デイリーユニークブラウザー数(スマートフォン比率)

宮坂学氏:2017年度以降の取り組みです。2017年度だけに限らず、もう少し中長期的に見た「Yahoo! JAPANをこういうふうにしていこうと思ってる」という話をみなさんにご紹介したいと思います。

Yahoo! JAPANはおかげさまで20周年を迎えることができまして、いよいよ次のフェーズに入っていくわけですが、私が前の井上社長からバトンを受け継いだときに、「PCインターネットのヤフーからスマートインターネット大陸のヤフーになってほしい。そういうふうにしてね」と言われてバトンを受け取りました。

それからいろんなことをやってきたわけですが、当初は「PCではヤフーは強いけど、スマートフォンではヤフーは使わないんじゃないの?」という声が非常に多かったりと、ご心配をおかけした点も多かったと思います。

それから比べて今はどうなったかといいますと、当時はPCの方が圧倒的に使われていて、スマートフォンを使う人は35パーセントしかヤフーはいなかったんですが、今はデイリーユニークブラウザで見れば、65パーセントがスマートフォンのアクセスということで。

今でもPCではヤフーがNo.1なんですけど、スマホでもたくさんの人が使っている。スマホでヤフーを使う人が増えてるということを証明できたと思っております。

広告売上高(スマートフォン比率)

次に直面したのが「スマホで使われるヤフーになるのはわかるんだけど、あの小さな画面サイズで、PCと同じぐらい広告ビジネスができるのか?」というのが論点になったわけです。

検索連動広告の改善をしたりとか、YDNをインフィード広告にしてみるといった、小さなイノベーションから大きなイノベーションまで繰り返した結果、順調に伸びてきまして、当初は広告売上高に占めるスマートフォン比率は16パーセントだったんですが、今では半分以上の53パーセントがスマートフォンからの広告売上になってきているということで、こちらも転換をすることができました。

eコマース国内流通総額 (スマートフォン比率)

そして最後のポイントとして、「メディアの事業としてはPCのときもヤフーは強かったけどeコマースに関してはPCからずっと弱いよね」と。

「ECどうするんだ?」というのは大きなポイントだったわけですが、EC革命というのを提唱してECでも一番になろうと今、挑戦を続けているところであります。

直近で見れば、ECの中ではYahoo! JAPANが一番成長率が高いショッピングモールになっているんじゃないかと思っておりますので、ECでもヤフーというのは前よりもかなり進歩したんではないかと思います。

そしてその内訳もPCのECで伸ばしているわけではなく、スマートフォンからのEC比率が5割を超えているということで、スマートフォンのPCでヤフーをどんどん強くしていくということが、ちょっとずつかたちになりつつあるんではないかと思っております。

このように過去を振り返ってみれば、PCで強かったヤフーからスマートフォンのヤフーにと。トラフィックの面でも広告の面でもECの面でも移行してきて、ある一定の成果は出したんではないかなと思います。

もちろん、これをもってスマートフォンシフトが完了と、達成というと「それは油断しすぎじゃないの?」と思いますので、まだまだ緩めるつもりはないんですが、最低限のスマートフォンインターネット大陸へのシフトというのはできたのではないかと自分たちでは思っております。

インターネットは「枠」から「人」へ

今度は、さらにスマートフォンの中でどんどん存在感を出していくに加えて、新たな挑戦をもう1回やっていこうと思っておりまして。その新しい挑戦がマルチビッグデータというテーマになります。

スマートフォンインターネット大陸という大きな大陸の中でも、イメージとしてはマルチビッグデータという巨大な山があってそれに登りにいこうと。これから何年かかかると思いますが、じっくりと取り組んでいきたいと思います。

なぜマルチビッグデータが大事かということについてです。スマートフォンのサービスはますますパーソナライゼーションによって提供されているからです。いってみればサービスの、PC時代のYahoo! JAPANは赤く囲ってあるとこだけですね。

ここだけがパーソナライゼーションされていました。つまり広告の世界で「枠から人へ」というのが起きて広告が劇的に変わりましたが、コンテンツに関していうとYahoo! JAPANはほとんど枠のままで事業をやっておりました。

