:なるほどね。

のぶみ氏(以下、のぶみ):クソって。

西野:「クソ」「話にならない」「はいダメ」。

のぶみ:すげえな。

小谷:でも、いいっすね。

西野:いいんですよ。そういう仕上がりしちゃうと楽ですよね。師匠も言いたいこと全部言えるから。

小谷:だっていいものはちゃんと褒めますもんね。

西野:いいものは褒めるんですよ。でも、だいたい「クソだな」って。「はい、クソ。はい、クソ」。

のぶみ:すごいよなあ。

小谷:気持ちええな。その人。

のぶみ:宮﨑駿さんとかも言うもんね。

西野:そうですね。「はい、クソ。はい、クソ」。そんで弟子が最後に「ありがとうございました!」って言うんです。

のぶみ:なにがありがとうだよ(笑)。

西野:俺ら楽しそうに喜んで一緒に食べてるんですけど。むっちゃいいですよね。ぜんぜん言いづらいです。なんか。

のぶみ:いいときは、逆になんて言うんだろうね。

西野:なんなんでしょうね。

のぶみ:「クソじゃない」って言うのかな。

西野:でも、よかったですよ。師匠と弟子の。「お前、本当クソだな」みたいに言いながら、一緒にご飯食べて。

のぶみ:そうですよね。

西野:「あれダメだよ。お前。クソだからよ」ってボロッカス言うんですけど、「すいません」とかって弟子もなんかニヤニヤしながら。

小谷:愛情を感じますね。

西野:なんかあれいいですよね。ああいうふうに仕上がっちゃうと。

のぶみ:やったほうがいいんだろうな。もう。

小谷:のぶみさんもちょっとは言ってみても。

のぶみ:そうだろうね。だから、ファンの時だけは言ったんだけどね。難しいよな。

「やめとけ」と止めてあげたほうがいいことも

西野:ファンの方にも言います。「それダメだ」とか。僕けっこう展示とかも、求められたらうるさく言います。「西野さん、これどうですか? やろうと思うんですけど」って言ったら、だいたい「ダサいからダメ」って。

のぶみ:(笑)。

西野:「ダサいからダメ」って。けっこう言いますね。

小谷:江戸ッ子や。

のぶみ:でも、どうすればいいかということは言うわけでしょ?

西野:まあでも、ある程度は……よっぽどのときは、もう「やめとけ」って言いますけど、ある程度は、「これ失敗するな」と思っても、その次こっちでカバーできるぐらいの失敗であれば、もうやっちゃうみたいな。失敗しないとわからないから。

のぶみ:なるほどね。

西野:カバーできない失敗あるじゃないですか。僕はよく独演会の開催権利もお渡ししてたりするんですけど、すぐにお客さんとか1,000人規模のところでやろうとするんですけど、やっぱり1,000人って集めるのむずいから。

のぶみ:いや、大変だよ。

西野:空席ができたときに誰がつらい思いをするかって言ったら、それはお客さんが申し訳ない気持ちになるじゃないですか。空席だらけだったら。もう「えー」とかみたいな。

のぶみ:お金もかかるしね。

西野:そのときのフォローは僕はできないので、「お前はまだやめとけ」というのは言うようにしていますね。

のぶみ:今だったら何人ぐらい来るんですか?

西野:でも、鳥取1,000人ぐらいだったよね。

小谷:来ました。米子は1,000人。

のぶみ:ああ、それでもそうなのか。場所によるっていうのもあるんだ。

小谷:でも、その方もけっこう経験値がね。

西野:そう、確かに。何度かやって。初めての主婦とかがいきなり1,000人規模で。まず1,000人呼べるルートはないだろうしとか。あと、大阪の時は「やめとけ」って言いましたね。

小谷:ありましたね。

西野:大阪の時は、たしか主婦の方が、独演会トークだけじゃなくて、たぶんあの時は会場をすげえオシャレなところでやりたいということで、「こういうギャラリーを押さえたい」みたいなことを何度も言ってたんですけど。「えんとつ町のプペル展をオシャレなところでやりたい」って大阪の主婦の方が言ったんです。

でも、まずえんとつ町のプペル展は、絵自体が光るから、どれだけ内装をオシャレにしようが、絵を光らせる。これを立たせるためには電気を消さなきゃいけない。「電気消さなきゃいけないから、高いお金払っていい会場でやるメリットがあんまりないんだ」って。

のぶみ:オシャレさが見えなくなるということですね。

西野:それで、「やめとけ」って言ったんですけども、結局その主婦の方が「いや、やる」って言ってやって。たぶんクラウドファンディングでやったのかな。

小谷:そうですね。お金集めようとして。

西野:失敗したんだっけ? どうだっけ?

