2017年3月期 決算説明会

木下盛好氏(以下、木下):木下でございます。日頃は当社の温かいご支援とご理解をたまわり、誠にありがとうございます。また本日はご多忙の中、当社の決算説明会にご臨席をたまわり、厚くお礼申し上げます。

経営環境

それでは資料の3ページをお願いいたします。当連結会計年度における我が国経済は、政府による経済政策などの効果により、企業収益や雇用・所得環境に改善が見られ、個人消費においても持ち直しの動きが続いております。

今後も景気の回復が期待されるものの、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響など、我が国の景気を下押しする可能性が引き続き存在しております。

当社が事業進出しておりますタイ王国では、中国経済の減速、先進国の景気回復の遅れなどによる影響を受けたものの、最近では政府による公共投資や観光分野の回復により、GDP成長率が緩やかに成長し始めております。

インドネシア共和国では、中国を始めとする世界的な景気減速により、GDP成長率は長らく低迷していたものの、個人消費の堅調な伸びに支えられた結果、2016年度の実質GDP成長率は前期比+5.0パーセントと高い水準を維持しており、経済は回復基調にあります。

下段左側の、国内の市場・競争環境においては、バンク業態、ノンバンク業態の垣根を越えた競争環境に変化している中、個人向けカードローン市場は引き続き拡大しております。

このような競争環境の中、バンク業態においては、全銀協(全国銀行協会)がカードローン審査の厳格化に向けた申し合わせを公表しました。

一方、ノンバンク業態においては、利息返還請求は引き続き減少基調で推移しているものの、想定以上の請求により厳しい環境が続いております。

下段右側につきまして、当社が事業進出しているタイ王国では、家計債務問題により、引き続き融資に慎重姿勢が見られるものの、パーソナルローン市場は年3~4パーセント程度の安定成長を実現しております。また、インドネシア共和国では、国内経済の先行き不透明感が依然として強い中、銀行の不良債権増加に伴う債権の悪化が懸念されております。

個人向けカードローン市場の規模推移

4ページをご覧ください。続きまして、国内の個人向けカードローン市場の規模推移についてご説明いたします。

左のグラフには個人向けカードローン市場の規模推移を記載しておりますが、バンク業態主導による規模拡大により2015年3月期に反転し、昨年12月の速報値では前年同期比5.3パーセント増加の10兆1,700億円と、順調に拡大しております。

規模推移を業態別に見ますと、ノンバンク業態は利息返還請求問題と業法改正の影響を大きく受け縮小する中、バンク業態は2012年3月期の反転以降、持続的な成長を続けております。

右上のバンク業態の推移は、昨年12月の速報値では9.3パーセント増加の6兆200億円と、引き続き成長を続けております。

右下のノンバンク業態の推移は、長年にわたり縮小基調で推移しておりましたが、昨年12月の速報値では4兆1,400億円と、底打ち感がより鮮明となってきました。

ノンバンク業態のうち消費者金融業態の推移は2015年3月に反転後、昨年12月の速報値でも2兆3,600億円と、着実に拡大を続けております。以上のことから、今後の個人向けカードローン市場は、安定的な成長段階を迎えるものと考えております。

決算概要

続きまして、決算概要につきましてご説明いたしますので5ページをお願いします。

ローン・クレジットカード事業の営業債権残高は、営業貸付金・割賦売掛金ともに順調に拡大し、前期比3.5パーセント増加の8,229億円。

信用保証事業は、アコム単体、連結子会社のエム・ユー信用保証ともに順調に拡大し、14.4パーセント増加の1兆1,297億円。

海外金融事業は、EASY BUYへの営業貸付金が現地通貨ベースでは順調に拡大したものの、EASY BUYを含む海外子会社が円高の為替影響を受けたことにより、ほぼ横ばいの1,918億円。業容全体では8.6パーセント増加の2兆1,559億円となりました。

続きまして業績です。ローン・クレジットカード事業の営業収益は、ローン事業の期中平均利回りが低下したものの、ローン残高の拡大が吸収し、営業貸付金で底が増加。加えて、割賦売掛金の拡大による収益の増益を主因に1,359億円。