それが今は、Yahoo! JAPANも、他のあらゆるサービスもコンテンツも広告もeコマースも決済も含めて、全てが「枠」ではなく「人」単位で配信をする。そんな時代になっております。広告から始まった「枠から人へ」というのがあらゆるサービス、領域で起きてしまうと。実際にも起きてるわけです。

じゃあ、このパーソナライゼーションの制度。「枠から人へ」のクオリティの精度を決めるものは何かと言いますと、これはデータです。データがあるからパーソナライゼーションができると。

クオリティの高いデータをライバルより持つことが、圧倒的な競争優位を生み出す重要なポイントになると思います。

Yahoo! JAPANの強みはマルチビッグデータの多様性・量・鮮度

我々はこのビッグデータを持っているわけでございますが、ビッグデータを評価するときに3つのVをよく使います。

1つ目は多様性。「Variety」のV。そして「Volume」のV。そして更新速度「Velocity」のV。この3つのVがないとビッグデータといくらいっても価値が下がっちゃうという評価をしています。

まず、Yahoo! JAPANのデータの特徴の多様性がありますが、我々は100を超えるサービス群を持っておりますので、いろんな種類のデータが日々たまっていきます。これが競合さんと比べてYahoo! JAPANの特徴でないかと思っております。

そしてもう1つ。たくさんやってるだけではなく、それぞれが市場で1位とか2位とか3位とか、非常に高いポジションに位置してますので、たくさんの利用者、ボリュームのデータがたまっていると。これが2つ目の特徴になります。

インターネット利用者の半分以上の、月間6,000万人以上の方が使い、さらにこれをIDで使う人が約4,000万人いらっしゃるということで、ボリュームに関しても我々は上記を満たせてると。

そしてもう1つ、鮮度の方ですが、ヤフーは、検索とかニュースとかスポーツとか株式情報といった、伝統的に毎日アクセスするような情報が非常に強いです。

1週間に1回とか、月に1回のアクセスではなく、毎日毎日、半日に1回とか、2時間に1回アクセスするようなサービスが非常に多いですから、鮮度の面においても我々は優れたデータを持っております。

マルチビッグデータ活用による更なる収益向上へ

Yahoo! JAPAN最大のポテンシャルは何かといいいますと、何度もみなさんにもお話してますが、やはりマルチビッグデータというものではないかと思っております。

マルチビッグデータをもっともっと磨いて、それを使ってパーソナライゼーションを行なって。メディアのビュー・スルー・レートですね。

タイムラインを見る率とか滞在時間を増やしてみたりとか、広告のクリック率をもっと上げたりとか、eコマースのコンバージョンレートをあげてみたりとか。

ヤフーの中のいろんなKPIの中に「なんとかレート」といわれているものがありますが、この「なんとかレート」というものを上げるのをデザインの変更とかによる、UIによるレートのあり方ではなく、データを活用してレートを上げていくということをこれからどんどんやっていきたいと思います。

これが今年度に限らず中期的に見てYahoo! JAPANが持続可能に成長するために必ずやらないといけないこと。それは強みであるマルチビッグデータを具体化すること思っております。それをやるために2つほど大きなポイントがあると思っております。

2つの条件を満たすことが重要

1つ目は、今はマルチビッグデータとして非常にユニークなポジションにいると思っていますが、これをもっともっとよくすると。強みをさらに磨く。得手に帆を掛けるという点をもっとやるべきだと思っています。そしてもう1つは、データサイエンスをこの間もどんどん強化してますけど、ここは惜しまずもっともっと投資をしていくという点であります。

現在はマルチビッグデータの「質」と「量」にばらつき

先ほどYahoo! JAPANは多様性とボリュームと先途において優位に立ってるデータを持っている話をしましたが、イメージ図ですが、メディアのヤフーを使ってる、メディアだけを使っている人が圧倒的に多いんですよね。