小谷:集まってなかったのかな。たしか。

西野:集まってなかったんだっけ?

小谷:それか、途中で変えたかもしれない。

西野:変えたんだっけ。会場を。

のぶみ:変えた?

小谷:どっちにしても、その会場やと集まらへんって見込みが出たので。

のぶみ:そうなんだ。へえ。

西野:みんなもわかるじゃないですか。みんなもバカじゃないから、「えんとつ町のプペル展をそこでやるメリットってないんだよ」ってみんなも思うじゃないですか。だからそうなったときにやっぱり資金が集まらないんですよ。

のぶみ:支持がないから。

西野:それでその主婦の方がずっと悩んでて。「いや、もうこれは、1回みんなに謝って、集まったお金を、申し訳ないけどキャンセル代に回して、別会場でやったほうがいい」って言って、結局、別会場になったんですけど。あれももうちょっと強く止めてあげたら、その無駄な……、たぶん10万とか20万とかキャンセル料出してる。

のぶみ:ああ、そうなんだ。10万か20万かかるんだ。

西野:そんなことは最初からわかってるんです。これがうまくいくはずがないっていうのは最初からわかってたから、その主婦の方に「やめとけ」って言ったんですけど、そんな強く……それでも無視してやるっていう方だと思わなかったので。でもやっちゃって、結局無理だったので、「あれ、もうちょっと強く止めてたらなあ」というのはありますね。

小谷:なるほど。

謝って引くのも経験値

のぶみ:へえ。それが今ちょっと論争になってますが、(コメントを見ながら)それがあれに書いてある場所なんですか?

西野:なんですか?

小谷:あ、コメントで?

のぶみ:コメントでけっこう書かれてますけど、それがそこだったんですか?

西野:どこですか?

小谷:どこだろう?

のぶみ:これ、言っていいのかよくわからないですけど。

西野:いいですよ。

のぶみ:名古屋の。

西野:あ、名古屋?

小谷:名古屋……。

西野:あ、大阪です。今のは大阪。

小谷:大阪、大阪。

のぶみ:じゃあ、そこじゃなかったのか。

西野:名古屋はどうやったっけな。

小谷:名古屋はあれじゃないですか。

西野:ビルでやったやつ。

小谷:そうそうビルでやったところ。

西野:ビルでやった。

のぶみ:大阪はそれでどうだったんですか?

西野:いや、6月にまた別の場所でやることになったんですよ。もともとはむちゃむちゃ高い小屋で。それこそ100万円ぐらいするとか、そんなところでやる必要ないんですよ。しかも、あんまり大阪の土地勘のない方で。しかも押さえようとした小屋が、たしか南港のほうだったやん?

小谷:そうですよね。

西野:そう。大阪人だったらわかるんですけど、南港って行かないんですよ。

小谷:行かへん。

西野:通り道じゃないんですよ。だいぶ外れたほうなんですね。だから「駅から近いですよ」って売り文句出されても、そもそも南港って行かないんですよ。梅田とかミナミとか、あっちじゃないんですよ。だいぶ外れた。東京でいうと、どこになるんだろうな。

小谷:南港ってどこなんやろう?