信用保証事業は、信用保証残高の拡大を主因に15.4パーセント増収の564億円。海外金融事業は、EASY BUYの業容が順調に拡大したものの、円高の為替影響を受けた結果、5.5パーセント減収の456億円。営業収益全体では3.1パーセント増収の2,451億円となりました。

連結営業費用は、金融費用がアコム単体の調達環境のさらなる改善に加え、円高の為替影響が加わり減少したものの、貸倒関連費用は主要事業の業容拡大に伴い増加。

また、利息返還請求が期初計画を上回って推移していることを踏まえ、利息返還損失引当金への計画外の繰り入れで1,437億円が発生した結果、営業費用全体では41.9パーセント増加の3,153億円となりました。

なお、利息返還損失引当金の繰入理由につきましては、後ほど広報・IR室長の岡本よりご説明させていただきます。

以上の結果、営業損失は701億円、経常損失は695億円、親会社株主に帰属する当期純損失は721億円となりました。

セグメント別構成比

6ページをご覧ください。続きまして、事業別の業容と業績のポイントです。左上のグラフに記載の営業債権残高の事業別構成比は、ローン・クレジットカード事業38.2パーセント、信用保証事業52.4パーセント、海外金融事業8.9パーセント。

右上に記載の営業収益は、ローン・クレジットカード55.5パーセント、信用保証23.0パーセント、海外金融18.6パーセントとなっており、信用保証事業・海外金融事業の連結に占める割合が高まってきています。

下段には営業利益の推移を記載しておりますが、その右下には利息返還費用を除いた、いわゆる実質営業利益を記載しており、2017年3月期は全体で735億円となりました。

事業別に見ますと、ローン・クレジットカード事業は503億円、前期の447億円から大きく増益となり、信用保証事業は96億円、前期の144億円から大きく減益となっておりますが、当期末において貸倒引当金のさらなる精度向上を図る観点から、会計上の見積もりの変更を実施しております。

この見積りの変更により、ローン・クレジットカード事業は貸倒引当金を48億円戻し入れしたことにより利益を押し上げ、信用保証事業は60億円繰り入れたことにより利益を押し下げており、この影響を除きますと中核3事業はそれぞれ増益となっております。

ローン・クレジットカード事業の概況(アコム)

続きましてローン・クレジットカード事業の概況についてご説明しますので、7ページをお願いします。

上段左側の営業債権残高は、ローン残高7,848億円。クレジットカード残高381億円。合計で前期比3.5パーセント増加の8,229億円と通期計画を達成。2018年3月期は3.3パーセント増加の8,500億円を計画しております。

上段中央の営業収益は期中平均利回りが引き続き低下しているものの、ローン残高の拡大が吸収し、営業過失金利息が増加。加えてクレジットカード残高の拡大により、収益が増加したことを主因に、2.1パーセント増収の1,359億円と通期計画を達成。2018年3月期は1.3パーセント増収の1,378億円を計画しております。

営業収益の2.1パーセント増収に対して、右側に記載の利息返還費用を除く実質営業利益は、12.4パーセント増益の503億円となりましたが、営業利益の増加率が高い要因は、貸倒引当金の精緻化によって、48億円戻しいれたことによるものであり、この影響を除きますと、1.6パーセントの増益となります。

下段左側のローンの口座数は、前期比2.3パーセント増加の144万1,000件と通期計画を達成。2018年3月期は2.0パーセント増加の147万件を計画しております。

下段中央の期中平均利回りは、ローン・クレジットカード事業全体では、15.11パーセント。うち、ローン事業は18ベースポイント低下の15.16パーセントになりました。

下段右側の貸倒損失率は、12ベースポイント上昇の2.84パーセントとなりましたが、適切な与信審査が行われており、与信費用は十分にコントロールできていると認識しております。

信用保証事業の概況(アコム、エム・ユー信用保証)