マルチビッグデータの「質」と「量」をバランスよく改善へ

今、ECと決済を一生懸命伸ばそうとしていますが、ECと決済を伸ばすことによって、最終的にはバランスのいいかたちのユーザーのプロファイルにしたいと。

こうすると、もちろんECと決済からの収益も上がりますが、我々が持つマルチビッグデータのボリュームとかクオリティが今よりもよくなるということを意味します。

ぜひとも今進めているECを成功させて、こういうかたちに変えていきたいと思っております。そしてこういった我々の今持っているマルチビッグデータをもっともっとクオリティを高くして、その上でそのデータを、データサイエンスを使ってユーザーにぴったりの「枠から人へ」のいろんなサービスを提供していくと。

それによってユーザーは自分にぴったりのサービスだから使おうと。もっともっと使うから重なりが増えてデータが増えると。そしてデータサイエンスを使ってもっとよい提案ができると。

こういった無限のデータによって事業を駆動していく無限のエコシステムというものをぜひ構築してみたいと思っております。というのが中期的なYahoo! JAPANが取り組むべき挑戦の方向性になります。これを受けて2017年度の方針であります、今年度は何をやるかという点でありますが3つほど挑戦をしたいと思います。

これまでの実績 (eコマース)

1つ目は「eコマース取扱高をもっと伸ばす」と。そして「リッチメディアを進める」です。この上の2つが、マルチビッグデータの質と量をもっとあげるという大方針の1つ目に関係することになります。

まずeコマースの方からご説明をしたいと思います。その前にeコマースの振り返りを少しだけやって今後につなげたいと思います。

まず2013年10月に「eコマースでも一番になりにいこう」と決めて手数料を全部タダと「eコマース革命」を始めました。それによってお店の数は6倍になり商品数は3倍になって両方とも日本一を達成できました。

これまでの実績 (eコマース)

さらに流通総額につながり始めて2倍になり、確かにそれが流通総販の伸びが今度はショップへの広告売上につながって、当時と比べると広告が6倍になるというかたちで順調に順を追ってステップを進めてこれたと思っております。

ここまでのeコマース戦略1.0。売り手を増やすというふうに位置付けるとすると、やはり我々がこれからやるべきことは売り手を増やすことはもちろん、これからも続けていきますが、買い手を増やすということにもう少しフォーカスをしてやっていきたいと。eコマース戦略2.0は買い手を増やすということであります。

これまでの「Yahoo!プレミアム」会員向けの施策は成功

ただ買い手を増やすといっても、闇雲に増やすしていくとコストがものすごくかかります。やはり今年度販促費の効率化の中で特定セグメントに対してプロモーションするという非常に効率がいいなとわかってきましたので、それをぜひ推し進めていきたいなと思っております。

これはプレミアム会員というYahoo! JAPANにしかない顧客セグメントなんですが、この方たちは2014年度まではヤフーで買う人はあまりいなくて、むしろ他社さんで買われてたんです。

なので我々はこのヤフーのプレミアム会員ていう顧客セグメントに対してポイントをたくさんつけるっていうキャンペーンをやってみると、これが非常にうまくいったというのがあります。

結果的に、当時は14年度の第4四半期の半分以下しかプレミアム会員の取扱高がなかったのが、今ではプレミアム会員による取扱高比率が64パーセントと。

販促費はプレミアム会員にフォーカスして使えば総額も減るし、効率よく流通を伸ばすことができるということを我々は学ぶことができました。

2017年2月よりソフトバンク会員向けキャンペーンを展開中

この特定の顧客セグメントに対して集中的にプロモーションをかけて、「他社ではなく、ヤフーで買いませんか」というのが、我々の勝ち筋ではないかと思っております。

なのでこの顧客セグメントの第2弾として、もう1つソフトバンクをぜひ使ってみようということで、2月からソフトバンクの会員向けにキャンペーンを開始しました。

それまではソフトバンクのお客様はYahoo! JAPANで買い物をしても得になることはなかったわけですが、2月以降は「5」のつく日に買うと最大で全品20パーセントオフ、ポイントが20倍つくというキャンペーンをやりました。

ソフトバンク会員の「Yahoo!ショッピング」利用状況

この結果、どういうことが起きたかというと、やる前の1月は濃いめのグレーぐらいはソフトバンクの会員の取扱高だったんですが、3月になると、ぐぐっと伸びてきているということで、プレミアム会員のときと同じように特定のセグメントに絞った集中的なプロモーションというのは非常に効率がいいということがわかってきました。