西野:だいぶ外れたほうです。

小谷:けっこう外れてますよ。だから、そこをふだんは行かへんところですよね。。

西野:そうそう。大田区のなんか、行かないじゃないですか。

小谷:とか、そういうとこですね。

のぶみ:戸越銀座。

西野:とか、なんならもうちょっと遠くですね。南港ってもうちょっと……、なんならもう、東京でいうと千葉ぐらいの感じです。

のぶみ:そうなんだ。ぜんぜん行かないね。

西野:ぜんぜん行かないじゃないですか。それで「千葉のなんとか駅の駅前ですから」みたいに言われても、そもそもその駅まで行くことが基本的にないから。

小谷:確かにね。その駅前行かへんもんな。

西野:八王子とか、そっちのほうかもしれない。

小谷:あ、そうそう。そっち系かな。

西野:八王子ってやっぱちょっと行かないじゃないですか。東京でも。

のぶみ:ちょっと行かないな。かなり離れてるもんね。

西野:「八王子駅前なんですよ」って言われても行かないじゃないですか。売りにならないんですよ。

のぶみ:遠いし。

西野:だから、やめたほうがいいって言ったんですけど、けっこう我の強い方で。

小谷:言った手前ね。

西野:言った手前、引けないみたいな。でも、「謝って引いたほうがいい」って、まあ結局引いて。それでまあ。

小谷:それも経験値ですよね。

西野:経験値ですね。確かに。

小谷:結果、次からこうしようと。

西野:むずいっすよね。でもね。

センスのいい人は余計なことをしない

のぶみ:むずい。わかんない。メールを打ってるときは頭のすごい低い人だったけど、行ったらすごいセレブ感の人だったから。

小谷:会ったら違かった。

のぶみ:会ったらけっこう上からだったから、「あれ、メールやりとりした人と違うのかな?」と思ったんだけど、やっぱりこの人で。「ああ、そうか。これ難しいな」と思ったんだよな。でも、言ったほうがやさしいかもしれないですね。その話を聞くと。

西野:そうですね。あとむずいのは、主催者さんはやっぱりそのイベントだとかそういうものに対して情があるから、愛情もすごいあるから、思いもけっこう強いから、それこそババア花みたいないっぱい貼って、あとババアチェーンと。

小谷:ババアチェーン(笑)。

のぶみ:ババア花は言いたいよな(笑)。

西野:ババア花とババアチェーンの地獄コンボとか、ときどきやるじゃないですか。

のぶみ:地獄コンボ(笑)。

西野:地獄コンボ。ババアチェーンとババア花の地獄コンボ。

のぶみ:必殺技だよ(笑)。

西野:それも主催者さんとかそのスタッフさんとかはどんどんテンション上がっていくと思うんですよ。しかもそれをきれいになってきたと思うと思うんですけど。

お客さんからすると、いいようにとったらですよ、なんかアットホームな手作り感あふれるみたいな。むちゃくちゃいいようにとったらそうですけど、基本的にはお客さんは主催者の顔なんて知らないし、人となり、その物語を知らないから、手作りのものっていうのはね、基本的にはやっぱり安っぽく見えちゃうんですよね。貧乏くさく見えちゃうんですよ。

小谷:安っぽく見えなかったらいいんですけどね。

西野:そうそう。

のぶみ:でも、そのとき主役なんだろうな。その主催者の人ね。

小谷:主人公ですからね。

のぶみ:そのときのトップだと思ってんだろうな。俺だって来週、それこそ名古屋でちょっとやるんですよ。その時に「あれ?」と思ったんだけど、のぶみ講演会なんですけど、主催者さんの横顔でなってて(笑)。

小谷:すご。

西野:ああ、主役なんだろうな。

のぶみ:しかもすごいきれいに撮ってるやつなんですよ。カメラマンが撮ったんだろうなって。こういうふうに、風とか送って。「え、俺は?」と(笑)。「俺どういう立ち位置なんだろう?」って。そういうのもあるからなあ。

西野:むずいっすよね。

のぶみ:だからやっぱり本当にけっこう花なんだろうね。「トップなんだ」「今、主役なんだ」ってちょっと思ってるんだろうな。

西野:イベントって本当そうで。まず、お金は限られているわけじゃないですか。使えるお金と使える時間も限られているわけですよね。やっぱりセンスのいい人って、まず余計なことしないですよね。

もうここは、パって建物を見たとき、「この建物は素材そのままでいこう」だとか、「このイベントはここが弱いから、お金と労力はここに集中させよう」とか、ポイントポイントでやっぱり決めますよね。下手な人っていうのは、まんべんなく全部をやろうとして全部貧乏くさくなるみたいな。

小谷:物産展っぽくね。

西野:物産展っぽくなっちゃう。

のぶみ:俺、だけど、今の話聞いてて、明日それこそ(テレビ番組の)収録じゃないですか。そのときに台本に忠実やろうって今、思いましたね。

(一同笑)

西野:プロに任す。

のぶみ:余計なことはしないでおこうと思いましたね。今ね。自分の耳にすごく入ってきましたね。