9ページをお願いします。続きまして信用保証事業の概況について連結ベースでご説明いたします。

信用保証事業においては、既存提携先への販売促進支援を強化するとともに、未開拓エリアへの提携先拡大を図ることにより、さらなる業容拡大を目指しております。

上段左側の信用保証残高はアコムが1兆50億円と1兆円を達成。MU信用保証は1,247億円。合計で前期比14.4パーセント増加の1兆1,297億円と通期計画を達成。2018年3月期は、9.8パーセント増加の1兆2,405億円を計画しております。

上段中央の営業収益はアコム478億円。エム・ユー信用保証は85億円。合計で15.4パーセント増収の564億円と通期計画を達成。

2018年3月期は11.9パーセント増収の631億円を計画しております。営業収益の15.4パーセント増収に対して右側に記載の営業利益は33.5パーセント減益の96億円となりましたが、貸倒引当金の精緻化により、60億円繰り入れたことによるものであり、この影響を除きますと、8.1パーセントの増益となっております。

下段中央の既存提携先数は、アコム29行。MU信用保証24行。合計で延べ53行となり、右側の提携エリアは、全国47都道府県中39都道府県をカバーしております。

なお本年4月には空白エリアであった山梨県の山梨中央銀行さんと新たに保証業務提携を開始しており、現時点においては40都道府県をカバーしております。

昨今、銀行カードローンに関する報道が増加しておりますが、信用保証事業を行う当社グループにおいては、従来からローン事業で培った与信審査ノウハウを最大限活用し、返済能力を十分に調査したうえで与信審査を実施しておりますが、引き続き過剰な過失金にならないように十分留意して参ります。

海外金融事業のターゲット市場

11ページをお願いします。当社はタイ王国とインドネシア共和国ですでに金融事業を展開しておりますが、昨日フィリピン共和国における合弁会社設立に関するお知らせを発信しておりますので、ご報告させていただきます。

当社はフィリピン共和国において、個人向け融資事業に進出するため、伊藤忠さんとの間で合弁会社を設立することについて合意いたしました。

合弁会社を設立する理由は、当社がローン事業で培ったノウハウを活用し、フィリピンに事業進出するためには、同国で会社運営ノウハウを有する伊藤忠さんと合弁会社を設立することが、最善と判断したからであります。

伊藤忠さんは、当社の連結子会社でタイ王国でローン事業を営むEASY BUYの共同株主であり、長年にわたって良好なパートナー関係にあります。

進出国にフィリピンを選定した理由ですが、同国はASEAN地域で第2位の人口を有し、今後も高い成長率が期待され、また本事業のメインターゲットとなる中間所得層も拡大しており、今後も個人の資金ニーズの高まりが期待されることから選定いたしました。

会社名はACOM CONSUMER FINANCE CORPORATION。資本金は日本円で約12億円。本年9月に合弁会社を設立し、来年7月の事業開始を計画しております。

海外金融事業の概況

続きまして海外金融事業の概況についてご説明いたします。

上段は海外金融事業の業容業績を円ベースで記載しておりますが、海外子会社2社の営業債権残高はEASY BUY1,459億円。Bank BNP458億円。2社とも円高の為替影響を受け、合計で前期比ほぼ横ばいの1,918億円となりました。

棒グラフの下に為替影響を記載しておりますが、EASY BUYがマイナス40億円。Bank BNPがマイナス5億円。合計でマイナス45億円と、円高の為替影響は足元で緩やかに縮小しておりますが、この為替影響額を除きますと、営業債権残高の増加率は0.1パーセントの減少から2.2パーセントの増加になり、現地通貨ベースでは拡大しております。なお、2017年3月期の営業債権残高は、9.6パーセント増加の2,102億円を計画しております。

上段中央の営業収益は、EASY BUYが現地通貨ベースで増収になっているものの、円高の為替影響を受けた結果、EASY BUY380億円、Bank BNP75億円。合計で5.5パーセント減収の456億円と通期計画を若干満たし、2018年3月期の営業収益は9.0パーセント増収の497億円を計画しております。

上段右側の営業利益は、円高の為替影響を受けたにも関わらず、EASY BUYにおいて、金融費用、貸倒関連費用などが抑制できたことにより、合計で13.5パーセント増益の126億円となりました。