ソフトバンク会員に占める「Yahoo!ショッピング」購入者の割合

ソフトバンク会員に占めるYahoo!ショッピング購入者の割合。これはまだたったの12パーセントしかいらっしゃいません。

長い目で見れば、すべての人がスマートフォンとかパソコンを使ってeコマースをするようになると僕は思っていますので、まだまだ伸ばせる余地があるんではないかと思ってあります。

eコマース戦略2.0 ソフトバンクとのシナジーを強化

eコマース戦略第2弾。この買い手を増やすというのは引き続き特定の価格セグメントにフォーカスをしてお客様を伸ばしていこうということを続けていきたいと思います。

「ソフトバンクとY!mobileのお客様は他社ではなくヤフーで買いませんか」というプロモーションをこれから集中的に続けていきます。

ソフトバンク会員は6月以降もポイント10倍

本日プレスリリースで発表させてもらいました、2月から開始していた「ソフトバンクだったら10倍」というキャンペーンは6月以降も非常に好評で好調だったので、続けていきたいと思います。

さらに強化をして単に10倍だけではなく、ショッピングでてもプレミアム会員特典っていっぱいありますので、ソフトバンクのお客さんであればプレミアム会員特典は全部コミコミで使えますというような、よりパワーアップしたかたちで「ソフトバンクのお客さんだったらヤフーだよね」という流れを決定的につくっていきたいと思っていきます。

「Yahoo!プレミアム」の特典を強化

2つ目の顧客セグメントはやはりヤフープレミアムです。ヤフープレミアムのお客様もかなりYahoo!ショッピングでお買い上げいただくようになってきましたけど、まだまだ伸ばせる余地はあるのではないかと思っております。

何よりもプレミアム会員の魅力をどんどん上げていくことが非常に重要になりますので、6月1日からGyaOストアやYahoo!ブックストアで電子書籍を買ったときも、ポイントが5パーセント還元されるということを取り組んで「プレミアム会員になってよかった」という人をもっと増やしていきたいと思っております。

「ヤフオク!」利用者も「Yahoo!ショッピング」利用者へ

3つ目の買う人を増やす戦略はヤフオク!の活用です。今でもヤフーのeコマースの中で一番大きな流通総額はヤフオク!なんですが、その半分以上はCtoCによる流通総額です。裏返していうと個人の出品者の方が物を売って、ヤフーを通じてたくさんお金を得ていらっしゃいます。

ただ、この落札。販売されて稼がれたお金というのは、残念ながらYahoo!ショッピングに還流するというケースは今まであまりなかったんです。これは非常にもったいないと。

ヤフオク!で売ってお金を稼いで他社さんでモノを買うということになっている可能性がかなり強かったので。

なんとかしてヤフオク!でモノを売って稼いだお金で、Yahoo!ショッピングでもう1回買い戻しませんかっていう、これも我々にしかできないエコシステムですね。これをやりたいと思っております。

「ヤフオク!」と「Yahoo!マネー」での連動施策を継続

具体的に取り組みを新たに開始したのが、ヤフープレミアム会員であれば出品をして、Yahoo!マネーというヤフーの電子マネーで受け取ると手数料が実質タダというキャンペーンを開始しております。

「Yahoo!マネー」残高推移

これをやった結果どういうことが起きているかというと、Yahoo!マネーというサービスをリリースしてからだいぶ時間が経ってるんですが、最初はちょっとずつの伸びだったのですが、キャンペーン開始以降急激に、Yahoo!マネーの残高が急速に伸びています。

まだこの残高を今伸ばすところに集中していますので、残高からそのままヤフーの中の消費というのにはなっていませんが、やはり長い目で見れば、今ポイントのことも非常に重視して使っていますけど。

やはり電子マネーというものも非常に大きな可能性を秘めているものになりますので、ヤフーはやはりヤフオク! を持っているというのを電子マネーに上手く活かしていきたいと思っています。

eコマース戦略2.0 「Yahoo! JAPANカード」の取り組み

そして、もう1つの顧客セグメントはYahoo! JAPANカードであります。今もYahoo! JAPANカードを持った人はたくさんポイントがもらえますので、カード会員がYahoo!ショッピングをどんどん使うということが起きております。

最終的にはヤフーのコマース取扱高をどんどん伸ばす一方で、その中で決済されるカードがYahoo! JAPANのカードの比率がもっと上がるように、我々はそれをインハウスの決算比率というふうに呼んでおりますけれど。

インハウスの決算比率をもっともっと上げて、高い水準まで持っていって、手数料が外にいくのを防いでいくということをやっていきたいと思っております。

決済金融事業の収益拡大のために

以上申しましたとおり、eコマース戦略の第2弾のポイントは「買う人を増やす」。その買う人も、闇雲にすべての人にプロモーションをすると、これをやるといくらお金があっても足りませんので、Yahoo! JAPANならびにYahoo! JAPANの周りにある、我々しか持ちえない顧客セグメントに対して集中的に投下をして、しっかり流通につないでいくということを始めてみたいと思います。

ショッピング事業取扱高の成長目標

それによって、どれぐらいのショッピングの事業の取扱高の目標感でいるかというと、前年度比で30パーセント増はやりたいと。これを持続的に、一発じゃなくて持続的にやれるようなエコシステムをつくりにいきたいと思っております。

取扱高を最大化し複数の収益モデルへつなげる

流通総額が伸びた後にどうやって収益にするかといいますと、ショッピングの広告売上、これはもう徐々に生まれ始めていますし、オークションは手数料を会員サービスの収入、決済の手数料収入、そして、デジタルコンテンツの取扱高。

こういったものを伸ばすと同時に、ここで大きくなればマルチビッグデータのクオリティがよくなりますので、最終的な広告の単価につないでいくというようなエコシステムまでつないでいきたいと思っております。

以上がeコマースの取扱高最大化に向けて今年度やろうと思っている作戦であります。

「Yahoo!ニュース」利用者の状況

2つ目は主にリッチメディアの取り組みで、これは主にメディアに関する話になります。

やはりeコマースで今伸ばしておりますけど、やはり毎日毎日たくさんの方がヤフーに来てくれているからと、ヤフーのメディアサービスが非常に強いからeコマースというものを伸ばす上で非常に役に立っていると思っております。

もしヤフーのメディアが弱くなるとヤフー全体の事業が非常に厳しいことになりますので、メディア事業はもっともっと伸ばしていきたいと思っております。

とくに大事なのが、やはり1週間に1回とか月に1回くるサービスじゃなく、毎日半日に1回、1時間に1回くるような頻度の高いコンテンツ、ここで主導権を取り続けることが決定的に重要だと思っています。

とくに今、非常に注力したいと思っているのがやはりYahoo!ニュースです。やはり、ヤフーのトップページにくる最大の理由の1つは、やはりヤフーでニュースを見に来たいから。

「みんながYahoo!ニュース見ているから自分も見よう」とか、「やっぱりYahoo!ニュースは信用できるからYahoo!ニュースを見たい」ということで、たくさんの方が毎日来てくれていますけど。

とはいえ、ニュースというのはすべての生活者にとっての生活必需品。水とか電気みたいな生活必需品ですから、今すでにシェアを取っているように見えても、実はまだまだPCだと半分以上の方が多分他社さんのニュースを見ているということになりますし、スマートフォンでみても半分ぐらいの方は実は他社のニュース見ているんじゃないのかなと。まだまだ伸ばす余地はあると思っております。

動画コンテンツの更なる拡大

とくに伸ばすべき領域だと思っているのが、このビデオコンテンツです。これまではニュースというのはテキストと写真で見るものというのがこの20年間のスタイルでしたけど、これからの20年間で間違いなくニュースは映像で楽しむというのがもっともっと一般的になると思っています。

なので、テキストと写真でとっているくらいのポジションを動画ニュースの世界でもとっていきたいと思っておりまして、いろんな情報提供パートナーさんと一緒にタッグを組みながら、インターネットで動画ニュースを見る習慣をもっと増やそうと挑戦したいと思います。

「Yahoo!ニュース動画」開始

第1弾として、2017年4月18日から日テレさんと組ませてもらいました。Yahoo!ニュースのトップページにこの24時間のLIVEのニュースをエンベットして配信をしております。