次に中断はEASY BUYの業容と業績を現地通貨ベースで記載しております。中断左側の営業債権残高は前期比11.1パーセント増加の450億バーツ。営業収益は12.0パーセント増収の123億バーツ。営業利益は37.1パーセント増益の42億バーツ。業容業績ともに通期計画を大幅に達成しております。

タイ王国では家計債務問題により、競合他社においては、一部で融資抑制の動きが見受けられますが、EASY BUYにおいては、債権健全化を 経営の最重要課題においたうえで、積極的な営業活動を展開しており、債権内容の悪化などは顕在化しておりません。

またブランドイメージ向上、新規集客拡大を目的にUmay+(ユメプラス)ブランドを積極展開することにより、新規契約数、営業貸付金残高ともに、顕著に増加し、同国内においてトップブランドの地位を築いており、2018年3月期においては、営業債権残高は9.9パーセント増加の495億バーツ。営業収益は9.3パーセント増収の135億バーツを計画しております。

下段にはBank BNPの業容業績を現地通貨ベースで記載しておりますが、インドネシア共和国で銀行業を営むBank BNPは引き続き中小企業向け融資を中心に事業を展開しております。

金融当局による金融政策変更などの影響により、業容業績ともに前期比で減少しておりますが、当社の連結業績にあたえる影響は軽微であります。

2018年3月期 通期計画

続きまして、2018年3月期通期計画についてご説明いたしますので、17ページをお願いいたします。

2018年3月期においても、個人向けカードローン市場は安定的に成長すると考えており、当社グループといたしましてもローン・クレジットカード事業。信用保証事業ともに、さらなる業容の拡大を見込めるものと期待しております。

また海外金融事業におきましては、経済成長の低迷懸念など、一部事業リスクがあることから、従来どおり債権内容の健全化を経営の最重要課題として、判定的な業容拡大を推進して参ります。

まず連結の業容です。ローン・クレジットカード事業は、前期比3.3パーセント増加。信用保証事業は9.8パーセント増加。海外金融事業は9.6パーセント増加と、中核3事業において増加。業容全体では7.3パーセント増加の2兆3,126億円を計画しております。

続きまして連結営業収益です。ローン・クレジットカード事業は、前期比1.3パーセント増収。信用保証事業は11.9パーセント増収。海外金融事業は9.0パーセント増収。営業収益全体では4.8パーセント増収の、2,570億円を計画しております。

連結営業費用ですが、金融費用はさらなる調達費用の改善により、前期比6.8パーセント減少。貸倒関連費用、その他の営業費用は中核3事業の業容拡大に伴い、それぞれ11.5パーセント。8.0パーセントの増加。また利息返還費用は発生しないことから、営業費用全体では、41.1パーセントの減少の1,857億円を計画しております。

以上の結果、営業利益は713億円。経常利益は718億円。親会社株主に帰属する当期純利益は642億円を計画しております。

配当方針、配当予想

最後に、配当方針及び配当予想です。まず2017年3月期の期末配当は未定としておりましたが、誠に遺憾ではございますが、無配に修正させていただきました。

復配の条件といたしましては、従来、中核3事業の継続的な安定成長とあわせて、利息返還動向の先行き懸念が解消された時点で、速やかに復配するとご説明して参りました。

下段に、当第4四半期の足元の状況を記載しておりますが、中核3事業は安定的に成長しているものの、利息返還請求は当初を大きく上回る水準で推移している。

また利息返還損失引当金の追加繰り入れにより、自己資本は大きく毀損されたものの、さらなる毀損リスクは軽減されたと認識しております。

これらの状況を鑑み、新たな復配の条件といたしましては、経営の安定性・安全性の観点より、自己資本の拡充が最優先課題であり、自己資本比率を注意しつつ、利息返還請求の発生予想額と実績額の乖離幅を検証し、先行き懸念が解消された時点で速やかに復配させていただきたいと考えております。

以上が2017年3月期における決算報告となります。

今後も中核3事業の安定成長を目指すとともに、引き続き中期経営計画の達成に向けて邁進して参ります。

みなさまの変わらぬご支援ご指導を賜りますようお願いいたしまして、私からの説明を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。