初速は非常にいい結果が出ておりますので、こういった取り組みをどんどん拡大していって、「動画ニュース見るんだったらもうヤフーだよね」ということを我々もやりたいし、我々のパートナーさんもこれによってWin-Winなビジネスができるようにぜひとも一緒にやっていきたいと思っております。

2つ目の取り組みのリッチメディアのご紹介でした。

データの「蓄積」から更なる「活用」へ

3つ目はデータドリブン化の取り組みです。

長年、データは非常に重要だという話をさせてもらっていて、データの蓄積に関する設備投資をかなり続けてやってきましたが、いくつか、どういうことを成果として起こそうとしているのかについて今回はご紹介したいと思います。

例えば、スマートフォン版のYDNのクリックレートなんですけど、2014年の第1四半期から比べると70パーセント以上改善をしています。

これは、クリックレートを改善するには大きくいうと2つありまして、1つはUIとかUXを全然変えてしまうこと。要するに広告を派手にしてしまうことですね。こういうのがあります。

もう1個は、見た目は変わらないんだけど、配信のクオリティを上げてユーザーにぴったりのものを届けてしまうのがあります。

やっぱり前者のやり方っていうのは、ユーザーファーストではないですし、持続性がないです。毎年毎年派手にしないといけないですから、続くことができません。

やはり大事なことは、見た目は変わらないんだけど配信の制度は上がっていって、みんなが見たくなるような広告を配信するということに尽きると思います。

こういったものをデータの力を使って、地道な改善を今、どんどんやっているところであります。

[実例] ウェブ検索履歴からレコメンド精度向上

それから、eコマースでも同じようなことを今やっております。例えば過去にYahoo!ショッピングを使っていなかった人がYahoo!ショッピングに来た時にどんな商品をご案内するかというと、ランキングを出していたんです。

パーソナライゼーションのしようがなかったので、ランキングを出すと。完全に人ではなく枠で配信するっていう、すごく原始的なことをやっていたんですけど。

今ではショッピングは使っていなくても、他のサービスを使っているわけですから、そのデータをうまく使ってその人にぴったりの商品を、枠ではなく人で配信していこうという取り組みをやっております。

その結果、見た目はほとんど変わらないんですが、クリックレートに関していうと4.5倍になったというような、データによってレートを改善するっていう成果が生まれています。

[実例] Yahoo! JAPANトップページ レコメンド精度向上

それから日々みなさまもご覧いただいているヤフーのトップページですが、ここもデータでいろんな改善をやっております。

もともとタイムラインはデータを使ってパーソナライゼーションの配信していたんですが、データの使い方をもうちょっとエレガントに洗練されたかたちでディープラーニング等の新技術もどんどん使いながらやっていくことになりました。

みなさん、今ヤフーのトップページのタイムラインをご覧になられていて、多分見た目がほとんど変わっていないので変化を感じないと思うんですが、配信のアルゴリズムが日々、どんどんチューニングしていますので、滞在時間に関すると7パーセント近く伸ばすことができています。

このように、見た目は変えることがなくても、データに力を使えばいろんなレートをどんどん改善することができると。この6.9パーセント伸びればその分たくさんの人が使ってくれて、データがよりたまって、それでまた改善ができるというエコシステムです。

データを使ったエコシステムができている1つの例だと思います。

データで他領域の事業を伸ばす

これまでも大きくデータを使っていなかったわけではなく、メディアは主にメディアサービスのログを使ってデータレコメンデーションをしていましたし、ECはECのデータを使ってレコメンデーションしていました。決済は決済のデータを使って同じようにパーソナライゼーションをしていました。

ただ、このように事業セグメントごとの、再ろ過されたデータの利活用だと競合他社さんとの優位性がまったくなくなってしまいます。まったく同じ戦いになりますよね。

データで他領域の事業を伸ばす

なので、我々がやりたいことは例えば、メディアのデータを使ってECのレコメンドをする。ECのデータを使って決済の与信をする。そして決済のデータを使ってメディアや広告のレコメンドをすると。

こういった事業セグメントをまたぐかたちでのデータのクロスユースとパーソナライゼーションをやるということをやれば、Yahoo! JAPANは複数の強いサービスを持っているという強みを活かすことができます。これをこれからぜひ挑戦していきたいと思っております。

そのために技術で勝つ会社に脱皮する

そのためには、今日は技術向けのイベントではないので、さらっと説明しますが、非常に重要なのが開発環境を構築して維持し続けることであります。

インターネットもどんどん優れたビジネスモデルとか、海外で流行っているものを持ってきていち早くエゼキューションして勝つというモデルではなく、他社がまねしたくてもできないテクノロジーを持っているかどうかと、こういったテクノロジーの競争に徐々に移っていくと私は思っています。

なので、Yahoo! JAPAN自身も、これからもっと技術力を磨かないといけない。他社がまねしたくでもできない、それは技術で差別化するのが一番強いわけですから、技術で我々しかできないことを増やしていきたいと思っております。

そのために、20年経ちましたので、いくつか技術環境を見ても技術負債という言い方をしますけど、築20年の家になってますので、いくつか負債がたまっています。

これまではリノベーションリノベーションでなんとかやりくりしてきたんですが、1回ちょっと新築に建て替えようぐらいのつもりで、技術環境を一気にフレッシュにしていきたいと思っています。

そして大事なことは、20年に1回この技術環境の刷新をやると大変なことになりますので、次は技術のマネジメントスタイルを変えて、1回きれいにしたものを毎年毎年、毎月毎月維持し続けると。新鮮なものに維持し続ける技術のマネジメントスタイル自体を変えていきたいと。

こういったことに立脚しないと、先ほど話したマルチビッグデータで勝つということが多分できなくなりますので、非常に地道ではありますけど、技術への投資をこれから力を入れてやるべきことではないかと思っております。

2017年度 追加投資の見通し

というような取り組みをやろうとしている2017年度の業績の見通しであります。

まず、大きな投資に関していわれますが、eコマース、この中に決済も含まれてくるわけですが、eコマースの取扱高の最大化に向けて250億円というものを追加で投資したいと思います。

そして、データドリブン化のこの技術環境の刷新に関して、150億円を投資をやっていきたいと考えています。

2017年度 販売促進費の見通し

とくに、2017年度の販売促進費の見通しについてこちらにまとめてみました。今年度は354億円の販売促進費でございましたが、510億円に増額と。内訳はショッピング・ヤフオクで6割、決済・金融・会員で3割、メディアで1割ということで、どちらかというとコマース系・金融系の方に振った投資をしていきたいと思っております。

2017年度 営業利益の見通し

そして営業利益の見通しです。2016年度はアスクルによる損害なども加味して2,050億円の営業利益でしたが、2017年度はより積極的に投資をしていこうと。

Yahoo! JAPANは次の時代も持続的に成長していくためには、今しっかりとeコマースの分野や、ビデオ化に対する投資を判断し、積極投資をすることによって1,750億円から1,850億円の減益での見通しと今回は提示させてもらいたいと思います。

以上、私のほうからプレゼンテーションさせていただきました。

開示セグメントの変更(予定)

最後に、これをやる体制が4月以降から変わっているのでご紹介をしたいと思います。

これまでは私が社長で、その下にそれぞれ執行役員が事業を見ていましたが、昨年のメディアのビジネスと広告のビジネス、マーケディングソリューションカンパニーを合体してメディアグループというものを作りました。

組織図(単体ベース)

もう1つ、去年は組織としては変えなかったのですが、事実上ご覧いただいたとおり、事業のやり方がeコマースに対して、オークションとショッピングと会員事業と決済金融のそれぞれのカンパニーが事実上一体化したような事業運営になっているんです。

なので、その戦略に従って組織の再編をしていて、コマースグループというのを新たに作って、その下に今言ったカンパニーが紐づくというかたちにしております。

コマースグループのグループ長はCEO副社長が兼任で川邊がやるとしております。

メディアは宮澤が引き続きやるということで、メディアと広告でビデオ化を進めてまいります。技術周りの刷新については、CTOの藤森がしっかりと、新しいフォーメーションで今日話したようなことに挑戦していきたいと思っています。

以上、私のプレゼンテーションにさせていただきます。ありがとうございました。